オリンピックが終了したあと、活躍した選手たちがさまざまなテレビ番組に出演するのは恒例と言っていいくらい、いつの大会でも馴染みの光景だ。

 東京五輪後も数々のメダリストがその姿を見せている。例えば、卓球で混合ダブルス金、男子団体銅のメダルを獲得した水谷隼、同じく卓球男子団体銅の張本智和、バスケットボール女子日本代表で銀メダルを獲得した馬瓜エブリン、柔道男子100kg級金メダルのウルフ・アロンらは登場する機会が多いようだ。そのためか、「競技の方はどうなっているんだろう?」、そんな心配をする声も聞かれるという。その競技のファンでないと、どうしてもオリンピック以外の大会や活動はあまり知らずにいるケースも少なくない。それもあってのことかもしれない。

 では、各選手のスケジュールはどのようになっているのだろうか。

オリンピック後の代表選手たちのスケジュールは…

 水谷は現役生活からの引退を表明している。10月23、24日に静岡県袋井市で行なわれるTリーグの試合が、出身地である静岡県での凱旋試合でありそして最後の試合となる。

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 また、Tリーグに参加していない張本にとって、この先に控える大きな大会としては11月23日に開幕する世界選手権(アメリカ・ヒューストン)がある。すでに日本代表に選ばれているので、そのプレーを目にする機会になる。

 卓球はオリンピックの後、今シーズンから始まった国際大会のシリーズ「WTT」、アジア選手権などが開催されているが、これらには五輪代表以外の選手が派遣された。

 アジアカップ(9月27日〜10月3日)で5連覇を達成したバスケットボール女子日本代表も、5名のメダリストを軸にしつつ、若い世代、さらに3x3の代表選手も加わっての構成となった。

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 鈴木桂治氏が男子の新監督に就任、女子は増地克之氏が留任した柔道は、10月16・17日に行われるグランドスラム・パリが最初の主要国際大会となる。やはり五輪代表選手は出場せず、代表争いを繰り広げた実力者をはじめ、若い世代の選手などで構成されている。

「メディア出演よりも休養すれば?」という批判

 これらの競技に共通しているのは五輪代表選手への配慮と、今後を見据えた取り組みだ。

 今回は「5年に一度」となった大舞台、しかも東京開催へ向けて、そこまでの代表選考や強化の過程、大会そのもので費やしたエネルギーは並々ならないものがある。そこでの心身双方で受けた負担を考えれば、しかも最大の目標としていた舞台を終えた直後なら、疲労や消耗の大きさは想像に難くない。それらを拭い去るために、競技生活を継続するにしても、本格的な練習再開まで月単位で間を空けるケースもある。

 別の視点から見れば、先のような五輪代表以外の選手を選考することには、五輪代表以外の選手にとって次へ向けての貴重な機会、経験となる。だから、若手を起用するのは全体のレベルアップにつなげる意味合いがある。

 逆に、消耗からの回復を考えるなら、メディアへの出演などの活動が負担になるのでは、と尋ねられた選手がいる。疲労を軽減する時間とするなら、なおさら休養にあてたほうがいいのではないか、と考える人もいるだろう。さらに、練習がおろそかになるのでは、と批判的に見られることもあるという。

ウルフは「柔道の方は大丈夫か」と聞かれた

 ただ、決して競技人生においてマイナスにばかり捉えることはできないのではないか。これまでにない世界を知る、異なる分野の人と出会うことが刺激になる、リフレッシュになる、と語った選手も過去にいる。

 それだけでなく、テレビ出演をはじめイベントなどへの参加を、意図をもって行なっている選手たちもいる。

 ウルフはさまざまなテレビ番組に出演している1人だ。年内を休養にあて、年が明けてからスタートを切る方針であることを明らかにしている。

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 テレビなどへの出演について、「柔道の方は大丈夫かと批判する人もいる」と語ったうえで、こう続けている。

「今がチャンス」メディアに出続けるウルフ

「今がチャンス。ウルフ・アロンを知ってもらうことで、柔道ファンが増えれば」

 東京五輪の柔道日本代表選手たちの記者会見でも、柔道をもっと広めたいという趣旨の話をしていたように、かねてから柔道を普及させたいという意思の強い選手だ。金メダリストとなり、メディアに出ることはその機会になると考えていることが分かる。

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 先にも触れたように、五輪競技の多くは、オリンピックで注目を集める一方で、ふだんはそこまで見てもらえない現状がある。オリンピックの活躍を契機にもっと競技を知ってほしい、と考えるのはウルフだけではない。自身が打ち込んできた競技だからこそ、愛着もある。

 何年もかけて目指してきた大舞台を終えて練習から距離を置き、ひと息入れたいと考えるのも自然だし、活躍したことで注目される機会を得て、そこで競技の認知度向上につなげたいと考えるのも理解するのは難しくない。たいていの選手は、次の大きな目標から逆算してどう過ごしていけばいいか計算できるし、どのタイミングで本格的に練習を再開すればいいかも考えつつ、活動してもいる。

 自身の競技生活を把握したうえで、一度ついた熱をどう今後につなげていくか、それを意識する姿には、トップアスリートとしての自覚がある。

文=松原孝臣

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