ア・リーグの地区シリーズ初戦が行われた10月7日、アストロズのカルロス・コレア内野手(27)が、MLBネットワークのインタビューで今季のリーグMVP候補について語った。

「僕は中南米出身で、ゲレロが好きだし、彼は僕にとって素晴らしい友達だけど、ショウヘイ・オオタニがMVPに値するよ」

名物記者の確信「答えはショウヘイ・オオタニだ」

 日米メディアの間でMVP獲得レースの報道が過熱する中、最有力は投打の二刀流で活躍したエンゼルス大谷翔平投手(27)。メジャー4年目で初のMVP受賞はほぼ当確とみられている。今季の本塁打王に輝いたブルージェイズのゲレロJr.(22)やロイヤルズのペレス(31)らが候補になっているが、ライバル球団の主力選手コレアから見ても、大本命は大谷だった。

「エリート打者が最高の成績を残して、首位打者や本塁打王、打点王になることは可能だ。だが、シーズンで150三振を奪って、45本塁打以上打つことを同時に成し遂げるなんて、メジャーの選手で誰も出来ない。ショウヘイ・オオタニが今季のMVPだと思う理由だよ」

シーズン最終戦でもホームランを放った大谷

 アストロズはエンゼルスと同リーグ同地区で対戦が多い。コレアは、投打での対戦に加えて外野の守備にもついた大谷を間近で目の当たりにしている。今季、打率2割7分9厘、26本塁打、92打点で野手でトップレベルの同選手にとって、大谷のパフォーマンスは他の候補者を圧倒するものだった。

 シーズン終了後、主要メディアも大谷のMVP推しを続々と伝えている。米スポーツ専門局ESPNの名物記者ジェフ・パッサン氏は「最後の14日間で、ア・リーグのMVPが決まったか」との問いに対し、「そんな14日間は必要なかった。(MVPは誰かの)答えはショウヘイ・オオタニだ」と断言。投打での成績を明記し、「彼にとって歴史的なシーズンの最終的な数字は素晴らしいものだった」と絶賛した。

米「ベースボール・ダイジェスト」の選考結果は?

 アストロズのジャスティン・バーランダー投手(38)の弟でFOXスポーツのアナリスト、ベン・バーランダー氏は大谷のMVP獲得をシーズン前から予想。現在も自身のポッドキャストなどで大谷推しを発信し続けている。また、米経済誌フォーブスの記者も独自のデータ分析で、各候補者の中から大谷1位を割り出した。

大谷の二刀流を絶賛し「MVPに値する」と述べたアストロズのコレアと楽しげな大谷

 全米野球記者協会による投票の結果は例年、ワールドシリーズ終了後の11月中旬に発表される。その“本番”に先立ち、米野球専門誌「ベースボール・ダイジェスト」は10月7日、1969年から毎年行っているオリジナルの選考で大谷を野手部門の最優秀選手に選出。また、MLB公式サイトでは8月と9月に専門家による投票を行い、大谷が圧倒的多数の1位票を獲得した。これまでの米メディアの報道を考慮すれば、フィリーズの主砲ハーパー、ナショナルズのソト、パドレスのタティス Jr.ら今季のナ・リーグMVPが予想しにくい一方で、ア・リーグは大谷が独走と言っても過言ではない状況だ。

マドン監督「(大谷以外の候補は)みんな2位、3位、4位」

 シーズン開幕からわずか1カ月半の5月中旬、大谷のMVP獲得への期待は既に高まっていた。17日、本拠地エンゼルスタジアムでのインディアンス戦でリーグ単独トップとなる13号本塁打を放つと、試合後のヒーローインタビューに呼ばれた。スタンドに残っていたファンから響き渡る「MVP!MVP!」の声。本塁打を量産した6月になると、本拠地では各打席でMVPコールを浴びた。シーズン終盤、マウンドで腕を振る投手大谷に向けても、ファンからMVPを期待する大歓声が上がった。

 強力な援護射撃もあった。エンゼルスのマドン監督は、大谷が45号本塁打を放った9月21日のアストロズ戦後、MVP獲得レースについて言及し、「(大谷以外の候補選手は)みんな2位、3位、4位だね」と目を細めた。さらに9月29日のレンジャーズ戦。9回に放った打球速度109 マイル (約175キロ)の安打は二塁手のグラブをはじき、右前へ抜けた。同監督は「MVPだと思わせる打球。相手のグラブを壊すような打球を放てば、それはMVPだ」と表現。球界屈指の知将にとっても、打者大谷のプレーは驚異的だった。

「プレーオフに進出することがMVP選考に影響するか?」

 大谷、ゲレロJr.、ペレスともにプレーオフには進出できなかった。特にエンゼルスは77勝85敗の借金8で西地区4位、ペレスの所属するロイヤルズは74勝88敗の借金14で中地区4位に沈んだ。チームの勝利への貢献度も選手の能力を判断する指標となり、「プレーオフに進出することがMVP選考に影響するか」との声もあった。だが、マドン監督は当時レンジャーズに所属していた03年のアレックス・ロドリゲスを例に、問題ないことを強調。同選手は、チームが71勝91敗の借金20で西地区最下位に終わりながら、打率2割9分8厘、本塁打トップの47本、118打点で自身初のMVPに選出された。

7月の月間MVPに輝いた際の嬉しそうな大谷。後ろにはマドン監督

 本塁打王こそ逃したが、7月中旬の球宴前に33本塁打は米国以外の出身の外国人選手では、カブスなどで活躍した通算609本塁打のサミー・ソーサと並んで最多タイ。するとシーズン後半はあからさまに四球や敬遠が激増した。相手チーム全体の対策として勝負を避ける――。メジャーの強打者たちと並んでもトップレベルだという勲章を得た。投手ではメジャーで初の2ケタ勝利には届かなかったが、9勝2敗、防御率3.18でチームの投手陣でNo.1の安定感を誇った。メディアだけでなく、同僚、監督、さらに相手選手や敵将からも投打でのパフォーマンスを称賛された。大きな故障もなく、二刀流で駆け抜けたシーズン。その先に、最高の栄誉が待っている。

文=斎藤庸裕

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