今季の第1次戦力外通告期間は10月4日から25日、第2次はクライマックスシリーズの全日程終了後に設定されている。

 この期間に戦力外通告するのは、10月11日にドラフト会議が設定されたことと関係がある。プロ野球の支配下選手は「70人」と決められている。新しい選手の入団が決まればその分、在籍する選手を退団させるか育成登録にしなければならない。そのために戦力外通告がこの期間に設定されているのだ。

 主力級だった選手は、戦力外通告期間の前に自ら引退発表することが多いが、これは功績が大きい選手のプライドに配慮してのものだ。

一軍で出場、フェニックスLに選出されながら戦力外も

 ただ今季は昨年に続いて新型コロナ禍でペナントレースの日程がずれ込んでいるために、中日の武田健吾のように一軍の試合に出場しているのに戦力外通告を受ける選手も出てきている。

 また、宮崎で例年行われている教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」も行われている。これも従来はシーズン終了後の開催だが、昨年に続きペナントレースと並行して行われている。フェニックス・リーグは本来「来季以降、有望な選手を実戦で鍛える」ために行うはずだが、阪神の奥山皓太のようにフェニックス・リーグのメンバーに選出されながら、戦力外通告を告げられる選手も出てきた。

 各球団ではチームの陣容を考える「編成」と、選手を強化する「育成」とは別の部署になっている。当然連絡はとってはいるが、試合に出ている選手に戦力外通告が行われるのは、「編成」と「育成」の方針に相違があったと考えられる。

今年のトライアウトは例年より重要性アップ?

 戦力外通告を受けた選手の中には、そのまま引退する選手、育成契約に切り替えて再度挑戦する選手、現役続行を目指して活動する選手がいる。

 2019年までは、戦力外通告を受ける選手の中には事前に他球団への移籍が内定している選手がいた。そういう選手は終盤の二軍戦に出て他球団の関係者の前でプレーして、まだ活躍できることを証明することもあった。12球団合同トライアウトはそうした交渉ができなかった選手の「最後のチャンス」になることが多かったが、今年はペナントレースが行われている最中のため、首脳陣がこうした選手を十分にチェックできなかったと思われる。

 そのため現役続行を望む選手の中で他球団への「内定者」は例年より少ないと言われ、12月8日に予定されている12球団合同トライアウトの重要性は例年より高まると思われる。

©NanaeSuzuki

 こうしてみるとNPBは厳しい世界のようだが、MLBでは試合に出ている選手がDFA(日本でいう戦力外)になって退団するのは日常茶飯事だ。選手はそうした突然の“人事異動”にもめげず出場機会を求めてトライアルを続ける。こうした人材の「流動性」の高さがMLBの活力を高めている側面がある。

 NPBも次第にドラスティックな人事が行われるようになっているが、選手もこれをポジティブに受け止めるべきだろう。

10月11日から10月17日の両リーグ、投打の好成績選手

 〇パ・リーグ
 打撃 ※RCは打撃の総合指標
 栗原陵矢(ソ)15打6安1本4点 率.400 RC6.10
 デスパイネ(ソ)13打5安1本2点 率.385 RC5.92
 中村剛也(西)12打5安3本6点 率.417 RC5.61
 杉本裕太郎(オ)22打8安2本5点 率.364 RC5.44
 荻野貴司(ロ)19打7安1盗 率.368 RC5.37

 ソフトバンクはバレンティンが退団し、来季の外国人選手の編成が始まっているが、ここへ来てデスパイネが張り切っている。また栗原も好調で、首位争いを繰り広げるオリックス、ロッテにとっては厄介な相手になっている。

 西武の中村剛也はリーグトップの3本塁打6打点。今季の通算打率は.284で9位、本塁打も18本で9位、73打点は5位と38歳にして立派な成績を残している。来季に向けても期待がかかる主軸だ。

 オリックスは今週1勝3敗2分と苦しんだ。打線も湿っているが杉本が孤軍奮闘している。

 ロッテは切り込み隊長の荻野貴が相変わらず好調で、盗塁は日本ハムの西川遥輝が2盗塁が最多だった。

 投手 PRはリーグ防御率による総合指標
 東浜巨(ソ)1登1勝 7回 率0.00 PR2.49
 マルティネス(ソ)1登 7回 率0.00 PR2.49
 松本航(西)1登1勝 7回 率0.00 PR2.49
 岸孝之(楽)1登1勝 7回 率0.00 PR2.49
 バーヘイゲン(日)1登 7回 率0.00 PR2.49

 ソフトバンクの東浜、マルティネス、西武の松本、楽天の岸、日本ハムのバーヘイゲンがそろって7回零封。ただしマルティネス、バーヘイゲンは勝ち星がつかなかった。前週プロ入り初完封を記録した西武の松本は今週も好調だった。

 救援ではソフトバンクの板東湧梧、楽天の酒居知史、オリックスのヒギンス、日本ハムの堀瑞輝が2ホールドを挙げた。

村上、山田がマークされる中で活躍するサンタナ

 〇セ・リーグ
 打撃
 鈴木誠也(広)19打9安5本7点 率.474 RC9.82
 サンタナ(ヤ)20打10安4本6点 率.500 RC9.61
 宮崎敏郎(De)16打10安3点 率.625 RC5.77
 近本光司(神)18打10安2点1盗 率.556 RC5.34
 宇草孔基(広)21打7安2本2点1盗 率.333 RC5.28

 広島の鈴木誠也が本塁打、打点リーグトップの大当たり。通算打率でも.325で再びトップに立った。打点はヤクルトの山田哲人がトップタイの7打点だった。なお広島では7月2日に二軍に落ちて10月5日に再登録された宇草が1番中堅で4試合連続安打、このところ2試合連続本塁打と来季へ向けて大きくアピールしている。

 ヤクルトではサンタナが活躍。村上宗隆、山田哲人がマークされる打線でオスナとともに手ごわい存在になっている。

©HidekiSugiyama

 投手
 山口俊(巨)1登 7回 率0.00 PR2.57
 高橋遥人(神)1登 7回 率0.00 PR2.57
 九里亜蓮(広)1登1勝 7回 率0.00 PR2.57
 柳裕也(中)1登1勝 8回 率1.13 PR1.94
 青柳晃洋(神)1登1勝 7回 率1.29 PR1.57

 巨人の山口、阪神の高橋、広島の九里が7回零封。しかし勝ち星が付いたのは九里だけ。九里は12勝目、中日の柳は8回自責点1で11勝目、阪神の青柳は7回自責点1で12勝目。11勝している巨人の高橋優貴ともどもハーラーダービーも激しさを増している。

 救援は広島の栗林良吏が週間4セーブを挙げた。ただし自責点2は気がかりだ。

★今週の《ピカいち》3年目ドラ1清水昇の日本新48ホールド★

 ヤクルトの3年目清水昇は10月17日のDeNA戦で1回を零封し、今季48ホールドを記録。2010年に浅尾拓也が記録した47ホールドを抜いてNPB記録を更新した。

<シーズンホールド数5傑>※清水は10月18日時点
 1.清水昇(ヤ)2021年 48H/69試合
 2.浅尾拓也(中)2010年 47H/72試合
 3.藤川球児(神)2005年 46H/80試合
 3.久保田智之(神)2007年 46H/90試合
 5.浅尾拓也(中)2011年 45H/79試合
 5.増井浩俊(日)2012年 45H/73試合

 浅尾拓也は日本福祉大から大学・社会人ドラフト3巡目で中日に入団し、2年目から救援投手として活躍。4年目の2010年にNPB記録の47ホールドをマークし、翌2011年も45ホールドを記録した。中日の連覇に貢献し、2011年にはMVPに選ばれた。これまでクローザーがMVPに選ばれることはあったが、中継ぎ投手(セットアッパー)が選ばれたのは史上初。セットアッパーのステイタスを向上させたと言われる。

 清水はその記録を11年ぶりに抜いた。

©BFP AFLO

 國學院大學から2018年ドラフト1位でヤクルトに入団。1年目は当初、先発で起用されたものの途中から救援に転向。2年目の2020年に30ホールドを記録して「最優秀中継ぎ」のタイトルを獲得した。清水はこの時点で未勝利。未勝利でのタイトルホルダーは史上初だった。

浅尾らの時代よりも“分業が進んだ”証明とは

 NPBでは「最優秀中継ぎ」のタイトルは、ホールドではなく「ホールド+救援勝利」のホールドポイントを表彰対象としている。2020年の清水はたまたま「30ホールド+0勝=30ホールドポイント」でタイトルを獲得したが、歴代のホールドポイント5傑はこうなる。

 1.浅尾拓也(中)2010年 59(47H+12勝)/72試合
 2.久保田智之(神)2007年 55(46H+9勝)/90試合
 3.藤川球児(神)2005年 53(46H+7勝)/80試合
 4.浅尾拓也(中)2011年 52(45H+7勝)/79試合
 5.清水昇(ヤ)2021年 51(48H+3勝)/69試合

 2010年の浅尾はNPB記録を更新する47ホールドに加え、リーグ6位タイの12勝を挙げる空前の活躍だった。2010年の浅尾は72試合で80.1回を投げた。イニングまたぎも多く勝利に絡むことが多かったのだ。

©HidekiSugiyama

 今季の清水は69試合で64.2回。救援勝利は3勝。イニングまたぎは5月21日のDeNA戦だけ。浅尾の時代よりもさらに分業が進んで、現代の一線級のセットアッパーはほぼ「1イニング限定」になっている。

 清水の2020年の防御率は3.54、2021年は2.51、47ホールドを記録した2010年の浅尾拓也が1.68、45ホールドの2011年は0.41だったのと比べると見劣りする。

 しかし清水は今季、自責点1でホールドを記録した試合が6ある。もちろん無失点で切り抜けるのがベストなのは間違いないが、清水は失点しても大崩れせず、リードを維持したままクローザーにつなぐことができる投手だと言える。より実戦的で、ピンチを切り抜ける力のある投手だと言えよう。

浅尾、宮西に次ぐ“3人目の大記録”の可能性が

 ただ清水はこの2年で121試合に登板し78ホールドを記録している。過去に3年連続で30ホールド以上を記録したのは中日の浅尾拓也(2009年33H、2010年47H、2011年45H)、日本ハムの宮西尚生(2012年39H、2013年30H、2014年41H)の2人だけだ。そして4年連続は過去にいない。

©HidekiSugiyama

 救援投手、とりわけセットアッパーはほぼ全試合ベンチ入りして、投げない日もブルペンで肩を作ることが多い。その負担は数字以上に大きいのだ。

 清水はヤクルトが優勝するとすれば――その立役者の一人になるが、来年以降も「勝利の方程式」を担うことはできるだろうか?

達成記録と記録予報

<記録予報>
 ・1000試合
 あと14 明石健志(ソ)これまで512人
 ・250本塁打
 あと2 山田哲人(ヤ)これまで65人
 ・200本塁打
 あと4 内川聖一(ヤ) これまで111人
 あと4 レアード(ロ) これまで111人
 ・100本塁打
 あと6 森友哉(西) これまで305人
 ・350二塁打
 あと7 中島宏之(巨) これまで46人
 ・250盗塁
 あと1 大島洋平(中) これまで46人
 ・300犠打
 あと4 菊池涼介(広) これまで7人
 ・250犠打
 あと6 中島卓也(日) これまで20人
 ・100死球
 あと5 鈴木大地(楽) これまで22人
 ・1500三振
 あと5 松田宣浩(ソ) これまで13人
 ・150勝
 あと7 和田毅(ソ)これまで49人
 ・100勝
 あと5 則本昂大(楽)これまで140人
 ・150セーブ
 あと6 増田達至(西)これまで17人
 ・2000投球回
 あと5 内海哲也(西)これまで91人

文=広尾晃

photograph by Kyodo News