シーズンの最終盤を戦いながら、どのチームでも来季へ向けた準備も進められている。11日にドラフト会議が行われ、すでに各球団は指名した選手に指名のあいさつを行った。

 広島は今年、本指名で7人の選手、育成で4人の選手を指名した。指名選手は以下の通り。

1位 黒原拓未投手(関学大)
2位 森翔平投手(三菱重工West)
3位 中村健人外野手(トヨタ)
4位 田村俊介外野手(愛工大名電高)
5位 松本竜也投手(Honda鈴鹿)
6位 末包(すえかね)昇大外野手(大阪ガス)
7位 髙木翔斗捕手(県岐阜商高)
育成1位 新家颯投手(田辺高)
育成2位 前川誠太内野手(敦賀気比高)
育成3位 中村来生投手(高岡第一高)
育成4位 坂田怜投手(中部学院大)

 上位1位、2位はいずれも即戦力左腕だった。

ドラ1黒原は勝ちパターンを形成できるか

 結果的に3人、指名したドラフト1位選手の中で、広島と運命の糸で結ばれていたのは黒原だった。最速151キロの関西大学野球ナンバー1左腕といわれる本格派。19年の森下暢仁、20年の栗林良吏に続き、今年も即戦力投手の1位指名となった。

 先発か、中継ぎか、適性は春季キャンプに入ってから見定めることになるようだが、鞘師智也担当スカウトは中継ぎからの起用を推す。

「中継ぎの方が入りやすいかなと、個人的には思う。もちろん、先発する体力はある。馬力あるし、よく練習もするから」

 うまくいけば、2年続けて固定できていない、勝ちパターンの1ピースとなるかもしれない。

 2位指名も、同じ鞘師スカウトが担当する森。キレのあるカットボールを武器とする左腕で、こちらは先発タイプとみられている。

 かつて、広島は左腕不足と言われていた。ただ、近年のドラフト戦略で戦力バランスは変わりつつある。今季は先発ローテーションに、床田寛樹、高橋昂也、玉村昇悟の3人が名を連ね、中継ぎでも森浦大輔や塹江敦哉が勝ちパターンを経験するなど、左腕の台頭が目立つ。それは広島のドラフト戦略による、狙いのひとつだ。年齢的にもまだ若い左投手が多い中で、さらに即戦力左腕を2枚加えた。

 佐々岡真司監督は「より一層、左を強化したいという部分もあった。競争になると思いますけど、みんなが負けない気持ちになれば、チームの中でもレベルアップするんじゃないかなと思います」と左投手の底上げにつながる指名を歓迎している。

 野手では、社会人の中村と末包と、“長打力のある右打者”を2選手獲得した。

 今季、広島のスタメンは左打者が多く占め、補強ポイントのひとつだった。ただ、右打者を求めるチーム事情は、広島だけではないだろう。今年のドラフト会議前日の10日のプロ野球6試合でスタメン出場した野手の割合は右打ち49人に対し、左打ち53人だった。相手の先発が左右のどちらかで多少の変動があるとはいえ、もはや右投げ右打ちが主流だった時代は過ぎ去った。昨年のセ・パ打撃十傑は両リーグともに7人が左打者で、ともに上位6位までを左打者が占めた。

 左打者が増えている時代の流れもあるだろう。例年、スカウト網にかかる好素材の野手も左打ちが多い傾向にあるという。

 上位2位まで即戦力左腕を指名した背景にも、そんな理由がある。左打者が多ければ、その分左投手の需要も増す。右打者と左打者の割合のように、右投手、左投手の割合も変わっていくのかもしれない。

待たれるのは新世代のさらなる台頭

「育成の広島」を支えているのは、スカウト力だ。

 過去10年の主な指名選手は以下の通り。

11年 1位野村祐輔、2位菊池涼介
12年 2位鈴木誠也、3位上本崇司
13年 1位大瀬良大地、2位九里亜蓮、3位田中広輔
14年 1位野間峻祥、2位薮田和樹、3位塹江敦哉
15年 1位岡田明丈、5位西川龍馬
16年 2位高橋昂也、3位床田寛樹、4位坂倉将吾
17年 3位ケムナ誠
18年 1位小園海斗、2位島内颯太郎、3位林晃汰
19年 1位森下暢仁、2位宇草孔基、5位石原貴規、6位玉村昇悟
20年 1位栗林良吏、2位森浦大輔

 今年一軍でプレーした選手が各年にいることからも、安定した補強ぶりが分かる。今季中軸を打った西川は5位、坂倉は4位。高卒2年目で早期一軍ローテに定着した玉村も6位だった。下位指名であっても、早期に戦力となる可能性も十分ある。

 広島は現有戦力を年齢、ポジションで分け、若手の成長曲線をイメージしながら補強することで、自然な世代交代を図ってきた。その中で、チームの軸となる世代を探る。3連覇時のチームを例に出せば、タナキクマルと言われた、同学年の田中広輔、菊池涼介、丸佳浩(巨人)を中心とした世代だ。ほかにも野村祐輔、安部友裕。1つ上には会沢翼、1つ下には中田廉、一岡竜司、2つ下には大瀬良大地や九里亜蓮、今村猛がいた。ベテランと若手とともに、彼らの世代が力をつけたことでチーム力を一気に押し上げたといえる。

 今年のドラフトで大学・社会人5選手を本指名したのも、新たなチームの核となる世代に期待してのことだろう。黒原、松本は中村奨成と同学年。1つ上には坂倉、高橋、森浦がおり、2つ上には森下、宇草、そしてドラフト指名の森と中村がいる。1つ下にも今年一軍のレギュラーをつかんだ小園や林らがいる。ほかにも栗林や玉村と、年齢が近い選手が一軍で経験を積んでいることも、近い未来の中心となる世代づくりの好材料といえる。

即戦力ルーキーがもたらす競争意識

 終わったばかりのドラフト会議を採点することはできない。今年と同じようにドラフト1位指名で2度重複した16年ドラフトも、5年後の今では成功といえる。

 新人選手がチームに競争意識をもたらす効果にも期待できる。今年ドラフトで指名した大学・社会人5選手は、アクシデントさえなければ来春一軍キャンプからスタートすることになるだろう。大学・社会人の新人5選手の一軍キャンプスタートとなれば、25年ぶりに優勝を成し遂げた16年春以来となる。

 ドラフト会議終了後、佐々岡監督は言った。「若い選手が多い中、また若い選手が入ってくることによって競争意識が高まる。同じ年代の選手、同じポジションの選手は負けられないと思っているだろう」。新人選手の加入は、チームに「+11」以上の効果をもたらすはずだ。

文=前原淳

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