本業と日本での野球観戦三昧ですっかり間があいてしまったが――日本時間19日の朝、大谷翔平がア・リーグのMVPを満票で受賞した。

 ここまで専門誌「ベースボール・アメリカ」の年間最優秀選手、「ベースボール・ダイジェスト」の野手部門最優秀選手、コミッショナー特別表彰、スポーツメディア「スポーティング・ニューズ」の年間最優秀選手「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」、選手間投票による年間最優秀選手「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」、ア・リーグ最優秀野手、米メディアAP通信の年間最優秀選手、そしてシルバースラッガー賞をすでに受賞していたので、これで「9冠」だ。

©Nanae Suzuki

 今年の春から筆者はスポーツ・メモラビリアに関して書かせて頂いているが、大谷翔平の前例のない活躍は野球界だけではなく、付随するスポーツ・メモラビリアの業界でも驚異的な1年となったという事実を、記録として記しておきたい。

1)トレーディングカード

 過去にこちらの記事にて取り扱ったカードの続報となる。

 大谷の活躍によって米国鑑定会社の最高グレードPSA10が(少数ではあるが)流通していることを確認したので、こちらでの比較とする。改めて同カードは2018年の大谷のルーキーカードとしては最も人気があるもの。同じカードは499枚存在する中で、PSA10の鑑定を受けたものは世界で45枚存在している。

 このカードは年初めに約10万円で取引されていたものが、大谷の活躍によって6月に30万円、そして直近の9月には80万円強、とあっという間に高騰。わずか9カ月で8倍となった計算だ。

大谷翔平・Bowman Chrome 直筆サインカード PSA:10 Aki 米国大手オークションeBayより :サンプル数:6

 また、MLBルーキーカード以外でも、大谷の2013年NPBでのルーキーカードも今年の開幕以降注目を浴びている。この春には1000円以下で購入できていたカードが夏以降、数万円で取引される活況となった。趣味・投資・転売層などの注目を一手に集めた結果とも言えるが、需要と供給のバランスが一方に寄ることで価格の高騰に繋がったようだ。 

2013年の日本ハムルーキー時代のカードにも注目が集まる Aki

2)大谷翔平・実使用ユニフォーム

 今年、大谷が着用したユニフォームはMLBオークションで今のところ4着の販売が確認されている。

 落札価格は2万2600ドル〜12万1800ドル(約255万円〜約1376万円)、特に7月2日、《大谷劇場》の試合で着用していたユニフォームはMLBオークションのレコードを大幅に更新する落札価格となった。2本のホームラン、盗塁、そして激走サヨナラホームインでガッツポーズ、と今年の大谷を凝縮したような試合となった。

 コレクターとしては少し狙ってみようかな、という思いも一瞬めぐったが……あっという間に手の届かないところへ行ってしまった。 

7月2日大谷劇場着用ユニフォーム12万1800ドル=約1376万円 MLB Auction

3)大谷翔平・オールスター支給ユニフォーム

 大谷に支給されたユニフォームが先ほどのMLBオークション記録を更に更新する13万210ドル(=約1470万円)と驚愕の数字で落札された。

 なお、こちらのユニフォームは日本の方が落札されたようで、先月、コロナで落ち込む街の活性化を目的として、チャリティとして商業施設に展示されていたようだ。

 保有したコレクションをチャリティとして貸出し、多くの方に見てもらうことで元気を届ける。筆者自身も改めてスポーツ・メモラビリアの意義を考えさせられたし、個人的にもいつか機会があれば、大谷やイチローのメモラビリアの展示会をやってみたいという思いも湧いてきている(こちらをご覧いただいた商業施設の方の連絡をお待ちしています。笑)。

大谷支給用オールスターユニフォーム 13万210ドル=約1470万円 MLB Auction

4)大谷翔平・実使用バット

 今年、試合で折れてしまったバットが2本、MLBオークションに出品された。結果1万4700ドル〜1万7200ドル(約166万円〜約195万円)で落札され、この価格は2018年のルーキーイヤーのバットと比べても数倍である。改めて2021年の大谷の人気・注目度の高さが表れる結果となった。

7月2日、大谷劇場の試合で折れたバット。1万7200ドル=約195万円 MLB Auction

 選手を選ばなければ折れた実使用バットは100ドル(約1万1300円)ぐらいの金額で球場にて購入できることもあるので、このバットなら170本購入できる計算だ。 

5)大谷翔平・実使用球

 今年は例年以上に多くの出品がなされている大谷関連の実使用球。出場機会に比例し、そして大谷人気に乗じて球場の回収員が躍起になって大谷関連のボールを回収していたという話もあるほどだ。

 大谷関連の実使用球では……。

 実際に三振を取ったボール>実際にヒットを打ったボール>実際に投球したボール(ファールや地面に付いて交換されたボール)>打席で使われたボール

 この順でオークションにおいて高値となった。

 そんな実使用球について――4つの興味深いポイントがある。

i)大谷翔平・奪三振球
 今年、大谷が奪った三振156個のうち約10球がこれまでにオークションに出品され、中央値が約30万円となった。今年最初の奪三振球はプレミアムが付く形で7750ドル(=約88万円)になるなど、同じ奪三振球とは言っても、その試合や場面によっても大きく価値が変動するのも実使用球の面白いところだ。

 大谷が今シーズン奪った全ての奪三振球が回収され、出品されるというものではない。公式球への直筆サインボールと比べても実使用球は供給量に限りがあるものなので、2021年のメモラビリアとしては最高のものといえるかもしれない。筆者も今年の大谷の活躍の記念を何かの形で残したく、156三振のうちのひとつを選択した。大切に飾っていきたい。

156奪三振のうちの1個:大谷翔平奪三振球 ©Aki ※写真を差し替えました

ii)大谷翔平・ヒット球
 2021年、大谷がヒットを打った数は138本。そのうち約15球がこれまで出品された。シングルヒット球約18万円、ツーベースヒット球約23万円、スリーベースヒット球約28万円とヒットの種類によっても価格差が出ている(45万円近くで落札されたヒット球もあったようだ)。 

8月3日、大谷翔平が打ったツーベースヒット球:2010ドル=約22万円 ©MLB Auction

iii)大谷翔平・投球ボール
 奪三振球以外も投球ボールは概ね高値での落札となった。大谷が実際に触れて投げているという点がやはり評価されるのだろう。使用場面、そして直球であれば球速などによっても差が出ているようだ。

8月25日に投球・ゴロアウトに打ち取ったボール:930ドル=約10万円 ©MLB Auction

iv)大谷翔平が打席に立ったボール
 打席に立ったボールでも、見逃しただけのボールとファールになってバットに当てたボールによって変わってくる。確かにどちらが欲しいかと言われれば、見送ったボールよりはバットに当てたボールの方になるだろう。

8月26日、打席でファールにしたボール:450ドル=約5万円 ©MLB Auction

 このようにひとつのボールであっても使用された試合、使用された場面によって大きく価値が変動する。それが実使用メモラビリアの奥深さでもある。

大谷が関わっていない場面のボールでも

 例えば、前述した約88万円で落札された実使用球は、大谷の今季メジャー最初の奪三振球で、加えてその日はリアル二刀流としてのデビュー戦でもあった。この試合の使用球は大谷が関わっていない場面でのボールであっても、高値で取引された。その試合で使われたものであることが大事、というコレクターも存在するからこその現象だ。

 筆者もイチローの3000本安打や現役引退試合の実使用球を入手しているが、イチローが関わった場面ではないボールにも関わらず、かなり高値での入手となったのを覚えている。その日・その瞬間の球場の空気に触れたメモラビリア。それを目的としたコレクターが筆者以外にも一定数いるということだろう。

 他にも、大谷が着用したキャップ、ロージンバッグ、ロッカールームに掲示されるネームプレート、そして日々のベンチに貼られるラインナップカードなど、大谷が絡むメモラビリアは軒並み高額での取引されることとなった。

ベンチに貼られるラインアップカードもメモラビリアの1つだ ©Nanae Suzuki

 長い間コレクターを続けている方の中には、感覚が麻痺してきたように感じている人も多いだろう。旧来のファン層、そして今年からファンになった層、そして投資層に至るまで多くの参入があった需要と供給のバランスの結果、と言えばそうなのだが、ベーブ・ルース以来の熱狂の結果、と考えれば妥当なのかもしれない。

「その瞬間・その空気」を求めて

 それぐらい今年の大谷の活躍は、野球界のみならず、コロナ禍で沈む日本中、そしてアメリカに元気を与えたことは間違いのない事実である。

 大谷スポーツ・メモラビリアの観点で、来年の予想は今の時点では難しいが、リアル二刀流としてこれだけ数々の賞を受賞している2021年の価値が色褪せることはないだろう。2018年のルーキーイヤー、そして今年のアイテムの動向に関しては来年以降も追っていきたいと思う。

©Nanae Suzuki

 最後に――大谷にとって今年の大谷は、来年のライバルとなる。過去の自分超えが1つの大目標という難しい状況だ。ただそんな状況をも笑顔で超えていく姿が今から目に浮かぶし、来年も楽しく野球をプレーして欲しいと願っている。来年こそは日本から気軽にメジャー・リーグを観戦に行ける日常、生で大谷の歴史的瞬間を目撃できる日常に戻っていることを心から願っている。そして筆者もメジャーの観戦で経済に貢献したい。「その瞬間・その空気」を求めて。

文=Aki

photograph by Nanae Suzuki