大谷さん、写真で見ても絵になるなあ。

 編集という仕事柄、写真探しをすることが多いのだが……2021年、最もフォトエージェンシーで検索したワードは「Shohei Ohtani」だったのは間違いない。

 ご存じの通り、大谷翔平は日本時間11月19日、ア・リーグMVPに輝いた。投手として今季は「ラストチャンス」の気持ちで臨んだ、打者としては「OPS」という数値を重視した――など、数度にわたるNumberのインタビューに掲載されている大谷の言葉には「ここまで野球を深く考えているのか!」と驚かされるばかりだった。

 そんな真摯な姿勢、内面の奥深さこそ最大の魅力なんだが、大谷の一挙手一投足は《スゴい+本人も周囲も笑顔》のオンパレードである。大谷自身だけでなく、対戦相手の超一流プレーヤーも審判も大谷に向かってニコニコしている写真を何度見たことか(本人もたまにベンチで楽しそうなことしてるし)。それが2020年代のスーパースター像なんだろうな。写真検索をしながら、ずーっと思っていた。

©Nanae Suzuki

 もちろんそれは、大谷を応援するファンもしかりだろう。日本語や英語のメッセージを掲げたり、ナゾの“大谷顔だらけTシャツ”を着たり。とにかく、おのおのが心から楽しんでいる姿を見て、こちらがホッコリとする。

「応援ボードだけでも発見があるかもしれませんね」

「もしかしたらですけど、ファンが掲げている応援ボードを見てみるだけでも、何か面白い発見があるかもしれませんね」

©Nanae Suzuki

 向かい側に座ってる若き編集者から、ほぼ雑談レベルでの提案が来た。お、なかなか楽しそうじゃないかと思って「んじゃ、やってみるねー」と軽い気持ちで着手した。

 で、よく利用するエージェンシーの1つ、Getty Imagesで「Shohei Ohtani」と検索してみると……11月19日時点の全画像数は「22927枚」である。いまさら気づいたけど、こ、こんな膨大な中から探すの?

 なおかつNumberのフォトグラファーがこの4年間をかけて、独自に撮影しに行った試合があることにも途中で気づいた。トータルすると25000枚くらい大谷さん(とエンゼルス関連)の写真を見続けることになるのか……ええい、ままよ。その中から厳選した、大谷応援ボード視点(?)で快進撃を振り返ってみる。

1)初期スタイル/「大谷=BIG VALLEY」?

 2017年にエンゼルス入団が決まり、翌2018年にメジャー1年目の舞台に臨んだ大谷。入団当初は新参ということもあってか、ボードのメッセージは「Welcome」「大谷翔平選手がんばってください」という分かりやすいものが多かった。

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 また、日本ハム時代のチームカラーである青と黄色のシルエットに「大谷翔平」の文字を掲げる人もいた。

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 ボードの素材を見ると、段ボールや画用紙が多い。後述する2021年の応援ボードと比べるとシンプルではあるのだが、応援初期バージョンとしてファンも模索している段階だったのかもしれない。

 個人的に気になったのが「神ってる!! 大谷 BIG VALLEY」である。

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「大=BIG」、「谷=VALLEY」、これぞ、ザ・直訳。それにプラスして「神ってる」って確か、同世代だけど鈴木誠也を評した新語じゃなかったっけ……ただまあメジャー1年目序盤戦で大谷が残したインパクトは、今年と同じくまさに「神」級だったなと思い出した。

 シーズンが進んでも大谷の打棒は止まらなかったわけだが、応援ボードにも徐々に創意工夫がなされていった。目に留まったのはシーズン終盤の9月の1枚。ファンが持っていたのは「Sho time 最高!!」のファンシーな文字とともに、ユニフォーム姿の大谷のイラストが。

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 大きさこそ他のボードに比べて控えめなものの、大谷の特徴をとらえている上にキュートで、描いたファンの愛情の深さを感じ取るばかりだ。

 2年目の2019年、大谷は打者専念のシーズンでバッティングを磨き上げたが、応援ボードも呼応するかのように徐々に広がりを見せていた。「ENJOY 翔平」と書かれたうちわ、浴衣姿のファンが作った写真入り「OHTANI SAN」などがその代表例と言えるだろう。

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2)無観客の2020年を経て、2021年「3つの進化」

 2020年、大谷の写真こそあるが、ファンの写真は皆無だった。それもそのはず、60試合制で行われたMLBはレギュラーシーズンをすべて無観客試合で実施したからだ。昨年、大谷の写真を探す際に一抹の寂しさを感じていたが……眺め直してみても、やっぱりスポーツは楽しんでいる観客がいてこそのものだなと期せずして再確認した。

 その溜まったうっぷんを晴らすかのように、2021年の大谷(と応援ボード)は大きく花開いた。グラウンド上での活躍はもはや説明不要かと思うが、応援ボードも明らかにバリエーションが増加しているのだ。

 特に感じたことが3点ある。

 まず目についたのは、デザイン力のアップだ。

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 オシャレなフォントを使ったり、大谷翔平の「大」をエンゼルスのチームロゴ(Aの文字+天使のわっかを付け加えたもの)に掛け合わせてみたり。きっと多くの人が「よーし自分も応援ボード作ってみるか。せっかくなら見栄えがするものを」となったのだろう。

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 その他には「OHTANI LAND」というボードを掲げる人たちも。エンゼルスタジアムの近辺にはディズニーランドがあるから、両方満喫したんだろうな……とファンの行動様式まで妄想できるのが楽しい。

きっとGoogle翻訳使ったんだろうな…的な作品も

 2つ目は「ちょっとヘンテコな日本語が増えている」こと。「SHOHEI,私とデートしませんか?」のボードを掲げていた女性ファンは、日本の報道でも有名になった。彼女のボードは日本語として整っていたが、別のアメリカ人が掲げているボードの文言は以下の通り。

「SHOHEI 今日は私の誕生日が私のために本塁打を打った」

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 うん、何となく推測できる。Google翻訳使ったんだろうな……。

 でも日本語が分からなくても、大谷に対して熱い気持ちを伝えたい。そんな健気さに胸を打たれた。その一方で「アロハ SHOHEI」と掲げるファンが……場所はもちろんロサンゼルスのアナハイムである。でもハワイにいるくらい楽園気分なのか、それともはるばるハワイからいらっしゃったのか……。なんにせよ、掲げているファンの表情が心から楽しそうだから、アロハで正解なのである。きっと。

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 そして3つ目が一番重要だと思うが――大谷へのメッセージが徐々に変容していたこと、である。

 シーズン序盤、大谷に対する応援で最も多かったのは「SHOTIME」だった。大谷のショータイムが観たいんだ、という分かりやすいメッセージだったが、それが後半戦以降、このような文字が目立ってくる。

「Home Run Title」「ホームラン王」「MVP」「YOU THE BEST!」

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 エールを送るだけでなく《ナンバーワン選手》になってほしいという願い、そして畏敬の念がヒシヒシと伝わってくる。それに加えて、大谷を十全にサポートする水原一平通訳に対しても「WE LOVE(実際はハートマーク) IPPEI」のメッセージが送られるなど、ファンは幅広く、さらに深く応援するようになったんだな――と写真を通して実感した。

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 日本語に英語、エンターテインメント性あふれる応援ボード。2022年もぜひ、いつもナイスな笑顔の大谷がさらにニコッとするような名作が生まれてほしいと願うばかりだ。

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文=茂野聡士

photograph by Nanae Suzuki