2021年度も将棋界は様々な話題にあふれています。そこで夫婦ともども“観る将”になったというマンガ家の千田純生先生に、イラストで「ファン目線での将棋ハイライト」、そして今回は東京・将棋会館の様子を描いてもらいました!(全2回)

(1)藤井聡太竜王+史上最年少四冠の大偉業

 藤井竜王の強さが止まりません。

 11月上旬はJT杯と王将戦挑戦者決定リーグ(以下、挑決L)でそれぞれ永瀬拓矢王座、豊島将之竜王、羽生善治九段にすべて勝利。その勢いのまま、12日の竜王戦第4局も豊島竜王相手に4連勝を飾って19歳での竜王獲得、そして史上最年少四冠を成し遂げました。

 ここまでのタイトル戦勝敗は、17戦14勝……なんという恐るべき勝率……。序列でも1位となり、名実ともにトップオブトップに立ったわけです。先日、中村太地七段の取材に同席させていただく(理由は後編で!)僥倖に恵まれたのですが、中村七段も「異次元のところに到達しつつある」と評していたことが非常に印象に残っています。

 その後も順位戦B級1組8回戦で松尾歩八段に、王将戦挑決Lで近藤誠也七段に勝利し、このまま止まらないのでは……と思わせるほどです。

©Junsei Chida

藤井竜王に対して豊島九段、永瀬王座が雪辱

 ただ――竜王を失冠した豊島九段ら他の棋士も、手をこまねいているわけではありませんでした。豊島九段が意地を見せたのが21日のJT杯日本シリーズ決勝でした。角換わりでの戦型で進んだ対局で、95手で勝利して連覇を達成しました。

 またその3日後の王将戦挑決L最終戦では、永瀬王座が相掛かりからの101手で勝利、すでに藤井竜王の王将戦挑戦は決定していたとはいえ、2人のトップ棋士が見せた戦いぶりにはあらためて感銘を受けました。来たる2022年1月からの王将戦、渡辺明王将(名人、棋王と三冠)がどのような戦いぶりを見せてくれるかに注目したいと思います。

王将戦への“挑戦券”を手にした藤井竜王(代表撮影)©JIJI PRESS

 藤井竜王は12月2日、年内最後となる公式戦である順位戦B級1組9回戦、近藤七段との対局に臨みました。評価値ではやや苦しい展開が続いていたと表示されていたものの、最終的には日付を超える熱戦の末に勝利しました。なおこの対局、ABEMAの解説を務めた森内俊之九段が「数字こそ悪くなっていますが、(近藤七段が)一手も間違えられない局面になっています。その局面まで持ち込んだのが藤井竜王の実力ですね」といった風に解説されていました。さすが名人8期などタイトル計12期を獲得した方の見識だな、と……。

 年末には新設された「SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦」が控えますが、まずは激闘の疲れを癒して……と思いながらも、きっと大好きな将棋の研究に費やすんでしょうね(笑)。そう想像するだけでも、来年も楽しみで仕方ありません。

(2)11月も女流棋士界がアツかった

 女流ABEMAトーナメントのおかげで(妻氏いわく「毎週涙ながらにハマっています」)、女流棋士の戦いぶりも非常に楽しみになっているここ最近ですが……里見香奈四冠、西山朋佳三冠の“2強体制”に風穴を開ける実力者が出てきました。「カトモモさん」こと加藤桃子新清麗です。

 第3期清麗戦五番勝負の最終局で、134手の末に勝利し、3年ぶりとなるタイトル復位となりました。過去女流タイトル8期を獲得した経験がある一方で、女流棋士になって以降初となるタイトルでもあります。「お二方には及ばないかと思いますが、一生懸命頑張って追いつけるようにしたいです」という殊勝なコメントを残されたとのこと。その姿に(特にファンの妻氏が)心を打たれています。

©Junsei Chida

 その清麗戦で印象に残ったのは……対局はもちろんのこと、第5局の記録係で振り駒(対局前に先手・後手を決める)を担当した竹部さゆり女流四段が、かなり豪快に振っていたことです。清麗戦ブログでは「竹部女流四段は駒を高く振った」と書いてありましたが、相当に高かったです(笑)。その後、ABEMAの中継に出演した鈴木大介九段が「ナイスホームラン」と竹部女流をフォローしたそうで、さすがの神対応でした。

 年が明けて2022年1月には、女流名人戦が開幕します。里見四冠の牙城を挑戦者の伊藤沙恵女流三段が崩せるか――ABEMAトーナメントで女流棋士の皆さんが見せる等身大の姿とともに、真剣かつ凛とした対局にしっかりと注目していきたいと思います。

丸太流の佐藤会長、王将戦と言えば“あのコスプレ”

(3)将棋界全体の話と映り込む棋士の話

 さて、3枚目は将棋界全体の動向をちょっとリラックスした視点で見ていければと思っています。

 まずは24日の棋王戦挑戦者決定トーナメント。将棋連盟会長である佐藤康光九段が、郷田真隆九段に138手で勝利し、勝者組決勝進出を決めました。佐藤九段の銀将が止まらない流れから勝ち切ったわけですが、盤面がぶっ壊れるんじゃないかと思うほどの豪快な「丸太流」でした。

 そして先ほども触れた藤井竜王の王将戦挑戦権獲得です。

 ここでの要注目ポイントは、何と言っても「対局ごとにコスプレさせられる、勝者なのに罰ゲーム感」でしょうか。

 すでに挑戦者が決定した時点で、藤井竜王は電車の切符を模した「挑戦券」を持って撮影に応じていました。果たして勝利した際、どんなコスプレをさせられるのか。なお渡辺王将は“ゴン攻め”した格好してますけど(笑)。

©Junsei Chida

最近のマイブームは「別室の棋士のカメラ映り込み」

 そんな将棋のネット中継を見ていると、気になるのは「対局者周辺の様子」です。昼食を頼む様子などは皆さんもよく目にするかと思いますが……最近は合間で映り込む棋士の姿がマイブームになっています。

 例えば前述した棋王戦挑決Tの昼休憩中。局面に注目したいポイントがあったのか、堂々と座って見る藤井竜王に対して、永瀬王座はソーっと棋譜を見つめていました。なんか人となりが表れている気が。あとは叡王戦の佐藤会長vs森内九段では、藤井三冠(当時)が座布団を取り換えに来て、佐藤会長がその姿を見つめる――など、一瞬だけ“素”になる感じがたまりません(笑)。

 先ほど触れた太地先生の取材時、気になって「時々、棋士の皆さんが中継に映ることがありますよね?」と聞いたところ「気分転換も兼ねてなんです。(将棋会館の)階段を上り下りしたり、2階の自動販売機で飲み物を買ったり、ほかの対局を見に行くなどしているんですよ」と、中継では映らない棋士の様子を教えてもらったのが印象的でした。

 さて「なぜ太地先生に話聞けてるの?」と思う方もいるかもしれませんが……実は東京の将棋会館の取材をしてきたんです! 初心者観る将の視点で、その辺りもレポートしていきます!<続く>

文=千田純生

photograph by Junsei Chida(illustration)/日本将棋連盟