12月15日に発表される新人王。今年はセ・パともに多くの新人選手が活躍し、例年以上に予想が難しい状況だ。

 そこで『Number Web』では「あなたが予想する新人王は誰ですか?」というテーマでアンケートを実施。セ・リーグの1位が栗林良吏、パ・リーグが宮城大弥という結果だった(#1でセ・リーグの結果、#2でパ・リーグの結果 を公開中)。

 宮城がダントツの票を獲得したパ・リーグ、栗林と牧秀悟で接戦となったセ・リーグのアンケート結果について、1983年に12勝をマークし、新人王を獲得した槙原寛己氏(元巨人)に感想を聞いた。

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槙原氏もうなる宮城大弥の“投球術”

 今年のプロ野球は、新人選手の活躍が目立つシーズンでした。まずパ・リーグですが、私もアンケートの結果通り、リーグ優勝に大きく貢献した宮城大弥(オリックス)の一択だと思います。

 勝利数も候補選手の中でダントツ(リーグ2位の13勝)。さらに防御率、勝率、WHIP……と、いずれの項目もリーグ屈指の成績でした。

 あれほど卓越した投球術を持つ若手投手は久々に見たような気がします。制球力を武器に、要所でカーブを投げて、打者のタイミングをずらす。要するに、MAX153キロのストレートを球速以上に速く見せるコツを心得ているんですね。

 よく「緩急をつける」と言いますが、簡単なように見えて、そもそもの球速差や、コーナーと高低を投げ分けられる制球力……と、高い技術が要求される投球術なんです。彼は見ていて本当に楽しいピッチャー。来年もさらなる飛躍を期待したいですね。

©Naoya Sanuki

2位伊藤大海「“不動のエース”に成長してもらいたい」

 2位の伊藤大海(日本ハム)も素晴らしかった。

 なんといっても、マウンド度胸がいい。変な言い方かもしれませんが、「ボールをどんどん投げていく」イメージですよね。でも若手投手はそれでいいんです。仮に打たれても、攻めた場合と逃げた場合では、得られるものがまったく違います。あの意気を忘れずに、ファイターズの「不動のエース」に成長してもらいたいものです。

©JMPA/Naoya Sanuki

混戦のセ新人王はだれか?「私が予想する確率では…」

 つづいてセ・リーグですが、栗林良吏(広島)と牧秀悟(DeNA)の2人に絞られていると思います。

 私が予想する確率では、栗林が60%、牧が40%。両選手とも新人らしからぬ結果を残しましたが、栗林が少し上回った理由は東京五輪での活躍です。

 記者の投票によって各リーグで最も優れた活躍を見せた選手が選ばれる新人王ですが、一般に公平性の観点から五輪やプレーオフ、日本シリーズでの結果は含まないと言われます。とはいえ、それらで活躍した選手は、心情的に投票されやすくなることは大いにありうるでしょう。

 その点、栗林はシーズン成績もさることながら、2勝3セーブならびに胴上げ投手と、侍ジャパンの金メダル獲得に大きく貢献したことが、新人王争いにも影響するのではないか、と見ています。

©JMPA

 栗林はルーキーイヤーとあって、無我夢中で駆け抜けた1年目だったのではないでしょうか。言い換えれば、怖いもの知らずで打者に向かっていけた。私も経験があるので言いますが、クローザーは極めて過酷な“職業”です。シーズン中はほぼ毎日、出番に備えて準備しなければいけないわけですから。長年にわたって活躍し続けた抑え投手が少ないことが、そのハードさを表していると思います。

 その意味でも、37セーブという新人最多記録(タイ)を残した栗林が新人王を獲得する可能性が高いでしょう。

牧の打撃は「“あの助っ人外国人”を彷彿とさせる」

 栗林に劣らない成績を残したのが牧でした。打率.314は立派の一言。彼の良さはなんといっても、広角に打ち分けられること。インコースのさばき方、アウトコースの右中間への打ち方は、プロで10年やっている選手もお手本にしたくなるようなものでした。

 追い込まれてからファールで粘れるところもいいですね。ガッチリした体格と打席での風格は、ベテラン選手さながら。昨年までDeNAに所属していたホセ・ロペスを彷彿とさせます。シーズン前半に好成績を残して、その後一度低迷したもののシーズン終盤に再び盛り返した。来年以降の活躍も大いに期待できる選手です。

©JIJI PRESS

 後半戦につれて成績を上げてきたという点では、アンケートで3位に入った奥川恭伸(ヤクルト)も同様ですね。CS、日本シリーズとあの大舞台で好投した“強心臓”も魅力。彼も来年、エース級の活躍を見せる可能性は高いと思います。

ルーキーイヤーに痛感するのは「自分の体力不足」

 どうしても投手目線になってしまいますが、このオフは肩と肘を中心に、身体のケアに専念してほしいですね。ほとんどの若手選手が、シーズン中に自分の“体力不足”を感じたと思います。それは私もルーキーイヤーで痛感したことです。先輩たちのキャンプについていくなり、専門家にアドバイスを聞くなりして、一流選手の身体作り、メンテナンスを勉強するのがいいと思います。

現役時代の槙原氏(1986年撮影) ©Makoto Kenmizaki

 成績を残した若手選手は、来シーズンのマークも厳しくなるでしょうが、それでこそプロの世界。スーパールーキーから本物のスター選手へ――。これからが勝負、という意気でがんばってほしいですね。

文=NumberWeb編集部

photograph by JIJI PRESS