雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は新シーズンに向けたプロ野球にまつわる4つの言葉です。

<名言1>
もうそろそろ、悪あがきしたっていいでしょ!
(松田宣浩/NumberWeb 2021年11月24日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/850768

◇解説◇
 12月から1月のシーズンオフ、球界の話題と言えば契約更改である。セ・リーグMVPに輝いたヤクルトの村上宗隆が1億2000万円アップの年俸2億2000万円+出来高(金額は推定)で更改するなど、活躍した選手は大きな評価を受ける。

 その一方で、ここ近年は高額年俸をもらうことになった分だけ……減額制限の40%を超える“大減俸”を提示される選手も増えてきている。このオフに注目が集まったのはソフトバンクの「熱男」こと松田だった。

松田宣浩 ©Ichisei Hiramatsu

3億円の年俸減でも「熱さ」は失わない

 2021年の成績は打率.234、14本塁打47打点と振るわず、規定打席にも達しなかった。それを受けて球団は4億5000万円から「3億円減」の1億5000万円を提示。松田もサインした。

 松田は2015年から19年の5シーズン連続で全試合出場、通算301本塁打とゴールデングラブ賞8回の三塁守備、そしてチームを熱くたぎらせる「声」で常勝軍団ソフトバンクの中心にあり続けた。しかし、その松田も2022年5月に39歳となる。さらには2021年のソフトバンクはBクラスに転落し、藤本博史新監督が就任したこともあって世代交代の声も聞こえつつある。

「優勝したチームを受け継ぐこともプレッシャーだけど、負けたところから上げていくエネルギーもすごくいるでしょうしね」

長年守ってきたサードの守備 ©Nanae Suzuki

 松田はチームの現状についてこう分析しつつ、自分の置かれている立場についても冷静に認識しているようだ。

「出られるならどこでも出たいです。外野は練習で試したけど無理そうやし、サード以外だとファーストぐらいしかできないと思うけど、ちゃんと練習はしてますから。今までと違う景色のポジションを守ることで、新しい角度から野球が見られるかもしれないしね」

 守る場所の風景が変わり、年を重ねても松田の熱はホークスを支えられるか。真価が問われる1年となる。

立浪新監督、原監督はどのように“改革”するのか

<名言2>
だから本当に差がつくのはこのオフだよと、選手には言っています。
(立浪和義/Number1041号 2021年12月2日配信)

◇解説◇
 中日ドラゴンズは2010年代中盤から現在にかけて低迷期に入っている――そう言われても仕方のない成績が続いている。4度のリーグ制覇を成し遂げた落合博満元監督が退任して以降、2012年から21年までの9シーズンでAクラス入りしたのは、2020年の1回だけ。巨人や阪神と覇権を争った2000年代中盤からの落差に、落胆するファンは多いだろう。

 その中日が、ついに“切り札”を使った。球団のレジェンドである立浪新監督の就任である。秋季練習ではさっそく根尾昂ら若手メンバーを指導し、それぞれの性格や技術的課題を把握したという。

秋季練習で根尾に指導する立浪監督 ©Kyodo News

「口を出さずにはいられない。時間がもったいないんです」

 選手たちとの距離感を縮めるコミュニケーションだけでなく、チーム内競争も意識させる。星野仙一監督の元で育ち、高木守道、山田久志、落合体制で生き残り続けてきたレジェンドのもとで強竜復活はなるだろうか。

原監督が抱えていた「これはいかんな」という思い

<名言3>
常にチーム状態については、これはいかんなという思いがありました。
(原辰徳/NumberWeb 2021年11月24日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/851088

◇解説◇
 読売ジャイアンツは2021年、リーグ3連覇と日本一奪回を至上命題として、開幕を迎えた。前半戦は阪神の快走を許したものの8月終了時点で首位に立つなど、勝負所で地力を発揮したかに思えた。しかし百戦錬磨の指揮官には、違和感があったようだ。

2021年の原辰徳監督 ©Hideki Sugiyama

「上位にはいるけどメンバーも揃っていないし、数字も良くない。このままでいくのかな、というのはずっと抱えながら戦っていた訳ですよ」

 FAで獲得した梶谷隆幸にケガが続き、期待の外国人選手だったスモークも家庭の事情を理由に退団。井納翔一やシーズン途中に加入した中田翔も結果を残せず、戦力を上積みできなかった。また後半戦には先発陣が崩れることが多くなり、急失速しての3位に終わった。

 批判を浴びてのシーズンオフ、原監督は球団と新たに3年契約を結んだ。それとともに着手したのはコーチングスタッフの入れ替えと役割分担の明確化だった。

 阿部慎之助、桑田真澄、元木大介ら“生え抜き勢”の責任を明確化するとともに、ファームでは川相昌弘や駒田徳広といった、他球団を経験したOBを迎えた。

「彼らは他のチームに出たり、色々な経験をして苦労もしてきた。そういうOBがまたジャイアンツに戻るというのは、僕は理想型だと思います。それで再び若い選手を指導し、ジャイアンツの伝統を正しくつなげていく。それはとても重要なことですね」

 巨人は菅野智之、坂本勇人が30代となり、新たな力の台頭が必須だ。FA補強を控えた今オフ、現有戦力の底上げを果たせるか。

エンターテイナー杉谷は新庄監督のもとで……

<名言4>
僕自身も見つめ直すところ、見つめ直さないといけない部分が多くありました。
(杉谷拳士/NumberWeb 2021年12月4日発売)
https://number.bunshun.jp/articles/-/850977

◇解説◇
 新年1月2日、野球界の“トレンド”と言えば、例年は杉谷拳士だった。お正月のスポーツ特番で、お笑い芸人顔負けのセンスで笑いを取る姿に、多くの野球ファンが楽しんできたことだろう。

 しかし2022年、そのような杉谷の姿はないという。なぜならビッグボスこと新庄新監督が、杉谷に今オフの“バラエティー番組出演NG”を通達したからだ。

 杉谷は2021年こそ振るわない成績に終わったものの、内外野ほぼすべてのポジションを守れる有用性と、左右両打席で意外性のあるパンチ力とバントなどの小技など、バイプレーヤーとして欠かせない存在だ。

背番号61を背負っていた2015年の杉谷 ©︎Nanae Suzuki

 実際、杉谷の代わり……いや、それ以上に引っ張りだこの新庄監督も出演したテレビ番組で「僕に任せて、あなたは野球に打ち込みなさい」と語っていた。ビッグボスの期待に応えて、グラウンド内でエンターテイナーぶりを発揮する2022年にしてほしいところだ。

文=NumberWeb編集部

photograph by Sports Graphic Number