雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は新春特別編として、大谷翔平と藤井聡太にまつわる言葉を2021年の名シーン写真とともに振り返ります(全2回/藤井聡太編も)。

<名言1>
結果を出すための第一歩は1年間、健康で、しっかりと自分の力を出し切るところなんだろうなと思っています。
(大谷翔平/Number1020号 2021年2月4日発売)

◇解説◇
 2021年を迎えるにあたってのタイミングで、大谷翔平への期待値がどれだけ高かったか――それを思い出せる人は意外と少ないのかもしれない。

 それもそのはず、2020年は新型コロナウイルス禍でMLBは60試合制のシーズンとなった中で、投手としてトミー・ジョン手術からの復帰シーズンとなったものの登板は2試合だけ。打者としても打率.190、7本塁打24打点にとどまった。

 しかし新シーズンを前にしたインタビューで、大谷は「健康」という言葉を使い、ケガをせずプレーし続けることがベースになると自己認識していた。大谷はこうも話している。

「選手としては『全試合出てくれ』と言われたいですし、ただ登板前日だけは気持ちを作るために休んで、1年間ローテーションを守って、バッターとしては残りの試合に全部出られれば、それが理想です」

「2番投手」の大谷が放った第2号ホームラン ©Getty Images

 その大谷が1つ目の大きなインパクトを放ったのが、4月4日(現地時間)のホワイトソックス戦だった。「2番・投手」で先発すると、初回にいきなり2号先制ホームランを放つ。

 投手としても最速101マイル(163km)のストレートを投じるなど、ハイパフォーマンスを発揮。勝利投手目前の5回には本塁ベースカバーに入った際に走者と交錯して負傷退場し、誰もが心配した。しかし翌日以降も試合に出続けた。大谷が開幕に宣言した通り、ほぼ毎日「Ohtani」の名前はラインアップに記された。そしてここから、快進撃が始まっていった。

監督が「意味不明(笑)」と言ったことは……

<名言2>
バッティングは理解できますよ。準備も見えていますから。でも、マウンドでの結果は意味不明です(笑)。
(ジョー・マドン/Number1035号 2021年9月9日発売)

◇解説◇
 大谷は4月に8本塁打を放ち、5月にはレッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークの名物、レフトに高くそびえる「グリーンモンスター」を物ともせず“泳ぎながらホームラン”にしてしまうなどの一撃を放つ。

泳ぎながらもグリーンモンスター超えの11号 ©Getty Images

 そして6月は驚異の13本塁打で月間MVPを獲得。ここまでは打者としての活躍の方が少しだけ目立っていたが……投手としても凄みを見せたのは7月だった。

 投げては2勝0敗、20投球回、防御率1.35、打者としても9本塁打19打点、打率.282の好成績で、2カ月連続の月間MVPに輝いた。長距離移動を含めてタフさが求められるメジャーの舞台で圧倒的な成績を残す大谷に絶賛の声が続々と集まったが、間近で見ていたマドン監督も「意味不明」と冗談めかして称えるほどだった。

ピッチングでもシーズンが進むごとに安定感が出てきた ©Getty Images

 メジャーリーグの投手には完成された登板間のルーティーンがあり、投げた次の日に走り、3日目にはブルペンで調整したりマッサージも受けるなどの規則性があるという。しかしマドン監督の目には大谷の調整法が、見たことのないものとして映ったようだ。

「翔平にはあるのかな? 私には登板間のキャッチボールとブルペンでの調整しかないように見える。それでいて防御率は3点以下ですよ」

メジャー最強のバッターも「オオタニの大ファン」

<名言3>
私は現役の選手でありながらオオタニの大ファンです。
(ブライス・ハーパー/Number1040号 2021年11月18日発売)

2021年のホームランダービーで珍しく? 疲れた表情 ©Getty Images

◇解説◇
 日本人初のホームランダービー出場、オールスターのルールを変えてしまった「1番DHで先発投手」での出場……。大谷はまさにスタープレーヤーに上り詰めた。

オールスターでは初回を三者凡退に抑えて勝利投手となった ©Getty Images

 その中で注目されたのは圧巻のプレーだけでなく、合間に見せるキュートかつオチャメな姿だった。

 話題になった主なシーンを挙げるだけでも微笑ましい思い出ばかりだ。

・三冠王経験者カブレラやMVPを争ったゲレーロJr.らと一塁上で談笑
・投手として折ったバットを拾って、相手打者に手渡す

楽しそうな大谷とゲレーロJr. ©Getty Images

 ほかにも出番を待つベンチ内ではチームメートと朗らかな表情を浮かべるなど、まさに野球を楽しんでいる。

 その姿には超一流クラスのメジャーリーガーが人間性を含めて認めている。

 2015年のナ・リーグのホームラン王に輝き、通算267本塁打をマークしているハーパーもその1人。リーグが違うこともあって接点はなかなかないものの「大ファン」と語って会える日を待ち遠しいとするとともに、このように「オオタニ評」を語っている。

「投打両方ができるなんて信じられません。身体能力の凄さはもちろんのこと、打者、投手両方で相手を研究しなければならなかったはず。リーグが違うので直接対決はないのですが彼がテレビに出たら目が離せないんです」

©Nanae Suzuki

どこまで行けるのかは僕にもわかんないんですよ。それよりも

<名言4>
どこまで行けるのかは僕にもわかんないんですよ。それよりも、勝たないといけない。チームが勝つことによって、僕が二つをやることの有用性を示せるのかなと思うので、大事なのはそこですかね。
(大谷翔平/Number1040号 2021年11月18日発売)

◇解説◇
打者:138安打46本塁打100打点103得点26盗塁 打率.257
投手:9勝2敗(23試合先発)130回1/3 156奪三振 防御率3.18

 満票でのMVPに輝いた大谷の2021シーズンの主な成績だ。改めて見ても、片方の成績だけでもメジャーで成功したと言えるのだが……。

「その数字は自分にとってのこれからの基準になると思っています」

 もう1つ、大事にしている指標について触れた。

「ホームランの数字で言えば46ですけど、僕が大事に考えているのはOPS(出塁率+長打率)なので、今年は“千(1.000)”行きたかったな、と思っています(出塁率.372、長打率.592でOPSは.965だった)」

 強打者ぶりを示すOPSという、メジャーでは一般化した指標を大谷は持ち出した。シーズン終盤戦に“四球攻め”を味わったが、OPSに関わる出塁率がアップし、相手バッテリーが大谷を一流打者と認めた証拠であると捉えれば、決して悪いことではないだろう。

©Nanae Suzuki

 何より、大谷にとっていちばん大事にしていることは目先の数字ではない。「勝つこと」だ。野手と投手、両方でチームの主力としてプレーする。圧倒的な才能が、これまでなかったチームへの貢献になると、大谷は考えているのだ。

 2021年のエンゼルスは打撃ではトラウト、レンドーンといった主軸が負傷離脱し、リリーフ陣が打ち込まれる場面が多いなど苦戦を強いられた。主力の戦線復帰と補強でチームを再構築できるか。エンゼルスが勝利を積み重ね、二刀流がさらに輝けば……映像や写真で大谷の笑顔をもっと見られるはずだ。<藤井聡太編に続く>

文=NumberWeb編集部

photograph by Nanae Suzuki