2021年、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。メジャーリーグ部門の第5位は、こちら!(初公開日 2021年11月20日/肩書などはすべて当時)。

エンゼルスの大谷翔平投手がア・リーグMVPを受賞した。日本選手の受賞は2001年のイチロー以来2人目、そして満票での受賞は大リーグで6年ぶりだった。二刀流で戦い抜いた今シーズン、調整は大谷自身に任されていたという。最も間近で支えた水原一平氏が語る、激闘の日々と素顔の翔平とは。

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「9月の頭ごろは元気もなかったし、笑顔も少なかった」

 今シーズン、とくに大変だったのは9月の頭くらいですね。ストライクを投げてもらえない、勝負してもらえない。たまに審判にとんでもないボール球をストライクとコールされたりして、翔平もお手上げ状態、どうすればいいのかという時期でした。

 でも翔平はその間もブチ切れることなく、耐えていました。それでもやっぱり精神的にやられてるなという感じはありましたね。元気もなかったし、笑顔も少なかった。プレーしていても楽しそうじゃなかったんですよ。序盤に(マイク・)トラウトと(アンソニー・)レンドーンがケガで離脱して、でも2人が復帰するまで何とか(勝率)5割で持ちこたえればプレーオフへ行けるんじゃないかと頑張っていたとき、レンドーンが今季絶望、トラウトも復帰のメドが立たなくなった。プレーオフ出場が一気に厳しくなる中でプレーする翔平は、辛そうに見えました。オールスター明けに2人でスケジュールを見ながら「この先、18連戦と14連戦がある、ここが山場だね」という話をしました。頑張って乗り越えよう、みたいな……実際、今年は疲れているから休みが必要だなと思ったことは一度もありませんでしたね。終わってみれば1年間、大きなケガもなく終えられたので、そこが一番の収穫だったのかなと思っています。

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 今年の翔平はフルシーズン、休みなくピッチャーとバッターの両方をやるということで、調整を彼自身に任されていました。全体練習に出られないことも多かったので、(マット・)ワイズ投手コーチと(ジェレミー・)リード打撃コーチには常に「今日はいつ、何をします」と報告をして、コミュニケーションをしっかり取るようにしていました。とくにブルペンで投げる日は何時に球場へ入って、何時に外へ出て、何時にブルペン入りしますと、細かく伝えることが大事でしたね。チームメイトに対しても、とくにピッチャー陣は全員で集まってアップをするので、リーダー格のピッチャーには全体練習には参加できないこともあると話をして、理解してもらいました。そのおかげもあって、翔平は自分のペースで調整できていたと思います。

「動きがキモい」僕のこともイジってくる

 よく「大谷さんってどんな人ですか」と訊かれるんですけど、そういうときは「とにかく謙虚です」と答えています。いや、本当に謙虚なんですよ。謙虚で、普段はそこらへんにいる27歳の子と何も変わんない。冗談も言うし、ユーモアのセンスもあるし、僕のこともイジってくる……よくイジられますよ、「動きがキモい」とか(笑)。一応、僕もバスケとかサッカーをやってきたのに、動きが固くて、走り方や投げ方が変だって、翔平は言うんです。だから半分冗談、半分本気で「キモッ」って。

 翔平、優しいところもあるんです。妻と犬たち……オスのフレンチブルドッグとチワワのオス、メスが1匹ずつ、家にいるんですけど、翔平は「遠征が多くて家にいられないことが多いんですから、一平さん、なるべく家族と一緒に過ごして下さいね」って言ってくれます。まぁ、言葉にしてくれるのは、たまーに、なんですけど(笑)。

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 一緒にいる時間が長いと食事が一緒になることも増えますけど、翔平はいろんなことに気を配って食べるものを選んでいますね。僕ですか? 僕はけっこう自由に食べてます。もちろん翔平が食べられないものを翔平の目の前で露骨に食べるのは、ちょっとは避けようと思ってますよ。翔平は甘いものが好きですけど、僕も甘いもの好きで、ダークチョコ以外は何でも食べます。ダークチョコは翔平も苦手だったんじゃないかな。もちろん甘いものは翔平の前では絶対に食べません。裏で食べてます(笑)。

「翔平に彼女はいるのか」「いないよー」

 選手たちからよく訊かれるのが「翔平に彼女はいるのか」「アメリカ人の彼女はできたのか」という質問です。これは定期的に訊かれています(笑)。それを通訳すると、翔平は「いないよー」と言うので、僕も定期的に「いないよー」と訳します。そうすると「本当か?」と突っ込んでこられるので、そこは「さあ、わかんない」と言うことにしています(笑)。そもそも、今の翔平の英語力はめちゃくちゃ上達していて、この手の質問はもう訳さなくても大丈夫なんですけどね。とくに聞き取るほうはほぼほぼ理解していると思いますよ。

 ファイターズのときから翔平は誰もやったことのないことに挑戦して、そういうことに慣れているのかもしれませんけど、でも何かを背負ってる素振りを表に出さないのは本当にすごいと思います。自分のやりたいことを淡々とこなしながら、背負っているものの大きさを周りに感じさせない。映画を観たりしても翔平が涙を流しているところは見たことがないし、僕も泣くタイプではないんですけど、でも、もしワールドシリーズで勝ったりしたら、僕は泣いちゃうかもしれません。ファイターズが日本一になったときは全然、そんな感じにならなかったので今は想像がつかないんですけど、さすがに泣くんじゃないかなと思います。翔平ですか……翔平に泣くイメージはないなぁ。笑いながら、僕が泣いているのを見て、こう言うんじゃないですか。

「キモッ」って(笑)。

文=石田雄太

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