公式戦が終了し、はや2カ月が過ぎようとしている。例年であれば、この時期のメジャーリーグの本拠地は閑散としたものだ。イベントも多くはなく、フィールドは来季のために芝生を張り替えているところも多い。
それなのに、ロサンゼルス近郊アナハイム市にあるエンゼルスタジアムにはオフになっても多くのファンが訪れている。お目当ては、球場内にあるチーム・オフィシャル・ストアで販売されている大谷翔平グッズだ。

いまだに“大谷フィーバー”が収まりを見せていない現状をストアでゼネラル・マネージャーを務めるエリック・ウルスアさんが説明してくれた。
「今季は大谷選手の関連商品は飛ぶように売れました。帽子、シャツ、ジャージ(ユニフォーム)、カップなど売り上げは過去に例を見ないほどのものでしたが、MVPを受賞したことで大谷選手の関連グッズは更なる売り上げを見せていますね」

トラウトやプホルスを凌ぐ大谷グッズの売り上げ
まさにホクホク顔。過去に売り出されたマイク・トラウトやアルバート・プホルスらのスーパースターの関連グッズとは比較にならないほどの売り上げ。彼らにとっても喜ばしいことだが、その一方で今季は苦労も多かったという。商品が入荷してもすぐに完売してしまい、ファンの需要に迅速に対応することがなかなかできなかった。

ウルスアさんが続ける。
「今年の大谷選手のグッズには全般的に非常に苦労しました。商品によって生産工場は違ってきますが、多くの工場がすべての需要に追いつかず対応するのは本当に大変でした」
商品入荷後、わずか数時間で売り切れ
6月。大谷翔平の名前が漢字でプリントされたレプリカ・ジャージはその典型だった。商品が入荷してもわずか数時間で売り切れ。苦肉の策として、予約販売を受け付けたが、生産がなかなか追いつかない。ファンがジャージを受け取るまでに2、3週間かかることも多々あった。
それでもかつてない売れゆきは、担当者たちに高いモチベーションを与えた。ファンのニーズに応えるため、アイディアとクリエイティビティを振り絞り、過去に例のない選手である大谷翔平の独創性を彼らも必死に作り出そうとしていた。
「難しかったのは、特別な選手である大谷選手と同じような特別な商品を創り上げることでした。そのためにエンゼルス球団と綿密に連携を取り合い、大谷選手のイメージにふさわしい商品に仕上げようとしました。その結果、我々はクリエイティブであることを楽しむようになりました。ファンからの提案を受け、ベンダーと協力して、そのアイテムを作ることを楽しんでいます。これは素晴らしいことだと感じています」
イチ押しの大谷MVPグッズ、ベスト5とは?
選手とファンを繋ぐ。それがウルスアさんたちの仕事。そんな彼に「イチ押しの大谷翔平グッズ・ベスト5」を聞いてみた。
No.1 大谷翔平MVP・Tシャツ

「大谷選手の一番のファンであるのは私たちかもしれません。その我々がデザインし、球団と協力して作った自信作です」
No.2 大谷翔平MVPボール


「デザインが素晴らしいと思っています。大谷選手の投球、打撃、そしてスタッツも描かれてるのが気に入っています」
No.3 大谷翔平MVPワッペン

「これは大谷選手のファンがデザインしたものなんです。我々としてはとても誇りに思う商品と言えますね」
No.4 大谷翔平MVPピン

「MVPワッペンと同じでファンがデザインしたものです」
No.5 大谷翔平漢字ジャージ

「これはファンの皆さんが気に入ってくれると信じて作りました。我々にとってはリスクも覚悟した商品でしたが、ファンの皆さんにはとても喜んでもらえたと思っています」
大谷翔平がグッズ担当者に与えた情熱とプライド
今季、二刀流の選手として歴史的パフォーマンスの数々を披露した大谷の偉大さを称えるため、ウルスアさんらスタッフは数多くの大谷グッズを企画、販売してきた。この作業もある意味で“歴史的”だった。大谷翔平がグッズ販売担当者たちに与えた仕事への情熱とプライド。こんなところにも大谷効果はあった。
「この1年は大谷選手にとっても、エンゼルス・ファンにとっても、野球ファンにとっても、これ以上ないほどにエキサイティングなシーズンとなりました。このような特別なシーズンを記念するために、フレッシュな大谷グッズを提供するというチャレンジは、我々がやらなければならないことでした。大谷選手への感謝の気持ちは言葉では表わし尽くせないものです。特別なプレーヤーのために、ファンのために、フレッシュで刺激的なグッズをこれからも提供していきたいと思っています」
今年も残すところあと1カ月。大谷グッズは、2021年を象徴する素敵なクリスマス・プレゼントにもなるのだろう。
文=笹田幸嗣
photograph by Nanae Suzuki、Angels Baseball