ヤクルトの日本一で幕を閉じた2021年のプロ野球。記録という観点から各球団の勝因と敗因、そして来季展望を占った(全4回)

 日本シリーズでの激戦の果て、セに2012年以来となる日本一をもたらしたヤクルトをはじめとするセ・リーグAクラスの3球団についても、主力選手の成績とともに振り返っていこう。

 なお打者のRCは打撃の総合指標、90を超えれば強打者、100を超えればMVP級とされる。また投手のPRはリーグ平均防御率に基づく指標。今季セ・リーグの平均防御率3.83を上回る防御率だとプラスになり、イニング数が多くなれば数値が高くなる。

巨人:野球は何人でするスポーツか?

<3位 読売ジャイアンツ>
61勝62敗20分 勝率.496 首位と11.0差
チーム打率.242(5位)チーム防御率3.63(4位)

・打線
1(右)松原聖弥 118安12本37点15盗 率.274 RC62.14
2(遊)坂本勇人 115安19本46点2盗 率.271 RC72.2
3(中)丸佳浩 104安23本55点5盗 率.265 RC71.74
4(三)岡本和真 138安39本113点1盗 率.265 RC91
5(左)ウィーラー 111安15本56点3盗 率.289 RC61.54
6(一)中島宏之 49安6本26点0盗 率.271 RC21.58
7(捕)大城卓三 80安11本37点0盗 率.231 RC35.76
8(二)吉川尚輝 83安5本25点7盗 率.272 RC36.83

・先発投手
高橋優貴 27試11勝9敗140.2回 率3.39 PR6.88
戸郷翔征 26試9勝8敗151.2回 率4.27 PR-7.41
菅野智之 19試6勝7敗115.2回 率3.19 PR8.23
メルセデス 17試7勝5敗86回 率3.77 PR0.57
山口俊 15試2勝8敗78.1回 率3.56 PR2.35
サンチェス 14試5勝5敗73回 率4.68 PR-6.89

・救援投手
鍵谷陽平 59試3勝0敗1S15H42.1回 率3.19 PR3.01
中川皓太 58試4勝3敗1S25H54.2回 率2.47 PR8.26
ビエイラ 56試0勝3敗19S1H55.1回 率2.93 PR5.53
高梨雄平 55試2勝2敗1S20H39回 率3.69 PR0.61
大江竜聖 47試0勝0敗0S13H33回 率4.09 PR-0.95
デラロサ 46試1勝0敗7S13H41.1回 率2.83 PR4.59

 圧倒的な戦力で2連覇中だった巨人。今季も6月末時点では38勝26敗10分、勝率.594で首位阪神に3差ながら3連覇も十分に狙える上々の位置につけていた。

終盤戦、一気に調子を落としてヤクルトや阪神との優勝争いから脱落した ©Hideki Sugiyama

 しかし7月、9月、10月は負け越し。7月以降は23勝36敗10分、勝率.390という体たらくだった。猛追する広島を辛うじてかわしてポストシーズンに進出したものの、衝撃的な急失速だった。

 まず先発投手陣は、後半戦、成績が急落した。

3〜4月 30試合14勝9敗180.1回 率3.14
5月 22試合7勝7敗114.4回 率3.82
6月 22試合10勝7敗116.5回 率3.59
7月 12試合4勝4敗48.2回 率2.77
8月 15試合3勝4敗71.7回 率4.42
9月 25試合5勝12敗138.2回 率3.83
10月 18試合1勝8敗81.2回 率5.40

 7月までは35勝27敗、8月以降は9勝24敗。先発陣の崩壊によって優勝争いから脱落した。原巨人は8月以降、先発の登板間隔を中6日から中4、5日に変更したが、多くの識者が指摘するように、これが先発陣のコンディションを悪化させた。

 NPBからMLBに移籍した先発投手は、中4〜5日のローテーションに適応している。これから見ても登板間隔の変更は不可能ではないだろうが、シーズン中の変更は強引すぎたのではないか。

 さらに救援投手の起用にも疑問があった。

 高梨雄平、大江竜聖などの左腕は1イニングを任せられる力があると思うが、ワンポイントでの起用が目立った。その挙句に投手が足りなくなり、左打者に右投手を当てることもあった。

 7回は誰、8回は誰、そして9回はクローザーという形で救援投手の持ち場を決めることをせず、場当たり的な起用だった印象だ。

梶谷はケガ続き、中田翔もほぼ結果を残せず

 打者でいえば今季もポジションかぶりを厭わずFAで梶谷隆幸、新外国人で大物のスモーク、テームズを獲得。しかしながら梶谷は故障で離脱、テームズはデビュー戦で負傷して帰国、スモークもホームシックで帰国。結局、昨シーズン途中に移籍してきたウィーラーと、育成上がりで這い上がった松原聖弥の活躍で穴埋めができた形だ。

 シーズン中には日本ハムから中田翔も移籍したが、ほとんど働かなかった。

中田翔は巨人2年目こそ汚名返上なるのか ©Hideki Sugiyama

 毎年のように思うが「野球は何人でやるスポーツなのか」を今一度考えるべきだろう。どんな大物選手でも、フルで使わなければ実力を発揮するのは難しい。「戦力の逐次投入」が悪手なのは兵法では常識のはずだ。

 巨人は依然として戦力ではトップクラスだが、それをどう活かしていくのか。采配に課題がある状況が続く。

阪神:引き分け少なく2位も優勝同然の成績

<2位 阪神タイガース>
77勝56敗10分 勝率.579 首位とゲーム差なし
チーム打率.247(4位)チーム防御率3.30(2位)

・打線
1(中)近本光司 178安10本50点24盗 率.313 RC90.29
2(遊)中野拓夢 127安1本36点30盗 率.273 RC56.17
3(一)マルテ 115安22本71点0盗 率.258 RC73.35
4(三)大山悠輔 121安21本71点2盗 率.260 RC63.37
5(左)サンズ 101安20本65点1盗 率.248 RC59.23
6(右)佐藤輝明 101安24本64点6盗 率.238 RC57.09
7(二)糸原健斗 126安2本30点6盗 率.286 RC54.29
8(捕)梅野隆太郎 91安3本33点8盗 率.225 RC34.98

・先発投手
青柳晃洋 25試13勝6敗156.1回 率2.48 PR23.45
西勇輝 24試6勝9敗143.2回 率3.76 PR1.12
秋山拓巳 24試10勝7敗132.2回 率2.71 PR16.51
伊藤将司 23試10勝7敗140.1回 率2.44 PR21.67
ガンケル 20試9勝3敗113回 率2.95 PR11.05
アルカンタラ 24試3勝3敗59.1回 率3.49 PR2.24
高橋遥人 7試4勝2敗49回 率1.65 PR11.87

・救援投手
岩崎優 62試3勝4敗1S41H57.2回 率2.65 PR7.56
スアレス 62試1勝1敗42S0H62.1回 率1.16 PR18.49
岩貞祐太 46試4勝0敗0S12H38.2回 率4.66 PR-3.57
馬場皐輔 44試3勝0敗0S10H47.1回 率3.80 PR0.16
及川雅貴 39試2勝3敗0S10H39回 率3.69 PR0.61
小林慶祐 22試0勝1敗0S4H20回 率2.25 PR3.51

 77勝は12球団最多。勝率も高く、ヤクルトとのゲーム差はゼロ。今季の阪神は“優勝同然”の成績を残した。コロナ禍によって9回引き分け、延長なしの特殊なルールになる中、引き分け数が10と12球団で最少で、その結果として1勝当たりの価値が下がって、勝越し数はヤクルトと同数ながら、惜敗した。

何といってもルーキーの活躍が大きかった

 今季の阪神は、何といっても「新人選手による嵩上げ」の影響が大きかった。

 昨年ドラフトの目玉、佐藤輝明が中軸に座っただけでなく、ドラフト6位の中野拓夢が木浪聖也を押しのけて遊撃の正位置に。2人揃って規定打席に到達し、オールスターに出場。中野は盗塁王を獲得。さらにドラフト2位の伊藤将司も開幕からローテを維持して10勝。レギュラー選手2人と先発投手1人をオンしたのだから、阪神が強くなったのも当然の話だ。

佐藤輝、中野、伊藤……阪神はドラフト戦略が非常にうまくいった ©Hideki Sugiyama

 最近の傾向として、各球団では外国人打者が脇役に回ることが多いが、その中でもマルテは四球が三振よりも2つ多い74、一塁守備も堅実で、貢献度が高かった。サンズも含め4人が20本塁打と例年になく打線も厚みを増した。スタメンが固定され、8人が規定打席に到達、打線は充実していた。

 先発ではエースの西が100勝を目前に足踏みしたが、技巧派サブマリンの青柳が最多勝、秋山も10勝、ガンケルも9勝、伊藤将司も含めて安定したローテを形成した。そして救援陣では、スアレスが最多セーブ。セットアッパーの枚数は少なかったが岩崎も41ホールドと活躍し、勝利の方程式ができていた。

 後半戦、佐藤輝明が大スランプに陥ったが、チーム力は大きく下がらず。ヤクルトに競り負けたが、阪神は健闘したといえるだろう。

 しかしながら来季は守護神スアレスがMLBに移籍。現時点でクローザーは不在だ。佐藤輝明、中野拓夢、伊藤将司の「2年目」も気になるところだ。依然として戦力は充実しているが、不確定要素も多い。

MLBに旅立ったスアレスの後任クローザーは誰になるのか ©Hideki Sugiyama

ヤクルト:勝利へ向けたパーツが出揃う

<1位 東京ヤクルトスワローズ>
73勝52敗18分 勝率.584
チーム打率.254(3位)チーム防御率3.48(3位)

・打線
1(中)塩見泰隆 132安14本59点21盗 率.278 RC79.26
2(左)青木宣親 115安9本56点0盗 率.258 RC58.24
3(二)山田哲人 134安34本101点4盗 率.272 RC94.21
4(三)村上宗隆 139安39本112点12盗 率.278 RC113.78
5(一)オスナ 121安13本60点3盗 率.258 RC50.34
6(捕)中村悠平 105安2本36点0盗 率.279 RC49.83
7(右)サンタナ 108安19本62点2盗 率.290 RC66.16
8(遊)西浦直亨 54安5本24点1盗 率.223 RC22.29

・先発
小川泰弘 23試9勝6敗128.1回 率4.14 PR-4.42
奥川恭伸 18試9勝4敗105回 率3.26 PR6.65
田口麗斗 33試5勝9敗100.2回 率4.02 PR-2.13
石川雅規 17試4勝5敗82回 率3.07 PR6.92
スアレス 24試5勝3敗77回 率3.62 PR1.80
高橋奎二 14試4勝1敗78.1回 率2.87 PR8.36

・救援
清水昇 72試3勝6敗1S50H67.2回 率2.39 PR10.83
マクガフ 66試3勝2敗31S14H64.1回 率2.52 PR9.36
今野龍太 64試7勝1敗0S28H62回 率2.76 PR7.37
石山泰稚 58試0勝5敗10S9H55回 率3.60 PR1.41
坂本光士郎 36試1勝2敗0S7H33.1回 率4.05 PR-0.81
大西広樹 33試3勝0敗0S7H38.1回 率2.82 PR4.30

 元々ヤクルトは「打高投低」のチームであり、投手陣には大きな期待は持てなかったが、ここ数年は肝心の打線もぱっとせず、下位に低迷していた。

 昨年は36歳の坂口智隆が1番を打ち、2番の山田哲人は打撃不振。38歳の青木宣親が3番、MLBでオールスターにも出場したエスコバーは守備はともかくバットでは迫力不足。正捕手の中村悠平も戦線離脱。村上宗隆は主軸の働きだったが、主要なパーツがいくつも揃わず、最下位だった。

 今季は、かねてから1番候補の評判が高かった塩見泰隆がリードオフマンとして定着。2番青木宣親が脇役に徹し、3番山田哲人が復活。一塁から三塁にコンバートされた村上宗隆が絶対的な4番として君臨。新外国人のオスナ、サンタナは抜群ではなかったが、村上の後を打つことで、相手投手にプレッシャーを与えた。そして復活した中村悠平は、6番バッターとしてもしぶとい打撃で度々殊勲打を放った。

山田と村上という2人の主砲に、下位打線を固める中村ら。ヤクルト打線はまさに「線」となった ©Hideki Sugiyama

 故障もあって長く低迷していた元首位打者の川端慎吾は、代打で30安打。これは2007年、チームの先輩真中満が記録した31安打に迫る史上2位の記録。昨年揃わなかったパーツがすべてそろった印象だ。

先発・救援の整備と奥川の急成長

 投手陣はエース格の小川泰弘、現役最多勝の石川雅規など新鮮味はなかったが、シーズン間際に巨人から田口麗斗が加入。明るいキャラクターでベンチを盛り上げた。

 救援投手陣は、昨年、新人で最多ホールドを記録したセットアッパーの清水昇が引き続き好調。クローザーのマクガフ、中継ぎの今野龍太、石山泰稚らも手堅い活躍を見せた。

 高津監督は9月から田口を救援にまわし、左のワンポイントで起用。これが効果的だった。新外国人のサイスニードが後半戦に調子を上げたこともあったが、選手起用の妙を見せた印象だ。

奥川は日本シリーズ第1戦でも堂々たるピッチングを見せた ©Hideki Sugiyama

 そして2年目の奥川恭伸が、6月に入って10日以上の広い登板間隔ながら先発で安定した成績を残し、終盤にはエース格に。この奥川の成長は非常に大きかった。

 来季、盤石の4番村上、働き盛りの山田を中心とした打線は依然、期待が持てる。奥川がエースとして活躍すれば連覇の可能性もあるだろう。<パ、セBクラス編から続く>

文=広尾晃

photograph by Sports Graphic Number