12月18日、19日にリーガ18節のバルサvsエルチェ戦、グラナダvsマジョルカ戦を撮影しました。
この18節をもってリーガはクリスマス休暇に入りました。ただこの後も、コロナなどの影響で消化できなかったカードが数カード行われました。その一部のチームを除いては、節目の節となりました。
また日本のように年末年始での連休は一般的ではないため――19節は12月31日、1月の2、3日と年を挟んで実施されています。

18時半キックオフのバルサvsエルチェ戦は、カンプ・ノウで撮影する2021年最後のカードということもあり、試合前に最上段まで足を運んでみました。
ちょうど日が沈むタイミングで、夕焼けバックのスタジアムを撮影できました。

最前列で感じる迫力も醍醐味ですが、何度か観戦されているような方は、バックスタンド最上段からの観戦もおすすめです。メインスタンドよりもバックスタンド側が高くなっているため、記念撮影にももってこいです。
負傷欠場も超新星ペドリがゴールデンボーイ



試合前には、ゴールデンボーイを受賞したペドリがトロフィーをお披露目しました。ただそのペドリやアンス、デストなどけが人が多数いるため、シャビの采配にも注目が集まります。なお、このカードではCFに初出場のジュッグラが選ばれました。

そのジュッグラが前半16分、CKから頭で合わせてゴールを決めます。采配が的中したシャビも喜びを表します。


幸先よく先制したバルサ。その中にあってシャビはコーチングエリア最前列で指示を送り続けます。ゲームが切れた際には、ブスケッツを呼び寄せるシーンも撮影できました。

守護神のテア・シュテゲンがこちらをふと振り向いた際に撮影した画像を見ると……グローブにたくさんのトゲトゲが確認できました。

先制点から3分後の場面。ガビが中央付近でパスを受けると、ワンタッチでコントロールして相手をかわしながらターン。そのまま縦に突き進みシュート、ゴラッソで2-0とします。

前半にはエルチェが攻め込むシーンはあまりありませんでしたが、バルサのゴール前に入り込んできたボジェを撮影すると、その左袖にはカタカナで『スフィダンテ』と日本企業のスポンサー名が入っていました。



バルサは後半に入っても前線のガビ、アブデ、ジュッグラが攻め立てます。特にシャビが監督になってから抜擢されたアブデがサイドでボールを受けると、何かやってくれるという期待でスタジアムが沸いていました。
シャビがペットボトルを蹴り飛ばす姿に見た一端


シャビはその若手にも大きな身振り手振りで指示を伝えます。その姿からはどことなくペップの姿が連想されました。
そんな中、エルチェ陣内でのエルチェのスローインの際に、バルサが前線からプレスをかけたものの、逆サイドまでボールを展開されてしまうと、シャビは足元のペットボトルを蹴り飛ばして怒ります。シャビが選手に求めているものの一端が垣間見れたような気がします。

シャビの危惧が的中したかのように62分、63分と連続でエルチェがゴール。試合を振り出しに戻します。


2−2となった以降もアブデが積極的にサイドから攻撃を仕掛けますが、ゴールまではたどり着きませんでした。
劇的なゴール、17歳ガビが託されたもの


しかし85分、ガビがデンベレとのワンツーで抜け出すと、ノールックでマイナス気味にパス。 そこに交代で入ったニコが詰めて劇的な終了間際の逆転ゴールが生まれました。
ノールックでパスを出したために、対応したDFは前方に身体を投げ出しパスカットを試みていますが、そのDFの背中側をボールが抜けていくのが写真から見て取れます。
この局面での落ち着いた判断と85分走った後でもそれを実現させた技術にはびっくりさせられます。


劇的なゴールにチーム全体が喜びを爆発させます。



逆転後、シャビに呼び寄せられ指示を与えられる17歳のガビは、最後まで必死にボールに食らいつく姿が印象的でした。前述の技術だけでなく、とにかく相手の前に入ってボールを奪おうという気合が写真に映り込みます。
最後には足に痙攣を起こしているのか、ふくらはぎあたりを気にするそぶりも見せていましたが、その足元を写すと、右足のスパイクの紐は解けたままでした。一説によると靴紐を結ぶのが苦手なため、同年代のニコなどに結んもらったりしているようです。

3−2で勝利したバルサ。格下エルチェ相手に2点差を追いつかれた展開自体には厳しい批評もありますが、ドラマッチックな逆転劇にスタジアム全体が一体となり、盛り上がったことも間違いありませんでした。
アンダルシアの地で先発復帰した久保


そんなバルセロナでの撮影の翌日、早朝便でグラナダに移動しました。グラナダは、スペイン南部アンダルシア州にあり、世界遺産のアルハンブラ宮殿などが有名です。
14時開始のグラナダvsマジョルカ戦の行われるヌエボ・ロス・カルメネススタジアムでは、快晴のもと入念に散水が行われていました。
スタジアムには、マジョルカから駆けつけたというマジョルカファンも発見、カメラを向けると「タケー」と呼びかけてくれました。





久保は、週中に行われた国王杯に続き先発出場となりました。スタッフに見つめられる中、入念に行われるストレッチ、グループでのランニングやパス回し、最後にはFKの感触を確かめる姿を撮影できました。グラナダの客席には、司祭の格好をしたサポーターも発見、 さすがはアルハンブラ宮殿のお膝元のチームだけあります。


両チーム入場の際には、最後尾から久保に続きイ・ガンインが登場。マドリー戦以来の日韓コンビの同時先発となりました。この試合の先発メンバーが、現マジョルカでの一番攻撃的なスタイルではないかと感じますが――ほぼ順位を同じくする相手に対し、マジョルカ監督ルイス・ガルシアの勝負に出た決断が見て取れました。
チームフォト撮影後にはスタッフに水を求める姿が見られました。
久保は2列目右でチャンスを作り出した

試合が始まると、久保は4-2-3-1の2列目右にポジションを取りました。キックオフ直後、ルイスガルシアの思惑通りマジョルカが攻めに出ます。久保は早速逆サイドまで流れて、深くまで切り込みチャンスを作り出します。


ただグラナダがマジョルカのボランチへのマークを修正してくると、マジョルカはボールを前線に供給できなくなりました。サイドに開いた久保が20秒以上手をあげてボールを呼び続けるようなシーンもありました。
また守備時も前線からプレスをかけることはできず、久保も一度ハーフライン辺りまで戻ってブロックを作りながら守備する時間が増えました。



やや膠着した状況で、久保はサイドからやや中に絞ってボールを要求するようになり、半身でボールを受けると一気に加速しドリブルで持ち運びます。これにはマークについたミジャもファールで止めるしかありませんでした。この際、右足首を踏まれる形になり、久保はかなり痛んでいるようでした。

直後のFKをものにできなかったマジョルカは、中盤でボールを受けたイ・ガンインが激しいマークにあい、そこからのカウンターで失点してしまいます。ミスからの失点に、監督も苛立ちを隠しきれませんでした。
個人での打開に加えてチームメートとの意思疎通


失点後も久保は中に絞って位置でボールを受けては振り向き前進を試み、さらにファールを受け相手にイエローカードを蓄積させます。そして23分、またも中盤でDFラインからパスを受けると、今度はタイトにプレスを受けているのを感じると、前を向くことはせず、逆サイドに一気に展開を見せます。

そこに走り込んだ左サイドバックのハウメ・コスタがしっかりコントロールしたセンタリングをあげるとダニ・ロドリゲスが頭でゴールに流し込み同点に追いつきます。

右サイドに入った久保は、中に絞ってプレーする時間が多かったように感じました。その際にはサイドバックのマフェオが高い位置を取り、意思の疎通も感じられました。

一方でプレーが切れた際には、イ・ガンインが監督に呼び寄せられ、かなり強い口調で指示を与えられていました。失点シーンを含めてグラナダのプレスに苦戦し、前節までの活躍ができていませんでした。




前半も終盤になってくると、久保はまたサイドに開いてボールを受けるようになりました。その際にはイ・ガンインがサポートに入り、2人でのコンビネーションを見せる場面もあり、何度もグラナダ陣地の深くまで久保が切り込むシーンを撮影できましたが、ゴールにまでは結びつきません。また、この時間帯から何度か膝を気にするようなシーンが見られました。
ドリブル中の足元にピントを合わせてみると

久保がかなり撮影ポジションに近づいた際に、ドリブル中の足元にピントを合わせて撮影もしてみました。なかなかピントを合わせることができず“ボツ写真”が増えましたが、しっかり撮れたものもあり、日の丸とTAKEの文字を見てもらえると思います。


ボックス内で久保がロングボールをコントロール、そこから足裏を使ったワンフェイクをいれてダニ・ロドリゲスにパス。久保がリターンをもらおうとコンビネーションを見せましたが、リターンパスが乱れてしまいました。

前半を1−1で終え、後半がスタート。久保は同じく右サイド。後半開始早々、ダニ・ロドリゲスがチャンスを迎えますが、ゴールを割ることはできませんでした。




パスを呼び込む久保。サイドでボールを受けると、強引に切り込みシュートまで持って行きましたが、枠をとらえ切れず悔しがります。一方のグラナダは60分に39歳ホルヘ・モリナが2点目をゲットします。

身体から感じる強さと増したキレ




相手に引っ張られながらも強引に前進する久保は、急ストップしながら足の後ろ側にボールを通して一気に2枚を剥がします。
そこから狙ったスルーパスは、パスをカットにきていたDFの裏をついてDFラインの裏に抜けますが、若干長くチャンスにはなりませんでしたが、怪我明け後のリハビリの成果でしょうか、身体にかなり強さを感じ、キレも増しているようでした。


マジョルカが1点を追いかける展開の中で、久保もゴール前に飛び込みましたが、ボールが来ず、悔しがります。ガルシア監督もコーチングエリア最前線で指示を飛ばします。


サイドから切り込みシュートを狙う久保、また中盤を一気に駆け上がり、なんとかチャンスを作ろうとしましたが。最後までマジョルカはゴールをこじ開けることができませんでした。


この試合ほとんどボールを奪われることもなくチーム唯一の推進力となっていた久保ですが、体力的にも限界が近づいていたか、パスがカットされるなどが見られるようになり、90分のホルヘ・モリナのハットトリック直後には膝に手をつくシーンも見られました。
応援に駆け付けたファンに謝罪しているかのように

クリスマス休暇が入ることも考慮されていたと思いますが、久保にとっては怪我明け後、初のフル出場。しかし、1-4と直接の順位争いをするチームに破れてしまいました。
自分の調子が良かっただけに、チームを勝たせることができなかった悔しさでしょうか、ピッチを後にする表情は苦しそうでした。また、応援に駆けつけたサポーターにあいさつする際は、お礼というよりは謝っているようにも見えました。


90分間起用されたということで、怪我の心配はもうないとの判断だと思いますが、若干気にしているようなシーンもありましたので、休暇でしっかりリフレッシュしていることを願います。
年明けのリーグ戦再開初戦は、ホームにバルサを迎えての一戦。シャビ率いるバルサと若き有望株との対決、そして久保の活躍を期待したいと思います。
最後に――記事の主題とは離れますが、グラナダで面白かったことを一点紹介します。
試合のキックオフが14時だったため、撮影後の送信作業などを終えてからもゆっくり街を散策する時間が取れました。
夕食のため立ち飲みバルなどが軒を連ねる一角に足を運びました。
その中の一店の看板メニューが、キンキンに凍った子豚型(タコのようですが「子豚だ!」とのこと)の陶器に白ワインがが並々と注がれており、それをやや大きめのお猪口のような白い陶器で飲むというもので、小魚のフライに合わせて絶品でした。
カテドラルからも徒歩圏のLa Bodega de Antonio、ぜひグラナダに来た際には。

文=中島大介
photograph by Daisuke Nakashima