鷹木信悟vsオカダ・カズチカのIWGP世界戦が、1月4日、東京ドームで行われる。そして翌5日、その勝者にウィル・オスプレイが挑む。

 鷹木の2021年は波乱万丈だった。

「まあ、周りからは『鷹木は運がいいね』なんてこと結構言われたけど。この業界だけじゃない。どんな物事も、運とタイミングを味方につけた者が本当に強いんだろうな。だから、振り返ってみればオレは我道驀進って言っているけど、自分の信念を貫いた結果だと思っているよ」

 自身でも予期しない1年になったことに、鷹木は驚きにも近い感慨を示した。

「いろいろあったよ。6月にこのタイトルを奪取したが、8月にはオレ自身が新型コロナウイルスに感染。復帰戦がまさかのタイトルマッチ。本当にいろいろあったが、なんとかこのベルトを守ることができた」

 オカダが『G1 CLIMAX』の優勝者として鷹木に挑んでくることは承知しているが、古い4代目のIWGPヘビーのベルトを持ち出してきたのは気に入らない。

「オカダの野郎は、いまだにオレに対して暫定チャンピオンだとか言っているらしいな。あの野郎、ふざけやがって。百歩譲ってだ、オスプレイに言われるならわかるよ。だが、オカダ、お前にだけは言われたくねえ。本当に頭に来るよな、アイツら。あの2人はまとめて潰さなきゃ気がすまねえんだよ。1月4日は2021年の集大成を見せてやる。 1.4、1.5を勝ち抜いて、偽物と4代目のベルトは置いといて、このベルトを抱えてやるぜ」

「1.4」東京ドームに向けて決意を語った鷹木信悟

新型コロナ感染も…七転び八起きだった2021年

「七転び八起きってやつだな。最終的に立ってりゃいいんだから。何度転んだって、何度潰されたって、立ち上がりゃいいんだから。その結果がこれだから」

 鷹木は勝った試合よりも、負けた試合の方が心に残っているという。

「1月のNEVERの棚橋弘至戦(名古屋)とか、3月のオスプレイとの『NEW JAPAN CUP』決勝(仙台)、あと5月の『レスリングどんたく』のオスプレイとのタイトルマッチ(福岡)もそうだし、そういう負け、負けっていうのがすごく印象的なんだ。その負けがあったからこそ、浮くことができたんだろうなと思っている。でも特に印象的だったのは、意外かもしれないけど、9月のメットライフドームのEVIL戦かな」

 新型コロナからの復帰戦をもっとも印象的な試合にあげた鷹木。実際にやってみるまでは、自分でも試合ができるかどうかわからない、という状態だったのだろう。

「コロナ禍っていうだけあってね、まさかのオレ自身が8月に感染してしまって。隔離期間もあったし、練習ができない状況で、10日ぐらいで体重も4、5キロ落ちて、『これヤバいな、運も尽きたな』とか思った。ギリギリ間に合って、メットライフドームのメインに上がることができたけど、危ない場面で仲間たちがヘルプしてくれた。オレの中であの1試合っていうのは、自分自身が『大丈夫かな?』と思っていて、たぶんお客さんも『鷹木、大丈夫なのかよ』って思う中で戦って勝つことができた。コロナに勝ったと言ったらちょっと大袈裟かもしれないけれど、やっぱり一番に印象に残ってる試合かな」

 鷹木は東京スポーツが制定する「プロレス大賞」のMVPも獲得した。「鷹木しかいない」というのが大方の見解だったから、当然の受賞だった。プロレス大賞の技能賞をもらったのはドラゴンゲート時代の2008年。MVPまでは長い道のりだった。

「負け惜しみで『オレは記録に残らなくてもいい、記憶に残るレスラーでいたいんだ』って思っていたけど、この業界でやるかぎりは記録にも記憶にも残りたい。オレはもう39歳だけど、ギリギリ間に合ったって感じかな。よく言っていたじゃない。棚橋、オカダ、内藤、飯伏とかのいるトップの中のトップに足を入れるか、追い出されるかはオレ次第だって。ここでMVPをいただいたことで、また追い出されるかもしれないけど、そこに入り込んだかなって感じはあるよね」

「プロレス大賞」MVP受賞は鷹木にとって大きな勲章となった

「オカダに50周年を背負う資格はねえよ」

 筆者が2021年の年間最高試合を選ぶなら、5月4日のオスプレイvs鷹木を選ぶ。試合の開催地が福岡だったことがこの試合が選出されなかった要因だろう。プロレス界は、どうしても東京での試合に注目が集まってしまいがちだからだ。鷹木にはMVPと合わせて、年間最高試合も取ってほしかった。1.4でオカダを倒して、1.5でオスプレイと戦う鷹木を見てみたいと思う。会場は東京ドームだから、今度こそ文句ないだろう。

「オレはプロレスが好きだし、プロレスに対してすごいリスペクトがある。レスラーとしてなめられたくないんだよね。だからこそ、天龍源一郎さんなんかにも教わったけど、やっぱり“痛みの伝わるプロレス”だよ」

 12月21日から24日にかけて、後楽園ホールで鷹木とオカダのタッグマッチによる最後の前哨戦が3回行われたが、直接の勝敗はなかった。互いに相手を研究していることを感じさせる内容だった。

「1.4は本気のオカダで来てほしい。何の言い訳もされたくないからね。オレには迷いも不安もないよ。自信しかない。1年やってきたことを出せば、いつもどおりの鷹木信悟を貫けば勝てると思っている。ひとつ引っかかることは、この前の後楽園でオカダに言われた『鷹木さん、あなたの背中じゃ新日本の50周年は背負えない』。あえて、そこでオレは言い返さなかった。家に帰って冷静に考えたけどな、あそこで『いや、オレが新日本の50周年を背負うんだ』っていうのも違うと思うし。50周年っていうだけだから、選手全員で背負って、その中でチャンピオンがトップにいるっていうのでいい。

 逆に聞くけど、オカダが新日本の50周年記念、背負う覚悟はあんのかなって。時代は令和になって、IWGPも世界ヘビーになった。未来に向かって走っていっているのに、オカダは先代のベルトを持ち出しておもちゃ扱いしてる。こんなヤツに50周年、背負う資格はねえよ。心配するな、オカダ。オレがやってやるよ」

鷹木は「オカダに50周年を背負う資格はない」と一刀両断

ベルト3本の異常事態に「新日本が迷走しているよ」

 鷹木はもう一本の“偽物のベルト”を持っているオスプレイにも触れた。

「それから、1.5についても言っておこうか。ウィル・オスプレイ。偉そうにベルト待ってるな。アイツがIWGP世界ヘビーを自作したとき、オレもブチ切れたけど、日本に入国したと聞いたら素直にうれしかったよ。なんか、アイツのことは憎めなくてな。心の奥にリスペクトがあるのか知らねえけれど。ただ、アイツに関してオレは大事なところで、大事な試合ですべて負けている。この1.5でオスプレイに勝たなければ2021年も終われねえし、2022年も始まらない。冷静に見てみたら、最高峰のベルトが3本あるってコレ、ハッキリ言って新日本が迷走しているよ。正しい道を作れるのは、オレしかいないと思っているから」

オカダが4代目のIWGPのベルトを持ち出したことに不快感をあらわにしている鷹木

 鷹木はそう胸を張った。

「本当の意味で真価が問われるのは2022年。そこでいきなり1.4、1.5っていう正念場があるから、そこを乗り切るか乗り切らないかで、オレの今後、いつまでやるかわからないけど、40代、50代のプロレス人生が変わってくるな。これはね、またベルトの問題になってしまうけど、1.4、1.5、これは新日本プロレスだけじゃなくて、プロレス界のためにもオレが乗り切らないとダメだと思うんだよね。IWGP世界ヘビーとプロレス大賞MVPでプロレス界のテッペンを取ったとは思ってないんで、試練が1.4、1.5と続くけど、そこも乗り越えて2022年もさらに龍の如くテッペン目指して駆け昇っていくよ」

 連日の試練を終えたあと、“本物のベルト”をふたたび掲げることができるのか。鷹木信悟のあくなき挑戦は続く。

文=原悦生

photograph by Essei Hara