ポルトガルで2022年、かつての日本代表10番・中島翔哉は復活なるのか。ポルト時代に同タイミングで加入したコロンビア代表アタッカーとの数奇なライバル物語をお届けする(全2回)

 2019年夏に移籍したポルトで、最初のシーズン、中島翔哉はルイス・ディアスとのレギュラー争いに敗れた。のみならず、フットボールとは直接関係のない問題から、監督とチームメイトの信頼を失ってしまう。セルジオ・コンセイソン監督の2020-21シーズンの戦力構想から外れると、2021年1月にポルトは中島のアルアイン(UAE)への半年間の期限付き移籍を発表した。

 しかし、中島は中東でも不運だった。

 2月中旬、リーグ戦で途中出場してアシストを記録し、6日後の試合に初先発したところまではよかったが、その後、練習中に腓骨を骨折、足首の靭帯も損傷してしまう。以後は、全くプレーできないままシーズンを終えた。

 5月末の時点で、彼の市場価値は350万ユーロ(約4億6000万円)まで落ちた。わずか2年余りで10分の1となったのである。

ディアスはコパ・アメリカでメッシらとともに得点王

 一方、ポルトで中島と左ウイングのポジションを争ったコロンビア人FWルイス・ディアスは、このシーズンも着実に成長した。

ルイス・ディアスはポルトでもコロンビア代表でも存在感を見せている ©Getty Images

 リーグ戦の30試合に出場して6得点5アシスト。欧州チャンピオンズリーグでは9試合で2得点をあげ、チームのベスト8入りに貢献した。コロンビア代表では、2020年10月に始まった2022年ワールドカップ南米予選で常時出場し、12試合で2得点を挙げた。

 さらに、2021年6月から7月にかけてブラジルで行なわれたコパ・アメリカでコロンビア代表の5試合に先発。グループステージ(GS)のブラジル戦で右からのライナー性のクロスをバイシクル・キックで叩き込み、地元メディアを驚嘆させた。準決勝のアルゼンチン戦でも左サイドを引きちぎってゴールを陥れ、ペルーとの3位決定戦でも2得点をあげてチームの勝利に貢献。計4得点で、メッシらと並んで大会得点王に輝いた。

 シーズン終了後、アルアインは中島の能力を高く評価し、期限付き移籍の延長を望んだ。しかし、条件面で折り合いがつかず、2021年6月末、中島はポルトへ復帰する。

 とはいえ、2月に負った故障がまだ治っていなかったし、相変わらずコンセイソン監督は中島を戦力とみなしていなかった。

古巣ポルティモネンセへの期限付き移籍で復調

 ポルトは再び中島の売却を考えたが「保有権の50%が1200万ユーロ(約9億4000万円)」という条件に近いオファーを出すクラブはない。再び別のクラブへ期限付き移籍させるしかなかった。

 8月末、ポルトはかつて中島が在籍したポルティモネンセへの2022年6月末までの期限付き移籍を発表した。

 ポルティモネンセでの入団会見で、中島は「ここへ戻って来れて嬉しい。良いプレーをして、日本代表にも復帰したい」と顔を綻ばせた。懸命にリハビリに励み、10月中旬、ポルトガル杯の試合で先発して74分間、プレーした。公式戦のピッチに立ったのは、8カ月ぶりだった。

 そして11月6日、リーグ第11節のベレネンセス戦でも先発。ゴール前で左からのクロスを受けると、マーカーをかわして右足で強烈に蹴り込んだ。2019年12月以来、実に1年11カ月ぶりの得点。ポルトガルのスポーツ紙「ア・ボーラ」は、中島をこの試合のチームMVPに選んだ。

 11月27日の第12節ファマリカン戦でも先発すると、左からクロスを入れ、これが相手のオウンゴールを誘った。さらに、ゴール前でDFに囲まれながらスルーパスを通し、得点をアシスト。2得点にからむ活躍で、「ア・ボーラ」は再び中島をこの試合のチームMVPに選んだ。

アグレッシブな守備を見せる場面も ©Global Imagen/AFLO

「創造性は素晴らしい」という絶賛、強豪相手に奮闘

 この2試合で、ポルティモネンセのパウロ・セルジオ監督は中島を左サイドではなくトップ下で起用した。セルジオ監督は「中島の創造性は素晴らしい。彼の特長を最大限に生かすには、サイドより中央のポジションが良いと考えている」と説明した。

 11月、中島はリーグ戦の3試合すべてに先発して1得点2アシスト。ポルトガル杯でも1試合に先発して2アシスト。ポルトガル選手協会は、11月の月間最優秀選手投票で中島を3位に選んだ。地元メディアは「小さな日本人マジシャンが、以前のような輝きを取り戻した」と称えている。

 その後、12月12日のリーグ第14節でも先発したものの、後半、内閉鎖筋を痛めて交代。しかし、29日のリーグ第16節のスポルティング戦(アウェー)ではトップ下で先発した。

 スポルティングは昨季のリーグの覇者で、今季も試合前の時点でポルトと同勝ち点の2位。欧州チャンピオンズリーグにも出場しており、GSで2位に食い込んでベスト16入りしている。ポルトガルはもとより、欧州でもトップに近い実力を持つ強豪だ。

スポルティング戦での中島 ©Getty Images

 中島は、前半10分、左のタッチライン沿いでボールを受けると、キレのあるドリブルで中へ切れ込み、マーカーをかわして右足で無回転のミドルシュート。GKが辛うじて手で弾くと、バーに当たって前へ落ちたが、見事なプレーだった。

 その後も中盤を広く動き回り、ドリブル突破と巧みなパス回しで相手に脅威を与え、後半40分までプレー。チームは2−3で惜敗したが、「ア・ボーラ」は「試合を通じて危険な存在であり続けた」と称賛し、3試合続けて彼をチームMVPに選んだ。故障から復帰してまだ2カ月余りだが、トップフォームを取り戻しつつあると考えていいだろう。

ディアスの市場価格は今や52億円に

 最近では、かつてのようにドリブル突破にこだわりすぎず、試合の状況に応じて最良のプレーを選択できるようになっている。トップ下であれば守備面の負担が左サイドより少ないことも幸いしているはずだ。

 ポルティモネンセというポルトガル1部の中堅クラブ(昨季は14位だったが、今季は第16節を終えて6位と好調)で、王様に近い処遇を受け、生き生きとプレーしている。

 一方でディアスは今季もさらなる飛躍を遂げている。縦への突破と決定力にさらに磨きがかかり、リーグ戦で15試合に出場して12得点4アシスト。欧州CLでも6試合で2得点を記録している。

 今や、ポルトガルで最も注目を集める選手の1人となり、市場価格は4000万ユーロ(約52億2000万円)まで跳ね上がった。ポルトへ移籍する前の2019年6月の市場価値が200万ユーロ(2億6000万円)だったから、2年半で実に20倍となった。

カタールW杯出場という目的へ、3つの選択肢

 クラブと代表での活躍は大きな注目を集め、リバプール、バイエルン・ミュンヘン、バルセロナといった世界のトップ・オブ・トップのクラブが7000万ユーロ(約91億4000万円)前後の移籍金で争奪戦を繰り広げていると報じられている。

 2019年7月、2人がポルトへ入団した時点では中島が先行していた。しかし、ディアスは中島をあっさり抜き去ったばかりか、はるか彼方へ行ってしまった。当時、中島が思い描いていたであろう夢を、ディアスが実現しつつある。

 しかし、中島は現実を直視するしかない。彼のポルティモネンセへの期限付き移籍は今年6月末までで、ポルトとの契約は2024年6月末まで残っている。

中島としてはまず、ポルティモネンセで結果を残すことこそ肝要だろう ©Getty Images

 これから中島がやるべきことは、はっきりしている。ポルティモネンセで、圧倒的な結果を出し続ける。そして、日本代表へ復帰し、11月21日に開幕するワールドカップ(W杯)カタール大会出場を目指す。

 この目的を達するため、今年後半、彼には以下の3つの選択肢があるのではないか。

 1)6月末までの期限付き移籍満了後も、ポルティモネンセでプレーを続ける(完全移籍もしくは期限付き移籍の延長)
 2)ポルトへ復帰し、レギュラー獲得を目指す
 3)ポルティモネンセ以外のクラブへ完全移籍もしくは期限付き移籍する

 このうち、2)はポルトのコンセイソン監督が中島を再び戦力としてみなすかどうかが不透明。仮に復帰できたとしても、トップ下ではなく左サイドで起用される可能性が高い。

 左サイドではトップ下より守備の負担が大きいから、持ち味を十分に発揮できないかもしれない。また、ディアスが退団したとしても、昨年7月に元U-23ブラジル代表の左ウイング、ペペ(24)が加入しており、ポジションを取れる保証はない。3)の場合もトップ下で起用されるかどうかは未知数だ。

 となると、引き続きポルティモネンセでトップ下でプレーし、大車輪の活躍をみせることが日本代表復帰とW杯カタール大会出場への近道となるのではないか。

森保Jでトップ下は考えづらく、左サイドは激戦区だが

 ただし、日本代表へ復帰できたとしても、トップ下でプレーさせてもらえるとは限らない。昨年10月のオーストラリア戦以降、森保一監督は4−3−3を採用することが多いが、このフォーメーションにはトップ下のポジションがない。

 今後、中島がとてつもない活躍をして森保監督にトップ下のポジションを作らせるか(この場合のフォーメーションは、4−2−3−1となるだろう)、左サイドであれば攻守両面で三笘薫、南野拓実、古橋亨梧、前田大然らを蹴落とさなければならない。

 W杯出場を目指すのであれば、彼に残された時間は多くない。少なくとも今年前半、圧倒的な結果を出し続けなければならない。

森保ジャパン初期で見せた創造性を、再び見せる機会は来るか

 中島翔哉特有の自由奔放でファンタジーに満ちたプレーは、閉塞状況にある日本代表にとって起爆剤となるかもしれない。

 これからの半年ほどで、2019年7月以降の「失われた2年半」を取り戻せるかどうか。キャリア上、最も重要な局面を迎えているのは間違いあるまい。<前編から続く>

文=沢田啓明

photograph by Gualter Fatia/Getty Images