ロックアウトが継続する中、米スポーツサイト「The Athletic」は早くも今季の開幕投手に大谷翔平の名を挙げた。

 今季も6人ローテーションを掲げるエンゼルスの現時点でのローテーション候補は以下の8投手と予想されている。

 ノア・シンダガード(29歳、通算47勝)

 大谷翔平(27歳、通算13勝)

 パトリック・サンドバル(25歳、通算4勝)

 ホゼ・スアレス(24歳、通算10勝)

 マイケル・ローレンゼン(30歳、通算23勝)

 グリフィン・キャニング(25歳、通算12勝)

 ハイメ・バリア(25歳、通算17勝)

 リード・デトマーズ(22歳、通算1勝)

 実績ナンバーワンは、3度の二桁勝利を挙げオールスターにも出場したシンダガードだが、20年に受けたトミー・ジョン手術の影響で昨季は2イニングしか投げていない事実を考えれば、今季も彼の立ち位置はリハビリ過程の投手と言える。投球イニングは最高に順調な道筋を辿ったとしても130回程度がマックスとなるだろう。

 その他の投手に目を移しても、1年間を通してローテーションを守ったのは、18年に26先発で10勝を挙げたバリアしかいない。正直ベースで言うならば、シンダガードと大谷以外の6人はローテーションの5番手、6番手がいいところ。開幕投手は大谷しかいないというのが現状だ。

大谷は今季の開幕投手を任される可能性が高い

大谷を上回る投手補強は期待薄?

 ロックアウト解除後もエンゼルスは先発投手の補強に手を尽くすだろう。FAマーケットに名を残し、開幕投手を託せる大物は、ザック・グリンキー(38歳、通算219勝)、クレイトン・カーショー(33歳、通算185勝)くらいか。トレード補強という手もあるが、昨季29本塁打を放った28歳のジャレッド・ウオルシュ、頭角を現しつつある若手外野手のブランドン・マーシュ(24歳)、ジョー・アデル(22歳)の中から2選手を放出しなければ、ローテーションの柱として期待できる先発投手を補強することは難しい。今後も大谷を上回る投手の補強は期待薄と感じる。

 8年ぶりのポストシーズン進出には心許ないローテーションではあるが、昨季大谷が残した数字は開幕投球に相応しい。

 23先発で9勝2敗、防御率3.18。勝率は.818に及び、奪三振率は10.8。加えて1イニングあたりに許す安打と四球の数を示すWHIPは1.09と安定感を示している。チームの先陣を切りシーズンを託されるに十分な数字。日本ハム時代の15、16年以来3度目、メジャーでは初、日本人投手としては7人目の大役に異論を唱える者はいないだろう。

開幕戦のアスレチックスに思い出す、昨年の“珍道中”とは?

 その開幕は3月31日、敵地でのアスレチックス戦になる。オークランドでの成績は過去4年間でこんな数字が残っている。

 投手として、1勝2敗、防御率5.50。打者として、打率.222、3本塁打、10打点。相性は良いとは言えないが、快投、快打に期待したい。大谷とオークランドと言えば、忘れられないのが昨年5月27日に起こった『珍道中』だ。

 実はこの日、大谷は先発予定だったが、試合開始1時間40分前に「先発回避」が突然に発表された。

 チーム宿舎のあるサンフランシスコのダウンタウンからチームバスを利用し球場入りしようとした大谷だったが、サンフランシスコとオークランドを結ぶ「ベイ・ブリッジ」で車両複数台による衝突事故が発生。大谷が乗車したバスが事故渋滞に巻き込まれてしまった。全車線閉鎖の事態で復旧までは75分との発表。橋上で身動きの取れなくなった大谷と同乗していた水原一平通訳とその日バッテリーを組む予定だったカート・スズキは「BART」(高速鉄道)へと乗り換える決断を下した。

大谷翔平とカート・スズキ

 しかし、機転を利かせたつもりが、更なる遅延に繋がってしまった。4路線ある複雑な乗り換えを把握しておらず、誤った電車に乗ってしまったのだ。結果、右往左往の大遅刻。先発回避を発表したジョー・マドン監督は言った。

「登板への準備を考えれば午後4時には球場入りしなければならなかったが、1時間以上オーバーしてしまった。交通手段の問題。変更はやむを得なかった」

地元鉄道はまさかの大谷登場で大騒ぎ

 だが、地元の人が「危ないから夜間には乗らない」と語る公共鉄道を二刀流の大スターが利用したことで周辺は大騒ぎ。BARTが「ワオ! ショウヘイ・オオタニのような野球界のスーパースターを迎えることができて光栄です」と公式ツイッターで喜べば、地元放送局のNBCスポーツ・ベイエリアは公式ツイッターでBARTに乗車する大谷の加工画像を掲載するほどの騒ぎになった。

 NBCスポーツは更なる続報で共に行動していたカート・スズキへ「このベイエリアに住んでいたのだから、もう少し上手にオオタニを誘導できたのではないか」と提言。かつてアスレチックスに在籍していたベテラン捕手へ意見も投げかけたが、「BARTの乗り換えを間違えた時の苦労は多くの人が共感できるだろう」と、当事者の気持ちも慮った。

 2022年3月31日。開幕投手として大谷翔平は投打同時出場を果たすだろう。その際に大谷は、通常通りチームバスで球場へ向かうのか。それともリスク回避でBARTを選択するのか。大役の日のちょっとしたひとネタとして、心に留めておきたい。

文=笹田幸嗣

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