2021年から2022年(対象:12月〜4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。箱根駅伝部門の第4位は、こちら!(初公開日 2022年1月13日/肩書などはすべて当時)。 第98回箱根駅伝は青山学院大学が往路復路を制し、総合で10時間43分42秒の新記録を打ち立てて完全優勝を果たした。昨年の箱根は1、2年生の活躍が注目されたが、今回は4年生ら上級生の走りが目立った大会になった。彼らの多くは、卒業後も実業団で競技を続けるが、力がありながらも潔く引退する選手が目立つのも今年の進路の特徴のひとつだろう。

この春、卒業を迎える箱根ランナーの進路を追った(全2回の1回目/#2へ続く)。

青学大)主将飯田の「富士通」入社、一般企業組は?

 完全優勝を果たした青学大は、主将で4区3位と好走した飯田貴之が富士通、1区エントリーだったが当日変更で悔しさを噛みしめた湯原慶吾が小森コーポレーション、市川唯人が愛三工業に入社予定だ。

 注目は、飯田の富士通入社だろう。

 富士通は今年のニューイヤー駅伝で2区、4区がブレーキになって12位に終わっているが、東日本実業団駅伝ではHondaをかわして優勝している強豪だ。個に優れた選手が多く、東京五輪に出場した5000m日本代表の松枝博輝(順大卒)と坂東悠汰(法大卒)、マラソンの日本代表の中村匠吾(駒大卒)、またマラソンの日本記録保持者(2時間4分56秒)の鈴木健吾(神大卒)もいる。他にも塩尻和也(順大卒)、浦野雄平(国学大卒)、塩沢稀夕(東海大卒)ら力がある選手が在籍している。飯田は、3年目に伸び悩んで苦しんだが、春からは強い選手にもまれることでさらなる成長が望めそうだ。多種目でお手本がいることは、トラックからいずれマラソンを狙う飯田にとって最高の環境になるだろう。

©Yuki Suenaga

 小森コーポレーションはニューイヤー駅伝こそ26位だったが、神戸駿介(駒大卒)ら若い世代に勢いがある選手が多い。湯原は2年の時、アンカーで優勝のゴールテープを切った後、故障もあって苦しんだが実業団で一皮むけて大きく成長できるか。

 ちなみに前回6区3位、今回は6区8位で運営管理車の原晋監督に「スマイル、スマイル」と声掛けされた高橋勇輝は現役を引退し、日本マクドナルドに入社予定だ。

順天堂大)九州勢は地元の実業団入り

 2位に躍進した順天堂大の卒業生は、それぞれの地元・九州で選手生活を送る選手が多い。

 主将で6区区間賞を獲り、総合2位の狼煙を上げた牧瀬圭斗はトヨタ自動車九州、8区区間賞の津田将希は西鉄、10区アンカーを務め総合2位でフィニッシュを決めた近藤亮太は三菱重工、小島優作はYKK、吉岡智輝は九電工に入社予定だ。

 牧瀬が入社するトヨタ自動車九州は、順大の大先輩で初代山の神の今井正人がおり、4年時に2区を走った2つ上の先輩の藤曲寛人もいる。ニューイヤー駅伝では右田綺羅(創価大卒)といった若い選手の頑張りもあり、関東や関西勢に一歩も引かないレースで8位入賞を果たした。6区山下りの名手・今西駿介(東洋大卒)もおり、自分の強みを活かした競技生活を送り、駅伝でも大きな貢献ができるだろう。

 津田も地元・福岡に帰り、西鉄で競技生活を続けることになる。近藤も長崎愛が強いのだろう。長崎出身の選手は、その多くが地元に戻り、競技を続けている。尊敬する井上大仁(山梨学大卒)、さらに定方俊樹(東洋大卒)らマラソンに強い選手に加え、順大の先輩の的野遼大らトラックに強い選手もいる。駅伝も強く、今年のニューイヤー駅伝は総合4位。近藤の成長度によっては、来年は箱根の前日に駅伝を走っているかもしれない。

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東洋大)主将の宮下は「コニカミノルタ」へ

 箱根駅伝総合4位の東洋大は、主将の宮下隼人がコニカミノルタ、蝦夷森章太は地元愛知県のトーエネック、腰塚遥人はJFEスチールに入社予定だ。

 コニカミノルタは、今年のニューイヤー駅伝は21位だったが、名取燎太(東海大卒)や星岳(帝京大卒)ら若手が中心になり、チームが転換期にある。宮下は昨年、故障続きで苦しい1年だったが、コニカミノルタでは山だけではない強みを見せていけるか。

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中央大)今年の箱根未出走・森は「Honda」へ

 10年ぶりのシード権を獲得した中央大。2区15位の手島駿は現役を引退、3区7位の三浦拓朗は大塚製薬、森凪也はHonda、アンカーを務めた井上大輝は大阪ガスへの入社を予定している。

 注目は、森だろう。Hondaは今年のニューイヤー駅伝では初優勝を果たし、設楽悠太(東洋大卒)を始め、中山顕(中大卒)、土方英和(国学大卒)、伊藤達彦(東国大卒)、青木涼真(法大卒)ら錚々たるメンバーがおり、トラックもロードも強い。ただ、個々が独立し、自ら考えて走ることが求められるので最初はその環境に戸惑うかもしれない。それでも10000m28分22秒28を持つ高いポテンシャルで、さらに走力を磨いていけるはずだ。

 三浦は、箱根3区7位と上々の走りを見せて、総合6位に貢献した。10000m28分20秒13の持ちタイムは、大塚製薬でトップクラス。清水颯大(順大卒)、秦将吾(山梨学大卒)ら近い年代の選手と競ってレベルアップできそうだ。

 井上が進む大阪ガスは、関西実業団駅伝で6位になり、今回のニューイヤー駅伝への出場を逃した。中村友哉(青学大卒)らがいる中、井上が走りでチームを来年、ニューイヤー駅伝出場に導けるだろうか。

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国学大)箱根4年連続1区の藤木は「強豪・旭化成」へ

 国学院大学の主将である木付琳は地元九州に戻り、九電工へ、藤木宏太は旭化成、島崎慎愛はSUBARUに入社予定だ。木付が進む九電工には大分東明高の先輩であり、マラソンに強い大塚祥平(駒大卒)がいる。昨年福岡国際マラソンでMGC出場権を獲得しており、近くで五輪出場に挑戦する姿を見るのは良い学びになるだろう。また、舟津彰馬(中大卒)らトラックに強い選手もおり、いろんな刺激を受けられるはずだ。今回のニューイヤー駅伝は27位と低迷したが、吉岡(順大)とともに新しい風を吹き込み、上位進出の役割を担う。

 箱根で4年連続1区を駆けた藤木は旭化成の相澤晃(東洋大卒)らスピードランナーの傍で、どこまでスピードを磨いていけるのか。また、相澤を超えて行けるのか、非常に楽しみだ。

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 SUBARUは、今回のニューイヤー駅伝2位と台風の目になった非常に質が高いチーム。島崎は自らの走力を高めつつ、来年の元旦のニューイヤー駅伝への出場を実現できるか。

 1年から箱根を走り、前回につづいて今回も希望の5区を走り、山の神候補の一人になった殿地琢朗は現役を引退し、住宅関連の企業に就職予定だ。

【#2へ続く】

文=佐藤俊

photograph by AFLO