中島翔哉の活躍で日本のサッカーファンの中で有名になったポルトガルのポルティモネンセ。ブラジル在住のライターが現地取材し、中島や中村航輔、さらには浦和レッズで活躍したロブソン・ポンテ副会長らに直撃した記事をお届けします(計4回/#1、#2、#4も)

 4月10日のポルトガルリーグ第29節ファマリコン戦の2日後、チーム練習を終えた日本人選手にクラブハウスでインタビューした。

 元日本代表FW中島翔哉(27、元東京ヴェルディ、FC東京、カターレ富山)、やはり元日本代表のGK中村航輔(27、元柏レイソル、アビスパ福岡)、若手FW川崎修平(20、元ガンバ大阪)の3人が在籍するが、川崎は故障からのリハビリ中ということもあり、中島と中村に話を聞いた。

 中島は、ポルティモネンセへ移籍して人生が大きく変わった。

 細かいタッチを繰り返してマーカーの逆を取るドリブル、咄嗟に繰り出すスルーパス、そして思い切ったミドルシュート……。日本人選手の中でもっとも南米的なテイストを持つアタッカーだろう。

 10歳で東京ヴェルディのアカデミーに入り、18歳でプロ契約。しかし、出場機会に恵まれず、2014年にFC東京へ。すぐにカターレ富山(J2)へ貸し出されて経験を積んだが、FC東京へ復帰後も常時出場は叶わなかった。

ポンテ副会長が中島翔哉の才能を高く評価した

 このような状況に置かれていた中島の才能を高く評価していたのが、かつてレバークーゼン、浦和レッズなどで活躍し、2016年からポルティモネンセの強化担当を務めるロブソン・ポンテである。2017年8月、まずは期限付き移籍で獲得した。

 チームはその前のシーズンに2部を制覇して昇格を果たしており、「1部の舞台で強豪に伍して戦うための極めて重要な補強」(ポンテ)だった。

ポンテ副会長 ©Hiroaki Sawada

 ポルトガル1部では、世界トップを目指す野心に溢れた選手が欧州、アフリカ、南米など世界中からやってきて鎬を削る。選手の身体能力、技術、インテンシティーは相当に高い。

 このハイレベルなリーグで、当時23歳の中島は全幅の信頼を置く首脳陣とコーチングスタッフに支えられて躍動する。持ち味を存分に発揮し、2017-18シーズンには、リーグ戦29試合に出場して10得点12アシストという見事な結果を残した。

 2018年ワールドカップ(W杯)出場こそ逃したが、W杯終了後、森保一監督に高く評価されて代表の常連となった。その後、2019年2月にアル・ドゥハイル(カタール)へ日本フットボール史上最高額の3500万ユーロ(約43億7500万円)で移籍した。

ポルティモネンセ復帰後は輝きを取り戻しつつある

 この年の6〜7月にブラジルで開催されたコパ・アメリカ(南米選手権)に日本代表の一員として出場し、グループステージ(GS)3試合すべてに先発して1得点。大会後、ポルトガル屈指の強豪ポルトへ移籍。背番号10を与えられ、攻撃の中心としての活躍を期待された。

 しかし、ポルトでは激しいポジション争いにあって出場機会を失い、2021年1月にはアル・アイン(UAE)へ期限付き移籍した。ここでも2試合に出場した後、練習中に腓骨を骨折、靭帯も損傷して長期間の治療とリハビリを余儀なくされる不運を味わった。期限付き移籍の期間が満了してポルトへ戻ったのち、8月末、古巣ポルティモネンセへ貸し出された。

 10月中旬に故障から復帰すると、以後はトップ下もしくは左ウイングとして先発出場を続け、かつてのような輝きを取り戻しつつある。

中島翔哉 ©Hiroaki Sawada

この町はとても居心地が良く、知っている人ばかり

――昨年2月、アル・アイン在籍中に負った怪我はもう完治しているのですか?

「痛みは全くなく、違和感すらないです。以前と同様にプレーできています」

――古巣のポルティモネンセでプレーする気分は?

「この町はとても居心地が良く、クラブ関係者も知っている人ばかり。家族も、ポルティモンでの生活を楽しんでいます」

――「楽しくプレーするのが大事」というのが口癖ですね。この考え方は、子供の頃から?

「いや、そういうわけでもないです。以前は、勝つことにこだわっていました。でも、16歳のときに妻と知り合い、色々な話をするうちに、考えが変わっていきました。

 妻はフットボールには詳しくないんですけど、『楽しみながらプレーした方が、良い結果が出ると思うよ』と言っていました。やってみたら本当にそうだったので、他の人にもそう伝えるようにしています」

――2019年、ブラジルで開催されたコパ・アメリカに出場しました。この大会で得たものは?

「日本代表が外国の大陸別選手権に出場すること自体が、非常に貴重なこと。欧州ビッグクラブで活躍する選手が揃う南米強豪国の代表と真剣勝負ができたのは、とても貴重な経験でした」

――コパ・アメリカの直後、ポルトガルを代表する名門ポルトへ移籍しました。しかも、与えられた背番号は10。このときの心境は?

「それまでの自分のプレーが評価されたわけで、とても嬉しかったです。より一層頑張ろう、と思いました」

当面、自分としてはここで最高のプレーを

――ポルトは強豪クラブだけにレギュラー争いのレベルが非常に高い。左ウイングのポジションをコロンビア代表主力のルイス・ディアス(現リバプール)と競いました。

「クラブとチームに慣れるための努力をしながら、自分としてはベストを尽くしました」

――ディアスらを差し置いて先発する時期もあったものの、故障で試合出場が減りました。さらに2020年3月に新型コロナウイルスの感染が拡大してリーグが中断。その後、チーム練習が再開されたものの、そこに参加せず、チーム内で苦しい立場となりました。このときのいきさつは?

「言い訳にもなるので、細かい事情は話さずにおきます」

――当時、ポルトガルのメディアは「新型コロナウイルスへの感染を恐れ、中島の家で働いていた日本人のお手伝いさんらが日本へ帰国してしまった」など、当時の代理人の言葉として背景を報じました。今でも、当時の決断に悔いはないですか?

「自分なりによく考えて決断したことなので、後悔は全くないです」

――2019年11月を最後に、日本代表から遠ざかっています。それでも今季はクラブで好調で、日本のメディアやファンからは日本代表復帰を望む声もありました。しかし、W杯アジア最終予選には招集されなかった。アジア最終予選の日本代表の試合は、テレビで見ていましたか?

「時差があるので生では見ていませんが、ハイライト映像などは見ています」

――今季の残り試合はわずかですが、プレー内容によっては日本代表へ復帰してW杯に出場の可能性もありそうです。自分ではどう考えていますか?

「もちろん、日本代表に復帰してW杯に出たい気持ちはあります。でも、当面、自分としてはここ(ポルティモネンセ)で最高のプレーをしてチームの勝利に貢献することを考えています」

――ポルトからポルティモネンセへの期限付き移籍は、6月末で満了します。その後、どこでプレーすることになりそうですか?

「現時点では、全く白紙。シーズンが終わってから、ポルトの関係者らと話し合うことになると思います」

 穏やかに、なおかつ淡々と語ったが、自分のプレーに対する強い自負、そして日本代表復帰への熱い思いを胸の中に秘めていると感じた。

中村航輔「欧州のGKのレベルは非常に高い」

 中村航輔は、的確なポジショニングと鋭い反射神経が持ち味のGKだ。

 柏レイソルのアカデミー出身。2013年、18歳でトップチームへ昇格したが、故障もあって出場機会が得られなかった。2015年、アビスパ福岡へ期限付き移籍し、常時出場して経験を積んだ。2016年に柏へ復帰すると、今度はレギュラーとなり、翌年には日本代表にも招集された。

 2018年W杯にも招集されたが、出場機会はなし。その後、度重なる故障もあって柏での出場機会が少なくなり、昨年1月、ポルティモネンセへ移籍した。

 以来、ポジションをブラジル人、イラン人らと争っている。昨季はリーグ戦7試合にベンチ入りしたが、出場機会はなし。今季は、昨年11月のカップ戦に初出場した後、今年1月のリーグ戦にも出場したが、以後はベンチ入りはしても出場が叶わない状況にある。

中村航輔 ©Hiroaki Sawada

――なかなか試合に出られない時期が続いています。

「欧州のGKのレベルは非常に高いです。プロである以上、激しい競争があるのは当然。自分が向上することを一番に考えて練習に励んでいます」

――今後の目標は?

「自分をさらに高めて出場機会を増やし、チームの勝利に貢献したいですね」

 ポルティモネンセはポルトガル1部の中位から下位に位置するクラブだが、レギュラー争いのレベルは相当に高い。その中で、故障から回復中の川崎を含む3人の日本人選手は、日々、地道な努力を積み重ねながら、それぞれの夢を追い続けている。

最終節で2人とも持ち味を見せた

 5月14日、ポルティモネンセはポルトガルリーグ最終節でアウェーでマリティモと対戦し、1−0で勝った。

 中島はトップ下で先発し、確実なボールキープと効果的なパスでチャンスを作る。強烈なミドルシュートを放って相手ゴールを脅かすと、右サイドで起点となってMFエヴェルトン(2019から20年まで浦和レッズに在籍)の決勝ゴールをお膳立てした。

 スポーツ紙「ア・ボーラ」の採点はチーム最高タイの7点(10点満点)で、この試合のMVPに選んだ。

 今季、リーグ戦で22試合に出場して1得点3アシストだった。

中島にとって今季は、トップフォームを取り戻すシーズンとなった ©Getty Images

 GK中村は、1月31日以来、リーグ戦で今季2度目の先発。前半28分に1対1のピンチを防ぐと、後半32分にも1対1を防いでガッツポーズ。「ア・ボーラ」は、「チームを救った」として7点を与えた。

 今季、ポルティモネンセは18チーム中13位。「1部残留」という最低限の目標は達成した。

 ポルトガルでは中規模のクラブだが、レギュラー争いのレベルは相当に高い。そのような環境で、3人の日本人選手は地道な努力を積み重ねながらそれぞれの夢を追いかけている。

<#4へつづく>

文=沢田啓明

photograph by Portimonense SC