中島翔哉の活躍で日本のサッカーファンの中で有名になったポルトガルのポルティモネンセ。ブラジル在住のライターが現地取材し、中島や中村航輔、さらには浦和レッズで活躍したロブソン・ポンテ副会長らに直撃した記事をお届けします(計4回/#1、#2、#3も)

 ポルティモネンセを動かしているのは、3人のブラジル人だ。オーナーのテオドール・フォンセッカ(通称テオ)、会長のロジネイ・サンパイオ、そして副会長で強化部長を兼務するロブソン・ポンテである。

 ポンテは、現役時代と比べると、顔も体も貫禄が増している。

 サンパウロ出身で、ブラジルの中堅クラブで頭角を現わし、1999年から2005年までレバークーゼンとヴォルフスブルク(いずれもドイツ)で、2005年から10年まで浦和レッズで活躍した。

レバークーゼン時代、レアル・マドリーと対戦した頃のポンテ ©Getty Images

 レバークーゼン在籍中の2004-05シーズンには欧州チャンピオンズリーグのグループステージでレアル・マドリーを3−0で倒し、ベスト16入りしている。

 さらに浦和では、天皇杯(2005年と2006年)、Jリーグ(2006年)、AFCチャンピオンズリーグ(2007年)と4つのビッグタイトル獲得に貢献。2007年のJリーグMVPに選ばれている。

2007年のポンテ ©Shigeki Yamamoto

 2016年からポルティモネンセの運営に携わり、欧州、アジア、ブラジルをはじめとする南米という世界的な視野からフットボールを眺めているポンテに、今年のワールドカップ(W杯)における日本代表の展望、日本のフットボールへの提言などを聞いた。

アジア最終予選の序盤に躓いて心配したが

――日本代表は、苦しみながらもW杯アジア最終予選を突破しました。日本の試合ぶりをどう眺めていましたか?

「アジア最終予選の序盤に躓いて心配したが、そこからの巻き返しが素晴らしかった。この点にこそ、近年の日本のフットボールの成長がはっきりと示されていた」

――詳しく説明してください。

「私が浦和でプレーしていた頃も、日本代表には優秀な選手が大勢いた。しかし、国際経験が乏しく、精神的にもひ弱で、逆境になると個人もチームも全く力を発揮できなくなっていた。

 でも、今の日本代表は違う。選手のほとんどが欧州でプレーしており、日本とは全く異なる環境で高いレベルのレギュラー争いを勝ち抜いたことで、選手としても人間としても非常に逞しくなっている。だからこそ、最初の3試合で2敗を喫するという極めて困難な状況を覆すことができた」

――現在の日本代表の長所と課題をどうとらえていますか?

「最大のストロングポイントは、守備陣に経験豊かな選手が揃っており、失点が少ないこと。中盤の3人も素晴らしい。サンタクララ(ポルトガル1部)でプレーする守田英正は、ポルトガルでも非常に高く評価されているよ。

 攻撃陣にもタレントが揃っているが、まだメンバーが完全には固まっていないようだね。そのことは、逆に言えば、これからW杯までに急激に強化できる可能性があるということだ」

守田は現地ポルトガルでも評価が高いという ©Getty Images

ポルトガルにいる日本人選手をどう評価している?

――ポルトガルリーグでは、ポルティモネンセの3人とサンタクララの守田以外にも数人の日本人選手がプレーしています。彼らをどう評価していますか?

「ジル・ヴィセンテの藤本(寛也、22、東京ヴェルディから期限付き移籍中)はとてもいいね。背番号10を付け、トップ下でチームの攻撃を組み立てる。前線にも飛び出して積極的にゴールを狙う。ポルトガルリーグで大きく成長しているよ。

 サンタクララの田川(亨介、23、FC東京から期限付き移籍中)も、このところ先発出場が増え、思い切りの良い飛び出しと強烈なシュートで得点を重ねている(注:リーグ戦12試合に出場して5得点)。ポルトガルでの生活とリーグのスタイルにうまく適応できた選手は、成長して出場機会を増やし、結果を出している」

――アジア最終予選終了後の2月末、森保一監督がクラブを訪問したそうですね。

「(筆者がポンテをインタビューしていた)ここと同じ部屋だったかな。約2時間、意見を交換した。もちろん、うちでプレーする日本人選手のコンディションなどについて情報を求められたよ」

――森保監督をどう評価していますか?

「非常に有能な指導者だと思う。戦術的に優れており、人間的にも素晴らしい」

W杯はドイツ、スペインと同組だが……どう感じる?

――日本では「選手は欧州で揉まれているのに、監督だけがドメスティック」という批判があります。

「言葉の壁、そして指導者ライセンスの問題があり、日本人監督が欧州のクラブに招聘されるのはなかなか困難だ。でも、だからといって日本人監督に能力がないわけではない。

 日本は欧州とも南米とも全く異なる文化とメンタリティーを持つ国であり、私個人は、日本代表を指揮するのは日本と日本人のことを熟知している日本人監督がいいと考えている」

――W杯で、日本はドイツ、スペイン、コスタリカとニュージーランドの勝者というグループに入りました。

「非常に厳しいグループなのは間違いない。しかし、日本はドイツ、スペインといった強豪中の強豪にも臆することなく、積極的にプレーするべきだ。これまで培ってきた力を試すには絶好の機会であり、失うものは何もない。プレッシャーがかかるのはドイツとスペインの方だ」

――グループステージ(GS)初戦の相手は、ドイツです。

「グループ最強かもしれないドイツと最初に当たるのは、日本にとって悪くない。向こうは優勝が目標で、7試合戦うつもりでいる。一方、日本は初戦にピークを持ってくることができる。

 また、多くの日本人選手がドイツでプレーしており、ドイツ代表に関する情報が多い。一方、ドイツは日本代表についての情報をあまり持っていないはず。この点もアドバンテージだ。前大会で、ドイツは韓国に敗れた。韓国ができたことが日本にできないはずがない」

EL制覇した長谷部誠や鎌田大地ら、ブンデスでプレーする選手が多いのはvsドイツの視点で有益とポンテは語っていた ©Getty Images

――過去の大会で、日本代表は初戦で敗れたときは常にGSで敗退しており、勝ち点を奪ったときはGSを突破しています。

「W杯で初戦が重要なのは、言うまでもない。しかし、杓子定規に考えて前例にとらわれるべきではない。フットボールは生身の人間がやるもので、何が起きるかわからないスポーツなんだ。

 もちろん初戦で勝ち点を取りたいが、仮に取れなくても、2戦目でコスタリカとニュージーランドの勝者から勝ち点3を取れば、最後のスぺイン戦の結果次第でGS突破が可能になるからね」

ポルティモネンセは大いに彼らの役に立てると思う

――今後、日本代表がもっと強くなり、また日本のフットボールがさらに発展するための提言をお願いします。

「日本には、フットボールを愛する有能な人々によって見事に運営されているプロリーグがあり、スタジアム、クラブの練習環境なども整備されている。今後、なお一層、選手育成に力を注ぎ、世界レベルで通用する選手を育ててもらいたい。

 そして、Jリーグである程度の実績と経験を積んだら海外へ飛び出し、さらにコンペティティブな選手になってほしい。この点で、ポルティモネンセは大いに彼らの役に立てると思う(笑)」

――ポルティモネンセは、色々な意味で日本と関係が深いクラブです。あなたたちは、なぜそこまで日本、日本人、日本のフットボールに愛着を持ってくれているのですか?

「それは、テオ、ロジネイ、私の3人が日本に長く住み、日本と日本人を愛し、日本のフットボールのポテンシャルを信じているからだ。テオとロジネイは、奥さんが日本人だしね。

 我々は、欧州での成功を夢見る日本人選手に最高の環境を提供する。そして、日本人選手がここで成長し、日本代表でも活躍することで、日本のフットボールのさらなる発展に貢献したいと考えている」

©Hiroaki Sawada

日本とポルティモネンセ両方に相乗効果が

 ポルティモネンセは、2013年に日本と馴染みのあるブラジル人が運営を担って以来、クラブの財政面の安定とチーム強化の両面から日本と極めて密接な関係を築いてきた。

 このクラブが日本から恩恵を受けるのと同様に、日本のフットボールもこのクラブから多くのものを得ている。

 今回の取材を通じて、フットボールにおける日本とブラジルの関係がブラジルの元宗主国であるポルトガルにも及んでいることを肌で感じた。

<#1、#2、#3からつづく>

文=沢田啓明

photograph by Hiroaki Sawada