藤井聡太竜王を筆頭に、将棋界は様々な話題にあふれています。そこで夫婦ともども“観る将”になったというマンガ家の千田純生先生に「ファン目線での将棋ハイライト」を描いてもらいました!

 4月は、人間将棋を現地取材して大いに楽しかったわけですが……新年度に入って公式戦、さらにはゴールデンウィークに入ってイベントも実施されています。活気ある将棋界の春をイラストで振り返っていきたいと思います!

1)渡辺名人、藤井叡王の強さを見たタイトル戦

 まずはタイトル戦から。2つのタイトル戦が進行中です。

<第80期名人戦/渡辺明名人vs斎藤慎太郎八段>
第1局(6、7日):107手で渡辺名人の勝利
第2局(19、20日):132手で渡辺名人の勝利

<第7期叡王戦/藤井聡太叡王vs出口若武六段>
第1局(28日):93手で藤井叡王の勝利

 今のところ、王者2人が貫禄を見せつけていますね。順位戦A級で順調に勝ち星を積み重ね、2期連続となる名人挑戦の斎藤八段に対して、渡辺名人が連勝する辺りはさすがというか……。

 藤井叡王は公式戦となると3月9日の順位戦以来、1カ月半以上もの間隔が。ここ数年は連日のように対局があったので「人間将棋で見たけど、そう言えば久々に藤井叡王の中継だな」と思って両者1分将棋になった対局を観戦していましたが、タイトル戦はこれで11連勝。本当に安定して強い……。

 ただ「西の王子」として人気が高い斎藤八段の反撃、そしてプロ4年目でタイトル戦に挑んでいる出口六段の2局目以降にも期待したいです。

2)羽生九段らの“ぶっ飛んだ”ネット配信企画

 公式戦以外のネット配信も充実して楽しめる1カ月でした(人間将棋を見た方も多かったかと思います)。
29日に開催されたニコニコ超会議2022の「チーム対抗詰将棋カラオケ」を初めて見て、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。

 ここ数年で将棋ファンとなった自分たちも「電王戦」などの存在は聞いてはいました。ただこんな感じのぶっ飛んだ企画(いい意味で)、昔からやっていたとは……。おやつなどにも注目が集まるきっかけとなったという意味で、今の将棋中継のフォーマットを作った貢献度の高さを感じます。

 そんな詰将棋カラオケ、棋士のみなさん全力で歌ってましたし、金井恒太六段がかなり上手かったと話題になっています。さらに戸辺誠七段のツイッターを見ると、屋敷伸之九段が歌っているところを、弟子の伊藤沙恵女流名人がスマホ越しにうっとりしながら見ている姿も印象的でした。

 さらに高橋道雄九段はいつもアニソンで参加してるそうで(過去に『けいおん!』の主題歌を歌ったとか)今回は『進撃の巨人』のテーマソング『自由の翼』にチャレンジしててビックリしました。ちゃんとドイツ語の出だしも歌えてるし……。

 何よりきっちりと? 佐藤紳哉七段がアナ雪の『Let It Go』を歌って「ありのままの〜」と言いながら“桂(かつら)”を飛ばしてるのはさすがでした。

森内九段を引き当てた藤井竜王が超嬉しそうだった

 そして今や観る将にとって欠かせないビッグマッチ、「ABEMAトーナメント」も始まりましたね!

 トーナメントに先立って開催された「ドラフト会議」、今回の1位指名で最も人気だったのは、誰もが認める実力者・森内俊之九段でした。

 藤井聡太竜王、豊島将之九段、糸谷哲郎八段が競合した中で引き当てたのは……藤井竜王! その当たりくじを見せる際のドヤ顔がとても良かったです(妻氏も「こんな嬉しそうな藤井君初めて!」と大喜び)。2巡目では藤井猛九段を指名し、将棋ファンがひそかに期待していた「W藤井」が実現しているのも上手い指名だなあ……と。

 あと、豊島九段が2巡目で深浦康市九段を指名した際に“藤井キラー”であることに触れた時、豊島九段と藤井竜王ともにくすっと笑った表情もよかったです(笑)。

<各チームのメンバー>
藤井聡太竜王/森内俊之九段/藤井猛九段
渡辺明名人/近藤誠也七段/渡辺和史五段
永瀬拓矢王座/増田康宏六段/斎藤明日斗五段
羽生善治九段/中村太地七段/佐藤紳哉七段
佐藤康光九段/郷田真隆九段/先崎学九段
三浦弘行九段/伊藤匠五段/池永天志五段
佐藤天彦九段/梶浦宏孝七段/佐々木大地六段
豊島将之九段/丸山忠久九段/深浦康市九段
山崎隆之八段/松尾歩八段/阿久津主税八段
広瀬章人八段/青嶋未来六段/三枚堂達也七段
糸谷哲郎八段/黒沢怜生六段/西田拓也五段
稲葉陽八段/服部慎一郎四段/出口若武六段
菅井竜也八段/久保利明九段/佐藤和俊七段
斎藤慎太郎八段/木村一基九段/佐々木勇気七段

 うーむ、どのチームも魅力的。今回も熱戦が続きそうな予感……。

 チーム動画も公開され始めました。個人的なツボとしては……伊藤匠五段の“何を言わせても、感情が一定の「はぁって言うゲーム」”の正解をすべて当てたリーダー三浦弘行九段が凄かったですね(笑)。

 そして何より……羽生九段です。

©Junsei Chida

 まさかのインドアスカイダイビングは「は、羽生先生が、ぶっ飛んでいる!?」と、ただただ衝撃でしたが(笑)、羽生九段は宙に舞ってもやはり美しい……将棋史に残るレジェンドがこんなに体を張ってファンを楽しませようとする。人間将棋で武将姿になった藤井竜王や佐々木六段ら若き世代にもその精神は引き継がれているのかもな、とも思いました。他のチームがどんな動画を撮ったのか楽しみで仕方ありません。

 さてAリーグでは永瀬拓矢王座率いる「川崎家」が早くも本戦進出決定。日に日にムキムキになっている気がする増田六段、さらに端正な顔立ちで――妻氏の推しに急浮上している“アストン”こと斎藤明日斗五段らの活躍にも期待大です。

3)まさかの“盤外戦術”や感銘を受けた引退局

 最後に、タイトル戦以外の公式戦などで印象に残ったシーンを描いていきます。

 25日に開催された第93期棋聖戦挑戦者決定戦、対戦カードは渡辺名人vs永瀬王座でした。2人のタイトルホルダーのうち、藤井棋聖に挑むのはいずれか――という熱戦を制したのは、永瀬王座でした。

 今もなおABEMAトーナメントの「チームバナナ」の印象が強いのですが(笑)、6期ぶり2度目となる念願の棋聖戦への挑戦権を手にした永瀬王座。ついに実現した藤井棋聖のタイトル戦、楽しみです(永瀬王座はずっと藤井棋聖とのタイトル戦を望んでいましたからね)。夫婦で必ず現地で大盤解説会に参加しようと思っています!

 対局以外の部分? で話題になったことと言えば、王将戦一次予選の伊藤五段と窪田義行七段の一局です。

 窪田七段の“対局室を自分のテリトリーと化す能力”は以前から秀でていましたが……ついに対局室で“大の字で横になる”という大技を見せましたね(笑)。さすがの“たっくん”も動揺したのか、軍配は窪田七段に上がりました。

 こういうのをいわゆる「盤外戦術」というのか……? と窪田七段の執念に驚愕しつつ、いずれはタイトル戦に登場するであろう伊藤五段は、敗戦の中から大きな経験値を得たのでは、と思います。

 心を打たれたのは桐山清澄九段の引退局・竜王戦5組残留決定戦です。通算成績996勝958敗、歴代10位の勝利数を積み重ねた74歳の足跡には敬意を払うばかりです。

 さらに感想戦を奥でひっそりと見守っていた、豊島九段との師弟愛はとても美しかったですね。さらに最上位の間を譲ったという谷川浩司九段、対局相手として正座し続けた畠山鎮八段の配慮など、将棋界の所作の美しさは観る将の心をいつも引き付けますね。

©Junsei Chida

 最後に我が家の近況として――藤井竜王監修の「伊右衛門」を妻氏が嬉しそうに買ってくるので美味しく頂いています(笑)。こんな感じでゴールデンウィークを含めた5月の将棋戦線も楽しんでいきたいと思います!

文=千田純生

photograph by Junsei Chida