5月6日、中日の大野雄大は阪神戦で9回をパーフェクトに抑えるも味方の援護なく延長10回2死から115球目、145キロの高めの速球を佐藤輝明にとらえられ、中堅越えの二塁打を打たれた。

 9回までパーフェクトを記録しながら「完全試合」を達成できなかったのは2005年8月27日の楽天戦での西武の西口文也以来。29連続で取ったアウトのうち奪三振は5つであり、打たせて取る技巧が光っていた。

10回2死までパーフェクトピッチングを見せた大野雄大 ©Sankei Shimbun

 100球未満の完封勝利を「マダックス」と呼ぶことに倣えば――9回までパーフェクトながら完全試合を逸することは「ニシグチ」と呼びたくなるが、大野と西口はともに9月26日生まれという偶然まで重なった。

5月7日、大野雄大「9回2/3完全投球」時の阪神の打撃成績

開幕から50日足らずで投手の大記録が続出

 開幕から50日足らずだが、今年はめったに見られないはずの投手の大記録、好記録が続出している。

・完全試合
佐々木朗希(ロ)4月10日 ロッテ-オリックス戦
・ニシグチ(※9回までパーフェクトでの完全試合未達)
大野雄大(中)5月6日 中日-阪神戦
・マダックス(100球未満の完封勝利)
上茶谷大河(De)4月16日 DeNA-ヤクルト戦
加藤貴之(日)4月19日 日本ハム-楽天戦

4月10日、佐々木朗希完全試合、オリックスの打撃成績

 完全試合は28年ぶり史上16回目、前述した「ニシグチ」は17年ぶり2回目。マダックスは昨年は3回記録されたが、それ以前は2017年までさかのぼる。2002年以降では35回記録されただけだ。このほか5回以上のノーヒットピッチングが5月8日現在で2回記録されている。

佐々木朗希(ロ)4月17日 ロッテ-日本ハム戦 8回(パーフェクト)
スミス(西)4月19日 西武-ロッテ戦 7回(1与四球)

4月17日、佐々木朗希“8回完全”、日本ハムの打撃成績

 なぜ短期間に投手の快記録が次々と達成されたのか。投手の傑出した活躍なのは間違いないが、それだけでは説明できない。

極端な投高打低を象徴する「試合時間」

 実は2022年のプロ野球は、極端な「投高打低」になっている。それを端的に表しているのが試合時間である。NPBでは2002年から両リーグの平均試合時間(9回まで)を発表している。この推移と両リーグの平均打率、平均防御率を見ていこう。

2002年 3時間8分 /打率.260 / 防御率3.65
2003年 3時間13分 /打率.277 / 防御率4.41
2004年 3時間19分 /打率.281 / 防御率4.55
2005年 3時間13分 /打率.274 / 防御率4.10
2006年 3時間10分 /打率.267 / 防御率3.65
2007年 3時間14分 /打率.269 / 防御率3.72
2008年 3時間9分 /打率.270 / 防御率3.83
2009年 3時間8分 /打率.265 / 防御率3.79
2010年 3時間13分 /打率.274 / 防御率4.05
2011年 3時間6分 /打率.251 / 防御率3.01
2012年 3時間8分 /打率.252 / 防御率2.95
2013年 3時間17分 /打率.263 / 防御率3.65
2014年 3時間17分 /打率.265 / 防御率3.75
2015年 3時間13分 /打率.257 / 防御率3.43
2016年 3時間11分 /打率.261 / 防御率3.67
2017年 3時間8分 /打率.255 / 防御率3.67
2018年 3時間13分 /打率.261 / 防御率4.01
2019年 3時間16分 /打率.256 / 防御率3.91
2020年 3時間13分 /打率.254 / 防御率3.85
2021年 3時間11分 /打率.250 / 防御率3.55
2022年 3時間5分 /打率.237 / 防御率3.12

 NPBは「試合時間の短縮」を訴えてきたが、ここ10年で3時間10分を切ったのは2017年だけだった。ところが今年は2002年以来最短の3時間5分。大野雄大の試合は延長10回で2時間36分、さらに西武は平均試合時間が2時間59分と3時間を切っている。

 それ以前では2011年、12年に3時間10分を切っているが、これは明らかに「統一球」の導入が背景にあった。反発係数の低い統一球が両リーグに導入されて、2011年の平均打率は前年より2分以上も下がり、防御率は1.0以上も良くなった。投高打低が進んだ結果、試合時間が短縮された。

2011、12年は統一球の影響を受けた ©Hideki Sugiyama

 ここ4年、平均打率は下降気味で平均防御率は良くなる傾向にあったが、今年はその傾向が極端に顕著になっている。平均打率は2002年以来では最も低い.237、防御率は3番目に良い3.12である。

統一球の仕様、ルール変更などはなさそうだが

 では、なぜここまで極端な投高打低が進行したのか?

 統一球の仕様変更があったという発表はない。ボールは従来のものと変化はないはずだ。打者が不利になるルール変更が行われたわけでもない。

現状セ最下位の阪神も防御率は3.21だ ©Kiichi Matsumoto

 今年の極端な投高打低には、「コロナ禍」が影響していると考えられる。

 ここまでDeNA、阪神、オリックス、楽天などで複数の選手がコロナに感染し、戦線離脱を余儀なくされた。昨年も陽性者は出ていたものの少数にとどまっていた。しかし今年はオミクロン株に入れ替わり、ほとんどが軽症、あるいは無症状とはいえ、昨年とは比較にならないほど多くの選手が陽性判定をされ、戦線離脱している。

 NPBは陽性判定などで登録抹消された選手は本来の再登録までに必要な10日間を待たずに一軍復帰が可能となる「特例2022」を導入し、戦力低下を最小限にとどめる措置を打ち出した。それでも多くの球団でベストメンバーが組めない事態が発生した。

若手にはチャンスだが、それは佐々木朗希らにも……

 それは若手、控え選手にチャンスを与えることにはなった。ただし経験値の低い選手が試合に出場することで打線が弱体化し投手有利に大きく振れたという面はあっただろう。

 この状況はしばらく続くと思われる。であれば、佐々木朗希をはじめとする優秀な投手が、ビッグゲームを再び演じる可能性は高いのではないだろうか。

佐々木朗希が再び快投を演じる時は来るか ©Hideki Sugiyama

<NPB第6週の成績 2022年5月2日〜5月8日>
〇セ・リーグ

ヤクルト6試5勝1敗0分 率.833
広島6試4勝2敗0分 率.667
DeNA6試3勝3敗0分 率.500
中日6試3勝3敗0分 率.500
阪神6試2勝4敗0分 率.333
巨人6試1勝5敗0分 率.167

 ヤクルトが5勝1敗と好調で巨人から首位を奪還。故障者が続出している巨人は低迷し、阪神も浮上の兆しをなかなかつかめない。

・個人打撃成績10傑 ※RCは安打、本塁打、盗塁、三振、四死球など打撃の総合指標
マクブルーム(広)27打10安2本7点 率.370 RC5.81
上本崇司(広)20打10安2点 率.500 RC5.66
村上宗隆(ヤ)22打5安3本11点 率.227 RC5.60
坂倉将吾(広)22打10安6点 率.455 RC5.30
西川龍馬(広)26打8安2本6点 率.308 RC5.23
牧秀悟(De)22打6安3本10点 率.273 RC5.11
ウォーカー(巨)23打7安3本4点 率.304 RC4.69
鵜飼航丞(中)17打5安1本2点 率.294 RC4.28
小園海斗(広)21打7安1本5点 率.333 RC4.27
塩見泰隆(ヤ)24打7安1点3盗 率.292 RC3.94

 広島勢は8日の試合で大量17得点を奪うなど好調。新外国人マクブルームは2本塁打、伏兵上本は打率5割。ヤクルト村上が最多タイの3本塁打(うち2本は満塁本塁打)、1位の11打点だった。DeNA牧も3本塁打。盗塁はヤクルト塩見の3盗塁がトップ。

巨人戦で2試合連続満塁弾を放った村上 ©Hideki Sugiyama

・個人投手成績10傑 ※PRはリーグ防御率に基づく総合指標
大野雄大(中)1登1勝10回 責0率0.00 PR3.54
小川泰弘(ヤ)1登1勝9回 責0率0.00 PR3.19
アンダーソン(広)1登1勝7回 責0率0.00 PR2.48
青柳晃洋(神)1登1敗9.1回 責1率0.96PR2.31
森下暢仁(広)1登9回 責1率1.00PR2.19
大貫晋一(De)1登1勝6回 責0率0.00PR2.12
上茶谷大河(De)1登6回 責0率0.00PR2.12
遠藤淳志(広)1登1勝8回 責1率1.13PR1.83
石川雅規(ヤ)1登1勝5回 責0率0.00PR1.77
伊勢大夢(De)4登2H4回 責0率0.00PR1.42

 前述した「ニシグチ」を記録した中日の大野がPRの数値でトップ。この試合で大野と投げ合った阪神の青柳は9.1回を投げ自責点1ながらサヨナラ負けを喫している。ヤクルトの小川も5月3日の阪神戦で完封勝利をマークした。

 救援ではヤクルトのマクガフが2セーブ。DeNA伊勢大夢、田中健二朗、巨人デラロサ、ヤクルト今野龍太、田口麗斗、阪神の湯浅京己、中日の祖父江大輔、清水達也が2ホールドを挙げた。

パではホークスと楽天、山川穂高が“無双状態”

〇パ・リーグ
ソフトバンク6試6勝0敗0分 率1.000
楽天6試6勝0敗0分 率1.000
西武6試4勝2敗0分 率.667
ロッテ6試1勝5敗0分 率.167
日本ハム6試1勝5敗0分 率.167
オリックス6試0勝6敗0分 率.000

 ソフトバンクと楽天がこの週6勝と勝ちっぱなし、楽天は通算10連勝と絶好調。その両チームと当たったオリックスは6敗、通算では7連敗中と苦しんでいる。

・個人打撃成績10傑
山川穂高(西)22打9安5本11点 率.409 RC9.70
柳田悠岐(SB)25打7安3本11点 率.280 RC7.29
浅村栄斗(楽)23打9安2本5点 率.391 RC6.99
今宮健太(SB)25打11安3点 率.440 RC5.95
島内宏明(楽)26打9安1本5点 率.346 RC5.18
中村剛也(西)23打8安2本5点 率.348 RC4.91
甲斐拓也(SB)18打8安3点 率.444 RC4.84
柳町達(SB)26打9安2点 率.346 RC4.65
外崎修汰(西)22打8安4点 率.364 RC4.47
清宮幸太郎(日)10打4安2本2点 率.400 RC4.42

 西武・山川穂高はこの週5本塁打1二塁打と打棒が爆発した。通算14本塁打は2位に8本差をつけ独走状態に入っている。打点は山川とソフトバンク柳田が11打点でこの週トップ。ソフトバンク勢は4人がRCで10傑入りしている。

 中村剛也は5月7日の日本ハム戦で長嶋茂雄に並ぶ通算444本塁打。歴代では14位タイに。盗塁はソフトバンク三森大貴、楽天の小深田大翔の2が最多だった。

・個人投手成績10傑

大関友久(SB)1登1勝9回 責0率0.00PR3.43
田中将大(楽)1登1勝8回 責0率0.00PR3.05
髙橋光成(西)1登1勝7回 責0率0.00PR2.67
與座海人(西)1登1勝6回 責0率0.00PR2.29
涌井秀章(楽)1登1勝9回 責1率1.00PR2.43
石川柊太(SB)1登4.2回 責0率0.00PR1.78
竹安大知(オ)1登4回 責0率0.00PR1.52
小野郁(ロ)4登2H4回 責0率0.00PR1.52
東條大樹(ロ)3登2H4回 責0率0.00PR1.52
又吉克樹(SB)4登2H4回 責0率0.00PR1.52
モイネロ(SB)4登2S4回 責0率0.00PR1.52
平良海馬(西)4登2H4回 責0率0.00PR1.52

 ソフトバンクの大関は5月7日のロッテ戦でプロ初完封勝利。楽天の田中将大は3日の日ハム戦、8回零封で3勝目。涌井秀章は4日の同じく日ハム戦で9回自責点1完投でこちらも3勝目を挙げた。

 4回自責点0の投手が6人いるが、オリックスの竹安を除く5人は救援投手だった。セーブはそのうちの1人、モイネロが2セーブで最多。ホールドはロッテの小野、東條、ソフトバンク又吉、西武の平良、さらに楽天の安樂智大が2ホールドをマーク。

<達成記録>
・内海哲也(西)2000投球回
5月7日 日本ハム戦 史上92人目
・田中将大(楽)1500投球回
5月3日 日本ハム戦 史上181人目

文=広尾晃

photograph by Nanae Suzuki/Hideki Sugiyama