4月24日、Bellatorバンタム級ワールドGP準々決勝で“寝技師”と恐れられるパッチー・ミックス(米国)に判定負けを喫した堀口恭司(ATT/RIZINバンタム級王者)。キャリアを通じて初めての連敗となった堀口は、ここからどんなメンタリティで這い上がるのだろうか。格闘家としての現在地と理想像を語った(聞き手:田中大貴)。

――今日はよろしくお願いします。日本は久しぶりですよね(取材日:5月2日)。

堀口 そうですね、1年半ぶりぐらい。まだ次の試合の予定もないので、今回は3週間ぐらいで日本を満喫したいと思っています。ただ、マネージャーがどんどん仕事を入れるので、まだ遊び回れていないんですけど(笑)。

――先日のパッチー・ミックス戦は惜しくも敗戦。格闘家人生の中でも初の連敗となりました。

堀口 勝負事なので勝ち負けはありますが、やっぱり自分は“勝ち”を目指してやっているので、しっかりと“借りを返す”というか、今は逆に燃えています。ずっとチャンピオンでいたことで、モチベーションが微妙なところもありました。この連敗で(モチベーションは)上がっていますよ。「見てろよ」っていう感じです。

――前回はKO負け、今回は判定までもつれました。すでにご自身のYouTubeなどでもお話しされていましたが、改めて心境を教えていただけますか?

堀口 (セルジオ・)ペティスに負けた時はKOだったので、意識が戻った時は病院にいました。だから「負けた……」というよりは「やっちゃった」「何をもらったの?」みたいな感じ。ミックス戦はセコンドも(試合内容を見て)ちょっと微妙だねという感じで。やっぱり最後の判定が出た時は悔しさがありましたね。でも判定って、人が決めることじゃないですか。もちろん負けてますけど、自分の中ではしっかり対処できた部分もあったので、下を向いているというよりは、次を見ています。

――この敗戦をプラスに捉えていると?

堀口 そうですね。もう少し対処できたかな、とか、こういう反応すれば相手はもっと嫌だっただろうな、とか、すごく研究できる試合でしたね。

堀口恭司vsパッチー・ミックス/Bellator公式twitterより(@BellatorMMA) 寝技師と恐れられるパッチー・ミックスに主導権を握られた堀口恭司/Bellator公式twitterより(@BellatorMMA)

――“次”に向けた具体的なプランはありますか?

堀口 アメリカにいると(自分のルーツである)空手の練習が限られてしまうので、それをもうちょっと取り入れたいなと。原点に戻る、じゃないですけど。今回も空いている日があればやりたいです。

――総合格闘技において「空手」のどんな部分が生かされるのでしょうか?

堀口 簡単にいうと、距離感やスピード感がボクシングやキックボクシングなどの他の格闘技にはない。だいぶ有名にはなってきましたが、まだ伝統派空手というジャンルが(アメリカで)そこまで浸透していないですし、使える選手も少ないので有効なのかなと思っています。

――格闘技ファンの多くが、堀口選手が再び立ち上がる姿を見たいと願っていると思います。この連敗からどう這い上がっていきたいですか?

堀口 連敗というよりは、1つの負けなので。負けに対する悔しさは当然ありますけど、連敗だからどうこうという気持ちはないです。それを考えたところで自分にとってマイナスになるだけなので。「2連敗だ……ダメだ……」って、違うじゃないですか。なんじゃそりゃって(笑)。相手も違うことですし、なぜ負けたのかをしっかり分析して次につなげたらいいだけなので。落ち込んでも何の役にも立たない。だったら、次に進んだ方がいい。(連敗は)メディアの方々や周りが気にすることなので、自分は何も気にしないです。次にどうやってつなげるかしか考えていないですね。

©︎Yuki Suenaga

――改めてキャリアを振り返った時、今の自分は理想とする位置に到達していますか?

堀口 負けたりはしていますけど、(理想には)近づいていますよね。自分の理想は格闘技で飯を食いたい、格闘技を有名にしたい、とかそういうことだったので。もちろんチャンピオンベルトを獲りたいと思っていますが、徐々に若い選手も活躍していて、競技自体もメジャーになっているのかなと思っていますね。

――そういう手応えはいつから抱くようになりましたか?

堀口 自分がRIZINに参戦して(2017年4月〜)、ちょっとずつきているのかなと。あとは朝倉兄弟が出てきてから。彼らはYouTubeなどもやって、すごく人気になっていますよね。

「自分は考えが古いので、“一筋”みたいな(笑)」

――朝倉兄弟にはどんな印象を抱いていますか?

堀口 強いと思いますよ。最近、海くんは怪我もありましたけど、彼らはずっと勝ってきたわけなので。

――YouTubeを使ったプロモーションも画期的でした。

堀口 やり方がうまいですよね。今の子、って感じで。自分は考えが古いので、格闘技一筋、みたいな(笑)。特に未来くんはプロモーションがうまいじゃないですか。

――ある意味、対極にいる存在ですよね。

堀口 金銭面とかいろんなことを考えると、あのやり方は一番効率がいいというか。自分はそれができないので。まぁ、大体の人があれはできないと思いますけど(笑)。

――日本の格闘技界では、那須川天心vs武尊の対決に注目が集まっています(6月19日、東京ドーム)。どんな試合内容になると思いますか?

堀口 試合を想像することって難しいんですよ。でも、武尊くんはガンガンいって、天心くんはちょっと距離を測りながら、ポイントを取るみたいな感じでやるのかなと思います。技術とスピード(那須川)対パワー(武尊)って感じじゃないですかね。

――放送席に座らないんですか?

堀口 6月19日? そこまで日本にはいないですよ、長いです(笑)。

――堀口選手は実際に那須川選手と対戦しています(18年9月30日、キックボクシングルールで対戦。判定負けを喫したが熱戦を繰り広げた)。改めて、那須川選手の魅力はどこにありますか?

堀口 ちょっと悪い言い方かもしれないですけど、天心くんって性格がビビりというか繊細なところがあるじゃないですか。試合もいつもビビりながら、でも、だから反応が速いんですよ。そういうところがすごいなと。それがなくなっちゃうとパンチをもらっちゃいますから。人間、怖いと思ったら反応する。自分は怖さがなくて、当たってもいいや、ぐらいに思っているので。もちろん、(那須川の)目がいいというのは大きいですけど、反応の速さは性格も関係していると思います。

©︎Yuki Suenaga

――武尊選手のパワーのあるパンチは警戒しないといけません。

堀口 天心くんはチームでやっていますから、対処法はすごく考えていると思いますよ。試合で実際にその作戦をできるだけの練習量をこなしているので、そこもすごい。練習していることを試合でも出せる強みはありますね。

――試合のポイントは?

堀口 それぞれの弱点とかは言わない方がいいですよね(笑)。天心くんは針の穴に糸を通すみたいなイメージで、(距離が)近くても遠くても当てる技術がある。武尊くんは近くで“ガチャガチャ”するタイプ。予想できないパンチってあるんですよね。1、2発は予想できても、3、4発くるんですよ。どんなにパンチを避けても、もらっちゃうことがあって。

――それに武尊選手は打ち勝ってきた実績もあります。

堀口 そういう展開になる可能性はあると思いますよ。だから、判定までもつれたら天心くんが勝つんじゃないかと思いますが、KOだったら武尊くんの方が(可能性は)高いんじゃないかなと。パワーもスタミナもあるし、武尊くんもすごいですよ。まぁ、でもあくまで“予想”なので。試合はやってみないとわからないですよ(笑)。

――試合後にまた解説をお願いします(笑)。話を戻すと、まだ次戦は決まっていないとのことですが、これからどんな時間を過ごしていくのでしょうか?

堀口 コンスタントに試合はしたいと思っています。自分は練習も試合と同じようにやっているので(試合勘が)衰えるってことはないですけど、やっぱり試合をやっていた方が(業界を)盛り上げられるんじゃないかなと。試合があれば、自分の体調もそこに向けて作っていけるので、整えやすいですし。

――引き続き、Bellatorでの挑戦になるとのことですが、現地で「堀口恭司」という名前が浸透してきたという実感はありますか?

堀口 自分が住んでいるところは田舎の街なので、そこまで浸透してないんじゃないですかね。Bellatorではある程度の立場にいると思っていますが、人気があるかどうかはあまりわからないです。

――堀口選手をターゲットにしている選手も多いのでは?

堀口 ないですよ、前回も負けちゃっていましたし。それが事実ですから。

――追いかけられるような存在になりたい?

堀口 追いかけられるような存在になりたいというよりは、自分が獲りに行くという気持ちが強いですね。「追いかけられる」ってあんまり好きじゃないので(笑)。挑戦者の方が自分は楽しいです。

――これからも挑戦を応援しています。ありがとうございました。

©︎Yuki Suenaga

撮影協力/NEW ERA JAPAN GK

文=田中大貴

photograph by Yuki Suenaga