雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回はメジャー通算100本塁打を達成した大谷翔平にまつわる4つの言葉です。

<名言1>
試合前のフリー打撃でも、(大谷は)トラウトと一緒に花火の打ち上げ合戦みたいなパフォーマンスを見せてくれた。
(マット・シューメーカー/Number1048号 2022年3月31日発売)

◇解説◇
 大谷翔平の本塁打ペースが上がってきた。

 現地時間15日(日本時間16日)に行われたアスレチックス戦、「3番DH」で先発出場した大谷は、初回1死二塁で迎えた第1打席に相手右腕モンタスが投じた154kmシンカーを振りぬくと、センターへの第8号2ラン本塁打に。同14日(15日)のダブルヘッダー2試合目で放ったメジャー通算100号に続く2試合連続ホームランとなった。

15日のアスレチックス戦での第8号本塁打(クリック、スワイプすると“大谷の衝撃本塁打の数々”をご覧になれます)

 エンゼルスはこのリードを守り切って4−1で勝利。結果的に大谷の先制弾が勝負を決め、アスレチックスとの敵地4連戦を3勝1敗で勝ち越した。

この7試合で4本塁打の固め打ち

 直近7試合、30試合での大谷の打撃成績を比較すると、大谷の好調ぶりが分かる。

直近7試合:29打数10安打4本塁打10打点 打率.345 OPS1.215
直近30試合:119打数33安打8本塁打26打点 打率.277 OPS.877

 開幕直後はなかなかホームランが出なかった大谷だが、この1週間で4本の固め打ち。9日のレイズ戦ではマイク・トラウトとのMVPアベック弾と自身初となる満塁弾の1試合2本塁打をマークするなど、明らかに打球の角度が上がってきているのは頼もしい限りだ。

大谷のメジャー通算100本塁打 ©Getty Images

 大谷とともにプレー、もしくは対戦した選手からの絶賛の声は引きも切らない。2022年から巨人に加わり、先発ローテーションの一角を任されるシューメーカーもその1人だ。

 2013年にエンゼルスでMLBデビューしたシューメーカーは、その翌年に16勝4敗、防御率3.04の好成績を残すなど、主力投手の1人だった。そんなシューメーカーはエンゼルスでの最終年となった2018年、大谷とチームメートとなる。

僕の記憶が間違っていなければ……

 その時点で大谷はアメリカでの成績こそ皆無だったが……シューメーカーは投打ともにそのポテンシャルに驚いていたのだという。

「僕の記憶が間違っていなければ、当時の翔平はジャパンで一番力のある選手だとMLBのみんなが知っていたはず。あの若さで、コンスタントに100マイルのスピードを出していることには驚かされたな。試合前のフリー打撃でも大きな当たりを連発していたし、本当にすごいパワーだった」

 練習時点で、歴代最強クラスのスラッガーであるマイク・トラウトと豪快なアーチをかけ続けていたのだから、シューメーカーは驚いたわけだ。1年目の打率.285、22本塁打61打点、強打者の指標となるOPSでも.925。一流打者の証と言われる数値をたたき出したのも納得である。

「ホームラン狙って空振りしてきます」のはずが

<名言2>
「ホームラン狙って、空振りしてきます」って言ってたんです。そうしたら当たった。
(大谷翔平/Number912号 2016年10月6日発売)

◇解説◇

「泳ぎながらの片手スイングでグリーンモンスター越え」など、大谷のホームランはこれまで数多くの衝撃を与えてきた。それに加えてリアル二刀流の試合で、自らを援護する一打を放つのが稀でなくなっているのが、マンガや映画でも描けないほど非現実的な出来事であるのだが……。

2021年に衝撃を与えた“泳ぎながらグリーンモンスター超え” ©Getty Images

 日本でも登板した試合で特大のインパクトを残したことがあった。2016年7月3日、ソフトバンク戦でのこと。いや、正確に書けば「先発マウンドに上がる前」に、ひと仕事してしまった。

 ビジョンに「1番 大谷」と表示されると、球場がどよめいた。先発で投げる大谷のDH解除はこれまでにもあったが、1番を打つのは初めてのことだった。

 そして1回表の打席に立った大谷は、中田賢一の初球、124kmのスライダーを右中間のスタンドへ放り込んだ。プレイボールからわずか5秒後のホームランは、史上初となる投手による初球先頭打者本塁打となった。

「なるべく立ち上がりに疲れないよう、ゆっくり回りました」

 先発ピッチャーとしてゲームを作るために、ダイヤモンドを1周するペースまで考えていた。なお投手としての内容は8回10奪三振で8勝目をマーク。こんな結果とコメントを残せるのは、球界広しと言えども……現状では大谷しかいない。

1番投手で先発し、投打両面で大活躍したソフトバンク戦 ©Kyodo News

“差し込まれたようなホームラン”が好きなワケ

<名言3>
レフトに上がってもいいし、ライトに上がってもいい。なるべく身体に近いところでボールを捉えて、差し込まれたように見えても、入った、というホームランが好きですね。
(大谷翔平/Number980号 2019年6月13日発売)

◇解説◇
 大谷のメジャー2年目は、右肘を手術するなど投手としてのコンディションが整わず、打者専念となった。それでも6月は当時の月間自己最多となる9本塁打。当時の実況の決まり文句である「ビッグフライ、オオタニサン!」を何度も耳にしたはずだ。

 当時の大谷は「差し込まれたホームランが好き」と語っていたことがある。“差し込まれる”とは相手の投じたボールに対してバットでミートするタイミングが遅れること。早いタイミングで捉えた方がボールに力が伝わりそうだが……と普通なら考えてしまいそうだが、大谷にとって、その概念は少し違うようだ。

「身体の近くまで(ボールを)呼び込んで、そこで打ってホームランになるなら、前で捌いたときはかなりの確率でホームランになるよね、という、差し込まれたホームランがけっこう好きかな」

2019年の大谷のスイングと弾道 ©Nanae Suzuki

 2022年も量産体制に入りつつある大谷。この1週間で放った4つのホームランはすべて、センターから左中間方向だった。差し込まれたように見える豪快な打撃が増えてきたということは、今後もMVPに輝いた昨シーズンの再現を期待してもいいのだろう。

野球をやっていて、幸せじゃないですか

<名言4>
野球やっていてものすごく楽しいし、ベンチで見ていても楽しい。そんなの、すごく幸せじゃないですか。
(大谷翔平/Number950号 2018年4月12日発売)

◇解説◇
 大谷翔平は、誰よりも野球を楽しんでいる。

 この1週間でもアベック本塁打を放ったトラウトにカウボーイハットをかぶせられて大喜びしたかと思えば、ファウルがベンチ内に飛び込んで思わずビックリしつつ、笑みを浮かべるシーンもあった。その一挙手一投足は、日米のファンの心を捉えて離さない。

2018年の大谷 ©Nanae Suzuki

 大谷はメジャーリーグ1年目から、トラウトの豪快な打撃練習などを心から楽しんでいた。それも“ここで通用するのか”という不安ではなく、彼らのようなスーパースターとともに戦える未来を前向きにとらえていたのだという。その姿は2022年の今も続いている。楽しいからこそプレーする――というスポーツ本来の良さを体現する大谷は、現代のスーパーヒーローと言えるだろう。

文=NumberWeb編集部

photograph by Nanae Suzuki