レース史上最高と言われた豪華メンバーから抜け出したのは、芝のマイル戦では無敗の「真っ白なアイドル」だった。

 古馬のマイル女王を決める第17回ヴィクトリアマイル(5月15日、東京芝1600m、4歳以上牝馬GI)で、吉田隼人が騎乗した4番人気のソダシ(4歳、父クロフネ、栗東・須貝尚介厩舎)が優勝。昨年札幌記念以来4戦ぶりの勝利を、3度目のGI制覇で飾った。

 1番人気に支持されたレイパパレは直線で失速して12着に大敗。今年のGIで1番人気は8連敗となり、年明けからのワースト記録をまた更新してしまった。

GI3勝目を挙げたソダシ。鞍上の吉田隼人は右手を突き上げた

アーモンドアイ、グランアレグリアに匹敵する圧勝だった

 やはり、マイルでは強い。道中、絶好位の4番手につけていたソダシは、抜群の手応えのまま直線に向いた。吉田が手綱を持ち直してエンジンを吹かすと、手前を右にスイッチして加速。吉田の左ステッキが入ると、ラスト200m地点で、まずは外のレシステンシアを競り落とし、さらに逃げ粘る内のローザノワールもかわして先頭に躍り出た。最後はまた左手前に戻してストライドを伸ばし、2着を2馬身突き放してフィニッシュ。吉田は右手の人指し指を突き出し、喜びを表現した。

「スタートが抜群で、折り合いもついていたので、直線に入ったとき、(追い出すタイミングを)1回待ってから追い出しました。最後も伸びていたので、外から来られても、抜かれる感じはしなかったです」

 同じ勝負服で制したポタジェでの大阪杯につづく今年2つ目のGI勝ちを挙げた吉田はそう話した。

ヴィクトリアマイル

 まさに完勝だった。着差こそ2馬身と、昨年のグランアレグリアや一昨年のアーモンドアイの4馬身に及ばなかったが、史上最高と言われた強敵が相手だったことを考えると、歴史的名牝2頭のレースに匹敵する圧勝だったと言えるのではないか。

ソダシ好走を生んだ“2つの理由”

 マイル戦は、一昨年のアルテミスステークス、阪神ジュベナイルフィリーズ、そして昨年の桜花賞につづいて4戦4勝。ダートのマイルだったフェブラリーステークスでも3着と好走したように、ワンターンのマイルだと、集中力を切らすことなく、力を発揮しやすいのだろう。

 もうひとつの勝因は、パドックでも返し馬でも落ちついていたことだ。陣営がリラックスした精神状態に仕上げてきた。

 ピリピリしすぎると、待機所から出ようとせず、ゲート入りを拒んだ秋華賞のときのように、戦う前に終わってしまう難しいところのある馬だ。

この日はパドックからリラックスしていたソダシ

 今回もゲート入りを嫌がる素振りを見せたが、少しだけだった。ストレスをかけすぎず、かつ、ある程度やる気になるよう、1週前追い切りは単走でウッドチップコースを走らせ、当該週の追い切りは坂路コースで併せ馬にするなど工夫してきた。それが奏効し、素晴らしいパフォーマンスにつながった。

 今後は、安田記念には向かわず、放牧に出される模様。秋はマイルチャンピオンシップを目指すことになるようだ。

デアリングタクトは次戦での変わり身に期待

 2着は3番人気のファインルージュだった。直線で外に出てきた前の馬に触れて躓く不利があったが、内に進路を切り換えて鋭く伸びてきた。桜花賞3着、秋華賞2着の力は本物だった。

 3着のレシステンシアは、キャリアを重ねるにつれ、適性としてはスプリンター寄りになっているのだが、中間、ビッシリ攻めてきた状態のよさが生かされた。

 デアリングタクトは、1年以上の休み明けでありながら、ソダシからコンマ5秒差、2〜5着馬からはコンマ2秒差の6着。さすが無敗の牝馬三冠馬という走りを見せた。休養前はいつもパドックで入れ込んでいたのだが、今回はゆったりと歩いていた。

約1年ぶりのレースとなったデアリングタクト

 プラス22kgの馬体重が示すように、全体に緩さのある体だったが、ここを使っての変わり身に期待したい。ひとつ叩いての変わり身は、一流馬ほど大きい――と、ダイワスカーレットなどを育てた「マツクニ先生」こと松田国英元調教師も話していた。次が楽しみだ。

レイパパレはなぜ負けたのか? パトロールビデオの必要性

 1番人気のレイパパレは、スタート直後に躓き、リズムを崩したことがすべてだろう。鞍上の川田将雅が進行方向に向かって左側に落馬しそうになるほどの躓き方だった。よく落ちなかったし、すぐに右の鐙を踏み直して流れに乗ろうとしたのはさすがだった。しかし、そこからリカバーする過程で、若干勢いがつきすぎてしまった感があり、道中、やや行きたがってしまった。

 正面から撮ったパトロールビデオでは、スタート直後に同馬が躓く姿がはっきりと映し出されている。

最後の直線。好位につけていたレイパパレだが伸びを欠いた

 私たちが競馬場に取材に行くと、レース後はまずパトロールビデオにかぶりつくし、競馬を終えて上がってきた騎手たちも調教師もそうしている。

 あれを現場で見ていれば、レイパパレがなぜ凡走してしまったのか、原因を自分なりに推測し、納得することができただろう。

 コロナ対策の入場規制が緩められつつある今言うのは遅いかもしれないが、ステイホームで競馬を楽しむファンのために、テレビ中継でもすぐにパトロールビデオを流すようしたほうが親切ではないか。勝利騎手インタビューのときにワイプ画面で小さく見せるなどするだけでもいいような気がする。

川田将雅とレイパパレ

 話が逸れたが、今回に関しては、レイパパレの敗因は距離ではないところにあった。

 これも競馬だと言ってしまえばそれまでだが、また別のレースで、本来の強烈な推進力を見せつけてほしい。

文=島田明宏

photograph by Keiji Ishikawa