21-22シーズンのチャンピオンズリーグで優勝したのはレアル・マドリー。現地パリからのレポートと“市場価格比較”の記事を配信します(全2回/#2も)

 チャンピオンズリーグ永世名人。

 レアル・マドリーはこんな異名をつけても誇張ではないんじゃないか……と感じる戦いぶりだった。

 現地時間29日に行われた21-22シーズンのCLファイナル、マドリーは今季絶好調のビニシウスが挙げた1点を守り切り、1−0で勝利した。4年ぶりのビッグイヤー獲得は通算14度目、断トツの優勝回数をさらに伸ばした。

©MUTSU KAWAMORI

クリロナやセルヒオ・ラモスが去っても勝負強すぎ

 褒め言葉として……変態的な勝負強さである。

 34歳にして世界最強級ストライカーの地位を確立したベンゼマは、決勝ゴールの場面でのデコイランでビニシウスのゴールをおぜん立て。“これぞベンゼマ!”という動きだった。それをシュート性のクロスでアシストしたバルベルデも、守備時には中盤の1枚になる戦術的な役割を果たす。さらにクルトワがサラーらの決定的なチャンスを防ぎまくる姿は、身長2メートルがさらに大きく見える存在感だった。

 とまあ出場選手全員の匠の技を書き連ねたくなるほどの、マドリーの強さである。

 PSG、チェルシー、マンチェスター・シティという“21世紀型金満クラブ”をことごとく逆転劇で打ち破り、伝統の力同士のぶつかり合いになったリバプール(直近5年で3度の決勝進出自体がスゴい)相手にも4年前の雪辱を許さない。

 この4年間でクリスティアーノ・ロナウドやセルヒオ・ラモスが去り、一方で鳴り物入りで入ったアザールらが苦しんだ。それでも……戦術うんぬんを超越した「マドリディスモ」が存在しているとしか思えない。

4年前と今シーズンCL決勝の陣容を比べると

 そんなレアル・マドリー、世代交代が図られつつモドリッチやクロース、ベンゼマらベテランもいまだに絶大な力を放っている。そんなチームの市場価格やチーム構成は4年間でどんな変遷を見せたのか。年齢とともにCL決勝メンバーの平均値を1ユーロ=135円(現在は円安だが)で統一して調べてみた。

<17-18シーズンCL決勝メンバー入りレアル選手の市場価格>
【スタメン】
GK
ナバス(1800万ユーロ/24億3000万円/31歳)
DF
カルバハル(6000万ユーロ/81億円/26歳)
バラン(7000万ユーロ/94億5000万円/25歳)
セルヒオ・ラモス(4500万ユーロ/60億7500万円/32歳)
マルセロ(6000万ユーロ/81億円/30歳)
MF
クロース(8000万ユーロ/108億円/28歳)
モドリッチ(2500万ユーロ/33億7500万円/32歳)
カゼミーロ(6000万ユーロ/81億円/26歳)
イスコ(7500万ユーロ/101億2500万円/26歳)
FW
クリスティアーノ・ロナウド(1億ユーロ/135億円/33歳)
ベンゼマ(4000万ユーロ/54億円/30歳)
【ベンチ】
GK
キコ・カシージャス(600万ユーロ/8億1000万円/31歳)
DF
ナチョ(3000万ユーロ/40億5000万円/28歳)
テオ・エルナンデス(1500万ユーロ/20億2500万円/20歳)
アセンシオ(7500万ユーロ/101億2500万円/22歳)
コバチッチ(3000万ユーロ/40億5000万円/24歳)
FW
ベイル(9000万ユーロ/121億5000万円/28歳)
ルーカス・バスケス(2500万ユーロ/33億7500万円/26歳)

18人平均年齢:26.6歳、18人平均市場価格:64億7700万円(総計1165億8600万円)
19〜24歳:3人
25〜29歳:8人
30〜34歳:7人
35歳以上:0人

4年前の看板は「BBCトリオ」だった

 当時の大看板と言えばベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの「BBCトリオ」だった。

17-18シーズンの「BBCトリオ」 ©Getty Images

 ロナウドはCLと大一番で決めなければ気が済まないとばかりにゴールを量産(このシーズンは13試合15得点)。1億ユーロの移籍金で騒がれたベイルは、当時のジダン監督とソリが合わず、干される状況になったものの、4年前のCL決勝でラッキーなミドルシュートとバイシクルシュートの2得点でMVPに輝いた。これがマドリーでの最大の輝きだったと言っていい。

 その2人やイスコと連動する黒子役ベンゼマが、4年後に大エースとなると想像した人はそんなに多くないのではないか。

 ディフェンスから中盤を見てもセルヒオ・ラモスとバラン、マルセロにモドリッチ、クロース……と当時の各ポジションで10本の指に入るだろう選手が並び、ベンチには当時スペインを担うと目されたアセンシオ、バスケスらが控える。この豪華絢爛さこそレアル・マドリーという趣だ。

現在のチーム構成、年齢、市場価格は?

 では、それから4年経って、チーム構成はどう変貌したのか。

<21-22シーズンCL決勝メンバー入りレアル選手の市場価格>
【スタメン】
GK
クルトワ(6500万ユーロ/87億7500万円/30歳)
DF
カルバハル(1800万ユーロ/24億3000万円/30歳)
ミリトン(6000万ユーロ/81億円/24歳)
アラバ(5500万ユーロ/74億2500万円/29歳)
メンディ(5000万ユーロ/67億5000万円/26歳)
MF
クロース(2500万ユーロ/33億7500万円/32歳)
モドリッチ(1000万ユーロ/13億5000万円/36歳)
カゼミーロ(5000万ユーロ/67億5000万円/30歳)
バルベルデ(6500万ユーロ/87億7500万円/23歳)
FW
ベンゼマ(2500万ユーロ/33億7500万円/34歳)
ビニシウス(1億ユーロ/135億円/21歳)
【ベンチ】
GK
ルニン(200万ユーロ/2億7000万円/23歳)
DF
ナチョ(700万ユーロ/9億4500万円/32歳)
マルセロ(300万ユーロ/4億500万円/34歳)
MF
アセンシオ(4000万ユーロ/54億円/26歳)
セバージョス(1500万ユーロ/20億2500万円/25歳)
イスコ(750万ユーロ/10億1250万円/30歳)
カマビンガ(5500万ユーロ/74億2500万円/19歳)
FW
アザール(1600万ユーロ/21億6000万円/31歳)
ルーカス・バスケス(1200万ユーロ/16億2000万円/30歳)
ベイル(300万ユーロ/4億500万円/32歳)
ロドリゴ(4000万ユーロ/54億円/21歳)
マリアーノ(600万ユーロ/8億1000万円/28歳)

22人平均年齢:28.0歳、22人平均市場価格:44億8000万円(総計985億7250万円)
19〜24歳:6人
25〜29歳:5人
30〜34歳:11人
35歳以上:1人

 結論から言うと、平均年齢は1.5歳ほど上がり、平均市場価格は約20億円下がっていた。

アザール、イスコ、ベイルらの市場価値が……

 ものすごく簡単に言うと、市場価格は「若くて有望株なほど高く(若くて実績がないと安い)、年齢を重ねるごとに下がっていく」傾向にある。

 サブとしての役割を貫いたマルセロやナチョはともかく、全盛期と比べた際のアザール(加入時の市場価格は1億5000万ユーロ、200億円超!)やイスコ、そしてベイルらアタッカー陣の市場価格の下がりっぷりは泣けてくる……。その一方で若手に目を移すとビニシウス、ロドリゴ、カマビンガといった「10代で獲得してチームの顔にする」という最近のマドリーの補強戦略がしっかりと見えてくる。

大喜びのカマビンガ、ロドリゴ、ビニシウス ©Getty Images

市場価格では計り知れない中盤トライアングルの円熟

 しかし何より、中盤トライアングルの3人が4年前から不変なのが凄まじい(バルベルデが補佐役になりつつ)。前で「世代交代」と書いたものの、この3人の連動性はジダン体制からアンチェロッティ体制に移っても相変わらず。アンチェロッティが率いた頃のミランが「ガットゥーゾ、ピルロ、セードルフかアンブロジーニ」という構成が円熟しきっていたのを思い出すし、サッカーは市場価格で決まるわけではないと実感する。

 欧州サッカーのクラブシーンは短いバケーション、そして夏の移籍市場に入る。マドリーはムバッペを獲り逃がしたものの、ミラン優勝に貢献したラファエル・レオン獲得に163億円を用意したとの報道もある。そんなマドリーと対戦したリバプールのマネ、南野拓実らはどんな選択をするのだろう。日本人で言えばマジョルカの久保建英(900万ユーロ/12億1500万円)と、マドリー下部組織にいる「ピピ」こと中井卓大も気になるし……。

レアルの下部組織でプレーする中井 ©Getty Images

 W杯が途中に挟まれる新シーズンに向けて、メガクラブはどんなチーム構成を構築するのか。何よりマドリーが「守備陣、攻撃陣すべてに注入される伝統の勝負強さ」を新たに引き継がせようと呼び寄せる人材にも注目したい。

<「レアル14度目V=守備優位時代」?につづく>

文=茂野聡士

photograph by Mutsu Kawamori