21-22シーズンの欧州サッカー、圧倒的なパフォーマンスを見せたワールドクラスは誰か……各国リーグを深く追う識者の方々に「ベストイレブン」を選出してもらいました(全2回/#1も)

 今季プレミアリーグは、最終アストンビラ戦(3-2)で2点差を覆したマンチェスター・シティが、ウォルバーハンプトン戦(3-1)で逆転勝利を収めたリバプールとの緊迫した優勝争いを制した。

 その差、わずか1ポイント。一方、3位チェルシー以下との差は18ポイント以上。別格の「2強」に敬意を評し、両軍基本の4-3-3システムをベストイレブンでも採用する。

疑問の声をかき消したアーセナルの新守護神

 GKは、アーロン・ラムズデイル。無失点試合数ではトップ2のエデルソン(シティ)とアリソン・ベッカー(リバプール)がリーグ最多タイだが、チームに与えたインパクトの大きさでは5位アーセナルの新守護神が勝るとも劣らない。

 計9失点3連敗のスタート大失敗からトップ4争いを演じるまで回復したのは、揃って第4節ノリッチ戦(1-0)が移籍後初のリーグ戦となったDF富安健洋の強さと速さ以上に、ラムズデイルのフィードとセーブによるところが大きい。

 8セーブで零封勝利を実現した第10節レスター戦(2-0)。直接FKを横っ飛びでバーに当てて弾き出した1本は、相手GKカスパー・シュマイケルの父ピーターに、SNS上で「何年も目にしていなかったようなベストセーブ」と感嘆の声を上げさせた。加入当初はシェフィールド・ユナイテッド(2部)から推定約38億円で獲得した補強に対して疑問の声もあったが、それを見事にかき消した。

37歳となったチアゴ・シウバは衰え知らずのパフォーマンスでチェルシーを支えた©Getty Images

チェルシーのピンチを幾度も防いだ最年長37歳

 最終ラインの中央には、ビルヒル・ファンダイクを選ばないわけにはいかない。昨季の大半を怪我で欠場したCBの復帰は、開幕前に世界最高クラスの新戦力を手に入れたようなもの。フィールド選手ではチーム最多のリーグ戦34試合に先発した支柱は、リバプールが最終節まで4冠を目指し続けられた要因の1つだ。

 指揮官のユルゲン・クロップは、よく「素晴らしい」という意味で「クール」と言うが、今回のイレブンでの相棒には文字通り“クール”な守りが圧巻だったCBを選んだ。

 もう1人のCBはチェルシーで幾度もピンチを未然に防いだチアゴ・シウバだ。今季プレミアのピッチに立ったフィールド選手では最年長37歳だが、鋭い読み、的確な状況判断、効果的フィードといったワールドクラスたる所以は相変わらず。最終ワトフォード戦(2-1)で、無人のゴールに向かったと思われた味方のバックパスに当たり前のように反応し、ゴールライン手前で追いついて反転すると、表情一つ変えずにビルドアップの起点となった。

ジョアン・カンセロは優勝の影の功労者

 サイドバックには予想以上の働きを見せた2人を抜擢した。両サイドで存在感を見せたジョアン・カンセロは優勝の影の功労者だ。リバプールのアシスト源でもあるトレント・アレクサンダー・アーノルドほど目は引かないかもしれないが、チャンスメイカー揃いのシティにあって、リーグ戦での7アシストはチーム2番手。スルーパス21本はチーム最多なのだから、攻撃面でも立派に仕事をしたと言える。

 左サイドのマルク・ククレジャも、利便性の高い選手だ。移籍1年目ながら、3バック採用時にはストッパーも務め、クラブ史上最高となるプレミア9位に貢献した。ホームで金星をあげた第36節のマンチェスター・ユナイテッド戦(4-0)では、力強く初ゴールを決めた後の感涙も光った。今夏シティが引き抜きに動くとの噂が、活躍のほどを物語る。

高度に安定したパフォーマンスでウェストハムを躍進に導いたライス©Getty Images

 移籍の噂と言えば、ウェストハムでボランチを務めるデクラン・ライスも話題の的だ。シティから6位ユナイテッドまで、トップ6に並んだ“ビッグ6”の中で、守備的MFの枠を超え、攻撃参加でもダイナミックだった今季7位の「心臓」を欲しがらないクラブはないだろう。高度に安定したパフォーマンスで、プレミアでは最終節までトップ6を争い、ヨーロッパリーグでは準決勝まで躍進したチームの原動力となった23歳がベストイレブンのアンカーに相応しい。

ICDを装着してピッチに復帰したエリクセン

 インサイドハーフの1枚はプレミア王者の「中枢」であるケビン・デブライネで決まり。リバプールやチェルシーとの上位対決でネットを揺らした勝負強さも頼もしい。地元の宿敵に快勝した第28節のユナイテッド戦(4-1)では、2ゴール1アシストを記録。最終節でイルカイ・ギュンドガンが決めたシティ優勝を意味する逆転ゴールも、ルーズボールに素早く反応した超高精度のプレーメイカーが完璧なラストパスで演出したものだ。

 もう1人のインサイドハーフに、心臓にICD(植込み型除細動器)を装着してピッチに復帰したクリスティアン・エリクセンを選ばせてもらった。ブレントフォード入りは今冬の移籍市場最終日で、実働期間は短かった。しかし、人々に与えた喜びと勇気は絶大だ。

昨夏のEURO2020で、心臓発作で倒れたエリクセンは、新天地ブレントフォードに「創造力」をもたらした©Getty Images

 初先発は、昨夏のEURO2020で心臓発作に襲われてから約9カ月後となる第28節ノリッジ戦(3-1)。心停止から蘇った「創造力」を得たチームは、1引き分けを挟む7連敗を脱し、昇格1年目の13位フィニッシュへとペースを上げた。

 第31節チェルシー戦(4-1)では、攻撃の糸を引きながらボックス内に走り込んで逆転の移籍後初ゴール。敵地での西ロンドンダービーでクラブ史に残る大勝に花を添えた。

マネはシティとの直接対決で2試合2得点

 3トップの2枠はリバプールの前線から選出。モハメド・サラーは、これまでのように派手に活躍した印象はないものの、実際はプレミア得点王(タイ)兼アシスト王として、計36点に直接絡むさすがの1年だった。

 第7節のシティ戦(2-2)、右サイドから切り込むと3人をかわしてファーサイドに突き刺した“サラー・スペシャル”は、BBCテレビ『マッチ・オブ・ザ・デー』においても、今季ベストゴールに選ばれている。

 ちなみに、独断で選ぶ今季のベストゴールは、チェルシーのマテオ・コバチッチがリバプールのゴール右上隅に放り込んだボレーだ。上空から落ちてくるクリアボールをエリアの淵から数歩下がりながら軽く飛んで捉えた一発だ。

 前線中央のサディオ・マネは、30歳にして代表戦を含む計64試合でプレーしている。セネガルを優勝に導いたアフリカ選手権で離脱中に、今季プレミアの最優秀新加入選手に選びたいルイス・ディアスが加わっても、その重要度と貢献度は変わらなかった。

 シティとの直接対決を見ても2試合2得点で、アウェイでの第31節(2-2)では最終節まで優勝の望みを繋ぐ一因となった同点ゴールを押し込んだ。また、6日後には最終的にクロップ体制下での大会初優勝を飾ることになるFAカップの準決勝(3-2)で、シティを下す2ゴールを叩き込んでいる。

アジア人初の得点王に輝いたソン・フンミン。トッテナムのトップ4復帰の立役者となった©Getty Images

際立ったソン・フンミンの決定力

 残る1枠は、23得点でサラーと個人タイトルを分け合ったソン・フンミンとした。

 攻勢が常のリバプールと、昨年11月からのアントニオ・コンテ体制でカウンターを狙うトッテナムのスタイルの違いを考えれば、ソンの決定力が際立つ。事実、総シュート数は139本のサラーに対して86本。それでも、オープンプレーからの得点はPKでの4点を含むサラーより多いことになる。

 主砲ハリー・ケインが不在だったシティとの開幕戦(1-0)でチームにもたらした決勝ゴールから、4位争いでアーセナルを抜いたラスト3試合での3得点に至るまで、アジア人初のプレミア得点王がトップ4復帰を支えたトッテナムは、CLの舞台に返り咲くとともに、「ケインのチーム」という俗評に別れを告げた。

<#1につづく>

文=山中忍

photograph by Getty Images