21-22シーズンの欧州サッカーが幕を閉じました。今季、圧倒的なパフォーマンスを見せたワールドクラスは誰か……各国リーグを深く追う識者の方々に「ベストイレブン」を選出してもらいました(全2回/セリエA編も)。

 2021-22シーズンのドイツ・ブンデスリーガは、バイエルンが前人未到のリーガ10連覇を実現して幕を閉じた。ただ、ユリアン・ナーゲルスマン監督が満を持して就任した今季のバイエルンが盤石だったとは言い難い。とりわけ果敢なハイラインを築くなかでのディフェンスワークには課題が散見され、指揮官の理想とするチームスタイルへの順応に苦しんでいた選手も見受けられた。

シュベーベはビルドアップで多大な貢献

 ブンデスリーガで守備力を発揮するには、DFのハイスキルが求められると感じている。端的に言えば、単純な対人能力だけでは曲者揃いの相手アタッカーを抑えきれない。また、バックラインの選手にはビルドアップ時の緻密な組み立ても求められている。

 それはGKにも言えることで、最近のブンデスリーガGK陣は足元の技術に優れる選手が目立ち始めている。

 今季のベストGKにはケルンのマルビン・シュベーベを推したい。ケルンは今季からステッフェン・バウムガルト監督を招聘し、「ポゼッション原理主義」と称されるほどのショートパスサッカーへのスタイル転換を図った。

 シュベーベは当初セカンドGKの立場だったが、昨年の12月頃を境に守護神へとのし上がり、バウムガルト監督が志向する自陣からのビルドアップで多大な貢献を果たしつつ、俊敏なシュートストップでもチームを救ってきた。相手の激しい前線プレスを浴びても一切動じずショートパスを通す高潔な姿勢は、リーガ最終節、シュツットガルトのメルセデス・ベンツ・アレナでも際立っていた。残念ながらゲーム最終盤に遠藤航の決勝ダイビングヘッドを浴びて敗戦したが、地元専門誌『キッカー』は遠藤ではなくシュベーベをマン・オブ・ザ・マッチとし、最終節全体のベストプレーヤーにも挙げている。

相手を封殺できるターの個人能力は抜きん出ていてる©Getty Images

ターのいるエリアにボールを入れるのは得策ではない

 DFは3人の選手を挙げたい。

 まず、ヨナタン・ターはスピードと強度を併せ持ったハイクオリティなCBだ。攻撃陣にタレントが揃うレバークーゼンはとかくチーム全体が前傾姿勢になりやすいが、どんなにハイラインを築いても最後尾にターが控えることでそのリスクを著しく軽減させている。俊敏なFWとの走力勝負、ターゲットマンとのフィジカル対決と、様々なシチュエーションに即時対応して相手を封殺できる個人能力は抜きん出ていて、レバークーゼン戦において、彼のいるエリアにボールを入れ込むのは得策ではないと痛感してしまう。

 そしてストッパーは、いずれもフライブルクに所属するフレッシュで躍動感のある2人に着目した。

 まず22歳のニコ・シュロッターベックは、おそらく今冬のカタール・ワールドカップでドイツ代表として日本代表と対峙することになるだろう。初めて彼のプレーを直接観たのは昨季のこと。シュロッターベックは熱狂的なホームサポーターの轟音のような大声援を背に受けながら、相手FWに何度も鋭いスライディングタックルを浴びせていた。今季は、そんなプレーをクリスティアン・シュトライヒ監督率いるフライブルクでも実践し、UEFAヨーロッパリーグ出場権獲得の6位でフィニッシュする原動力となった。

マルチな雰囲気を漂わせるフライブルクコンビ

 シュロッターベックのディフェンススタイルを一言で表すと「果敢」。常に相手よりも一歩先んじて足を伸ばしてボールを弾き飛ばし、返す刀で敵陣へと向かっていく。そんなシュロッターベックは、今年5月にドルトムントと5年の大型契約を交わして、さらなるステップアップを果たそうとしている。

 同じく、弾むような挙動で相手からボールを絡め取るのがフィリップ・リーンハルトだ。対戦相手によって変幻自在に戦術を変えるフライブルクのシュトライヒ監督の下で、知力を兼ね備えたラインハートは巧みなポジショニングと深いタックルで全方位をカバーする。また、攻撃時のセットプレーでは高い打点のヘディングでゴールを狙うこともでき、攻守両面で多大な影響力を及ぼす選手だ。

フライブルクの最終ラインを支えたリーンハルト(左)とニコ・シュロッターベック©Getty Images

 シュロッターベックとリーンハルトの2人は従来のブンデスリーガのDFのような無骨な印象はなく、スマートでクレバーでありつつフィジカル能力も申し分ないマルチな雰囲気を漂わせている。ちなみに日本代表に初選出されたシュツットガルトの伊藤洋輝も、彼らと同じ素養を有した新時代のDFだと思う。

必殺の左足クロスを備えるラウム

 MFの人選は非常に悩んだ。またバックラインを3枚にしたため、本来はサイドバックの人材を中盤に配することにもした。それがドイツ代表左サイドバックの最有力候補であるダビド・ラウムだ。ラウムは大前提として守備能力が高く、自陣での対人プレーで強みを発揮する。一方で攻撃面ではパワフルな縦への抜け出しと必殺の左足クロスでチャンスを演出する。

ドイツ代表にも名を連ねるラウムは対人の強さに加え、パワフルな攻め上がりも売り©Getty Images

 ブンデスリーガ第31節のフランクフルトvsホッフェンハイムで鎌田大地が逆転の2点目をマークした後の78分、ラウムが上げた鋭い左足クロスが今でも目に焼き付いている。強烈にボールを擦って回転した球が味方FWジョルジニオ・ラターの頭に吸い付くような軌道は、ラウムの体幹の強さを表しているとも思う。

 逆サイドはウイングプレーヤーが群雄割拠している。バイエルンのセルジュ・ニャブリは当然ベストプレーヤー候補のひとりだが、ここではボルシアMGの核弾頭、ヨナス・ホフマンを挙げたい。ホフマンのプレーの真骨頂は、凄まじい馬力での敵陣侵入と強烈な右足シュート能力で、味方FWを差し置いて今季チーム最多のリーグ12ゴールをマークした。逆にアシストは5に留まるため、ホフマンはサイドアタッカーと言うよりもフィニッシュワークに優れる選手だとも言える。

キミッヒがボールを持つと時が止まる

 アンカーポジションには“盟主”バイエルンの頭脳、ヨシュア・キミッヒを据えたい。ジョゼップ・グアルディオラ監督の時代から変わらずバイエルンの中軸を担い、スペースカバー、パスワーク、対人と、「ゼクサー」(ドイツ語で背番号6。守備的MFの意として捉えられる)の職務を十全に全うするブンデスリーガ屈指のMFだ。

 スピーディに攻守が入れ替わりがちなブンデスリーガのゲームで、キミッヒがボールを保持したときだけは良い意味で時が止まったかのようになる。その絶妙なアクセントは、チーム戦術を活性化させるきっかけにもなる。またキミッヒはスーパーユーティリティとしても高い評価を得ていて、ドイツ代表の右サイドバック不在が顕在化した際は彼がこのポジションを担う可能性もある。

バイエルンの中核を担うキミッヒは「ゼクサー」の職務を十全に全うした©Getty Images

 インサイドハーフは新旧の競演。トーマス・ミュラーは言わずと知れたバイエルンの中核で、30歳を過ぎ、指揮権がハンジ・フリックからナーゲルスマンに移譲されてもその立場を保持し続けている。

 彼のすごみは20代の頃と変わらない落ち着きと挙動で、それほどスピーディと思えないアクションからでも狭小のペナルティボックス内で確実にゴールを射抜くところにある。むしろ若い頃の方がベテラン的な振る舞いが目立った印象もあり、現在の方がスムーズさが増しているとも思える。

ビルツは常に俯瞰してピッチを見渡せる

 フロリアン・ビルツは、ドリブル、パス、トラップの基本技術をハイレベルで有する、ドイツサッカー界期待のライジングスターだ。2年前に彼のプレーを観てスターティングメンバーのリストを見返したとき、まだ17歳だったのを知って驚いたのをよく覚えている。ビルツは常に俯瞰してピッチを見渡せる選手であり、その能力を駆使して常にその場面での最適解を導き出せる。

終盤に負傷離脱したビルツだが、順調に回復すれば19歳にしてW杯出場も©Getty Images

 味方FWを活かすか、それとも自身が躍り出るか、その取捨選択を一瞬で下せるMFで、誰もが彼を“タクティシャン”として認識するだろう。残念ながら今年3月のケルン戦で左膝前十字靭帯断裂を負って長期離脱となってしまったが、順調に回復すれば19歳にしてカタール・ワールドカップのドイツ代表メンバーに名を連ねても、おかしくない。日本にとっても危険な選手である。

レバンドフスキは5年連続で得点王に

 2トップは前人未到の道を往く純正のストライカーと、レーザービームのように相手を出し抜く24歳の若者のコンビとした。

 バイエルンに留まらずブンデスリーガを象徴するスター、ロベルト・レバンドフスキは33歳にして円熟の極みにある。鋼鉄のような屈強な体躯で相手DFのプレッシャーをはねのけ、抜群の基本スキルを駆使したトラップ&シュートでゴールを強奪する。ヘディング、ボレー、ミドルと多彩なシュートパターンを有しているため、対戦相手は分かっていても彼の動きを封じられない。

 今季はブンデスリーガ34試合出場35得点で、文句なしの自身5年連続の得点王を獲得。もし今夏に彼が他クラブへ移籍すれば、ナーゲルスマン監督率いるバイエルンは陣容再考を余儀なくされるだろう。

 もう一方のFWはRBライプツィヒのクリストファー・ヌクンク。彼は驚異的スピードで常に相手バックライン背後を突くランニングを繰り返し、必殺のチップシュートでボールをゴールに納める稀代のスピードスターだ。

スピードスターのヌクンクは20得点・16アシストを記録した©Getty Images

速さと知力を併せ持つヌクンク

 今季のヌクンクは20得点。レバンドフスキ、パトリック・シック(レバークーゼン)、アーリング・ハーランド(ドルトムント)には及ばなかったが、13アシストはミュラーの16アシストに次ぐリーガ2位の数字だ。左右両足を駆使して広角な視野を取れる点が彼の強みで、速さと知力を併せ持った機動力のある選手である。

 今回挙げたベストイレブンのなかには、今冬のカタール・ワールドカップで日本代表が対戦するドイツ代表候補としてシュロッターベック、ター、キミッヒ、ラウム、ホフマン、ミュラー、ビルツと、実に7人が含まれている。ドイツはこれにGKマヌエル・ノイアー、DF二クラス・ズーレ、MFレオン・ゴレツカ、FWニャブリ、FWレロイ・サネらバイエルン勢や海外勢も加わるのだから、相当な強敵であるのは間違いない。

 特に常時現地でそのプレーを目撃している者としては、彼らが編成されるチームに日本代表の面々がどう立ち向かうのかを、実は非常に楽しみにしている。

島崎氏が選んだ「21-22ブンデスベストイレブン」

<セリエA編に続く>

文=島崎英純

photograph by Getty Images