21-22シーズンの欧州サッカーが幕を閉じました。今季、圧倒的なパフォーマンスを見せたワールドクラスは誰か……各国リーグを深く追う識者の方々に「ベストイレブン」を選出してもらいました。(全2回/ブンデス編も)

 21-22シーズンのセリエAは、11年ぶりに王座へ返り咲いたミランの優勝で幕を閉じた。

 指導者キャリア23年、歴代6位の高齢56歳7カ月で初優勝を果たした苦労人監督ピオリに敬意を表して、彼の4-2-3-1で《イ・ミリオーリ・ウンディチ(ベスト11)》を選んでみた。

ミラン鉄壁の守備を作った新守護神とテオの攻撃性能

 ミラン優勝の要因の一つは、鉄壁の守備にあった。

 リーグ最少失点をナポリと分け合った守備陣のうち、今季から正守護神となったGKメニャンの果たした功績は大きい。出場32試合にしてクリーンシートはリーグ最多の17回、シュートセーブ率も5大リーグの同僚たちの間で最高の81.3%を記録。縦横への跳躍力とバレーボール選手を思わせる腕の使い方にセーブ技術の新潮流がある。カリアリ戦で人種差別の野次を受けたが、気丈に対応したメンタルもたくましい。前任者ドンナルンマ(現パリSG)を懐かしむミラニスタはもはや皆無だろう。

 4バックの左は、ずば抜けた攻撃力を見せつけたテオ・エルナンデス(ミラン)で決まりだ。

 前方のFWラファエウ・レオンと組む縦の高速ドリブル・ホットラインは、守備側にとって脅威そのもの。加入3年目のテオは5ゴール5アシストで大車輪の働きぶりを見せ、特に37節アタランタ戦でのスーパーゴールは圧巻だった。自陣から一気に93mドリブル長駆!

「スタートしたときに最後の最後までいってやろうと思った。人生最高のゴールだ」と本人感激の一撃は、96年にサン・シーロで怪人OBウェアが決めた伝説のドリブルゴールを彷彿とさせた。守備面でも快足を活かしつつ無用なファウルが減り、対人テクニックが向上。デュエル勝利数が201回を数え、今や最終ラインの頼れる存在だ。

 左CBには、高い完成度を見せた同僚トモリを推す。

イブラヒモビッチが見守る中、優勝パレードでサポーターにシャンパンファイトするトモリ ©Getty Images

 百戦錬磨のキアルや主将ロマニョーリの控えから脱却し、デュエルの勝率やボール奪取数、パス成功率等で際立つ数字を残しながら優れた統率力をもってミランの防衛ラインを堅守した。ともに大きく飛躍した若き同僚カルルと阿吽の呼吸で、相手の攻撃の芽を黙々と潰す様は職人の域に近い。

カルチョ最強DFと“掘り出し物”はプロビンチャ勢にいる

 ミラン組3連発の後は、プロビンチャ勢の出番だ。

 達人キエッリーニ(ユベントス)が去るセリエAでは、トリノのブレーメルが新たにリーグ最強DFの称号を得た。

 ボール奪取466回(リーグ1位)にクリア数199回(同1位)、インターセプトは117回(同2位)で空中戦勝利数も154回(同3位)と、イタリア流対人守備の極意を完全につかんだ。能力が高い上に25歳と若く、今夏移籍市場の人気銘柄になることは必至で、すでにインテル等が熱視線を送っている。

 右サイドには、ウディネーゼの“掘り出し物”モリーナを置く。

 アルゼンチン代表として昨夏のコパ・アメリカで優勝後、2年目の今季はDF離れしたシュート力で7ゴール(+2アシスト)を奪い、異能の超攻撃型サイドバックとして一気にブレイク。後半アディショナルタイムまで衰えないスタミナも魅力で、クラブの先輩にあたるDFクアドラドの後継者としてユーベ移籍が濃厚とされる。

中盤は「バルカン半島超人コンビ」に任せたい

 中盤は、1試合あたり平均走行距離1位(11737m)MFブロゾビッチ(インテル)と2位(11664m)ミリンコビッチ・サビッチ(ラツィオ)のバルカン半島超人コンビに任せたい。

ブロゾビッチとミリンコビッチ・サビッチ ©Getty Images

 チームは連覇を逃したが今季も走行距離キングの座を守った鉄人ブロゾビッチは、基点として攻守長短のパスを操った。いかにインテルの選手層が厚くとも彼の代役だけはいない。

 ミリンコビッチは通算52回も作り出したチーム決定機から、11ゴール&10アシストをもたらした。

 運動量オバケの2人はいずれも類まれなテクニックと戦術眼を兼ね備え、剛と柔、フィジカル勝負も戦術的ハメ技もどんと来いだ。敵に回せば厄介この上ないが、味方にすればこれほど頼もしい男たちはいない。

 2列目には左からレオン、ケシエ(ともにミラン)、ベラルディ(サッスオーロ)を並べた。

市場価値171億円のドリブラーに成り上がったMVPレオン

 今季のリーグMVPを受賞したレオンは、チーム3年目にしてセリエA最強のドリブル・アタッカーに成長した。誰より早くトップスピードに到達し、するすると左サイドを抜いていく。1対1の強さを生かしたドリブル成功数(106回)が示すように、守る側はわかっていても止められない。11ゴール&10アシストと爆発し、名門復活の立役者となった。

 一躍スターダムにのし上がったレオンは、FWムバッペ(パリSG)獲得に失敗したレアル・マドリーの獲得目標に。市場評価額は1億2000万ユーロ(日本円にして171億6100万円!)とされるが、ミランTDマルディーニは徹底的にレオン流出を防ぎたい構えで、今オフの契約更新交渉に注目したい。

ケシエの「トップ下コンバート事件」は英断だった

 トップ下のケシエ選出には異論が多いかもしれない。本職のトレクァルティスタならMFチャルハノール(インテル)やMFムヒタリアン(ローマ)など他に有力候補がいるし、終盤には2列目中央に同僚MFクルニッチが入る機会も多かった。

 だが、後世に今シーズンを振り返るとき、19節エンポリ戦でフィジカル・ファイター型のケシエがトップ下へコンバートされた事件は、優勝したミランの戦術的ターニングポイントとして記憶されるべきだ。苦しい時期にタイトル戦線へ踏みとどまらせた英断だった。

 契約延長を拒み、移籍金を残すことなく退団が確定したケシエは、ファンから厳しい批判に晒された。しかし、「優勝を置土産に」と誓った彼はプロとして最後まで全力を尽くし、終盤の6連勝に貢献。3−0で勝った最終節サッスオーロ戦でダメ押し弾を決めた後、惜別の敬礼をゴール裏スタンドに捧げ、ミラニスタたちを感涙させた。

 右サイドの暴れん坊だったベラルディには、27歳ながら“いぶし銀”の匂いが漂い始めている。

 アシスト王(13本)になった今季は、15ゴールも決めキャリア3度目の“ダブル”達成。キーパス成功は68本を数え、年々プレーの質が向上し続けている。ムラッ気がなくなった秘訣は、昨季まで薫陶を受けた前監督デゼルビの影響と、一昨年の年末に父親になった自覚だろう。

4度目の得点王インモービレがもっと評価されるべきワケ

 1トップには、得点王とリーグ最優秀FW表彰を受けたインモービレ(ラツィオ)を選んだ。

インモービレとブレーメル ©Getty Images

 4度目の得点王獲得は史上最多。リーグ1位の枠内シュート59本をはじめ、とにかくプレーの質が高い。どうしてもW杯を逃したイタリア代表での不振が頭にちらついてしまうが、監督が変わろうが戦術が代わろうが、ゴールを量産し続けるなのだから文句のつけようがない。

 プレー解析のデジタル化が進んだ現代では、オフ・ザ・ボールの動きだけでなく「囲まれた状況下でのパス成功率」「1対1からの有効展開率」といった詳細な条件ごとの成績が数値化されるようになった。インモービレはあらためて高評価されるべきFWだ。

 所属クラブで10年目を終えたベラルディや8年目だったブロゾビッチのように、今季のセリエAでは腰を落ち着けて蓄えてきた経験や能力が実を結んだ。惜しくも選外にしたものの、インテルでの4年目を終えたFWラウタロ・マルティネスや通算6年を過ごしたFWペリシッチもその中に含まれるだろう。

テオとデュエルするベラルディ ©Getty Images

指揮官ピオリが象徴する「セリエAの潮流」とは

 苦節の末ついに頂点をつかんだ指揮官ピオリにも象徴されるように、21-22年のセリエAは「地道な継続が勝利したシーズン」だったといえるのではないか。

 来季はインテルの逆襲なるか。2季優勝から遠ざかったユベントスの捲土重来に、それぞれ指揮官が2年目を迎えるローマ2強やナポリの南部勢の巻き返しはあるか。来たる22-23年シーズンが楽しみでならない。

弓削氏が選んだ「セリエA21-22ベストイレブン」

<ブンデス編に続く>

文=弓削高志

photograph by Claudio Villa/Getty Images