6月シリーズで強化を進める日本代表。W杯でドイツ、スペインに勝つためには何が必要か。欧州ネーションズリーグから見る“番狂わせへのケーススタディ”と日本人選手との対戦経験豊富な現役スペイン代表アタッカーに直撃取材した(全3回/#1、#2も)

 グループステージ突破という観点では最悪な組み合わせだ。だが、W杯を楽しむという観点では、最高の相手になったのではないだろうか。

 カタールW杯のグループステージ第3戦において、日本はスペインと対戦する。近年の日本サッカー界が模範としてきた国であり、ファンのみならず、選手たち自身も対戦を待ち望んでいた相手だろう。

 では、スペイン側は日本をどう見ているのだろう? スペイン代表の左FWとして欠かせない存在になりつつあるダニ・オルモ(RBライプツィヒ)に話を聞いた(翻訳:木崎伸也)。

ヨシダは1対1に強くて我慢を強いられた

――あなたは昨夏の東京五輪の準決勝で、U24スペイン代表の一員としてU24日本代表と対戦しました。日本にどういう印象を持ちましたか?

「延長戦に突入したことからもわかるように、日本は非常にやっかいな相手だったよ。彼らが勝つ可能性も十分にあったと思う。スペインが支配していたように思われるかもしれないが、マルコ・アセンシオが延長後半10分にゴールを決めるまで五分五分のゲームだったという感覚だ。かなりタフな試合だった」

堂安律とマッチアップするダニオルモ ©Getty Images

――スペインは東京五輪の直前に日本と親善試合で戦い、ある程度特徴をわかっていたと思います。準決勝に向けて、日本をどう分析していましたか?

「コンパクトに守ることができ、相手をフリーにさせず、スペースを与えない。非常に運動量があるチームだと分析していた」

――日本側の誰を中心選手と見ていましたか?

「キャプテンのヨシダ(吉田麻也)はポジショニングに優れていて1対1に強く、ビルドアップの能力があるセンターバックだ。彼を中心としたDFラインに対して、穴を見つけるのは簡単ではなかった。その結果、スペインは我慢を強いられる展開になったんだよ」

久保については「電光石火という感じだ」

――あなたは久保建英の3歳上で、バルセロナのカンテラで同時期をすごしていましたね。何か思い出はありますか?

「タケは静から動の動きの振れ幅が大きい選手で、ドリブルが非常に優れている。電光石火という感じだ。彼にいい状態でボールを持たせたら、止めるのは難しい。カンテラ時代から、素晴らしい未来が待っていることを感じさせる選手だった。今は少し足踏みしているかもしれないが、ここから大きな成功を手にするはずだ」

ダニ・オルモと久保は「バルサ下部組織出身」という共通点がある ©Kiichi Matsumoto/JMPA

――東京五輪で対戦したときの久保の印象は?

「自分のプレーに集中していたからあまり多く覚えていないが、もしいい形でタケにボールが渡ったら、こちらのDFにとって厄介な存在だったことは間違いない。東京五輪ではバルセロナ時代について少し話をした。カタールW杯で再会できるのを楽しみにしている」

遠藤は賢く、鎌田は突出した技術が

ブラジル戦での遠藤 ©Kiichi Matsumoto/JMPA

――現在、あなたはドイツのライプツィヒの中心選手として活躍しています。ブンデスリーガでプレーする日本人選手について聞かせてください。まずシュツットガルトの遠藤航と伊藤洋輝は?

「遠藤航は素晴らしいオーガナイザーだ。戦術的に非常に賢く、プレーは激しいが頭はクールである。ピッチの状況を常に把握している印象だ。彼がいるとチームの構造が整えられ、ボールを前方に運びやすくなる。彼がボールを受ける動きをすることで、味方もアクションを起こしやすくなるのだろう。

 伊藤についてはそれほど詳しく知っているわけではないが、複数のポジションをできる選手だよね? センターバックでも、左サイドバックでもプレーできる」

――フランクフルトの日本人選手は?

「鎌田大地は突出した技術があって、どんな相手でも抑えるのに苦労する選手だ。ライン間ですごくクレバーな動きをするので、相手は捕まえることができない。

 長谷部誠はチームを統率できる戦略家だ。とても賢く、ビルドアップに長け、もともと中盤の選手なので通常のセンターバックが犯すようなパスミスをほとんどしない。仲間から頼られる存在だろう」

EL制覇を成し遂げたフランクフルトの鎌田大地と長谷部誠 ©Getty Images

――ウニオン・ベルリンの原口元気は?

「原口元気は今季ウニオンで大きなステップアップをしたのではないだろうか。中盤でフレキシブルにプレーできる。ドイツ杯の準決勝でライプツィヒがウニオンと対戦した際、原口も先発していた。終了間際に僕たちがゴールして勝利したが接戦だった。原口からはドイツの異なるクラブでプレーしてきた経験を感じさせられる」

W杯の組み合わせは率直にどう感じるか

――カタールW杯のE組では、スペイン、ドイツ、日本が同組になりました。どう見ていますか?

「誰もが言うように、W杯には簡単なグループなどない。もちろん理論上はスペインとドイツがグループ突破の有力候補だが、サプライズが起きる可能性も排除できない。

 W杯が初めて中東で開催され、それも北半球の冬に初めて行われる。波乱が起きやすい条件がそろっているんだ。日本はベスト16へ進めるポテンシャルを十分に持っていると言えるだろう」

――ドイツ代表の強みはどこにあると思いますか?

「バイエルンを中心にしていることだ。ドイツ代表を率いるハンジ・フリックは、バイエルンの監督として2020年にCLで優勝した。そしてドイツ代表にはトーマス・ミュラー、レロイ・サネ、セルジュ・ニャブリ、ヨシュア・キミッヒ、レオン・ゴレツカ、ジャマル・ムシアラやマヌエル・ノイアーといった国際経験豊かなバイエルンの選手たちがいる。カタールW杯は直前に練習する時間がほぼないため、軸となる選手が同一クラブでプレーしていることは大きなアドバンテージだ」

日本代表の強みと弱みを分析すると……

――日本代表の強みと弱みは?

「強みはスピードと、異なるポジションでプレーできる選手がたくさんいることだろう。そういう選手がそろっていると、対戦相手によってやり方を変えられる。弱みはまだW杯でベスト8以上に進んだ実績がないことだと思う。ただし、一度でもそれを越えると、精神が解放され、一気に次のレベルに進むのではないだろうか」

©Kiichi Matsumoto/JMPA

――あなた自身のカタールW杯での目標は?

「昨年のユーロでは準決勝で敗れ、決勝に進めなかった。次こそはその場所へ到達したい。もし決勝へ行ければ、W杯で優勝する自信がある。最高のコンディションで大会を迎えたい」
<#1、#2からつづく>

文=アレクシス・メヌーゲ

photograph by Takuya Kaneko/JMPA