「ヤクルト1000」を、ネットでずいぶん高い値段で買って家人に叱られたところである。ヤクルト株が上がっているのは間違いないところだ――もちろんこの項は、交流戦を制したスワローズの話である。

 セ・リーグは交流戦で55勝53敗、わずか2つの勝ち越しながら2年連続でパに勝ち越した。これは初。特に終盤戦のセ・リーグの粘りは見事だった。

 昭和の昔、セパが激突するオールスター戦で野村克也らパの宿将が集まって「対セ戦略」で知恵を絞り「人気のセ、実力のパ」を証明すべく必死で戦ったが、今の交流戦はセのチームが「意地を見せる」場へと転換したのかもしれない。

ヤクルトと阪神は得失点差以上に勝敗にこだわった?

 ただし数字を見れば勝負へのこだわりを見せたのは、セでは2球団だった。両リーグの交流戦の結果と、得失点差による「ピタゴラス勝率=P率」を並べるとこのようになる。

〇セ・リーグ 55勝53敗 率.509
ヤクルト14勝4敗 率.778(78得51失 P率.701)
阪神12勝6敗 率.667(62得38失 P率.727)
DeNA9勝9敗 率.500(59得56失 P率.526)
巨人8勝10敗 率.444(61得78失 P率.380)
中日7勝11敗 率.389(45得69失 P率.208)
広島5勝13敗 率.278(33得83失 P率.137)

〇パ・リーグ 53勝55敗 率.491
ロッテ10勝8敗率.556(66得59失 P率.556)
ソフトバンク9勝9敗率.500(68得45失 P率.695)
西武9勝9敗率.500(69得55失 P率.611)
楽天9勝9敗率.500(50得56失 P率.444)
日本ハム8勝10敗率.444(69得66失 P率.522)
オリックス8勝10敗率.444(53得57失 P率.464)

 ヤクルトは全球団に勝ち越す完全優勝。圧勝と言ってよい一方で、得失点差によるピタゴラス勝率では阪神に劣っている。得失点差以上に「勝ちにこだわった」結果だと言ってよい。そして阪神も大きく勝ち越した。春先から最下位に沈んでいたものの、ようやく戦力に見合った働きをした。さらにDeNAも5割をクリア。しかし巨人、中日、広島はふがいない結果に終わった。

 パ・リーグではロッテが唯一勝ち越した。ピタゴラス勝率ではソフトバンクが優勝争いをしていたことになっている。今年のホークスは大勝する試合もあったが、競り負けることも多かった。

 そして他のチームは「勝ったり負けたり」を繰り返した。少なくともヤクルト、阪神に比べて「勝利への執念」で見劣りしたということができよう。

ヤクルトの「逆転勝ち」と村上の成績が凄まじい

 ヤクルトの執念を示す数字が、交流戦の「逆転勝ち」の数である。

〈ヤクルト7勝 ロッテ5勝 DeNA5勝 巨人5勝 オリックス4勝 広島3勝 阪神2勝 中日2勝 ソフトバンク2勝〉

 楽天、日本ハム、西武は1つもなかった。このあたりがパ負け越しの一因かもしれない。

 続いては交流戦の個人成績を見ていこう。RCは安打、本塁打、盗塁、三振、四死球など打撃の総合指標である。

村上宗隆(ヤ)57打20安6本13点2盗 率.351 RC18.68
塩見泰隆(ヤ)75打23安5本11点6盗 率.307 RC16.97
大山悠輔(神)66打21安7本21点0盗 率.318 RC16.15
杉本裕太郎(オ)69打27安3本10点1盗 率.391 RC16.12
丸佳浩(巨)67打21安5本9点2盗 率.313 RC15.04
山川穂高(西)59打15安6本10点 率.254 RC14.61
松本剛(日)73打25安2本13点2盗 率.343 RC13.731
ウォーカー(巨)71打21安5本11点2盗 率.296 RC13.66
佐野恵太(De)75打25安4本13点 率.333 RC13.63
牧原大成(ソ)60打23安2本10点3盗 率.383 RC13.12

交流戦MVPに輝いた村上の打棒は交流戦でも凄まじかった ©Hideki Sugiyama

 ヤクルトの不動の4番打者、村上とリードオフマンの塩見が1、2位を占めている。この2人は、交流戦の打撃タイトルはとっていない。首位打者はオリックスの杉本(.391)、本塁打と打点は阪神の大山(7本21点)、盗塁はロッテの高部瑛斗(8盗塁)だった。

 しかし得点を生み出す総合力であるRC(Run Creates)で見れば2人の貢献度は抜きんでていた。村上は18四球、出塁率は実に.507とダントツの数字。パの投手陣がいかに村上を恐れていたかがわかるし、往年の王貞治をほうふつとさせる。

内山・中村・川端・坂口が存在感を示した

 ヤクルトでは、他に山田哲人(5本7点0盗、率.153RC7.63)、オスナ(2本7点0盗、率.290RC6.49)、山崎晃大朗(1本7点4盗、率.232RC4.96)、長岡秀樹(0本10点0盗 率.242 RC4.44)が規定打席に達したものの、それほど数字は良くない。むしろヤクルトでは規定打席未達でめぼしい活躍をした選手がいた。

内山壮真24打8安1本5点0盗 率.333 RC5.48
中村悠平47打12安0本4点0盗 率.255 RC1.92
川端慎吾13打4安0本2点0盗 率.308 RC1.60
坂口智隆7打3安0本1点0盗 率.429 RC1.90

 高卒2年目の捕手、内山は故障で出遅れた中村悠平の穴を埋めて打撃でも活躍。復帰した中村も打撃好調で、捕手が打線でも存在感を発揮した。

 また代打の切り札・川端は6月8日のオリックス戦と10日のソフトバンク戦で先発起用され、ソフトバンク戦では2安打の活躍だった。さらに「近鉄戦士」最後の1人となった坂口は6月9日に今季初めて登録されると2試合で3安打し存在感を示した。

川端も交流戦では代打の切り札として存在感を放った ©Hideki Sugiyama

 高津監督はスポットでの選手起用に長けていた。それもリードオフマン塩見、中軸の村上が交流戦期間を通じてチームを引っ張った前提があってのことだが、活気のある打線だったと言えよう。

先発投手では小川・高橋が奮闘している

 続いては投手の成績。※PRはリーグ防御率に基づく総合指標

加藤貴之(日)4登1勝26回 責0率0.00PR8.44
青柳晃洋(神)3登3勝23.2回 責0率0.00PR8.36
ガンケル(神)3登2勝22.1回 責2率0.81PR5.89
大野雄大(中)3登1勝1敗25回 責3率1.08PR5.83
西勇輝(神)3登2勝1敗19回 責1率0.47PR5.71
今永昇太(De)3登2勝21回 責2率0.86PR5.42
小川泰弘(ヤ)3登2勝22.2回 責3率1.19PR5.00
高橋奎二(ヤ)3登2勝22回 責3率1.23PR4.77
レイ(ソ)3登2勝1敗20回 責2率0.90PR4.49
戸郷翔征(巨)3登2勝1敗24回 責4率1.50PR4.48

  1位は最終週に2試合先発した日本ハムの加藤。以下阪神の選手が上位に来ている。阪神の交流戦での活躍は先発投手に負うところが多かった。

 ヤクルトは小川と高橋がランクインしともに2勝している。とはいえ傑出した成績とはいいがたい。昨年から続く特色だが、ヤクルトは救援陣にこそ強みがあった。

リリーフ陣を見ると恐るべき数字がズラリと並ぶ

 ヤクルトの救援陣の成績を見てみよう。

マクガフ9登7S1H 9回 責2率2.00PR1.18
今野龍太8登1勝1S4H 6.1回 責0率0.00PR2.24
清水昇7登1勝4H 7回 責0率0.00PR2.47
コール8登1勝3H 7.2回 責1率1.17PR1.71
田口麗斗4登3H 3.1回 責0率0.00PR1.18
石山泰稚5登1勝1H 5.2回 責0率0.00PR2.00

 クローザーのマクガフは阪神の岩崎優と並ぶ交流戦最多の7セーブ。ホールド数最多はロッテ東條大樹の8ホールドだったものの、ヤクルトは今野、清水、コール、田口、石山とタイプの異なる4人のセットアッパーがすべて機能した。分厚いセットアッパー陣から絶対的クローザーにつなげる方程式ができていた。

クローザーのマクガフらリリーフ陣の充実ぶりは、高津ヤクルト最大の強みと言える ©Hideki Sugiyama

 このあたりに殿堂入りした大救援投手だった高津臣吾監督の真骨頂を見る。

 交流戦のMVPは村上宗隆だったが、今回の優勝は「主力陣がみんないい仕事をした」ことに尽きるだろう。

村上の1週間の成績は打率.476、3本塁打8打点!

 <NPB第12週の成績 2022年6月6日〜6月12日>

 交流戦期間は、相手リーグとの対戦成績となる。

〇セ・リーグ
ヤクルト6試5勝1敗0分 率.833
阪神6試4勝2敗0分 率.667
DeNA6試3勝3敗0分 率.500
巨人6試2勝4敗0分 率.333
広島6試2勝4敗0分 率.333
中日6試0勝6敗0分 率.000

 この週はパのホームゲームだがセは16勝20敗と健闘した。特にヤクルトは交流戦を5連勝でフィニッシュ。対照的に中日は6連敗に終わった。

・個人打撃成績10傑
村上宗隆(ヤ)21打10安3本8点1盗 率.476 RC8.38
佐野恵太(De)25打12安1本4点 率.480 RC6.30
近本光司(神)25打11安2点1盗 率.440 RC6.14
塩見泰隆(ヤ)25打9安2本3点1盗 率.360 RC5.89
ビシエド(中)19打7安1本4点 率.368 RC5.06
佐藤輝明(神)23打6安1本7点 率.261 RC4.60
吉川尚輝(巨)20打7安 率.350 RC3.80
岡本和真(巨)23打8安2点 率.348 RC3.56
宮崎敏郎(De)23打7安4点 率.304 RC3.36
桑原将志(De)23打8安1本2点 率.348 RC3.24

 優勝を飾ったヤクルトの村上が猛烈な打棒をふるった。本塁打1位、打点も阪神の大山と共に1位、盗塁はヤクルトの山崎晃大朗が3盗塁。

今永は今季3度目のノーヒットノーランなんだけど……

・個人投手成績10傑
今永昇太(De)1登1勝9回 責0率0.00PR3.29
高橋奎二(ヤ)1登1勝9回 責0率0.00PR3.29
青柳晃洋(神)1登1勝7回 責0率0.00PR2.56
遠藤淳志(広)1登7回 責0率0.00PR2.56
ガンケル(神)1登1勝9回 責1率1.00PR2.29
戸郷翔征(巨)1登1勝9回 責1率1.00PR2.29
大野雄大(中)1登9回 責1率1.00PR2.29
西勇輝(神)1登1勝6回 責0率0.00PR2.19
京山将弥(De)1登6回 責0.00率0PR2.19
赤星優志(巨)1登1勝5回 責0率0.00PR1.83

 DeNAの今永は6月7日の日本ハム戦でノーヒットノーラン。四球の走者を1人出しただけの準完全試合。史上85人目、96回目の大記録。DeNAでは、大洋時代の70年鬼頭洋以来52年ぶり4人目。ただ今季3人目なのでやや注目度が落ちたか。

 救援ではヤクルトのマクガフが3セーブ、ヤクルトのコール、広島の森浦大輔が3ホールド。

清宮がアベレージも残し始めている

〇パ・リーグ
ロッテ6試5勝1敗0分 率.833
楽天6試4勝2敗0分 率.667
西武6試4勝2敗0分 率.667
日本ハム6試4勝2敗0分 率.667
ソフトバンク6試2勝4敗0分 率.333
オリックス6試1勝5敗0分 率.167

 ロッテが5勝1敗と気を吐いた。オリックス、ソフトバンクの調子が上がらなかった。

・個人打撃成績10傑
オグレディ(西)19打10安4本8点1盗 率.526 RC10.94
清宮幸太郎(日)19打6安1本2点 率.316 RC4.75
山口航輝(ロ)9打5安2本4点 率.556 RC4.61
荻野貴司(ロ)22打8安4点1盗 率.364 RC4.396
山川穂高(西)22打5安2本4点 率.227 RC4.27
平沼翔太(西)6打4安2盗 率.667 RC4.25
松本剛(日)21打7安6点1盗 率.333 RC4.19
マーティン(ロ)22打6安1本4点 率.273 RC4.06
外崎修汰(西)21打6安1本4点2盗 率.286 RC3.97
中村奨吾(ロ)22打7安3点1盗 率.318 RC3.80

 西武のオグレディは土日の広島戦で3本塁打するなど今週大当たり。本塁打、打点は1位。日本ハムの清宮はこの週1本塁打3二塁打とロングヒットが目立った。盗塁はロッテ高部瑛斗の3が最多だった。

・個人投手成績10傑
加藤貴之(日)2登1勝13回 責0率0.00PR3.34
レイ(ソ)1登1勝9回 責0率0.00PR2.31
ロメロ(ロ)1登1勝8回 責0率0.00PR2.05
岸孝之(楽)1登1勝7回 責0率0.00PR1.80
エンス(西)1登1勝7回 責0率0.00PR1.80
與座海人(西)1登1勝7回 責0率0.00PR1.80
辛島航(楽)1登6回 責0率0.00PR1.54
東浜巨(ソ)1登1勝6回 責0率0.00PR1.54
和田毅(ソ)1登6回 責0率0.00PR1.54
杉浦稔大(日)1登1勝6回 責0率0.00PR1.54

 日本ハムの左腕・加藤は6月7日のDeNA戦で6回、12日の中日戦で7回を投げ零封の好投を見せた。週2回の先発登板は今のNPBでは極めて珍しい。救援では日本ハムの北山亘基、西武の増田達至が2セーブ、ロッテのゲレーロ、西武の平良海馬が3ホールドをあげている。

<達成記録>
投手
・則本昂大(楽)100勝
6月12日巨人戦 史上141人目
・則本昂大(楽)1500投球回
6月12日巨人戦 史上182人目

 同じ試合で2つの節目の記録を達成した。

文=広尾晃

photograph by Kyodo News