6月の代表ウィーク、日本代表は4試合を消化した。

 9月にも試合が予定されているが、その時期は選手の状態やチーム戦術の確認などが主になり、基本的にはこのシリーズがラストの選考の場になった。

 パラグアイは来日2日目での試合でコンディション不良は明らか、ガーナは多くの主力を欠いていた。その結果、日本はゲームを支配し、多くの得点が生まれ、ともに4-1で勝利した。一方、韓国に圧勝してやってきた強豪国ブラジルとチュニジアという骨のあるチームからは1点も奪えず、特にチュニジア相手にはミスから失点を重ねて敗れた。

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 この4試合では、個の力、チームの総合力ともに異なる相手ゆえに公正な評価がしにくい部分もあるが、カタール行の切符を手中に収めつつある選手とそれを失いかけている選手とで明暗が分かれた。

当確ラインを決める“重要な試合への出場歴”

 今回は28名が招集され、初招集は伊藤洋輝のみ。カタールW杯の登録メンバーは、レギュレーションの変更により23名から26名に増えた。交代選手も3名から5名に増え、選択肢が増えたので、ドイツやスペインなど強豪の選手層が厚いチームには間違いなく有利に働くだろう。

 カタール行の当確ラインを見極める上で重視しなければならないのは、“重要な試合への出場歴”である。そこから、森保一監督が誰を信頼して、軸に置いているかを読み取ることができる。今回の4試合のプライオリティでいえばブラジル戦、チュニジア戦になる。また、W杯出場を決めた3月のオーストラリア戦も非常に重要な試合だった。

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 3月の最終予選の時に招集され、今回の4試合に呼ばれていない選手は、GK谷晃生、DF植田直通、佐々木翔、酒井宏樹、MF旗手怜央、FW大迫勇也。このうち怪我で招集外になったのは、酒井だけ。実績のある大迫はともかく、他の選手は今回の招集外でW杯行はかなり難しくなったのではないだろうか。

 オーストラリア戦とブラジル戦、その両方にスタメンで出場したのは以下の選手になる。

★最終予選のオーストラリア戦&ブラジル戦でスタメン出場した選手

GK 権田修一

DF 吉田麻也、板倉滉、長友佑都

MF 遠藤航、田中碧

FW 伊東純也、南野拓実

☆途中出場も含む(2試合出場)

DF 山根視来、中山雄太

MF 三笘薫、原口元気

 オーストラリア戦とブラジル戦ともにスタメン出場した選手は、チームのコアとなる存在で、怪我でもない限り、ほぼ外れることはないだろう。

この4試合で「グッと評価を上げた」3選手

 今回の4試合でグッと評価を上げた選手は、原口元気、鎌田大地、伊藤洋輝だ。

 原口は今回、インサイドハーフのポジションを確固たるものにした。素早いトランジションから攻撃へのアクセントになり、伊東との連携も良くなった。守備ではネイマールに粘り強く当たり、かなり嫌がられていた。チュニジア戦では鎌田とインサイドハーフを組み、うまさと柔の鎌田、強さと剛の原口で違いを見せ、ふたりの並びは良かった。

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 鎌田はオーストラリア戦の時は招集外になったが、フランクフルトで存在感を発揮して代表に返り咲いた。従来、攻撃力だけがクローズアップされがちだが、カウンター時には気の利いた守備をしており、攻守ともに高いレベルで整ってきている。チュニジア戦後、森保監督は、「大地と元気、後半は大地と碧のコンビを見たかった」と語ったように、鎌田を軸にインサイドハーフは考えているようで、今後は鎌田+原口、鎌田+田中のセットが軸になっていく可能性が高い。

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 伊藤は、シュツットガルトでは左のセンターバックだが、代表では主に左サイドバックに置かれ、センターバックでもプレーし、上々のパフォーマンスを見せた。高さがあるのでセットプレーでは吉田、板倉とともに真ん中をしっかりと固められていたし、フィジカルの強さもある。攻撃は元ボランチなので、パスセンスに優れ、ボール捌きもうまい。ビルドアップにも参加し、ロングフィードはもちろん、縦パスを出して奥行きを使って攻撃の形を作り、自らも止まることなく前線に上がっていった。伊藤は、最終ラインに大きな波を起こし、今シリーズ最大の収穫になった。

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当落線上の微妙なポジションにいる“4選手”とは?

 逆に、序列が下がり、微妙なポジションに置かれた選手もいた。

 中山雄太は、悪くはないが突出した強みがあるわけではない。無難ゆえに個性のある長友や伊藤の前にやや埋もれてしまった感がある。酒井宏樹が復帰すると、サイドバックが飽和状態になるため、9月の試合で違いを明確に示すことが求められる。

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 柴崎岳は、ブラジル戦9分、ガーナ戦フル出場を果たしたが、何ら見せ場を作ることなく、あっさりと終えてしまった。インサイドハーフは田中、鎌田、原口、守田英正らと顔触れがそろい、アンカーも板倉、伊藤がカバーできる。ロシアW杯では圧倒的な輝きを見せたが、今回は赤に近い黄色信号が点滅中だ。

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 前田大然も微妙な立ち位置にいる。ガーナ戦でゴールを決めたが、スピードタイプは浅野拓磨がおり、2人分の枠はない。

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 そして、久保建英である。ガーナ戦で代表初ゴールを決めたが、それだけだった。相変わらず代表では、良さが見えてこない。久保に限らずだが、チームで結果を出せていない選手は、その原因を追究し、考え、レギュラーを奪い取るぐらいのものを見せなければ、カタールの切符は勝ち取れないだろう。

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ほぼ当確だけど吉田麻也と南野拓実に求められる“存在価値”

 また、チームのコアになっているとは言え、チュニジア戦で2失点に絡んだ吉田麻也、3試合に出場してシュートゼロに終わった南野拓実は、代表での存在価値を問われ続けるだろう。

 吉田はキャプテンであり、チームへの貢献度も高い。森保監督は、「キャプテンだから試合に出られるとは見ていない。パフォーマンスがいいから試合に出られる」と特別扱いをせずとの姿勢を貫いているが、監督のこれまでの選手への対応を見ている限り、今、外すことはないだろう。もちろんパフォーマンスが上がらなければチーム内の序列が変わる可能性はある。

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 南野は、W杯予選7試合連続ゴールという実績とともに森保監督の好きなタイプ。ただ、今後も同じようなパフォーマンスが続けばサブに降格など、厳しい判断も十分あり得る。

 以上を踏まえて、最終予選のオーストラリア戦、今回のブラジル戦を主とした4試合で見えてきた本大会メンバーは、以下のようになる(◎当確、〇有力、△微妙)。

GK(3): ◎権田修一、◎シュミット・ダニエル、◎川島永嗣

DF(9): ◎吉田麻也、◎板倉滉、◎長友佑都、◎伊藤洋輝

      〇冨安健洋、〇谷口彰悟、〇山根視来

      △中山雄太、△酒井宏樹、△植田直通、△菅原由勢、△佐々木翔

MF(10): ◎遠藤航、◎田中碧、◎原口元気、◎鎌田大地、◎伊東純也、◎南野拓実、◎三笘薫

      〇守田英正、〇堂安律

      △柴崎岳、△旗手怜央、△久保建英

FW(4): 〇浅野拓磨

      △古橋亨梧、△大迫勇也、△前田大然、△上田綺世

 GKは、今回の4試合をこの3人で回しており、このメンバーでほぼ確定だろう。

 DFは、冨安が故障からいつ復帰できるか少し不安だが、万が一W杯までに完全復帰できない場合、指揮官は難しい判断を迫られるだろう。

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 MFは、インサイドハーフについては対戦相手によって組み合わせを変えられるほど充実しているが、課題はアンカーである遠藤航のバックアップ。板倉、守田がその候補になるが、隠し球がいるのかどうか。伊東、三笘は左右の大きな武器になり、とりわけ三笘はファーストチョイスになりつつある。

 FWは、大迫がどのくらい調子を取り戻してくるのか。また、上田はもう一皮むけてくるか。あるいは、他に旬のFWが出てくるのか。本大会を見据えるとそこに期待したい。

国内組にもチャンスは残されている

 国内組の選手は、7月のEAFF E-1サッカー選手権が最終的な追試になるが、ここで結果を出せば代表入りのチャンスが巡ってくる。実際、ブラジルW杯の1年前に開催された2013年大会では森重真人、山口蛍、柿谷曜一朗らが活躍して優勝し、彼らは翌年のブラジルW杯でメンバー入りを果たしている。

 Jリーグでプレーする選手にとってはラストチャンスになるが、ここからどのくらい代表メンバー入りに殴り込みをかけられるか。「ちょっと待った!」という選手が出てくれば、日本代表にさらなる刺激が生まれ、チーム力の底上げにつながる。狭き門だが、自分が代表を変えてやるぐらいの気迫と活躍を見せることができれば、その門をこじ開けることは、まだ十分可能だ。

文=佐藤俊

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