“流しのブルペンキャッチャー”として全国各地、数多くのアマチュア選手を取材してきた筆者。「ドラフト中間報告」として、今秋ドラフトで注目される野手10位〜1位のランキングを発表する(野手編全2回の1回目/#2へ、投手編#1・#2も)。

「投手編ベスト10」を原稿にした翌日、大阪ガス・河野佳投手が日本生命を完封して都市対抗野球出場を決め、さらに翌日、上武大・加藤泰靖投手が佛教大を6回零封して全日本大学選手権の決勝進出を決めた。

 どちらもドラフト上位候補に挙げられている快腕たちだけに、この2投手を「10人」から外した者として、少なからず動揺しているのだが、それほどに、日々状況の変化するシーズン中のランキングは難しく、それだけに興味深い。

 後ろを振り向かず、前へ。「野手編ベスト10」に進もう。

当時は笑われた「第3位・松川虎生捕手」

 ちなみに、昨年のランキングは、こんな顔ぶれだった。

<昨年の中間ベスト10(野手編)>

 第1位・正木智也 外野手 慶應義塾大→ソフトバンク2位指名
 第2位・藤井健平 外野手 NTT西日本→在籍
 第3位・松川虎生 捕手 市立和歌山高→千葉ロッテ1位指名
 第4位・水野達稀 遊撃手 JR四国→日本ハム3位指名
 第5位・花田旭 外野手 大阪桐蔭高→東洋大
 第6位・阪口樂 内野手 岐阜一高→日本ハム4位指名
 第7位・吉野創士 外野手 昌平高→楽天1位指名
 第8位・梶原昂希 外野手 神奈川大→DeNA6位指名
 第9位・代木大和 外野手 明徳義塾高→巨人6位指名
 第10位・浜岡陸 遊撃手 花咲徳栄高→法政大

 ハイライトは「第3位・松川虎生捕手」なのだが、当時はずいぶん笑われたものだ。「いくらなんでも、あれは無茶振りでしょう(笑)」とわざわざ近寄ってきて伝えてくれた人もいたが、意外とたくさんの人が読んでくれているんだなぁ……と、そっちのほうが嬉しく感じたものだ。

 ということで、「今年の野手10人」は、次のようなランキングになりました。

【野手編】10位 西村瑠伊斗・外野手(京都外大西高・182cm77kg・右投左打)

 昨夏の甲子園予選で驚いた。京都トップクラスの快腕といわれた乙訓高・北見隆侑投手からたて続けにホームランだ。投手としての評判のほうを聞いていたから、打った瞬間……のライナー性弾丸ホーマーに、「いやいや、こりゃあ、大阪桐蔭クラスのスラッガーだ!」と胸が高鳴ったものだ。

 激しい動きで投球を待って、肝心のミートポイントで振り遅れる打者が目立つ中で、ふんわり立って、自然に呼び込んでくる。だからタイミングが合って、頭が動かないから目線も動かず、ボールの芯を打ち抜ける。素直なバッティングスタイルが、そのまま伸びしろだ。

 5月上旬ですでに40本以上の本塁打だが、投手としても140キロ台を投げる強肩と50m6秒0の脚力も揃って、秋山翔吾の学生時代が重なってくる。アベレージと長打……両方を求めてよいバッティングセンス。

 無名なのは、ハンデにはならない。プロに入って、アッと言わせるような存在になればよい。

【野手編】9位 藤井健平・外野手(NTT西日本〔東海大←大阪桐蔭高〕・176cm76kg・左投左打・24歳)

 昨年の「野手この10人」で2位に推したが、その後の公式戦で「もうワンプッシュ!」がなかったせいか、ドラフトには挙がらなかった。それでも、自信を持ってもう一度、推す。社会人1年目の都市対抗で8打数6安打1本塁打に4盗塁。間違いなく「爆発力」はある。

「でも24歳でプロ1年目なら、もうちょっとコンスタントでないと……」

 昨年のドラフト後、あるスカウトの「藤井談」だった。

 人間、そう毎日、毎試合、爆発ばかりもしていられないだろう……それでも、その爆発力を買いたい。タイミングが合った時の飛距離、打球の速さはえげつない。もっとえげつないのが「猛肩」。間違いなくプロでもトップクラスだ。走れる魅力の5秒台の足もあって、フェンスを恐れず、ダイビングキャッチ、スライディングキャッチでピンチを救う球際の強さ。まず守備固め、代走から使ってもらって、いずれバットのほうでの爆発を待つ。

 つい先日の都市対抗予選でも、とどめをさす3ランをバックスクリーンに叩き込んだと聞く。確かに粗っぽいが、こういう爆発力はプロでこそ発揮されるべき能力だ。

【野手編】8位 林琢真・二塁手(駒沢大〔東邦高〕・174cm74kg・右投左打)

 見た目よりずっと大きなプレーをやってのける意外性の塊。だから、記憶に残るシーンがいくつもある。

 マウンド横に上がった小フライを、深めに守っていた林二塁手が猛然とチャージしてスライディングキャッチ。二塁ベース後方で捕球したゴロを、ほとんど一塁を見ずにジャンピングスロー。スライダーを呼び込んで、ライトポールはるか頭上にあわや場外の大ファール。その直後にジャストミートのコンパクトスイングで右翼ライナー弾。

 天才的なスーパープレーもできるから、もったいない打席やポカも時には挟まるが、突き抜けたセンスを持った選手は、より高いレベルに置いた時ほど、その輝きを増す……私の絶対経験則に当てはまる選手とみる。

 こういう選手にポジション1つ任せて、1年間辛抱して使ったら、ちゃんと「結果」を出してくる。今のプロ野球でいえば、オリックス・福田周平外野手の社会人当時がピッタリ重なる。

【野手編】7位 松尾汐恩・捕手(大阪桐蔭高・179cm78kg・右投右打)

 以前、いいキャッチャーがいない、いないと話題になった時、上手なショートを連れてきて「捕手」に育てれば……と書いたことがあるが、そのまんまのプロセスで新しいタイプの好捕手の卵が現れた。

松尾汐恩(捕手・大阪桐蔭高・178cm75kg・右投右打) ©Nanae Suzuki

 上手なショートの良い所を、全部キャッチャーとしてのプレーに盛り込んだ……そんなふうに見える。ショートバウンドはミットを滑らせるように吸収できるし、しなやかな腕の振りはスピード抜群で盗塁を刺し、バットヘッドが最後の最後にビューン!と跳ねるようなバッティングにも、ゴムのように弾力性の強い両腕のハンドリングが発揮される。

 昨秋、神宮のレフト中段弾を目撃しているが、今春は、和歌山・紀三井寺野球場の高い高い左翼ネットを越える大放物線を放ったと聞く。この先の木製バットの野球を考えると、この夏は、右中間方向に快打・長打を期待したい。

 何より、大阪桐蔭高野球部3年間の教育とサバイバルを経験しているという事実が心強い。

【野手編】6位 田中幹也・遊撃手(亜細亜大〔東海大菅生高〕・166cm64kg・右投右打)

 フィールディングのスピード感やフットワークの軽快さ、球際の強さと捕球→送球のハンドリングの鮮やかさ。挙げていけばキリがない。アマチュア野球を40年ほど見ているが、これほど人間ばなれした運動神経を見せつけられたことはない。「忍者」と評されることもあるようだが、忍者など見たこともないので、「幹也ダンス」とでも表したい。

 潰瘍性大腸炎……難しい病気に見舞われながら、懸命に強豪のショートストップ、リードオフマンにキャプテンまで、その重責を全うしようとする姿勢に、敬意を表したい。

 だからといって加減したプレーなどできないガッツマンだから、躍動感あふれるアクションに消耗もさぞ激しかろう。

 リーグ戦終盤から大学選手権にかけて、インパクトの瞬間がちょっと弱くなっているような気もするが、これだけの「才能」を外すことはできない。

<5位〜1位編へ続く>

文=安倍昌彦

photograph by JIJI PRESS