6月は投打ともに好成績を残した。

 投手:4勝1敗、防御率1.52、29回2/3、38三振

 打者:打率.298、6本塁打、17打点、OPS.973

 ともに6月の月間MVPには及ばなかったものの今季最高の月間成績。上り調子の理由を問われた大谷は極めてシンプルに答えた。

「シーズンの中で試合に一番慣れているのかなと思うので。体の動きも悪くないですし、いい集中力を保てているのなと思います」

6月29日のホワイトソックス戦 ©Getty Images

6月の投手・大谷の無双ぶり

 ほぼ毎日試合がある過酷な日程でありながら、肉体的にも精神的にもペースをつかみ出す。それが大谷にとっての6月。特に投手としてマークした6月9日からの4連勝中の内容が素晴らしい。

 9日 レッドソックス 7回、4安打、2四球、6奪三振、1失点

 16日 マリナーズ 6回、3安打、2四球、6奪三振、無失点

 22日 ロイヤルズ 8回、2安打、1四球、13奪三振、無失点

 29日 ホワイトソックス 5回2/3、5安打、1四球、11奪三振、無失点

 上記4試合での防御率は0.34。26回2/3を投げ36奪三振は、率にして12.15にも及ぶ無双ぶりだ。直球は最速101マイル(約163キロ)を計測し、コンスタントに97、98マイル(約156〜158キロ)を叩き出す。それでいて、最近の大谷は“曲がり系”の変化球の精度が素晴らしい。

「僕は簡単さ。座ってボールを受けるだけなんだ(笑)」

 スライダーは80マイル(約129キロ)から88マイル(約142キロ)を使い分け、カーブも71マイル(約114キロ)から81マイル(約130キロ)、カットボールも84マイル(約135キロ)から91マイル(約146キロ)を投げ分ける。その上で内外角へと制球し、バックドア、フロントドアも駆使する。曲がり系の球種は緩急を含めれば6つ。更にはスプリットも大きく落とす86マイル(約138キロ)と、速く鋭い変化の92マイル(約148キロ)の2つがある。直球と合わせ打者にとっては少なくとも9つの球種があることになる。捕手のスタッシは言う。

「翔平の能力で素晴らしいのは、すべての球種をいつでも投げられること。ゲームプランを確認し、ダグアウトで話し合いながら、マウンドでは相手打者のボールの張り方を見ながら狙いを外して投げることができる。直球は95マイルから101マイルまでなんでもOK。今年は何度もやっているけど、スライダー、カーブ、カットボールのすべての球種でスピードに変化をつけることができる。彼には8つ、9つの球種があると言っていい。だから僕は簡単さ。座ってボールを受けるだけなんだ(笑)」

大谷に笑顔で声をかけるスタッシ。味方捕手も大谷の投球を賞賛している ©Getty Images

大谷「まっすぐがいい感覚なら、いい変化球を投げられる」

 大谷は投球の基本は直球であるとした上で変化球への手応えを口にした。

「まっすぐを基本的にいい感覚で投げられていれば、あとはグリップだったりとか、軌道のイメージだったりとかで、それこそいい変化球を投げられると思っているので。まっすぐが良ければ、どの球種も問題なく投げられると思います」

 さらに“曲がり系”の変化球についても言及した。

「どういうふうに投げるかよりも、どういうカウントでどこに投げるか、プラス、甘く入っても打ち取れる、ファールになったりするクオリティで投げられているかどうかが大事なので、一番はスポットかなと思います」

 スライダー、カーブ、カットともにスピードに変化を持たせ、甘く入っても打ち取れるクオリティ、そしてスポットで投げる制球力。実に欲張りなところが大谷らしい。

 直球とスプリットで勝負できるパワー投手の顔を持ちながら、多彩な変化球を操る技巧派としてのそれもいつの間にか身につけている。これが今季の投手・大谷の大きな特徴だ。

まさにエース…大谷が語る「先発の仕事」とは

 6人ローテーションで回るエンゼルスの場合、先発投手として規定投球回数に達することはなかなか難しい。彼のWHIP(1イニングあたりの許走者数)1.01は規定回に満たないものの先発投手としてリーグ5位に相当する。(2日終了時点)まさにエースの数字だ。投手・大谷は先発投手として大事にしている部分も極めてシンプルに説明した。

「一番はもう先制点をあげないっていう、これに尽きるのかなと思うので。その中で長い回を投げるっていうのが先発の仕事」

 考え方はシンプルに。技術は奥深く、力の限りを尽くして追求する。今季はシーズン折り返し時点で7勝4敗、防御率2.68。74回を投げ101三振を奪っている。

©Getty Images

 ということは、シーズントータルで、期待を込めて、アバウトに計算すれば、こんな数字になる。

 15勝7敗、防御率2点台。投球回数は150で200奪三振。

 サイ・ヤング賞候補にノミネートされる成績であることは間違いない。

 大谷への願いはひとつだ。残り3カ月もケガなく乗り切って欲しい。そうすれば、おのずと個人成績では楽しみな結果が待っている。目指せ、日本人初のサイ・ヤング賞。大谷の熱投を期待したい。

文=笹田幸嗣

photograph by Getty Images