カタールW杯、日本代表が初戦で戦うのは過去4度の優勝を誇るドイツ。彼らはどのように準備を進め、日本に対してどんな印象を持っているのか。前ドイツ代表監督のレーブ氏に聞くとともに、現ドイツ代表指揮官であるハンジ・フリック氏の雑誌Number掲載のインタビューも特別に無料公開します(全3回/#2も)

 ドイツ代表の現在地を語るうえで、ヨアヒム・レーブほどふさわしい人物はいないだろう。

 レーブは2006年から15年間に渡ってドイツ代表を率い、2014年W杯で頂点に立った。その優勝メンバーのノイアーやミュラーは、現在も代表で活躍している。

 また、現ドイツ代表監督のハンジ・フリックは、レーブのもとで2006年から2014年W杯までコーチを務めた元同僚だ。スタッフにも選手にも、レーブのDNAが受け継がれている。

 攻撃サッカーを愛するW杯優勝監督に、2022年W杯、ドイツ代表、そして日本代表について話を聞いた(翻訳:木崎伸也)。

従来と異なるからこそ番狂わせの可能性が

――ドイツ代表から離れて約1年が経ちました。今、どんな日々を過ごしているのでしょうか。

「ベルリンとフライブルクに家があって、そこを行き来しながら暮らしている。

 ドイツ代表監督時代と同じようにジョギング、ジム、水泳などで体を動かし、いろいろなスポーツを日々楽しんでいる。スケジュールが合うときに、フライブルク、シュツットガルト、ベルリンのスタジアムに足を運んで、ブンデスリーガの試合を観ているよ」

――今回のW杯は北半球の冬に開催されます。どんな影響があると思いますか?

「すべての参加者にとって、初めての体験だ。従来とは異なり、ヨーロッパのシーズン中にW杯が開催されるため、W杯直前に10日間ほどの準備期間しか取れない。また、グループステージではすべての国が中3日で試合を行う過密日程だ。これらの要因が、思わぬ番狂わせを引き起こすのではないだろうか。何かが起こる予感があり、ワクワクしているよ」

――あなたはドイツ代表を率いて2014年W杯で優勝しました。W杯優勝で最も大事なことは?

ブラジルW杯で優勝したドイツ ©Takuya Sugiyama/JMPA

「積み重ねだ。私たちは2010年W杯で3位、EURO2012でベスト4になり、悔しい思いをしながら着実にタイトルに近づいていた。そういう経験を通してチームが成熟し、ブラジルの地では絶対に勝つんだという意志が極限に達していた。勝利への意欲が、他のチームとの決定的な違いだったと私は思う。単純に、次は私たちの番だったんだよ」

監督の采配で“犯しやすいミス”とは?

――多くの国がW杯で犯しやすいミスはなんですか?

「監督の采配に関して言えば、ときにローテーションをしすぎたり、逆にメンバーを固定したりしすぎることだ。初戦から決勝まで同じ11人で戦うことは不可能だ。主力を休ませなければならない瞬間が必ず出てくる。それをいつにするか。監督に繊細かつ鋭敏な感覚が求められる」

――現代サッカーにおける戦術のトレンドをどう見ていますか?

「最近の戦術の発展には興奮を覚えている。インテンシティとテンポは10年前に比べてかなりアップした。ほぼすべてのチームが、プレッシングとゲーゲンプレッシングを実施している。クラブチームの世界では4バックをメインにするチームでも3バックをオプションとして持つことが多くなり、代表でも同じ傾向が見られる」

韓国を分析する際に日本との試合も見る機会があった

――カタールW杯では5人の交代が認められ、さらにスタジアムに空調が完備されています。多くのチームがハイプレスを試みるでしょうか?

「そうなるはずだ。過密日程にもかかわらず、多くのチームがハイテンポかつ高強度のサッカーを志向するに違いない」

――2022年W杯の初戦で、ドイツは日本と対戦します。日本の試合をじっくり見たことがありますか?

「2018年W杯では韓国と同じグループになったので、韓国を分析する際に日本との試合も見る機会があった。両国はスピード、アグレッシブさ、規律、集中力など、いくつか似た点があった印象だ。

 ご存知の通り、2018年W杯グループステージ第3戦でドイツは韓国に敗れてしまった。まったく想像していない結果だったので、私は失望して辞任すら考えた。あの試合のドイツは、献身さとコンパクトさが欠如していた。もちろん第1戦にメキシコに敗れていたことも、私たちの心理状況に影響していた」

ロシアW杯でドイツは韓国に敗戦した ©Getty Images

日本を倒すのに最適な11人を先発に選ぶだろう

――2018年W杯の初戦で、なぜドイツはメキシコに0対1で敗れてしまったのでしょうか?

「一言で言えば、私たちには油断があった。パスをつなごうとするもののプレーが軽く、何度もボールロストからカウンターを招いた。それによって長い距離を走らなければならず、ダイナミクスを失ってしまった。

 さらに先制されたことで私たちは焦ってしまい、深く引いて守るメキシコを攻略できなかった。試合の途中から『今日はもうゴールが入らない』という感覚になっていた」

――2022年W杯の日本との初戦で、ドイツは同じ過ちを犯すでしょうか?

「ハンジが同じミスを犯すことは想像できないね。ハンジの性格を考えると、日本の長所と短所を徹底的に分析して、日本を倒すのに最適な11人を先発に選ぶだろう。ハンジは相手を軽視する監督ではないよ。

 ハンジにとって好都合なのは、たくさんの日本代表選手がブンデスリーガでプレーしていることだ。彼らがどんなプレーをするか、すでに頭に入っているはずだ」

レーブが指摘した日本代表“2つの弱点”とは

――日本代表のプレースタイルをどう見ていますか?

「日本代表は年々レベルアップし、ますます自信を持ってプレーするようになっていると思う。いつかW杯の舞台で“結び目”がほどけ、次なるブレイクを果たすはずだ。

 プレースタイルについて言えば、運動量があり、全員に規律があり、グループとして1つにまとまっている。私は日本代表のプレースタイルが好きだよ」

©Kiichi Matsumoto/JMPA

――日本代表の弱点はどこにあると思いますか?

「ストライカーの決定力だろう。FWがもっと危険な存在になり、作り出したチャンスを効果的に得点につなげられるようにならなければならない。

 あとはW杯の舞台でサッカー大国に勝った経験がないことだ。経験が乏しいと、ちょっとしたことで冷静さを失いやすい」

――ドイツにとって、日本戦のポイントは?

「先制点だろうね。W杯の初戦はどのチームにも硬さがある。ドイツ対日本では、先制点を決めた方が勝つだろう」

 後編では遠藤航や鎌田大地、原口元気らドイツでプレーする選手にとどまらず、南野拓実や久保建英などの印象を含めた日本代表、さらにはグループステージの組み合わせなどについて聞いた。

<#2に続く>

文=アレクシス・メヌーゲ

photograph by JMPA