カタールW杯、日本代表が初戦で戦うのは過去4度の優勝を誇るドイツ。彼らはどのように準備を進め、日本に対してどんな印象を持っているのか。前ドイツ代表監督のレーブ氏に聞くとともに、現ドイツ代表指揮官であるハンジ・フリック氏の雑誌Number掲載のインタビューも特別に無料公開します(全3回/#1も)

 ドイツ代表の試合を見ると、多くの人が「まるでクラブチームのようだ」と感じるのではないだろうか。

 たとえば攻撃では、躊躇なく縦パスを入れ、前線の選手がワンタッチで落とし、それを他の選手が前向きに受けて中央を突破していく。ドイツ語で「シュタイル・クラッチュ」と言われるプレーで、これを2、3回連続で行って一気にゴール前へ迫ることもある。

 ハンジ・フリック率いるドイツ代表は、なぜこういう連携をできるのだろう?

 前ドイツ代表監督のヨアヒム・レーブに、ドイツ代表の強さの秘密、日本がスペインとどう戦うべきか、日本人選手の評価を尋ねた(翻訳:木崎伸也)。

フリック監督と再会して語ったこととは

――5月にベルリンで開催されたドイツ杯決勝で、あなたはフリック監督と再会したそうですね。どんな話をしましたか?

「まずはハンジが監督になってからドイツ代表が非常にいいパフォーマンスを見せていることを称え、カタールW杯での成功を祈っていると伝えたよ。普段からハンジとは頻繁に連絡を取って、アイデアを交換し合っているんだ」

ドイツ杯決勝での2人 ©Getty Images

――フリック監督はあなたが率いていたときと比べて、ドイツ代表をどの部分で成長させたと思いますか?

「プレッシングとゲーゲンプレッシングだ。これらの強度が間違いなく上がった。ハンジはチームのためにすべての力を出せるような選手7、8人を軸にして、インテンシティの高いプレーを実現している」

――そうやってうまくいっている中で、さらに改善しなければいけない点は?

「守備は固くなっているものの、簡単に相手にシュートチャンスを与えてしまうことがある。攻撃ではさらにオートマティズムを向上させる必要があるだろう。ただ、試合ごとにそれらも改善されてきている。

 9月のネーションズリーグの2試合(ハンガリー戦とイングランド戦)と、W杯直前のテストマッチを有効に使えば、非常にいい状態でW杯を迎えられるはずだ」

――フリック監督はFIFAウィーク以外にも、選手たちとオンラインミーティングを開いて戦術を浸透させているそうですね。代表活動が限られている中で、非常に賢いやり方だと思いました。

「その通りだ。オンラインミーティングがうまく機能していると聞いている。さらにハンジはクラブチームの監督たちとも、頻繁に意見交換をしている。そういう取り組みによって、選手たちは戦術の細かいニュアンスまで理解できているんだ」

スペイン、日本、コスタリカをどう見ているか

――ドイツはカタールW杯で、日本、スペイン、コスタリカと同じ組に入りました。このE組をどう見ていますか?

「ドイツとスペインがグループステージ突破の有力候補であることは間違いない。ただし、日本とコスタリカにもチャンスがある。どちらもサプライズを引き起こすだけのポテンシャルがある。もう1つのインタビューで言ったように、今回はW杯直前の準備期間が10日間ほどしかなく、どのチームも準備に難しさを抱えており、波乱が起きやすい大会になるだろう。それがE組で起こっても不思議ではない」

――スペインは非常にビルドアップがうまいチームです。あなたのドイツ代表監督時代、スペイン相手にハイプレスを仕掛けたところ、完全に裏目に出て0対6で負けたことがありました。日本はスペイン相手にハイプレスを試みるのは無謀ですか?

「私の個人的な意見では、日本は自分たちの長所に目を向けるべきだと思う。日本の強みは規律ある組織的な動きだ。しっかりとコンパクトな陣形を作り、相手にスペースを与えず、カウンターを狙うのがいいと思う。

 スペインにボールを持たれても焦らずに守れば、必ずカウンターを仕掛けられるチャンスが来る。そのときに日本人選手の武器であるスピードを生かして、一気にゴールに迫ればいい。あとはいかにゴール前で冷静になって、シュートを決められるかだ」

 レーブの視点では対スペインの攻略法は「カウンター」にあるとみている ©Kiichi Matsumoto/JMPA

スペインとの対戦は辛抱強さがカギだ

――ボールを持たれても、焦らないことが大事なわけですね。

「スペインはなるべく早く先制点を決めたいと考えているだろう。それを逆手に取って、無失点の時間をなるべく長く続けて、相手に心理的なプレッシャーをかければ、隙を突くチャンスが出てくる。辛抱強さが鍵だ」

――コスタリカについてはどう見ていますか?

「グループの中のアンダードッグだが、逆に言えば彼らは失うものがない。GKのケイロル・ナバスを中心にゴールを守り、不気味な存在になりそうだ」

遠藤、鎌田、原口についてどう見ている?

――もう1つのインタビューで、日本代表のチームとしての印象を聞きました。遠藤航、鎌田大地、原口元気など、個人についても聞かせてください。

「遠藤はポリバレントな選手で、優れた目を持っていてサッカーインテリジェンスの高さを感じさせる。鎌田はテクニックとポジショニングに優れた選手で、フランクフルトのEL優勝の功労者のひとりだ。

 原口はパワーとダイナミクスに溢れた選手で、どんな展開になってもチームを安定させられる印象がある」

レーブは原口についても高く評価している ©Kiichi Matsumoto/JMPA

――昨季までリバプールでプレーしていた南野拓実については?

「リバプールではハイレベルな競争の中で苦しんだが、日本代表の中で最も優れた選手であることは間違いない。モナコに移籍したことで出番が増え、さらに国際舞台での経験を積めるはずだ。個人的にザルツブルク時代の彼のダイナミクスと、攻撃のリズムに変化を与えるプレーが好きだった」

クボ?知っている。優雅にプレーする印象だ

――昨季マジョルカでプレーした久保建英は知っていますか?

「知っている。プレミアリーグとともに世界で最もレベルが高いラ・リーガで、存在をアピールしている。優雅にプレーする印象の選手だ」

レーブも久保建英の存在は目に留まっている ©Kiichi Matsumoto/JMPA

――カタールW杯では、どこが優勝すると思いますか?

「もちろんドイツ代表は優勝候補のひとつだと思う。フランス、ブラジル、アルゼンチン、スペイン、イングランドがライバルになると見ている」

<#3、フリック監督インタビューにつづく>

文=アレクシス・メヌーゲ

photograph by Getty Images/JMPA