新日本プロレス”第3世代の1人”である小島聡は51歳の現在も、史上4人目の”グランドスラム”達成者としてリングで闘い続ける。50代にして現役バリバリのエネルギーはどこから生まれるのか?代名詞”必殺のラリアット”が生まれた経緯を語る。(全2回の2回目/#1へ)

 51年ものの丸太のような腕。

 腕回りの太さについてGHCヘビー級チャンピオン、小島聡は「測ってませんけど50㎝くらい」と明かす。あのマイク・タイソンよりもぶっとい腕から放たれるラリアットが彼のフィニッシュホールドである。

 新日本の若手時代、凱旋帰国した1996年から使い始めている小島の象徴ではあるものの、当時は力任せにぶん殴るような形で見舞っていた。ラリアットは多くのレスラーが使っており、インパクトが格段大きかったわけでもなかった。

 あることをきっかけに、ラリアットへのスタンスを考え直すようになる。それがラリアットの本家本元であるスタン・ハンセンに弟子入りしたことだ。新日本から全日本に移籍した2002年。6月に入ってアメリカ・アトランティックシティに遠征した際、ハンセンが来場すると聞いてコンタクトを取ってもらうことにした。

「ずっとプロレスファンでしたから、ハンセンさんはあこがれっていうか雲の上の人。そんな会えるチャンスなんて滅多にないじゃないですか。関係者を通じて会ってお話を聞きたいって意思を伝えたら、快く受け入れていただきました」

ハンセンから学んだ一撃必殺のラリアット

 ハンセンがレスラーにラリアットの極意を伝えること自体実に初めてだったという。打ち方の技術的な面よりも心構えのほうに時間が割かれた。

「もう何度も言うんです。“フィニッシュとして使いたいのであれば一撃で仕留めると思わなきゃダメだ”。むやみやたらと連発するんじゃない”と。おかげで意識を変えることができました」

 ハンセンのウエスタンラリアットは言うまでもなく一撃必殺。最後のところでアメリカンフットボール仕込みのタックルのように前傾で踏み出し、体全体のパワーでカチ上げる様は迫力満点だ。食らった相手は5カウントあってもきっと起き上がれない。

 小島は対照的に乱れ打ちタイプだっただけに、マインドをガラリと変えた。帰国後は乱発を止め、一撃に全神経を注ぐことにした。ウエスタンラリアットを参考にしてカチ上げ系に改良。首もとに当たるポイントですべてのパワーを吐き出す。納得がいくフィニッシュホールドに近づいていった。

「意識が変わるとともにラリアットに対する思い入れがどんどん強くなっていきました。一発出したら、もうそれで倒し切るんだ、と。直接教えていただいたことが自分にとって一生の宝になりましたね」

 ラリアットの極意を得て時間を掛けながら自分流にしていくことで、のちの3冠ヘビー級王座奪取を始めとする真のブレイクを迎えるわけである。今年6月、潮崎豪をマットに沈めたのもやはりラリアットであった。

 小島の代名詞と言えばラリアットもさることながら、「気合い」である。

「いっちゃうぞバカヤロー!」は自分を鼓舞することから始まっている。最初の師・アニマル浜口のエッセンスでもあるが、プロレスそのものを教えてもらった馳浩、佐々木健介の指導の影響もあるという。

「気迫を前面に押し出すファイトを刷り込まれたところはあったし、何より僕はアマレスなど格闘技の実績が何もなかったので気迫で見せるしかなかった。そういうファイトが自然と自分の軸にはなっていきました」

ライバルであり盟友である天山の存在

 気迫を真っ向からぶつけて、逆に気迫を返してくれる相手だと化学反応を起こしやすい。ずっとタッグパートナーであり、ライバルである盟友の天山広吉がまさに自分を高めてくれる存在にもなった。

 同い歳だが、入門は天山のほうが1年先。デビュー戦の相手でもあり、マットを降りれば今も「さん」付けで呼ぶ。ただ「新日本に入って誰よりもやさしかったし、頼りにさせてもらいました」。天山がいるから頑張れた。2001年に新日本退団を決めた後、直接連絡して自分なりに筋を通した。

 2人の対決で語り草になっているのが2005年2月、3冠王者とIWGP王者として戦うことになった両国国技館でのダブルタイトルマッチだ。両団体の看板を背負い、意地と意地がぶつかったこの試合は59分45秒、天山が脱水症状で立ち上がれずにKO決着となる。

 最後まで天山の体を引き起こそうとする小島の姿が印象的でもあった。

「戦っている最中も、試合が終わった後も天山さんが脱水症状起こしているとはまったく分からなくて。気持ちとしては引きずり起こしてでも、自分の技できっちり決めたいという思いしかなかった」

 新日本の外敵としてIWGP王座まで手中に収め、その後天山にリベンジを許して奪還されることになる。新日本マットに復帰した際も、大事なタイミングでいつもシングルマッチが待っていた。

「プロレスってひとりじゃできない。ライバルがいて成り立つジャンルですから。ターニングポイントの要所にいつも天山さんがいてくれるのは僕にとってありがたいこと。感謝しています」

 心を燃やしてくれる好敵手。

 16日、日本武道館大会で行なわれる初防衛戦の相手、37歳の拳王にもその雰囲気が猛烈に漂う。彼からすれば新日本からやって来た51歳のチャレンジャーがすぐに王座挑戦のチャンスを与えられてベルトを奪っていくのだから面白いわけがない。

「いい年こいて何やってんだよ」「バカか、てめえは」

 小島と拳王の舌戦が、かなり盛り上がっている。

 前哨戦を終えて拳王が「とっとと(控え室に)帰って7月16日のためにスクワットでもしとくわ」とマイクを置くと、「いいから帰って1000回やれ」と小島が指令。バックステージで拳王がホントにやっていると小島を見つけて「何見てんだ」と突っ掛かり、小島も「テメエ100回もやってねえだろう」と応戦して場外乱闘が勃発する。「おとなしくしてりゃいい気になりやがって」(小島)「新日本に帰れ」(拳王)とヒートアップしたままで次に持ち越され、舌戦の呼び水はスクワットからプッシュアップに。

「腕立て伏せやってえらそうにほざきやがってお前はバカか本当に。プロレスラーがやる腕立て伏せは普通の腕立て伏せじゃねえだろ。お前そんなことも分かんねえのか。ライオンプッシュアップっていうんだよ」

 そう言って小島がバックステージでお手本を見せていると、拳王が「いい年こいて何やってんだよ、オイッ」と襲撃。「なにライオン(新日本のマーク)恋しくなって、ライオンプッシュアップなんてやってんだ、バカか、てめえは」と捨て台詞を吐いてロッカーに消えていった。

 スクワットとプッシュアップがヒートアップの元になるという新機軸。子供のケンカのような(失礼!)言い合いのテンポや言葉のチョイスも、血気盛んなチャレンジャーにまったく負けていない。逆にイキイキとしているようにさえ映る。

「僕がプロレス大賞のMVPを受賞したのが35歳。拳王選手は今、37歳でしょ。年齢的、キャリア的にもちょうど全盛期に入っていると思うんですよ。体力も気力も充実しているのは伝わってきます。スクワット? ライオンプッシュアップ? 1000回やっとけっていう話ですよ。言い合いが盛り上がってるかどうかなんて知らないですけど、みなぎってるアイツの気合いを、俺の気合いで食い止めてやりますよ」

 うるさいくらいに腕が鳴る。

 小島聡は鼻息が荒いくらいでちょうどいい。

<#1へつづく>

文=二宮寿朗

photograph by Shigeki Yamamoto