新型コロナの感染爆発が起こって、ペナントレースは大揺れに揺れているが、こればかりは野球の力では如何ともしがたい。ことの進展を見守るしかないが、ここでは前半戦の巨人、救援投手陣に焦点を当てて振り返ってみたい。

 年俸総額で巨人はソフトバンクに次ぐ2位であり、セでは1位。今季も大物選手をずらっと揃えているが、成績は前半戦終了時点で45勝50敗1分で5位。ヤクルトが独走していて、1強5弱だからポストシーズン進出の可能性があるが、年俸総額に照らせばコストパフォーマンスが悪い。

主力の不振以上に深刻なリリーフ陣

 1つには主力選手の不振がある。

 エースの菅野智之は、このところめっきり打ち込まれることが多くなった。また4番打者の岡本和真も打率は急降下し、今は規定打席以上の最下位。年下のライバル村上宗隆には水をあけられている。ウォーカー、ポランコの新外国人は「当たり」ではあったが、打線の迫力も今一つだ。

もちろん主砲・岡本和真の不調は痛いが…… ©Kiichi Matsumoto

 しかしそれ以上に深刻なのが、救援投手陣である。

<セ6球団の先発・救援別の防御率>
ヤクルト 先3.50 救3.08
広島 先3.30 救3.54
阪神 先2.63 救2.43
DeNA 先3.93 救3.03
巨人 先3.98 救4.28
中日 先3.73 救3.26

 各球団の本拠地はダイヤモンドの大きさこそ同じだが、球場のサイズや気候条件などが大きく異なる。本塁打や安打が出やすい球場もあれば、出にくい球場もある。チーム防御率が悪いからと言って、必ずしもそのチームが弱いとは言い切れない。とはいえ一般的に長いイニングを投げる先発よりも、1イニングに集中する救援の方が失点する可能性が少ないから、先発より救援の方が防御率が良くなる。そうでなければ救援にスイッチする意味がないはずである。

 巨人は打者有利と言われる東京ドームを本拠地とする。防御率が悪いのはある程度仕方がないが、先発よりも救援の方が防御率が悪い。なお広島も同じ状況にあり、この2球団は救援投手が機能していないと言える。

巨人リリーフ陣の“具体的な問題”とは

 では、具体的にはどこに問題があるのか?

 強いチームでは「僅差の勝ち試合」で使う中継ぎは顔ぶれも、投入するイニングも決まっている。そのリレーでクローザーにつなぐのだ。言わずと知れた「勝利の方程式」である。一方で大差のついた勝ち試合や負け試合では、方程式に使う投手は温存して、それ以外の中継ぎ投手が出てくる。こうした「メリハリ」こそが、投手起用の妙と言える。

 昨年のヤクルトは規定投球回数に達した先発はいなかったが、「勝利の方程式」でペナントレースを制した。殿堂入りした救援投手だった高津臣吾監督の面目躍如だ。それに対して、巨人は首をかしげたくなるような救援投手の起用が続いた。

ヤクルトと巨人の前半戦救援陣の成績詳細を比べてみる

 残念ながら、その傾向は今季も全く変わっていない。

 ヤクルトと巨人で前半戦、15試合以上登板した救援投手の成績に、投げた試合の勝敗、勝率(カッコ内の数字)をつけてみた。

<ヤクルト>
清水昇24試5勝1敗0S 10H 22.2回 率1.19
(22勝2敗0分 率.917)
マクガフ35試0勝2敗25S 3H 33.1回 率2.36
(31勝3敗1分 率.912)
石山泰稚22試2勝0敗0S 7H 20.1回 率2.66
(15勝6敗1分 率.714)
梅野雄吾27試3勝1敗0S 10H 26.1回 率1.37
(19勝8敗0分 率.704)
田口麗斗27試0勝1敗1S 15H 19回 率0.47
(18勝8敗1分 率.692)
木澤尚文31試5勝2敗0S 4H 43回 率3.14
(19勝11敗1分 率.633)
コール29試2勝0敗0S 6H 30.2回 率3.23
(17勝11敗1分 率.607)
今野龍太32試1勝2敗1S 15H 27.1回 率1.98
(16勝15敗1分 率.516)
大西広樹29試3勝1敗0S 3H 37回 率2.19
(13勝15敗1分 率.464)

 ヤクルトはセットアッパーが清水、クローザーがマクガフ。そして石山、田口、梅野、木澤と成績の良い投手が、勝っている試合で多く起用されている。石山は6月17日を最後に二軍落ちしているが、高津監督はその代わりに今野を「勝ち試合」で起用し始めている。

ヤクルトは「マクガフにつなぐまで」のリリーフが充実している ©Hideki Sugiyama

 コロナによって勝利の方程式はかなり揺れてはいるものの、高津監督は今年も救援投手について、明確な方針をもって起用していることが数字からも見て取れる。

では、巨人救援陣の成績を見てみると?

 これに対して巨人の救援陣はどうか?

<巨人>
大勢36試1勝1敗25S 5H 35.2回 率2.02
(31勝4敗1分 率.886)
デラロサ15試0勝0敗1S 6H 13.2回 率3.95
(9勝6敗0分 率.600)
今村信貴39試1勝2敗0S 20H 37.1回 率4.58
(21勝17敗1分 率.553)
畠世周21試2勝0敗1S 5H 24回 率3.38
(10勝11敗0分 率.476)
鍬原拓也42試2勝2敗0S 13H 38回 率5.45
(19勝22敗1分 率.464)
平内龍太36試4勝3敗0S 8H 34回 率3.71
(15勝20敗1分 率.429)
高梨雄平36試2勝0敗0S 13H 27.1回 率2.63
(14勝21敗1分 率.400)
菊地大稀16試0勝2敗0S 0H 17.2回 率5.60
(1勝15敗0分 率.063)

大勢はセーブ王を狙える勢いで主力となったが ©Kiichi Matsumoto

 今季は新人の大勢をクローザーに据えている。勝率から見ても、不動の存在なのは間違いない。

 しかしそれ以下の投手は、投手成績と起用している試合の勝敗が、整合しない。全体にヤクルトよりも勝率が低いのは仕方がないが、成績が良いとは言えない今村が、防御率の良い高梨よりも多くの勝ち試合で起用されている。

 もちろん、今村は1イニングを任される中継ぎであり、高梨はワンポイントリリーフが多いから起用法が違う。ただ、トータルで見れば今季も「この投手をこのシーンで起用する根拠、理由」が弱いと言わざるを得ない。さらに役割を固定せず、調子のよさそうな投手をその都度、起用している印象を受ける。

巨人は伝統的にリリーフの使い方がうまくないと言われる

 巨人というチームは伝統的に救援投手の使い方がうまくないと言われる。最強チームだった時代が長く「捨て試合」をつくれないために、負け試合でも一線級の救援投手を使うことがある。

後半戦、果たして巨人はリリーフ陣を整備できるのだろうか ©Hideki Sugiyama

 しかしこういう起用法だと、投手は「自分の持ち場がどこなのか?」を認識できなくなる。ブルペンには逐一、ベンチから救援準備の指令が入るが、実力ある救援投手は、試合展開を自分で読んで、起用されるシーンを想定して心身の準備を整えるものだ。しかし、巨人のような使われ方をすると、ブルペンで「え、次、俺?」みたいな反応をする投手が出てきてしまうのではないか。

 コロナの感染拡大を受けて、巨人は球宴前の3試合を延期にした。「長すぎるオールスターブレーク」を奇貨として、巨人は今度こそ「勝利の方程式」を組み立てるべきではないか。

3試合延期の巨人は96試合消化だからまだいいが……

<NPB第18週の成績 2022年7月19日〜7月24日>

〇セ・リーグ
阪神5試4勝1敗0分 率.800
ヤクルト5試3勝2敗0分 率.600
広島5試3勝2敗0分 率.600
中日2試1勝1敗0分 率.500
DeNA5試1勝4敗0分 率.200
巨人2試0勝2敗0分 率.000

 毎週新型コロナ陽性者のニュースがあるが、今週は巨人で70人以上の新規陽性者。中日との3試合が延期に。巨人はそれでもリーグ1の96試合消化しているからいいが、中日は最少の89試合。今後の日程が気がかりだ。

・個人打撃成績10傑 ※RCは安打、本塁打、盗塁、三振、四死球など打撃の総合指標
菊池涼介(広)21打10安2点 率.476 RC5.09
村上宗隆(ヤ)16打5安2本5点 率.3125 RC4.80
佐藤輝明(神)18打7安1本2点 率.389 RC4.58
秋山翔吾(広)17打7安2本6点 率.412 RC4.52
佐野恵太(De)21打8安1本3点 率.381 RC3.85
坂倉将吾(広)20打7安3点 率.350 RC3.39
野間峻祥(広)23打9安1点 率.391 RC3.38
福田永将(中)7打4安1本1点 率.571 RC3.26
オスナ(ヤ)17打5安1本3点 率.294 RC3.20
宮崎敏郎(De)20打8安 率.400 RC3.06

 広島は菊池が大当たり。また新加入の秋山も3番で2試合本塁打など実力を発揮した。坂倉、野間も好調で、ヤクルトの村上も引き続き調子をキープしている。本塁打はヤクルト村上と長岡秀樹、広島・秋山の2本塁打、打点は秋山の6打点が最多だった。盗塁は5選手が1盗塁だった。

・個人投手成績10傑 ※PRはリーグ防御率に基づく総合指標
小川泰弘(ヤ)1登7回 責0率0.00 PR2.73
小澤怜史(ヤ)1登1勝6回 責0率0.00 PR2.37
ガンケル(神)1登1勝6回 責0率0.00 PR2.37
ウィルカーソン(神)1登1勝5.2回 責0.00率0 PR2.21
伊藤将司(神)1登1勝7回 責1率1.29 PR1.73
入江大生(De)3登4回 責0率0.00 PR1.56
サイスニード(ヤ)1登1勝6回 責1率1.50 PR1.34
青柳晃洋(神)1登1勝6回 責1率1.50 PR1.34
西勇輝(神)1登6回 責1率1.50 PR1.34
濱口遥大(De)1登1敗6回 責1.50率1.50 PR1.34

 完投、完封投手はいない。ヤクルトは小川が7月22日の広島戦で7回零封、小澤が19日の巨人戦で6回零封。救援では阪神の岩崎優が3セーブ、浜地真澄、湯浅京己が3ホールドと阪神勢が優秀だった。

パでは柳田、吉田正ら主軸打者が復調か

〇パ・リーグ
オリックス6試5勝1敗0分 率.833
ロッテ5試4勝1敗0分 率.800
楽天5試2勝2敗1分 率.500
ソフトバンク5試2勝3敗0分 率.400
西武6試1勝4敗1分 率.200
日本ハム5試1勝4敗0分 率.200

 オリックスが好調、まだ5位だが5割を超え、パは1〜5位までが勝越し。日本ハムがリーグの全借金を背負う形になっている。

・個人打撃成績10傑
柳田悠岐(SB)18打8安3本6点 率.444 RC7.58
吉田正尚(オ)22打9安2本4点 率.409 RC7.13
辰己涼介(楽)16打7安2本3点1盗 率.438 RC6.77
杉本裕太郎(オ)21打7安4点1盗 率.333 RC5.51
荻野貴司(ロ)15打8安3点2盗 率.533 RC5.21
茂木栄五郎(楽)16打8安3点1盗 率.500 RC5.17
宗佑磨(オ)23打8安3点 率.348 RC4.73
高部瑛斗(ロ)21打9安3点1盗 率.429 RC4.58
茶谷健太(ロ)11打5安3点 率.455 RC4.15
川越誠司(西)14打6安2点1盗 率.429 RC3.98

 リーグの実力派打者がそろい踏みした印象。今季開幕からパッとしないソフトバンク柳田は7月24日のオリックス戦で2本塁打を放った。オリックス吉田は規定打席に復帰して打率2位につけた。本塁打は柳田の3本塁打、打点は柳田、日本ハム今川優馬の6が最多。盗塁はロッテ荻野、オリックス若月健也、楽天・小深田大翔の2が最多だった。

・個人投手成績10傑
椋木蓮(オ)1登1勝8.2回 責0率0.00 PR4.07
山本由伸(オ)1登1勝8回 責0率0.00 PR3.76
千賀滉大(SB)1登1勝8回 責0率0.00 PR3.76
山岡泰輔(オ)1登1勝7回 責1率1.29 PR2.29
瀧中瞭太(楽)1登1勝7回 責1率1.29 PR2.29
高橋光成(西)1登7回 責1率1.29 PR2.29
小野郁(ロ)4登1H3.8回 責0率0.00 PR1.56
オスナ(ロ)3登1S1H3回 責0率0.00 PR1.41
佐々木千隼(ロ)2登1勝3回 責0率0.00 PR1.41
宋家豪(楽)3登1H3回 責0率0.00 PR1.41
津森宥紀(SB)3登3回 責0率0.00 PR1.41
北山亘基(日)3登1H3回 責0率0.00 PR1.41
森脇亮介(西)3登1敗2H3回 責0率0.00 PR1.41

 オリックスの新人椋木はデビュー2戦目の7月20日の日本ハム戦で9回2死までノーヒットノーランだった。さらにデビューから14.2回でまだ無失点である。山本由伸は23日のソフトバンク戦で8回零封。ただし120球は気になる数字か。ソフトバンク千賀は21日楽天戦で8回零封。こちらも125球を投じている。

 救援ではオリックスの平野佳寿が2セーブ、西武の森脇亮介、本田圭佑、水上由伸、先発から救援に転向したオリックス山崎福也が2ホールドを挙げた。

 7月26日から始まるオールスター戦は、過去パが86勝セが80勝11分、今季はコロナ禍で多くの代替出場選手が出ると予想されるが、どんな戦いになるだろうか。

文=広尾晃

photograph by Hideki Sugiyama