7月に開催されたE-1選手権で、日本代表が9年ぶり2度目の優勝を飾った。カタールW杯のメンバー入りに向けてラストチャンスとも言われた大会で、国内組の選手たちが自らの個性と能力をアピールすることに成功した。

 2008年と10年開催の同大会に出場し、その後の南アフリカW杯でもメンバー入りを果たした元日本代表の中村憲剛氏は、「これまでとは違うタイプの選手が出てきた」と期待を寄せる。記事後編では前編に引き続き、E-1選手権でインパクトを残した選手たちの可能性について言語化してもらった。(全2回の2回目/前編へ)

 西村拓真も面白い存在です。

 そもそも彼はストライカー的な選手でしたが、所属する横浜F・マリノスでは4-2-3-1のトップ下で起用されています。そして、今大会でも同じ役割を担いました。アタッキングサードのライン間でボールを受けることができ、ニアゾーンやポケットに走ることもでき、シュートも決められる。

 守備面での貢献度も抜群でした。所属するF・マリノスでかなりの走行距離を出していて、Jリーグ全体でトップの走行距離を記録した試合もあります。E-1選手権でもプレスのスイッチを入れる、プレスバックをするといったことはもちろん、ボールの奪い合いにふたり目として加わって引っ掛けるシーンもあった。その運動量で攻守にわたってチームを助けていました。

高いインテンシティで攻守に躍動した西村拓真 ©Getty Images

 日本の基本システムは4-3-3ですが、カタールW杯では4-4-2や4-2-3-1で戦う時間があるかもしれない。トップ下やセカンドトップという場所が出てきたときに、所属クラブですでに役割が整理されている西村は期待できる選手と言えます。

 そもそもFWの選手ですから、ゴールを取れるところへ自然に入っていける。MFタイプのトップ下との違いです。海外組を含めたメンバーを見ても、彼のようなタイプはいません。古橋亨梧がやや似たタイプかもしれませんが、いずれにしても面白い存在です。

藤田譲瑠チマと岩田智輝は「セットで欧州遠征に」

 藤田譲瑠チマと岩田智輝のダブルボランチは、ふたりセットで9月の欧州遠征に連れていってもいいのでは、という印象です。

 今大会のプレビューでも書きましたが、現在の日本代表では遠藤航、守田英正、田中碧に続く「4人目のMF」が誰なのかが個人的には気になっています。4人目に名乗り出るには、フィジカルが強くて戦えることが大前提です。ふたりはその前提を満たしていて、かつポジショニング、球離れ、ゲームを作る、相手の嫌なところでプレーする、といった要素も兼ね備えている。

 森保監督がカタールW杯で「過去最高の成績」を目標にしている以上、4-3-3のシステムで遠藤らが交代せずに出続ければ、体力的にかなり厳しい戦いを強いられると思います。疲労を分散するためにローテーションをするという意味で、どこかのタイミングでダブルボランチで臨むかもしれない。そうなったときに、彼らをセットで起用するという考えがあってもいいのでは、と思うのです。

韓国戦で中盤を制圧した岩田智輝と藤田譲瑠チマのダブルボランチ ©Getty Images

 彼らをひとりずつ4-3-3に組み込むこともできるでしょう。

 プレーの強度、ボールを奪いにいく迫力、前線からの守備と連動して奪い切る能力があり、パスワークでボールを循環させることができる。攻撃のアイデアもあり、ゴール前へ飛び出すこともできます。韓国戦では藤田がアシストを決めましたが、得点に直結できるああいったパスをボランチで出せることは、評価基準になると思います。

 さらに言うと、遠藤、守田、田中との組合せでは、セントラルミッドフィルダー・ボランチタイプのほうが互換性が高く、馴染みやすい点もあるのではと感じます。藤田も岩田も、3センターのインサイドハーフでもアンカーでも、4-2-3-1のダブルボランチでも、全員がお互いを見ながらスムーズにプレーできるのでは、と考えます。

3ゴール以上に評価できる町野修斗の働き

 1トップで起用された町野修斗も、3ゴールという結果を残しました。ゴールはもちろん素晴らしかったのですが、より評価したいのはチームが循環するために動いていたことでした。

 自分が得点を取るためだけでなく、降りてパスを引き出して周りの背後ランを促したり、自身もDFラインの背後へ走ったり。サイドバックや中盤の選手が中を向いて出せるときには、確実に顔を出していました。ボールホルダーが顔を上げたときに、パスを受けられるアクションを起こしていたのです。

 守備でも西村と連動して、前線からスイッチを入れていました。ボールを奪いにいく連続性があり、プレスバックもしっかりとやる。守備の感度がいいですね。攻撃でも守備でも、アクションを続けることができていました。

 藤田と岩田と同じように、町野と西村もセットで使ってみたいと思わせてくれます。前線にサイズのある選手を加える意味でも、町野は爪痕を残せたのではないでしょうか。

相馬勇紀と並ぶ3ゴールで大会得点王となった町野修斗の“忍者ポーズ” ©Getty Images

新戦力が起こす化学反応に期待

 E-1選手権で爪痕を残した選手たちも、引き続きアピールを続けなければいけない立場です。当たり前ですが、W杯の代表入りが決まった選手はいません。

 他でもない選手自身も、アピールの必要性は口にしていました。大会MVPに選ばれた相馬にしても、左ウイングは南野拓実と三笘、右ウイングは伊東純也、堂安律、久保建英らがしのぎを削る激戦区へ、飛び込んでいくのです。

 そのうえで言うと、これまでとは違うタイプの選手、違うことのできる選手が登場してきました。使い方次第で興味深い化学反応が起きるのでは、という期待を抱かせる選手が。

 森保監督は「9月の欧州遠征に連れて行きたい選手がいるか」と聞かれ、「イエス」と答えました。この発言は国内組のモチベーションを間違いなく刺激したでしょう。同時に、海外組の選手たちも「うかうかしてはいられない、ここからが最後の競争だ」との思いを強くしたのではと想像します。

 森保監督が誰をどのように評価して、カタールW杯での戦いを思い描いているのかは、9月の欧州遠征のメンバー選考で明らかになります。それまでは国内、海外を問わず、選手たちの活発なアピールに期待したいところです。<前編から続く>

文=中村憲剛+戸塚啓

photograph by JFA/AFLO