この夏、プレシーズンツアーで日本を訪れたパリ・サンジェルマン(PSG)。東京、埼玉、大阪で3試合(川崎フロンターレ、浦和レッズ、ガンバ大阪)のテストマッチを行ったフランス王者は、10日間の滞在を終えて嵐のように去っていった。本国フランスからも数人のジャーナリストが取材に訪れていたが、その中の一人、世界最古の報道機関としても知られるAFP通信でサッカー取材を専門とするケイヴァン・ナラギ記者に、今回の日本での取材活動について感想を聞いてみた。
 全2回のうち#2/Jリーグチームへの評価について聞いた前編#1もあわせてお読みください

湿度はなかなか耐え難いものがあるよ

――実際、日本の暑さは相当辛いものでしたか?

ナラギ記者 まあ、僕にとっては日本は9回目だし、だいたい春か夏にくることが多いから、この暑さも覚悟していたけれど、でもそうだね、ヨーロッパ人にとってはこの湿気は慣れない。気温でいったらこちらもかなり暑いんだけど、湿度はなかなか耐え難いものがあるよ。でも、僕たち取材している側にとってはそれでも大したことはない。ただ、これからの長いシーズンに向けて準備をしようという彼らにとってはかなりきつかったと思うよ。PSGのコーチングスタッフと話をしたときも、トレーニングの質や内容的には非常に充実したと言っていたけれど、「気候に関してはかなりきつかった」と漏らしていたからね。

©Kiichi Matsumoto

――ヨーロッパの熱波もかなり厳しい気がしますが……

ナラギ記者 それはもう慣れの問題だよね。まあでもスポーツをやる側にとってはきついと思う。だから夕方から夜にかけてトレーニングしていたけれど、普通はトレーニングは午前中にやるものだから、その点でも日頃慣れ親しんだパターンと違うことをするという意味で負担にはなっていただろうね。できればもっと早い時間にトレーニングしたかっただろうから。ヨーロッパでやるのと比べて、違う条件、環境下で新シーズンの準備をすることになった、というのはあるから、その部分はなかなか厳しかったんじゃないかな。

日本に来ると必ず行く場所は?

――試合以外でも、チームに同行して取材を?

ナラギ記者 プレスに公開されていたイベントには同行した。PSGの柔道部に所属しているテディ・リネールや、日本の柔道チャンピオンとのイベントは面白かったね。チャンピオンのオオノ(大野将平)とノムラ(野村忠宏)も参加して、選手たちも一緒にプレーして、彼らもものすごく楽しんでいて、あれはいいイベントだったな。

――それにしても、日本は今回で9回目とは! もうスペシャリストですね。

ナラギ記者 いや、全然スペシャリストではないけれど(笑)、いくつかの界隈は馴染みがあるし、知っている場所もあるから、まあ、滞在自体は楽かな。

大野将平(右)の技を受けたムバッペ ©JIJI PRESS

――とくにお気に入りの場所は?

ナラギ記者 渋谷にはいつも行くよ。大きなレコードショップがあるから。あとプライベートで来たときは、京都と横浜にも行った。今回大阪も行けたから、4都市を制覇したことになるね。

――日本に来るたびにやることはありますか?

ナラギ記者 レコード屋めぐり! ジャズが好きだから、CDショップには必ず行くんだ。アメリカの次くらいにジャズカルチャーはフランスでも盛んだけれど、日本では、名盤のリマスター盤だったり、レアなアルバムが見つかったりするんだ。それに、最近ヨーロッパでは巨大なCDショップは姿を消してしまったからね。でも日本にはまだタワーレコードとかHMVとかが残っている。アメリカでさえ、こうしたチェーンは消えてしまったから、ものすごく貴重なんだよ。パリでもCDを売っている店はあっても、コーナーが縮小してしまって、チョイスが全然違うんだよね。

初来日の仲間は「日本人はいつもみんなマスクしてるの?」

――最初に来たときと、日本のイメージは変わったりしていますか?

ナラギ記者 いや、変わっていないけれど、いまはマスク社会になってる! そこが大きな違いだ。

――日本のCOVID対策は厳しいと感じましたか?

ナラギ記者 特別厳しいと感じた、ということはないけれど、外でもマスクをしなくちゃいけないというのがね。地下鉄の中とかはわかるけど、屋外でもしなきゃいけないのは、ちょっとやりすぎじゃないかな、という気がした。まあここ最近、感染者数が増えてるということだから、警戒心が強まっているのは理解できるけれど。

――これはとても日本的なところで。「外ではマスクは外しましょう」とテレビでも広告が流れているのですが、みんななんとなく周りの目を気にして外せないという……

ナラギ記者 ああ、それはなんとなくわかる気がする。個人的にはそれで不快に思ったりはまったくしないけれど、初めて日本に来た仕事仲間はびっくりしていて「え? 日本人はいつもみんなマスクしてるの?」って驚いていた。だから、「いやいや。コロナの前は、具合が悪い人だけつけていた。いまはコロナだからだよ」っていうような会話をしたよ。

©Kiichi Matsumoto

プレス席のエリアにも一般のお客さんが…

――初めて来た彼らは、とくに苦労していたこととかはありましたか?

ナラギ記者 いや、とくになかったと思う。まあ、彼らに聞いたら違う意見も出てくるかもしれないけれど、みんな快適に過ごしていたと思うよ。

――セキュリティーの面はどうですか? 数週間前に元首相の暗殺事件もあったり……

ナラギ記者 ああ、それは知っている。まあでも、フランスや他の国と比べて、日本はものすごく安全に感じる場所であるというのは変わっていないよ。

――ただ、スタジアムでは私たちプレス席のエリアに一般のお客さんが入っていたのには驚きました。

ナラギ記者 ああそれは僕も気がついた。だけどそれも逆になんの心配もないから入っていても大丈夫、ということの現れだよね。
(注:フランスの記者席では、パソコンやカバンを置いたまま席を離れると、盗難にあう危険性が高いので、どのスタジアムも警備員が立って、プレス席近辺には一般客は近づけないようにしている)

東京は本当に食べるところに困らないよね

――ところで、日本ではどんなものを食べていました?

ナラギ記者 焼き肉とか、寿司とか、ローカル食のレストランにはけっこう行ったなあ。東京は本当に食べるところに困らないよね。パリはコロナなど関係なく23時とか0時を過ぎたらなかなか食べるところは見つけられないけど、東京は開いている店がたくさんあるから僕らのような仕事の人間にはとくに助かるよ。

――とくに好きな日本食はありますか?

ナラギ記者 ヤキトリ! あとサシミとか。

――日本で困ったこととかは?

ナラギ記者 とくにないかな。日本語以外を話す人があまりいないから、言葉の面でちょっと困ることはあるけど、でもいつもなんとかなるから気にならない(笑)。

早く次の機会がこないかなと願っているよ!

©Kiichi Matsumoto

――移動手段はどうしていましたか? 交通機関とか?

ナラギ記者 最初はタクシーを使っていたけど、高いから、そのあとは取材陣はみんな地下鉄を使うようになったんだ。でもすごくわかりやすいし、パリのメトロとも変わらないから、なんの問題もなかったよ。それに今回は銀座を拠点にしていたから、移動もものすごく便利だった。銀座はシックで素敵な街だよね!

――振り返って、いい滞在だったな、と思いますか?

ナラギ記者 ものすごく思う。すでに早く次の機会がこないかなと願っているよ!

 8月17日発売予定のNumber PLUS「パリ・サンジェルマンのすべて」ではPSGの日本ツアーに徹底密着。さらには特別NFTの付録つきです。お楽しみに!

文=小川由紀子

photograph by Yuki Suenaga