阪神の青柳晃洋が、サブマリンなのか否かについては議論が分かれるところ。ボールのリリースポイントは比較的高くて、本人は「下手投げ気味のサイドスロー」と言っているようだ。しかし身体をぐっと沈めてから浮かび上がる投球フォームはサブマリンそのものだ。

青柳のボールは独特なフォームから繰り出される ©JIJI PRESS

 今季の青柳は防御率1.38でセ・リーグダントツの1位、勝利数も12勝と2位の巨人、戸郷翔征に3勝差をつけている。しかし、同時に青柳の成績からは、サブマリン投手の特色が浮かび上がってくる。

「四球を与えず三振を取る」K/BBが図抜けている

 セの規定投球回数以上の投手の各種成績を見てみよう。まずは奪三振率(K9)、9イニング当たりの三振数。

柳裕也(中) 7.58 (98奪三振/116.1回)
戸郷翔征(巨) 7.37 (95奪三振/116回)
青柳晃洋(神) 7.36 (96奪三振/117.1回)
大瀬良大地(広) 6.75 (84奪三振/112回)
森下暢仁(広) 6.32 (89奪三振/126.2回)
大野雄大(中) 6.00 (74奪三振/111回)
床田寛樹(広) 5.84 (74奪三振/114回)
西勇輝(神) 5.38 (69奪三振/115.1回)
小川泰弘(ヤ) 5.35 (63奪三振/106回)

 今季のセ・リーグの先発陣には三振をバッタバッタととるパワーピッチャーがいない。パではソフトバンク千賀滉大が9.83(115奪三振/105.1回)、オリックスの山本由伸が9.35(135奪三振/130回)、さらに規定投球回未達だがロッテの佐々木朗希が12.85(129奪三振/90.1回)と驚異的なK9を記録している中で、セはイニング数を上回る奪三振の先発投手はいない。

 中日・柳の7.58が最高、そして青柳はリーグ3位の7.36、これはサブマリン投手としては悪い数字ではないが、現代では「打たせて取る投手」の数字だと言える。

 続いてK/BB、奪三振数を与四球数で割った数値。投手の安定感、制球力を見る指標だ。

青柳晃洋(神) 6.00 (96奪三振/16与四球)
柳裕也(中) 4.26 (98奪三振/23与四球)
西勇輝(神) 4.06 (69奪三振/17与四球)
大瀬良大地(広) 3.82 (84奪三振/22与四球)
大野雄大(中) 3.22 (74奪三振/23与四球)
森下暢仁(広) 3.18 (89奪三振/28与四球)
小川泰弘(ヤ) 3.15 (63奪三振/20与四球)
床田寛樹(広) 2.64 (74奪三振/28与四球)
戸郷翔征(巨) 2.50 (95奪三振/38与四球)

 この数字は青柳がセでは断トツの1位。パの規定投球回以上では楽天の岸孝之が5.44(87奪三振/16与四球)が1位だから、この数字をも上回っている。青柳の奪三振はさほど多くはないが、めったに四球を与えない投手なのだ。K/BBはMLBでは最も重視される指標の1つだが、青柳の優秀さが際立っている。

 さらにQS(Quality Start)率を見てみる。

 先発で6回以上を投げて自責点3以下で抑えた試合数。QSは先発投手の「最低限の責任」とされる。このQSの先発登板数に占める比率である。

青柳が「両リーグ通じて最も信頼できる」先発である数値

<セの10QS以上の投手のQS率>
青柳晃洋(神) 93.75% (15QS/16先発)
伊藤将司(神) 83.33% (10QS/12先発)
戸郷翔征(巨) 82.35% (14QS/17先発)
西勇輝(神) 77.78% (14QS/18先発)
床田寛樹(広) 76.47% (13QS/17先発)
柳裕也(中) 70.59% (12QS/17先発)
大野雄大(中) 68.75% (11QS/16先発)
森下暢仁(広) 68.42% (13QS/19先発)
菅野智之(巨) 66.67% (10QS/15先発)
小川泰弘(ヤ) 64.71% (11QS/17先発)
大貫晋一(De) 62.5% (10QS/16先発)
大瀬良大地(広) 61.11% (11QS/18先発)

 青柳は今季16試合に先発して、QSが達成できなかったのは6月24日の中日戦(7.1回を投げ自責点4)だけ。抜群の安定感だ。パの1位が日本ハム加藤貴之の85.7%(12QS/14先発)だから、それをも上回っている。青柳は両リーグ通じて最も信頼できる先発投手だと言えよう。

 昨年の東京五輪の金メダリストである青柳だが、登板した2試合では1.2回8被安打自責点5と活躍できなかった。それも今年の奮起の材料にしたのではないかと思われる。

東京五輪の青柳 ©JMPA

沢村賞争い・青柳と山本の成績を比べてみると

 さて、消化試合数も100試合前後となり、両リーグで最高の先発投手1人に与えられる「沢村賞」の行方が気になり始める時期だ。結論から言えば今季は阪神の青柳、オリックスの山本由伸の2投手に絞られたと言えるのではないか。

青柳晃洋(神)16登板12勝1敗 勝率.923 4完投2完封117.1回96奪三振 防御率1.38
15QS QS率93.75% K/BB6.00
山本由伸(オ)18登板10勝5敗 勝率.667 1完投1完封130回135奪三振 防御率1.80
14QS QS率77.78%
K/BB4.09
※太字はリーグ最多

 ロッテの佐々木朗希も一時は有力な候補だった。しかし現時点では規定投球回数に達していないうえに勝ち星も6勝2敗と見劣りする。

 昨年の沢村賞投手、山本由伸は今季も好成績を挙げているものの、トータルでは青柳の方が優秀だ。

 青柳には20勝の期待もあった。ただ、残り登板は最大で7試合と思われるので難しい。今季の青柳は初登板が4月15日と出遅れたため登板数が減ったのが惜しまれる。

 とはいえ――このままで推移すれば、青柳晃洋が沢村賞を受賞する可能性が高い。

阪神では井川以来、サブマリンなら誰?

2003年の井川慶 ©Hideki Sugiyama

 青柳が受賞すれば、阪神では2003年の井川慶以来19年ぶりとなる。

 それ以上に筆者が注目するのは「サブマリン投手」としての受賞である。1977年に巨人、79年に阪神で受賞した小林繁以来、実に43年ぶりになる。それ以前に遡ると、1967年、中日の小川健太郎、1953年巨人の大友工がいるだけだ。

阪神時代の小林繁 ©Sports Graphic Number

 なお日本野球を代表するサブマリンである南海・杉浦忠、阪急・山田久志は、1988年まで沢村賞が「セ・リーグ限定の賞」だったために受賞していない。

 沢村賞と言えば、その始祖、沢村栄治に代表される真っ向から投げ込む剛球投手が受賞するイメージが強い。技巧派が多いサブマリン投手はイメージ的にやや不利ではあるが、青柳は浮き沈みの激しい今年の阪神にあって、圧倒的な安定感でチームを支えてきた。

 その功績が「異色の沢村賞投手」として報われるのなら、素晴らしいと思う。

村上の5連発、大島の1試合6安打など快記録続き

<NPB第19週の成績 2022年7月26日〜8月7日>

 オールスター明けに巨人-DeNAがコロナのため3試合中止となったので、7月29日から31日までの3日間も含めて第19週とした。

〇セ・リーグ
DeNA5試4勝1敗0分 率.800
巨 人6試4勝2敗0分 率.667
阪 神9試6勝3敗0分 率.667
中 日8試4勝4敗0分 率.500
ヤクルト8試3勝5敗0分 率.375
広 島8試1勝7敗0分 率.125

 DeNAは巨人との3連戦がコロナで流れたうえに雨での中止もあり、13日間で5試合だけ。対照的に阪神は9試合。消耗度はかなり違うはずだ。ヤクルトは負け越したが、それでも2位阪神とは8.5差ある。

・個人打撃成績10傑 ※RCは安打、本塁打、盗塁、三振、四死球など打撃の総合指標。
村上宗隆(ヤ)26打10安6本9点 率.385 RC11.52
サンタナ(ヤ)27打10安4本12点 率.370 RC9.12
大島洋平(中)33打12安2点3盗 率.364 RC7.64
ビシエド(中)31打12安3本9点 率.387 RC7.59
島田海吏(神)39打14安4点3盗 率.359 RC7.16
阿部寿樹(中)33打11安1本5点1盗 率.333 RC6.10
梅野隆太郎(神)32打13安1本6点 率.406 RC6.07
野間峻祥(広)36打14安1点2盗 率.389 RC6.04
秋山翔吾(広)32打10安1本7点 率.313 RC5.99
オスナ(ヤ)32打11安1本7点 率.344 RC5.85

 ヤクルト村上はNPB記録の5打席連続本塁打など6本塁打を放った。村上の後を打つ同僚のサンタナも大当たりで、打点は村上を上回る12打点。中日・大島は8月3日のヤクルト戦で6打数6安打をマーク。盗塁は阪神・島田の3が最多だった。

・個人投手成績10傑 ※PRはリーグ防御率に基づく総合指標
小笠原慎之介(中)2登1勝15回 責0率0.00PR6.03
高橋宏斗(中)2登2勝13.2回 責0率0.00PR5.49
山崎伊織(巨)1登1勝8回 責0率0.00PR3.22
西勇輝(神)2登2勝12.1回 責2率1.46PR2.96
高橋奎二(ヤ)1登1勝7回 責0率0.00PR2.81
湯浅京己(神)6登5H6回 責0率0.00PR2.41
矢崎拓也(広)5登2H5回 責0率0.00PR2.01
坂本裕哉(De)1登5回 責0率0.00PR2.01
浜地真澄(神)6登5H4.2回 責0率0.00PR1.88
堀田賢慎(巨)1登1勝7回 責1率1.29PR1.81

 中日の小笠原は7月30日の広島戦で7回零封の勝利、8月6日のDeNA戦も8回零封した。同僚の高橋宏も29日の広島戦で7.1回無失点、7日のDeNA戦も6.1回零封でいずれも白星を挙げた。救援ではDeNA山崎康晃が3セーブ、阪神の湯浅と浜地が5ホールド。湯浅は33ホールドポイントでリーグ1位に立った。

秋山翔吾の「日米通算1500安打」、過去には誰が達成?

〇パ・リーグ
西 武9試7勝2敗0分 率.778
オリックス9試5勝4敗0分 率.556
楽 天9試5勝4敗0分 率.556
日本ハム9試4勝4敗1分 率.500
ソフトバンク9試3勝5敗1分 率.375
ロッテ9試2勝7敗0分 率.222

 パは全チームが中止・延期なしの9試合を消化し、西武が7勝2敗で抜け出して首位をキープ。ロッテは2勝7敗と負けが込み、西武と6.5差の5位に。

・個人打撃成績10傑
小深田大翔(楽)35打17安1本2点2盗 率.486 RC11.01
山川穂高(西)32打12安4本11点 率.375 RC10.51
島内宏明(楽)38打15安3本13点 率.395 RC10.46
吉田正尚(オ)32打10安1本5点1盗 率.313 RC7.88
若月健矢(オ)29打13安1本2点 率.448 RC7.80
岡大海(ロ)24打9安3点1盗 率.375 RC7.29
荻野貴司(ロ)29打9安2本3点1盗 率.310 RC7.19
牧原大成(SB)36打13安1本6点1盗 率.361 RC7.12
宗佑磨(オ)31打8安2本5点1盗 率.258 RC6.95
浅村栄斗(楽)28打8安1本1点 率.286 RC6.34

 楽天の小深田は9試合で17安打の荒稼ぎ。西武の山川は最多の4本塁打。楽天の島内は最多の13打点。盗塁は日本ハム中島卓也の4盗塁が最多だった。

・個人投手成績10傑
與座海人(西)2登1勝16回 責0率0.00PR6.71
上原健太(日)1登1勝8回 責0率0.00PR3.35
阿部翔太(オ)5登1勝4H5回 責0率0.00PR2.10
甲斐野央(SB)5登1H5回 責0率0.00PR2.10
根本悠楓(日)2登1勝9.2回 責2率1.86PR2.05
岸孝之(楽)1登1勝7回 責1率1.29PR1.93
宋家豪(楽)4登2H4回 責0.00率0PR1.68
藤井聖(楽)1登4回 責0.00率0PR1.68
藤井皓哉(SB)4登2H4回 責0.00率0PR1.68
佐々木健(西)4登1勝4回 責0.00率0PR1.68
平良海馬(西)4登2S2H4回 責0.00率0PR1.68

 西武の與座は、7月30日のソフトバンク戦でプロ初完封、続く8月6日のロッテ戦でも7回零封。救援ではソフトバンクの甲斐野が5試合を零封。故障もあり長く低迷していたが、又吉克樹の離脱をカバーする活躍だった。同じく救援では西武の平良が2セーブ、オリックスの阿部とソフトバンク嘉弥真新也が4ホールドだった。

<達成記録>
打者
・中島卓也(日)250犠打

8月4日ソフトバンク戦 史上21人目

・秋山翔吾(広)日米通算1500安打
8月7日阪神戦

 NPB起点で日米通算1500安打を記録した日本人選手は秋山で14人目。秋山はあと71安打でNPB1500安打も記録する。

イチロー4367安打(MLB 3089/NPB 1278)
松井稼頭央2705安打(MLB 615/NPB 2090)
松井秀喜2643安打(MLB 1253/NPB 1390)
青木宣親2638安打(MLB 774/NPB 1864)
福留孝介2450安打(MLB 498/NPB 1952)
井口資仁2254安打(MLB 494/NPB 1760)
中村紀洋2106安打(MLB 5/NPB 2101)
城島健司1837安打(MLB 431/NPB 1406)
田口壮1601安打(MLB 382/NPB 1219)
岩村明憲1585安打(MLB 413/NPB 1172)
川崎宗則1526安打(MLB 150/NPB 1376)
新庄剛志1524安打(MLB 215/NPB 1309)
田中賢介1507安打(MLB 8/NPB 1499)
秋山翔吾1500安打(MLB 71/NPB 1429)

文=広尾晃

photograph by JIJI PRESS