8月に開幕したサッカー世界最高峰のイングランド・プレミアリーグ。タイトルを狙うメガクラブ、いわゆる「BIG6」の補強動向と予想フォーメーション、三笘薫が加わったブライトンなど「BIG6以外の注目チーム」の記事をお届けします!(全3回の1回目/#2、#3も)

マンチェスターC:ハーランドは欧州制覇へのラストピース

 アブダビの首長が実権を握り始めて15シーズン目となる今季、悲願の欧州制覇を果たすべく、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドを獲得した。“リーサル・ウェポン”とも、“パズルのラストピース”とも言われる22歳の怪物は、かつてマンチェスター・シティで活躍したアルフィーを父に持つ新エース候補だ(母国のモルデでストライカーとしてのイロハを教えたのは、宿敵マンチェスター・ユナイテッドの前指揮官オレ・グンナー・スールシャールだが)。

 大きくて強いうえに速くて巧く、凄まじい決定力を備えるニューカマーは、セルヒオ・アグエロ以来となる生粋の点取屋でもある──「得点するために生まれてきた」とはペップ・グアルディオラからの評だ。11シーズン前にそのアルゼンチン人の先達がクラブを初のプレミアリーグ優勝に導いたように、ハーランドはCLのトロフィーをもたらせるだろうか。

ハーランドはウェストハムとの開幕戦でさっそく2ゴールを挙げて勝利に貢献 ©Getty Images

 リバプールとのコミュニティーシールド(1-3の敗北)ではビッグチャンスを2度もフイにしたが、ウェストハムとの開幕戦では自ら獲得したPKを沈めて先制し、さらにケビン・デブライネのスルーパスから鋭く決めて2-0の勝利の立役者となった。この2点目の形はチームの新たな武器になりそうだ。ショートパスを繋いで最後は左右のボックス奥から折り返して仕留める流れこそ、7シーズン目を迎えるグアルディオラ監督のシティの代名詞だったが、今後はより直線的にゴールに迫る型も磨いていくだろう。

プレミア3連覇とCL制覇への障壁があるとすれば

 ラヒーム・スターリングとガブリエウ・ジェズスを放出した前線はハーランドと多機能型のフリアン・アルバレスで補填し、フェルナンジーニョが去った中盤の穴はイングランド代表カルビン・フィリップスが埋める。だが移籍したアレクサンドル・ジンチェンコの後釜に見込んでいたマルク・ククレジャはチェルシーに奪われ、現時点でペップ流のレフトバックの動きができるのはジョアン・カンセロくらい。このポルトガル代表が不測の事態に陥れば、左利きのCBアイメリック・ラポルトを回すか、3バックで対応するか。

シティの陣容(4−3−3時)

 中盤から前線までをハイレベルにこなすベルナルド・シウバの移籍も囁かれているが、デブライネやフィル・フォデン、ジャック・グリーリッシュ、コール・パーマーといった面々も似た特性とクオリティーを備えており、大きな問題にはならないだろう。

 それよりも、どちらも初のプレミアリーグ3連覇とCL制覇への障壁となりかねないのは、大一番で指揮官が繰り出しがちな突飛なアイデアと、窮地に立たされた時に痛感するピッチ上のリーダーの不在か。

リバプール:マネが去ってフロントスリーが解体したが

 イングランド史上初の4冠を目前にしながら、CLで準優勝、プレミアリーグで次点に終わり、夢は叶わなかった。仕切り直しのオフにはサディオ・マネがバイエルン・ミュンヘンへ移り、一時代を築いた看板の3トップが解体された。

 ユルゲン・クロップ監督はこの30歳のセネガル代表FWを「リバプール史上最高の選手のひとり」と称えたが、その前に23歳のダルウィン・ヌニェスを迎えており、喪失感はほとんどないだろう。むしろ世代交代を進められたと好意的に見ることもできる。

ヌニェスはリバプールの前線を活性化できるか ©Getty Images

 そして早速、このウルグアイ出身のニューフェイスはマネに勝るとも劣らない能力を示している。マンチェスター・シティとのコミュニティーシールド(3-1の勝利)に途中出場してダメ押し点を決めると、フラムとの開幕戦(2-2の引き分け)でも後半から投入されて1得点と1アシストでチームを救った。すでにアンフィールドのファンは同じくウルグアイ生まれのかつてのアイドル、ルイス・スアレスと重ね合わせているようだ(爽やかな笑顔はエディンソン・カバーニの方に近いけれども)。

 前線では南野拓実とディボク・オリジも新天地を求めた一方、モハメド・サラー、ディオゴ・ジョタと新たに長期契約を締結──前者のそれは週給35万ポンド(約5700万円)でクラブ史上最高額に。加えて、1月に加入したルイス・ディアスはすでに完全に適応しており、ロベルト・フィルミーノを含めた5人の誰が出場しても、遜色のない攻撃とプレスが見られるはずだ。

負傷禍になった場合をクロップはどこまで想定しているか

 中盤にはチームを次のレベルに引き上げたチアゴが今季も君臨するが、負傷がちな点は気がかり。開幕戦には彼のほかにジョーダン・ヘンダーソン、ファビーニョと20代後半〜30代の選手が名を連ね、生きの良い相手に走り負けるシーンも散見された。生え抜きのカーティス・ジョーンズやハービー・エリオット、新戦力ファビオ・カルバーリョら、20歳前後の若手に期待がかかる。

リバプールの陣容(4-3-3時)

 プレシーズンにイブライマ・コナテが負傷すると、指揮官は「とてつもない痛手」と嘆き、レギュラーCBが全員離脱した一昨季の悪夢を思い出し、今頃は最終ラインの新戦力を物色しているかもしれない(今夏の移籍期限は現地時間9月1日23時)。また監督自身も2026年夏までの新契約を結んでおり、腰を据えてクラブの展望を描いているはずだ。

 いずれにせよシティの初のリーグ3連覇を止めるのは、前回の2019-20シーズン同様に、レッズしか考えられない。

チェルシー:アブラモビッチが去って新体制はどうなる?

 ロシア軍のウクライナ侵攻により、ロマン・アブラモビッチとウラジーミル・プーチンの親密な関係があらためて問題視され、前オーナーはクラブを手放すこととなり、約19年に及んだ“ロマン帝国”は昨季終盤に幕を閉じた。

 アメリカ人の新オーナー、トッド・ボーリーはアブラモビッチ色を一掃する一方で、トーマス・トゥヘル監督には全幅の信頼を寄せている。それはクリスティアーノ・ロナウドを欲しがりながらも指揮官の意見を聞いて翻意したことや、巨費を投じて迎えながらもフィットしなかったロメル・ルカクのローンでの放出を認めたことなどに見て取れる。

 ただし当然、その前代未聞の事態により、一昨季の欧州王者が無傷でいられたわけではない。アントニオ・ルディガーとアンドレアス・クリステンセンの2人の守備者が荷物をまとめ、最終ラインに大きな穴が空いた。7月下旬にアメリカで行われたプレシーズンマッチでアーセナルに0-4で大敗すると、指揮官は「落ち着いていられるはずがない。(中略)昨季に制裁を受けた後、選手たちはクラブを離れたがり、実際にそうした選手もいるし、今もそう願っている選手もいる。そしてチームはこの有り様だ」と不満をこぼした。

1億5000万ポンド超を投じた新オーナー

 しかし本稿執筆時点でその後に出ていった選手はおらず、逆に補強は進んでいる。

着実に評価を高めたククレジャは初のメガクラブ挑戦となる ©Getty Images

 7月のうちにFWラヒーム・スターリングとCBカリドゥ・クリバリーを高額で迎え入れ、8月にはシティとの競合を制してSBマルク・ククレジャを獲得。高齢化が懸念される中盤には、18歳の天才MFカーニー・チュクエメカを招き、ローン先で急成長した22歳のコナー・ギャラガーも戻ってきた。さらには20歳の長身ストライカー、アルマンド・ブロジャも武者修行を積んで逞しくなって帰還している。

 ハキム・ジエシュやカラム・ハドソン=オドイらには移籍の噂が流れているが、メイソン・マウントやカイ・ハバーツ、エンゴロ・カンテ、チアゴ・シウバなど、昨季に世界を制した主力は健在だ。エバートンの本拠地での開幕戦では、ジョルジーニョのPKで奪った1点を守り切る「チェルシーらしい」(トゥヘル監督)勝利で、新時代を白星でスタートさせ、早くも総額1億5000万ポンド超を投じた新オーナーを喜ばせた。

チェルシーの陣容(3-4-2-1時)

 ちなみにルカクが昨季に着けていた背番号9は、呪われたナンバー──フェルナンド・トーレスやラダメル・ファルカオ、アルバロ・モラタ、ゴンサロ・イグアインと期待に応えられなかった選手は多い──とされ、「誰も触れたがらない」と指揮官は明かしている。

<#2/「トッテナム、アーセナル、ユナイテッドの動向」、#3「BIG6以外の注目クラブ」につづく>

文=井川洋一

photograph by Sports Graphic Number/Getty Images