8月初め、ポルトガルリーグが開幕した。

 欧州最西端のこの国は、国土面積が北海道より少し大きいくらいで日本の約4分の1、人口は1000万人余りで日本の約12分の1でしかない。しかし、過去、FWエウゼビオ、MFルイス・フィーゴ、FWクリスティアーノ・ロナウド(現マンチェスター・ユナイテッド)ら世界フットボール史上に燦然と輝く名手を多々輩出しており、フットボールの世界では独特の存在感を放つ。

スポルティング時代のC・ロナウド(右)とクアレスマ ©Getty Images

 リーグのレベルは、欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア)のすぐ下。伝統的にベンフィカ、ポルト、スポルティングが3強で、揃って今季の欧州チャンピオンズリーグに出場する。この3クラブで目立った活躍をすれば、世界トップクラブはすぐそこだ。

 大きな野心を抱く選手が集結するこのリーグで、今季、日本人10選手がプレーする。昨季から在籍していた6人に新たに4人が加わり、過去最多である。

強豪スポルティングに加入した守田のライバルは?

 この原稿を書いている8月25日現在、リーグは3節を消化。まだシーズン序盤だが、各選手のチーム内における立ち位置・序列が明らかになりつつある。

 このうち日本代表の森保一監督が最も注目するのが、ボランチの守田英正(27)だろう。運動量が豊富で、確かな技術を備え、優れた判断力を発揮して攻守両面でチームに貢献する。

 昨年1月に川崎フロンターレからポルトガル1部サンタ・クララへ移籍し、絶対的レギュラーとして活躍。昨年10月の2022年ワールドカップ・アジア最終予選オーストラリア戦(ホーム)に先発出場して以降、日本代表でも主力選手の1人となっている。

 今年7月、移籍金380万ユーロ(約5億2000万円)で強豪スポルティングへ迎え入れられた。

 C・ロナウドの出身クラブであるスポルティングのフォーメーションは、3−4−3。高い位置からプレスを仕掛け、攻守両面でコンパクトにプレーする。ボランチは二枚で、守田はこの一角を争う。

 昨季はポルトガル代表のジョアン・パリーニャ(27)とマテウス・ヌネス(24)がレギュラーで、ウルグアイ代表のマヌエル・ウガルテ(21)が控えだった。

 しかし、今季開幕前にパリーニャがフルアム(イングランド)へ移籍。屈強で高い守備力を誇り、スピード豊かなドリブルと精度の高いパスで攻撃の起点となるヌネスが絶対的なレギュラーで、守田とウガルテが残る1つのポジションを争う構図となった。

 8月7日のブラガとの開幕戦では、ヌネスと守田が先発。守田は中盤で攻守に奮闘し、後半15分までプレーした(試合は3−3の引き分け)。13日の第2節リオ・アベ戦ではヌネスとウガルテが先発。守田は後半20分からウガルテに代わってピッチに立ったが、守備面でミスが目立ち、レギュラー争いに暗雲が立ち込めたかと思われた。

現時点の守田に対する現地メディアの評価は?

 だがその後、ヌネスが移籍金4500万ユーロ(約61億円)のオファーを受けてウォルバーハンプトン(イングランド)へ電撃移籍。20日に行なわれたポルトとのダービーマッチ(アウェー)では、守田とウガルテが先発した。昨季のリーグ1位と2位の対戦である(優勝したのはポルト)。

ポルトのペペとマッチアップする守田 ©Getty Images

 前半11分、守田はゴール前でこぼれ球を拾い、ドリブルで1人かわすと左足で強烈なシュート。これは、惜しくもニアサイドのポストに嫌われた。その後は、中盤の攻防でポルトが優位に立つと前半42分にポルトが先制し、後半25分、1点ビハインドの状況で守田は攻撃的MFと交代した。一方、ウガルテは後半アディショナルタイムまでプレーした(試合は0−3で完敗)。現時点で、「守備力はウガルテが守田を上回り、守田の攻撃力は退団したヌネスに及ばない」というのが地元メディアの評価だ。

 スポルティングは第3節を終えて1勝1分1敗で、18チーム中12位。地元紙は「退団したヌネスの穴を埋めるべく、緊急補強を目論んでいる」と報じている。今季、守田がボランチのポジションをつかむには攻守両面でさらなる成長が必要となる。

 流通経済大から川崎Fでの3年を経て25歳でポルトガルへ渡り、日本の大卒選手としてはほぼ理想的なキャリアを積んできた。その守田ですら、欧州強豪クラブでレギュラーを張るのは容易ではない。

 守田がスポルティングで常時出場できるかどうか、そしてさらなるステップアップを果たせるかどうかは、今後の日本代表にとっても重要だ。奮闘を期待したい。

今季レギュラー定着しつつあるのは藤本、邦本、田川

 リーグ戦で第3節まで先発出場を続けているのが、MF藤本寛也(23、ジル・ビセンテ)、MF邦本宜裕(24、カーザ・ピア)、FW田川亨介(23、サンタ・クララ)の3人だ。

 藤本は、左足から精度の高いパスを繰り出し、自らも鋭い動き出しでスペースへ飛び出してゴールを決める攻撃的MFだ。

 2020年8月に東京ヴェルディからジル・ビセンテへ期限付き移籍し、最初のシーズンに31試合で1得点3アシスト、昨季は35試合で3得点3アシストと着実に成長。今年7月、完全移籍した。

藤本寛也(21-22シーズン)©Getty Images

 藤本は背番号10を付け、4−3−3の2列目で攻撃の組み立てを担っている。リーグ戦3試合、欧州カンファレンスリーグの予選3試合のすべてに先発しているが、得点、アシストはまだない。今季、さらに成長すれば、日本代表入りが見えてくるのではないか。

J、韓国で紆余曲折あった邦本がついに覚醒か

 邦本は、洗練されたテクニックと視野の広さが魅力のアタッカーだ。浦和レッズのアカデミー出身で、アビスパ福岡を経て韓国へ渡り、2020年、全北へ。レギュラーとして活躍していたが、今年7月、飲酒運転で逮捕されて契約を解除された。そして、2部から昇格したばかりのカーザ・ピアに入団した。

 第3節までの全試合に先発し、第3節で自陣深い位置からピンポイントのロングパスを通して得点をアシスト。83年ぶりとなる1部での勝利に貢献した。

 ラテン的な匂いを放つ選手で、ポルトガルリーグと相性が良さそう。生活とプレースタイルに適応できれば、大ブレイクするかもしれない。

田川、新井、小川も出場機会を得ている

 田川は、屈強でパワフルな左利きのストライカーだ。今年1月、FC東京からサンタ・クララへ期限付き移籍。当初は後半途中からの出場が多かったが、シーズン終盤に3試合連続得点を記録してポジションをつかんだ(昨季は12試合に出場して5得点)。今季は、ここまでの3試合すべてに先発して1アシスト。彼もブレイクが期待できる。

田川亨介(21-22シーズン) ©Getty Images

 新井瑞希(25)は、右利きだが左サイドでプレーすることを好む小柄なドリブラーだ。今年7月末、東京ヴェルディからジル・ビセンテへ期限付き移籍。リーグ戦3試合と欧州カンファレンスリーグ3試合のすべてに出場しているが(うち先発は2試合)、まだ得点、アシストはない。

 左SB小川諒也(25)は、屈強で、堅実に守り、精度の高いクロスを供給する。FC東京からビトリアへ期限付き移籍中。欧州カンファレンスリーグの予選4試合すべてに先発して1アシスト。ただし、リーグ戦ではまだ出番がない。

 小柄だがドリブルが巧みで得点力もあるMF渡井理己(23)は、今年7月、徳島ヴォルティスからボアビスタへ期限付き移籍した。リーグ戦第3節の終盤に初出場。ポジション獲得に挑む。

 GK中村航輔(27)は元日本代表で、昨年1月に柏レイソルからポルティモネンセへ完全移籍した。しかし、昨季は6試合に出場しただけ。今季も、リーグ戦3試合でベンチ入りはしているが、まだピッチに立っていない。

 昨年8月にガンバ大阪からポルティモネンセへ完全移籍したFW川﨑修平(21)は、昨季後半、故障をして治療とリハビリに明け暮れた。今季は、ここまでU−23リーグで3試合に出場して1アシスト。まずはトップチーム昇格を目指す。

中島翔哉はポルトで調整中だが、今後どうなる?

 少々心配なのが、元日本代表FW中島翔哉(28)だ。

 小柄ながら巧みなドリブル、広い視野を生かした多彩なパス、思い切ったシュートが魅力のアタッカー。東京ヴェルディのアカデミー育ちで、FC東京、カターレ富山を経て2017年、ポルティモネンセへ。ここでブレイクし、アル・ドゥハイル(カタール)を経て2019年、強豪ポルトに迎え入れられた。

 しかし、レギュラー争いで後れを取り、2020年3月に新型コロナウイルス感染が拡大してリーグ中断後、チーム練習が再開されても家庭の事情を理由に参加を拒んだことをきっけに監督の戦力構想から外れた。

 昨年1月にアル・アイン(UAE)へ期限付き移籍したが、練習中に腓骨骨折、靱帯断裂の大怪我をしてシーズンを棒に振る。昨季は古巣ポルティモネンセへ貸し出され、25試合に出場して2得点5アシストと復調の兆しを見せた。

昨季はポルティモネンセで奮闘した中島翔哉 ©Getty Images

 シーズン終了後、アル・アイン時代に骨折した腓骨に埋め込まれていたプレートを除去。現在はポルトのBチームで調整を続けている。

 今後、他クラブへ移籍するのか、あるいはポルトのトップチーム昇格を目指すのか。古巣のポルティモネンセを含めて中島を欲しがっているクラブは複数あるが、なかなか条件面での折り合いがつかないようだ。

 中島が以前のように笑顔で躍動する姿を待ち望むファンは少なくないはずだ。

文=沢田啓明

photograph by MB Media/AFLO