筆者は毎年50試合くらいNPBの公式戦を見ているが、最近、なんとなく「物足りない」気がしている。何なのだろう? と思っていたのだが――ようやく気が付いた。最近のNPB各球団の打線から「外国人打者」が消えつつあるのだ。

 9月4日の試合でも、日本ハム、楽天、オリックス、ロッテのスタメンには外国人選手はいなかった。また外国人のスタメンがいるチームでも「中軸」を打つ例は減っている。

 プロ野球と言えばスタメンの中央付近に「カタカナ名前」が並ぶものだという先入観があった。日本人よりもはるかに大きく、腕っぷしも強い外国人打者が、中軸でぶんぶん振り回しているのが「プロ野球」というイメージがあったから、昨今の打線を見ると少々もの悲しさを覚える。

2013年と2022年、規定打席到達した外国人の成績比較

 成績を見ても最近、外国人打者は活躍していない。9年前、2013年のNPBでは外国人打者が大活躍していた。当時と今年の規定打席以上の外国人打者を比べてみよう。

★セ・リーグ★
〈2013年〉

ブランコ(De)134試483打161安41本136点 率.333(1位)
バレンティン(ヤ)130試439打145安60本131点 率.330(2位)
マートン(神)143試566打178安19本85点 率.314(4位)
ロペス(巨)121試429打130安18本55点 率.303(5位)
クラーク(中)132試407打97安25本70点 率.238(21位)

2013年、首位打者と打点王を獲得したブランコ ©JIJI PRESS

〈2022年〉
ビシエド(中)108試401打114安12本50点 率.284(9位)
マクブルーム(広)112試401打109安15本61点 率.272(14位)
オスナ(ヤ)116試424打115安16本62点 率.271(15位)
ポランコ(巨)122試387打93安19本49点 率.240(27位)

 2013年は、ヤクルトのウラディミール・バレンティンがNPB記録の60本塁打、DeNAのトニ・ブランコが首位打者・打点の二冠王、阪神のマット・マートンと巨人のホセ・ロペスも規定打席に達し、打率3割に乗せた。

安定した成績を残すビシエドだが、今季の本塁打数はここまで12にとどまっている ©Hideki Sugiyama

 一方で2022年は、本塁打は巨人グレゴリー・ポランコの19本が最多。打点はヤクルトのホセ・オスナの62打点、3割打者はいない。打率.341、51本、125点のヤクルト村上宗隆の足元にも及ばない。

NPBで打撃タイトルを獲った最後の外国人選手は誰?

★パ・リーグ★
〈2013年〉

ヘルマン(西)144試518打165安4本55点 率.319(3位)
李大浩(オ)141試521打158安24本91点 率.303(9位)
マギー(楽)144試513打150安28本93点 率.292(12位)
バルディリス(オ)142試512打148安17本91点 率.289(13位)
アブレイユ(日)138試504打143安31本95点 率.284(17位)
ジョーンズ(楽)143試478打116安26本94点 率.243(31位)

MLBで圧倒的な成績を残し、楽天日本一にも貢献したジョーンズ ©Naoya Sanuki

〈2022年〉
オグレディ(西)110試370打82安15本46点 率.222(19位)
レアード(ロ)103試351打68安15本48点 率.194(23位)

 2013年は楽天が初優勝したシーズン。打線ではケーシー・マギー、アンドリュー・ジョーンズとMLBでも活躍した大物外国人が、勝負強い打撃で勝利に貢献した。日本ハムのミチェル・アブレイユは本塁打王に輝き、西武のエステバン・ヘルマンは打率3位に加え、リーグ2位の40盗塁。オリックスの李大浩はKBO(韓国プロ野球)の三冠王を引っ提げ日本でも活躍した。

 しかし2022年、規定打席に到達している外国人選手は2人だけ。本塁打はともに15本、打率も低い。

 NPBで外国人選手が打撃タイトルを取ったのは、セが2019年、DeNAのネフタリ・ソトの本塁打王(43本)、打点王(108打点)が最後。パは2017年、ソフトバンクのアルフレド・デスパイネの本塁打王(35本)、打点王(103打点)が最後である。なお首位打者は2018年の中日ビシエド(.348)である。

直近での「外国人タイトルホルダー」はDeNAのソトだ ©Kiichi Matsumoto

なぜ、外国人打者が活躍しなくなったのか

 なぜ、外国人打者が活躍しなくなったのか?

 実績がある選手が来日しなくなったわけではない。巨人のポランコはパイレーツの主軸を打ち、規定打席に3回達している。2017年WBCでは外野手のベストナインに輝いている。ソフトバンクのフレディ・ガルビスは2017、2018年とMLBで全試合出場し、フィリーズ、パドレス、ブルージェイズなどで活躍した。

ガルビスはメジャーで実績を残し、ソフトバンクでも期待されたのだが…… ©Getty Images

 筆者は春先のオープン戦でガルビスのアグレッシブな三塁守備を見て、メジャーの一線級はすごいと思った。また和歌山で開催されたファームの試合では満塁本塁打も見たが、一軍では打率1割台にあえいでいる。

 外国人選手が活躍しないのは、NPBとMLBの実力差がなくなってきたから、という見方もあるが、そうではないだろう。2020年にMLBに挑戦した秋山翔吾、筒香嘉智という2人の強打者は、MLBでは厳しい成績である。長打がほとんどなくなり、打率も急落しているからだ。

 おそらくは、ここ数年の間にNPBとMLBの野球、とりわけ打撃が「別物」になったのではないか。

 MLBでは「フライボール革命」が猛威を振るい、中軸ではなくてもほとんどの打者がホームランを狙い「バレルゾーン」でバットを振り回すようになった。犠牲バントは10年前の2012年には4860試合で1479個あった。しかし今年は4008試合で310と激減している。野球の質が大きく変わって「中距離打者」「巧打者」などの概念が消えつつある印象だ。

 近年、NPBにやってくる打者も「フライボール革命」の影響を強く受け、NPBの細かな野球に対応するのが難しくなっているのだろう。さらにコロナ禍で日米の交流が難しくなったことも背景にあるかもしれない。

対照的に救援で活躍する外国人投手が増えている

 対照的に投手、特に救援で活躍する外国人選手が増えている。

 ヤクルトのマクガフがセ1位の34セーブ、R・マルティネスがこれに続く31セーブ、DeNAのエスコバーが2位タイの32ホールド、パではソフトバンクのモイネロが5位の19セーブ、ロッテのゲレーロが4位タイの24ホールドを挙げている。

 MLBでは2020年から延長戦でのタイブレークを導入しているが、それに伴って救援投手数を絞り込む傾向にあり、優秀な救援がNPBに流れてきているのではないか。

 ただ筆者は、昨年、成績はぱっとしないながらもチームのまとめ役としてオリックスの優勝に貢献したアダム・ジョーンズのような「本物のメジャーリーガー」の姿を今後も見たいと思う。ギャップが広がっても、外国人打者の活躍にはこれからも期待したい。

 それにつけても……こうしたギャップを易々と乗り越える大谷翔平とは何者なのだ、とも思ってしまうのだが。

大谷が今季はなった29号 ©Nanae Suzuki

この週はビシエドが打率.333、1本塁打3打点

<NPB第23週の成績 2022年8月29日〜9月4日>

〇セ・リーグ
巨 人5試2勝1敗2分 率.667
阪 神6試3勝2敗1分 率.600
DeNA6試3勝3敗0分 率.500
ヤクルト5試2勝2敗1分 率.500
広 島6試3勝3敗0分 率.500
中 日6試2勝4敗0分 率.300

大勝ちしたチームも大負けしたチームもなかった。トップを走るヤクルトには有利な情勢だと言えよう。

・個人打撃成績10傑 ※RCは安打、本塁打、盗塁、三振、四死球など打撃の総合指標
近本光司(神)25打12安2本3点2盗 率.480 RC8.65
村上宗隆(ヤ)19打7安2本5点 率.368 RC6.72
桑原将志(De)22打8安1本3点1盗 率.364 RC5.68
大山悠輔(神)22打9安1本5点 率.409 RC4.73
ビシエド(中)24打8安1本3点 率.333 RC4.53
山田哲人(ヤ)22打6安2本4点 率.273 RC4.31
吉川尚輝(巨)20打7安1点 率.350 RC4.10
大島洋平(中)23打7安2点1盗 率.304 RC3.91
菊池涼介(広)14打6安1本5点 率.429 RC3.76
宮崎敏郎(De)19打6安2点 率.316 RC3.53

50号本塁打に到達した村上は、この週も打率.368と三冠王へ邁進している ©Hideki Sugiyama

 ヤクルトの村上と最多安打争いをしている阪神の近本がこの週12安打を放った。両者は141安打で並んでいる。首位打者村上と2位中日・大島とは1分9厘差まで開いた。本塁打は阪神・近本、ヤクルト村上、山田の2本塁打。打点はヤクルト村上、阪神・大山、広島・菊池が5打点。盗塁は近本、中日・岡林勇希、阪神・佐藤輝明の2が最多。

・個人投手成績10傑 ※PRはリーグ防御率に基づく総合指標
今永昇太(De)1登1勝8回 責0率0.00PR2.56
サイスニード(ヤ)1登1勝7回 責0率0.00PR2.24
青柳晃洋(神)1登7回 責0率0.00PR2.24
西 勇輝(神)1登7回 責0率0.00PR2.24
遠藤淳志(広)1登1勝7回 責0率0.00PR2.24
大瀬良大地(広)1登1勝7回 責0率0.00PR2.24
才木浩人(神)1登1勝6回 責0率0.00PR1.92
赤星優志(巨)1登1勝6回 責0率0.00PR1.92
玉村昇悟(広)1登1勝6回 責0率0.00PR1.92
森下暢仁(広)1登6回 責0率0.00PR1.92
ロメロ(De)1登1勝6回 責0率0.00PR1.92

 DeNAの今永は8月30日の中日戦で8回零封の好投。このほかにも7回零封が5人、6回零封が5人と先発投手が活躍した週だった。救援では阪神ケラーが2セーブ、巨人・高梨雄平が4ホールドを挙げている。

この1週間はデスパイネの打棒が好調だった

〇パ・リーグ
オリックス6試5勝1敗0分 率.833
日本ハム5試3勝2敗0分 率.600
ロッテ6試3勝3敗0分 率.500
西 武5試2勝3敗0分 率.400
ソフトバンク6試2勝4敗0分 率.333
楽 天6試2勝4敗0分 率.333

 オリックスが5勝1敗で首位とゲーム差なしまで詰める。西武、ソフトバンクは負け越した。

・個人打撃成績10傑
頓宮裕真(オ)22打9安4本10点 率.409 RC8.67
浅村栄斗(楽)21打6安3本5点 率.286 RC6.51
吉田正尚(オ)20打9安4点 率.450 RC6.26
森友哉(西)18打6安2本5点 率.333 RC4.85
荻野貴司(ロ)22打7安2点1盗 率.318 RC4.73
中村奨吾(ロ)25打9安1本3点 率.360 RC4.72
今宮健太(SB)24打8安2本2点2盗 率.333 RC4.42
デスパイネ(SB)23打9安1本5点 率.391 RC4.39
島内宏明(楽)24打8安1本5点 率.333 RC4.27
中川圭太(オ)26打7安1盗 率.269 RC3.79

デスパイネはこの週の打率.391と好調だった ©Hideki Sugiyama

 オリックスの頓宮はクリーンアップに座って4本塁打10点とリーグ1位の活躍。4番の吉田正尚とともにチーム躍進の原動力に。盗塁はソフトバンク今宮、野村勇、日ハム石井一成、オリックス安達了一、楽天・西川遥輝が2盗塁をマークしている。

・個人投手成績10傑
加藤貴之(日)1登1勝8回 責0.00率0PR2.79
美馬学(ロ)1登1勝7回 責0率0.00PR2.44
佐々木朗希(ロ)1登1敗9回 責1率1.00PR2.14
石川歩(ロ)1登1勝6回 責0率0.00PR2.09
エンス(西)1登1勝6回 責0率0.00PR2.09
東浜巨(SB)1登1勝5.9回 責0率0.00PR1.98
山崎福也(オ)1登1勝5回 責0率0.00PR1.75
根本悠楓(日)1登5回 責0率0.00PR1.75
高橋光成(西)1登1勝7.8回 責1率1.23PR1.56
メネズ(日)3登3H3.1回 責0率0.00PR1.16

 日ハムの加藤は9月4日の楽天戦で8回零封で今季6勝目。防御率2.05はリーグ2位の安定感だ。ロッテの佐々木朗希は2日のオリックス戦で97球完投するも自責点1で負け投手となった。

 救援ではオリックス阿部翔太、ロッテのオスナ、日ハム石川直也、西武・増田達至が2セーブ、日ハムのメネズが3ホールドを挙げている。

<達成記録>
打者
・丸佳浩(巨)300二塁打
9月2日阪神戦 史上75人目
・森友哉(西)100本塁打
8月30日 日本ハム戦 史上306人目

文=広尾晃

photograph by Nanae Suzuki/Hideki Sugiyama