プロ野球界を代表する大エース・東尾修(72歳)を父にもつ東尾理子(46歳)。自身も女子ゴルフ隆盛期の2000年代にプロゴルファーとして活躍したが、その裏には知られざる2世としての葛藤があった。2009年に俳優・石田純一(68歳)と結婚し、現在は3児の母として子育てに奮闘中。華麗なる一家に生まれた彼女にその半生を振り返ってもらった(全3回の3回目/#1、#2を読む)。

 2012年11月、石田純一・理子夫妻に待望の第一子となる理汰郎(りたろう)が誕生。東尾は約2年半の妊活を経て、36歳での初出産となった。

「はじめは妊娠しやすい時期を予測して性交渉を行う『タイミング法』を採用していましたが、半年経ってうまくいかなったため、『人工授精』を行うようになりました。また半年経っても妊娠しなかったため今度は『体外受精』に切り替え、それから約1年で理汰郎を授かることができました」

「人工授精」と「体外受精」はしばしば混同されがちだが、実はまったく別のアプローチだ。

 前者は、事前に採取した精子を妊娠しやすい期間にチューブで子宮内へ注入して妊娠を試みる方法。後者は、まず卵子を採取して、成熟させるために培養する。その後、精子をその培養液に加えて受精するのを待つ方法だ。受精卵となったら、また数日間培養し、胚盤胞と呼ばれる着床前の状態になったところで、子宮へと戻す胚移植を行うのである。

42歳で3児の母に「きょうだいってこんな感じなんだ」

 理汰郎を出産したあとも「2人目が欲しかった」という東尾は、第1子と同じく体外受精により第2子を妊娠。40歳で産んだ長女はあおばと名付けられた。2人の子どもを授かるまでは想定内だったが、夫婦が驚いたのは第2子のときの受精卵がまだ残っていて、第3子を妊娠するチャンスに恵まれたこと。42歳で次女のつむぎを出産し、3児のママとなった。

©︎Hirofumi Kamaya

「2、3人目は完全無痛分娩でした。産科麻酔のエキスパートであるお医者さんに担当していただき、まったくといってよいほど痛みを感じないなかで、自分で動画を撮ったりへその緒を切ったり、最高に幸せな出産のひとときを過ごせましたね。

 3きょうだいはいま、長男9歳、長女6歳、次女4歳。家庭はとても賑やかで、子どもは何人いてもかわいいです。長男は活発で、長女は女子力が高くて、私とはまったく違うタイプ(笑)。次女はおてんばで私に似てるかな。それぞれに生まれ持った個性があって、一人っ子の私からすると『きょうだいってこんな感じなんだ〜』と、不思議な感覚でもあり……。毎日とにかくバタバタしていますが、とても楽しいです」

 ゴルフ解説者やタレントとしての仕事もこなしながら、わんぱく盛りの3児を育てるのはもちろん簡単ではない。肉体的にも精神的にも無理をきたさないように、心掛けているのは、「自分だけで育てようとしない」ことだ。

「いとこに見てもらったり、友人の家に泊めてもらったり、本当に色々な人の助けを借りて子育てしています。私自身、小さいころは父が不在がちだったこともあり、様々な方に見ていただきましたが、それはとても大きな財産です。

 もちろん夫も子育てに参加していますよ。夫は自分から進んでやるタイプではありませんが、こちらが言ったことは大体すべてやってくれます。理汰郎にはたくさんの経験を積ませてあげたいと思って、田植えや稲刈り、動物との触れ合いなどのイベントに、夫にも一緒に参加してもらいました。これまでに嫌がってどうしてもやってくれなかったのは、海での地引網体験だけ。魚に触るのが苦手らしいです(笑)」

長男・理汰郎くんの出産を嬉しそうに報告する石田純一 ©︎Sankei Shimbun

少年野球チームでプレーする孫にメロメロ?

 小学4年生となった理汰郎は、地元の少年野球チームに加入し、週末は練習や試合に励んでいる。クルマでの送迎が必要になることも多く、必然的に家族は彼中心のシフトになっている。

「じいじ(修)にも“足”として頑張ってもらっています(笑)。野球の技術的にも、フォームに変なクセがつかないよう、投げ方や打ち方を教えていることがありますね。父は自宅に野球を持ち込まない人だったので、孫とはいえ家族に指導している姿を見るのは新鮮です。実は夫も昔野球をやっていて、上手かった……らしいです。たまに『じいじのセオリーは古い』と言ってますよ。ほぼ同年代なんですけど(笑)。

 このまま野球を続けていけば“東尾修の孫”と呼ばれるときが来るでしょうね。経験上それは良いことも悪いこともありますけど、特別な環境にいるということを自分なりに理解してくれると思っています」

東尾のインスタグラムには、長男・理汰郎君と父・修との仲睦まじい姿がアップされている。2019年には3人で始球式に登板した

 現在は野球への熱量が高い理汰郎だが、実は幼少期からゴルフに親しんでおり、ジュニアの大会にもコンスタントに出場している。青葉とつむぎの2人もたまに練習場へ連れて行っており、ある程度は打てるようになったそうだ。

「娘2人はまだコースには出てないんです。ゴルフってラウンドすると1日かかっちゃうので、まだそこまで時間の余裕もなくて……。そのうち本腰入れて教えてあげたいという気持ちもありますね。じいじも夫もゴルフは大好きなので、まずは理汰郎と一緒にラウンドできたらいいかな〜。2人ともいい年なので、コロナには気をつけなきゃいけないですけどね」

 最後に、東尾が自身の経験をベースとした妊活サポートの活動に力を入れていることにも触れておきたい。妊活中であることを2011年6月から公表していた理子は、これを「TGP(Trying to Get Pregnant)」と命名。ネガティブに捉えられがちな「不妊治療」のイメージを変えるために努力を続けてきた。妊活は、身体と心、そして経済的にも負担がかかるもの。妊活に取り組む女性たちと積極的に交流。自身の体験を踏まえつつ、心理学的見地に基づいたアドバイスをするなどして、主に心のケアを行っている。

「10年前はまだ、妊活していることをオープンにしづらい雰囲気もありましたが、時代は変わりつつあります。今年の4月から不妊治療が保険の適用対象となり、これまでハードルが高かった体外受精も、かなり身近になりました。治療するとなれば身体と心にかかる負担は大きいので、私はそういった行政の手が届きにくい部分のサポートを少しでもお手伝いできればと思っています」

 大前提となるのが、Sexual and Reproductive Health and Rights(SRHR)という概念。すなわち“産む権利”と“産まない権利”があり、産むか産まないかは自分で決められるということだ。産みたいと思ったときのために、授かりやすい環境を整えておくことが大切。だが、残念ながらそのための知識を得るには、現在の学校における性教育では不十分だという。

「そしてもうひとつ、産まないで授かるという選択肢もあるんです。身体的理由で産むのは難しくても、子どもが欲しいと思ったら、養子縁組や里親といった制度を活用できる。そういった制度についての認知も、まだまだ足りていないことを痛感しています」

©︎Hirofumi Kamaya

 “東尾修の娘”として注目を集めた少女ゴルファーは、かつてのプレイボーイを飼いならす“石田純一の妻”となり、妊活の苦労をともに夫婦で乗り越えて3児の母となった。年齢を重ねるほどにバイタリティがあふれる石田・東尾ファミリーから、これからも目が離せない。

Hair&Make / Mitsugu Takahashi

文=郡司倫

photograph by Hirofumi Kamaya