カタールW杯前最後の活動として、日本代表が9月23日にアメリカと、27日にエクアドルと対戦する。W杯直前にカナダとのテストマッチが組まれているが、本番を想定したテストは今回の2試合が最後だ。

 森保一監督が招集した30人のメンバーを、元日本代表MFの中村憲剛氏に分析してもらう。大迫勇也が不在のなかで、前線の顔触れはどうなるのか。システムはどうするべきなのか。さらには自身の経験に照らし合わせて、W杯を2カ月後に控えた選手心理にも触れてもらった。(全2回の1回目/後編へ)

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 今回のメンバーをひと言で表わすと、「本番仕様」でしょうか。

 W杯の登録メンバーと同じ26人での活動も考えられましたが、ケガ人が出たりコロナの影響を受けたりする恐れがあるので、30人という少し大きなグループでコンセプトの浸透をはかり、W杯に臨む集団の雰囲気(当事者意識)を作ることが狙いでしょう。

 アメリカ戦とエクアドル戦は、W杯に出場するチームとの対戦として重要な意味を持ちます。テストマッチでありながらも、本番に近い空気感が漂うのでは。

いつも以上に「納得感」のある選考では

 同時に、試合だけでなくトレーニングも大きな意味を持ちます。30人全員を試合で使うことができなくても、W杯で招集する可能性のある選手にチームの雰囲気や戦い方を体感してもらうという意図があると考えます。それが、当事者意識の醸成につながります。

 森保監督は7月のE-1選手権後に、9月の欧州遠征に連れていきたい選手がいると語りました。今回の招集メンバーでそれに該当するのが、町野修斗と相馬勇紀ということになります。大迫勇也と浅野拓磨が招集されていたら、果たして彼らは選ばれたのだろうかとの思いはよぎりますが、FWとしてのパフォーマンスが評価されたからこその招集であることは間違いありません。

E-1選手権で3ゴール2アシストと躍動し、得点王と大会MVPに輝いた相馬勇紀 ©Koji Watanabe/Getty Images

 E-1選手権では、横浜F・マリノスの岩田智輝と藤田譲瑠チマも存在感を見せました。個人的にはふたりセットで呼んでも面白いと思いましたが、藤田はU-21日本代表の欧州遠征に招集されています。そちらも貴重な経験です。

 彼らと同じセントラルMFでは、旗手怜央が復帰してきました。

 チャンピオンズリーグのレアル・マドリー戦で、世界のトップ・オブ・トップ相手にそん色なくプレーしたのは、かなりのインパクトがありました。同じことは守田英正や鎌田大地にも言えます。久保建英や堂安律も新天地でプレータイムを確保して、ヨーロッパリーグでも印象を残している。選手の顔触れはこれまでと大きく変わっていませんが、一人ひとりのパフォーマンスを見ると、いつも以上に納得感を得られる方が多いのではないかと思います。

セルティックの旗手怜央はチャンピオンズリーグのレアル・マドリー戦に先発。試合には敗れたものの、そのプレーは高く評価された ©Getty Images

日本代表の大テーマ「大迫勇也は戻ってくるのか?」

 さて、今回の遠征の「核心」に迫りたいと思います。

 大迫勇也の不在についてです。

 2月のサウジアラビア戦を最後に日本代表から離れている大迫ですが、森保監督にとっては彼がどういう選手なのかはもう十分に分かっており、周囲とのコンビネーションも構築されている。

 となると、問題はコンディションです。カタールW杯にコンディションを合わせることができれば、これまでの実績を含めて選ばれるのではないかというのが僕の意見です。

9月18日のガンバ大阪戦で、途中出場から2ゴールをあげた大迫勇也。復調途上ではあるものの、さすがの存在感を見せた ©Masashi Hara/Getty Images

 そう考える理由は、6月の4試合のFW陣のパフォーマンスにあります。大迫が不在のなかで、CFとして出場した選手たちは決め手を欠きました。ゴールという分かりやすい結果、そして機能性においても、エースに名乗りをあげるようなインパクトを残した選手は正直現われませんでした。

 6月の4試合は選手を入れ替えながら戦っていたので、FWが得点を奪えなかったのはある程度想定内のところはありました。それでも、誰がインパクトを残すのかを森保監督も期待していたはずで、決め手に欠けた印象です。だからこそ、このタイミングでの町野の選出につながったのではないかとも思います。

 いずれにしても、森保監督は「大迫が戻ってきた場合」と「彼を欠いて戦う場合」の両にらみで、カタールW杯への準備を進めているのでしょう。今回も大迫不在のシミュレーションになります。

 これまでどおりに4-3-3で戦うとしても、古橋亨梧、上田綺世、前田大然、町野修斗らは、大迫とタイプが異なります。彼らを生かし、周囲も生きる戦い方を、探し当てなければなりません。

南野、三笘…クラブで難しい時間を過ごす選手たち

 時間の無さを解消するために、所属クラブでの連携を生かすのは得策です。たとえば、セルティックでプレーする古橋、前田、旗手を同時に起用するのは、オプションとして考えられるでしょう。

 大迫はチーム結成当初から攻撃の軸となってきた選手です。ケガで招集を見送られた浅野拓磨も、コンスタントに選ばれてきました。

 最終ラインでは、板倉滉もケガで参加できません。所属クラブで好パフォーマンスを見せてきただけに、W杯へ影を落とすといった趣旨の報道が多く見られます。

 僕自身はもう少し楽観的と言うか、ケガで選手を欠くネガティブさよりも、代わりにどの選手がそのポジションで頭角を現わすのか。そういった期待感を、いつも抱いています。

 そういう意味では、海外組を含めた日本代表に初めて参加する町野がうまくハマれば、そのまま一気にW杯まで駆け抜けるかもしれません。森保監督もそんな思いを抱いているのでは。

町野修斗はE-1選手権で相馬勇紀と並ぶ3ゴールをあげ、大会得点王となった ©Koji Watanabe/Getty Images

 町野も相馬もアタッカーなのでプレータイムが与えられる可能性は高い。そこで結果を残すことができれば、W杯のメンバーに滑り込めるかもしれません。

 招集されている選手のなかにも、所属クラブで難しい時間を過ごしている選手がいます。

 南野拓実はそのひとりでしょう。18日のリーグ戦でモナコ移籍後初ゴールをマークしたことで、調子が上向いていくといいのですが、チーム内での立場を改善していくには継続的な結果が必要です。

 南野と同じ左ウイングを定位置とする三笘薫は、ブライトンで信頼を得ているものの出場時間が思ったよりも伸びていません。監督交代がマイナスに作用する可能性も否定できない。森保監督はそういうことも踏まえて、相馬を招集したのかもしれません。

<後編へ続く>

文=中村憲剛+戸塚啓

photograph by Takuya Sugiyama/JMPA