カタールW杯に臨む26人のメンバーがいよいよ11月1日に発表される。グループEのドイツ、コスタリカ、スペインという超難敵たちといかに戦うか? サッカーライター・木崎伸也さんと戦術分析で人気のYouTuber・レオザフットボールさんに徹底対談してもらった。1回目の論点は「グループE突破確率は?」「そしてその確率を上げるには?」。(全3回の1回目/#2、#3へ)

論点【1】「グループE突破確率は何%?」

――まず、木崎さんとレオさんに「カタールW杯で日本代表がグループリーグを突破する可能性」について伺えればと思います。過去の大会と比べてもかなり厳しいグループですが、それぞれ率直に突破の確率は何%くらいだと感じていますか?

木崎伸也さん(以下、木崎) 9月のアメリカ戦までは正直5%くらいだと思っていたんですけど、ドイツ遠征を経て35%くらいまでは上がったのではないか、という印象です。あくまでも期待を込めて、ですが。

――ドイツ、スペインと同じ組で35%はかなり高い気もします。なぜ5%から飛躍的に上昇したのでしょうか。

木崎 これまでレオさんがYouTubeなどで論点としてきた部分でもあるのですが、批判されがちだった「チームとしての約束事が少なく、選手に任せる」という森保一監督のスタイルに変化の兆しがあったんですね。ドイツ遠征前に「ヨーロッパでプレーする選手は細かい部分を求めている、それに自分も合わせていかなければ」という旨のコメントをしていたんです。細かく映像で示すようになって、鎌田大地なども「ミーティングが以前とは変わった」と変化を口にしていましたし、そこは好材料じゃないかなと思いました。レオさん、いかがですか?

レオザフットボールさん(以下、レオ) もちろん決して悪い変化ではないと思いますよ。

木崎 もうひとつの理由として、監督だけでなく選手側の変化もあげられます。これまではコロナもあって選手間での対話が不足しがちだったんですが、今回の遠征では頻繁に選手ミーティングをやったみたいで。長友佑都も「若い選手からすごくいい意見が出ている」と語っていましたよね。ここにきて本音でディスカッションができていることは、ポジティブに捉えてもいい。森保監督が選手に求める自主性という意味でも、望んでいた形にちょっと近づいたんじゃないでしょうか。

レオ そうですね。現状、森保監督のチームに対して設定する基準、期待値としては、そのあたりが妥当なんじゃないかという気がします。

「高く見積もっても25%」

――レオさんはグループリーグ突破の確率をどの程度だと見ているのでしょうか。

レオ 普通に考えたら、やっぱりドイツとスペインが有力じゃないですか。正直な話、グループのどのチームに対しても先制されたら負けると思っています。森保ジャパンで、試合中に理にかなった修正ができたことがあまり記憶にないので。

 それでも、ありがたいのは三笘薫がいることです。チームとして修正できなくても、個人の力でチャンスを作ってくれる三笘がいて、右にも伊東純也がいる。手も足も出ないような状況でも、10分に1回くらいは、ボールが来たときに何かが起こる可能性がある。ただ、それも先制された場合はケアされてしまうでしょうけど……。現状だと、高く見積もっても突破の確率は25%くらいが妥当じゃないかと思います。

――試合をご覧になって、ドイツ遠征前よりも改善されたと感じた部分はありましたか?

レオ 内側からの具体的な声を聞くと良くなっているのかもしれませんけど、ピッチで起きている現象としては……。プレスが効いていなかったり、相手に対してズレを作れないまま攻撃したりしていたので、選手任せなんだろうな、と。

木崎 たしかにアメリカ戦の後半は、相手が4バックから3バックに変更して全然プレスがハマらなくなりましたよね。その瞬間にベンチから「相手が3枚のときはこうだ」という修正はできていなかった。これがレオさんからすると、根本的な問題は解決していないんじゃないか、ということになるわけですね。

レオ そうですね。たとえば対戦相手のドイツやスペインの場合は、相手が3バックでも4バックでも、前線からどうハメていくかというのはある程度決まっているんですよ。さらに臨機応変なプレスをするのが得意なミュラーやペドリのような選手もいる。

木崎 いくら選手間の話し合いといっても、日本は相当なトライ&エラーを繰り返さないとその差は埋まっていかないと。

レオ 付け加えるなら、ネーションズリーグでのドイツとスペインは調整しながら仕上げているくらいの感じで、対して日本はアメリカ戦でめちゃくちゃ頑張っていたじゃないですか。強度が高いこと自体は素晴らしいんですけど、裏を返せばW杯本大会でギアが入ってもそんなに変わらないということ。あと、この時期に「選手間での話し合い」というのも、直前になってやり始める毎度のパターンだな、と。4年以上の時間があったのに、中島翔哉と南野拓実と堂安律が“三銃士”と呼ばれていたころからサッカーとして何か上積みがあるかといったら、「ある」とはいえないんじゃないかと思いますよ。

論点【2】「ビルドアップはやらないほうがいい」

――手厳しいですね。

レオ 普通に4-2-3-1で守って、相手の形が変わっても特に対応するということはない。で、自分たちのコンビネーションが出るかどうか。4年かけてしっかり積み上げないで、直前で一夜漬けの勉強を始めたくらいでW杯のグループリーグを突破できるほど、サッカーは甘くないんじゃないですか。

木崎 プロセスとしては毎回そういう感じですよね。積み上げずにここまで来て、4年ごとにリセットして。それが結果としてどうなるか……。

レオ 2018年のドイツや2010年のフランスのように対戦国に内紛やトラブルがあれば別ですが、普通に相手もちゃんとコンディションが整っている状態であれば、三笘や伊東の爆発なしで勝つことは難しいと思います。

――お2人がそれぞれ35%、25%と語ったグループリーグ突破の確率ですが、それを少しでも上げるためにはどんなことをすればいいんでしょうか。

レオ ビルドアップをしないことですね。

――ビルドアップをしない?

レオ ええ。しないというと語弊がありますが、ビルドアップでGKや最終ラインが無理をせず前に飛ばして、こぼれ球を三笘や伊東に渡しつつ、中の久保建英や鎌田とのコンビネーションで崩す。守備時は4-4-2で、個ではなく組織と根性で対応する「最高に上質な高校サッカーのディフェンス」みたいなイメージです。9月のネーションズリーグでスペインがスイスに負けたとき(1−2)、そういう戦い方をされているので。基本はローリスク・ローリターンで、1勝2分を目指して他が勝ち点を落としてくれることを願う感じですね。

木崎 なるほど。僕はやっぱりポゼッションのサッカーが好きなので、ロマンを求めちゃうんですけど(笑)。4-3-3ではアンカーの遠藤航が狙われがちでしたが、ダブルボランチにして守田英正をちょっと落としたことでうまくいきつつある。縦の冨安健洋、守田、鎌田というラインでつなぐのを見てみたい、というのはありますね。アメリカ戦の前半11分に、冨安が鎌田にあてて、鎌田が落としたところを守田がドリブルで運んでチャンスを作った場面があり、そこに可能性を感じているんですけど、レオさん的にはどうですか。

レオ 個々人の技術でビルドアップが成功するのは相手のプレスがハマっていないときで、たとえばアメリカ戦の後半のように、相手が4バックから3バックに可変してきてハメられたときの約束事が日本にはないんですよね。ズレを作るための原則がなく、出る選手によって位置取りが全然違って、パスの角度がなかったりもする。ドイツやスペインはそこを見逃さないと思います。コスタリカが引いて守ってきた場合はつなぐのもアリだと思いますけど。

「GKからなんて絶対にやらないほうがいい」

――木崎さんはどちらかというと「ビルドアップ肯定派」なのでしょうか。

木崎 現実的な話として、冨安が戻ってきたことで、つなぎのトライ自体は絶対に増えると思うんですよ。冨安はアーセナルでもビルドアップスキルを磨いて自信を持っているでしょうから。でも逆に、レオさん的にはドイツやスペインにそこを狙われて、ショートカウンターでの失点のリスクが増えるのでは、と危惧しているわけですね。

レオ そうです。ボールを回すなら、追い詰められない状況でやるべきですね。特にGKから作るビルドアップなんて絶対にやらないほうがいい。

木崎 でも、まだ11月にW杯直前の準備期間が10日くらいはありますから。そこでもうちょっと詰めるはずです。ビルドアップしかり、相手が3バックになったときのプレスの仕方しかり……。やっぱり今回も、まったくつながないということはないと思うんですよね。完全に守備に徹するというのも、頭でわかっていてもなかなかできないでしょうし。

レオ だとしても、GKから無理につなごうとしないのは大事だと思います。ハメられたときに後ろがいないので。冨安、守田、鎌田の中央の連携も、それぞれ技術はあるので3本目くらいまでうまくいったとしても、前半15分にショートカウンターで失点、みたいなことも容易に想像できる。そのあたりのリスクヘッジについてはよく考えて臨んでほしいです。

<#2、#3へ続く>

文=NumberWeb編集部

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