“12球団”の代表者になったつもりで実際にドラフト候補選手たちを全指名して、ひとりで「ドラフト会議」を完走する「ひとりドラフト」。今年も10月20日のドラフト会議前に「ひとりドラフト」で全指名選手を予想した筆者。
ドラフトの結果を受けて、セ・パ全球団の支配下指名された選手たちを検証します。ウェーバー順、第3回は西武・阪神・ホークス編です。【全4回の3回目/#1、#2、#4へ】

「山田陽翔の“5位指名”に驚いた」

【西武 ドラフト指名選手(※支配下)】

1位 蛭間拓哉 22歳 外野手 早稲田大 177cm87kg 左投左打
2位 古川雄大 18歳 外野手 佐伯鶴城高 186cm90kg 右投右打
3位 野田海人 17歳 捕手 九州国際大付 174cm78kg 右投右打
4位 青山美夏人 22歳 投手 亜細亜大 183cm94kg 右投右打
5位 山田陽翔 18歳 投手 近江高 175cm78kg 右投右打
6位 児玉亮涼 24歳 内野手 大阪ガス 166cm65kg 右投右打

【西武 総評】

 西武が、山田陽翔(投手・近江高)を指名したのは「5位」だった。

 あれっ!と思って確かめてみたら、今年の支配下ドラフトで指名された「高校生投手」が12名。その12番目、ラストで指名されたのが山田投手だったから驚いた。

 2年夏から3季連続、絶対的エースとして甲子園のマウンドを支配し、1500球以上を投げて11の勝ち星を挙げた。「甲子園」でいちばん勝った投手が、ドラフトではいちばん最後に指名される。

 ドラフトに対する「高校生投手」の尺度は、身体能力と伸びしろが最優先……それがセオリーだ。甲子園の激戦を勝ち上がるための大奮投の中で、「出しきってしまったのではないか?」……それが、プロ側の見立てだったのだろう。

 しかし高校生でも、山田陽翔の「野球」は、技術的にもメンタリティーも、高校生どころか、大学レベルも超えているとしたら……。山田投手の本質が社会人レベルだとしたら、求められるべき資質は「即戦力」だ。

 ただし、首脳陣とファンには1年待ってもらおう。大奮投で痛めた部分を立て直しながら、1シーズン元気に投げ続けられる確かな体力を養って、2年目の頭あたりから、「さあ、見ておれ!」の熱投で驚かせてくれたら。

ソフトバンクドラ1を超える“ロマン枠”だ

 1位・蛭間拓哉(外野手・早稲田大)はハイレベルな走攻守以外にも、将来のポスト栗山巧、ポスト秋山翔吾……チームリーダーとしての期待も大きいと見る。野球に対する真摯な姿勢と誠実なプレースタイル。そう見込まれるだけの男であろう。

 ソフトバンク1位のイヒネ・イツア遊撃手(愛知・誉高)が「ロマン枠」といわれていると聞くが、夢を語れるということなら、私は2位・古川雄大(外野手・佐伯鶴城高)の方を、むしろ挙げたい。

「ダンプカーのボディに、F-1のエンジンを搭載している」と渡辺正雄監督が彼を表現したと聞くが、私は「ジャンボジェットの機体に、宇宙ロケットの推進力を搭載」ぐらいのスケールとパワーを持ったプレーヤーの資質すら感じている。

 昨年3位の古賀悠斗捕手(中央大)に続いて、今年の3位も捕手・野田海人(九州国際大付高)。これは、1年先輩の捕手への球団からの痛烈なゲキでもあるのか。

 ケガと付き合いながらのショートストップは激務。ディフェンス能力なら、九州産業大当時から誰もが太鼓判を押していた6位・児玉亮涼(内野手・大阪ガス)であれば、名手・源田壮亮遊撃手の負担をだいぶ肩代わりできる。

 そして、4位・青山美夏人(投手・亜細亜大)。振ってくるスラッガー揃いのパ・リーグなら、緩急と「間」で勝負するこの右腕の技術がさらに生きる。試合を作れる男……4位指名でも、私の中では新人王のダークホースに挙がっている。

ある高校球児「木村さん(ホークスドラ3)より絶対スゴいです」

【阪神 ドラフト指名選手(※支配下)】

✕ 浅野翔吾 17歳 外野手 高松商高 171cm86kg 右投右打
1位 森下翔太 22歳 外野手 中央大 182cm90kg 右投右打
2位 門別啓人 18歳 投手 東海大札幌高 183cm86kg 左投左打
3位 井坪陽生 17歳 外野手 関東第一高 177cm86kg 右投右打
4位 茨木秀俊 18歳 投手 帝京長岡高 182cm85kg 右投右打
5位 戸井零士 17歳 内野手 天理高 181cm83kg 右投右打
6位 富田蓮 21歳 投手 三菱自動車岡崎 174cm78kg 左投左打

【阪神 総評】

 指名された6選手の顔ぶれを眺めたら、これ、そっくりそのまま、「新生・新井貴浩カープのドラフト」だといわれても、スッと胸に落ちるぐらいの選手たちだなぁ……と思った。

 上から、5年後、10年後の4番バッター、左右エースにクリーンアップの一角……そこに、6位の左腕・富田蓮(投手・三菱自動車岡崎)が中継ぎで、どう絡んでくるのか。

 岡田彰布“復活”監督、結構長いということなのかもしれない。

 遊撃手のレギュラーを獲得して135試合を守り通した2年目・中野拓夢。「敢闘賞」ものの大奮闘だったが、終わってみれば「失策18」という結果も残った。もともと東北福祉大当時は二塁手として抜群のディフェンス能力を発揮していた選手。プロの遊撃手としては、ちょっと無理してるところもあるかな……と、今年のドラフトでは、「守れるショート」を早いところで指名するかと思ったが、もしかしたら2位で友杉篤輝(天理大)をロッテに先に獲られてしまったのが「やられた!」ということだったのか。

 内野手では、5位で戸井零士(天理高)を指名できたのは驚いた。右打ちの内野手は稀少価値な上に、三塁も遊撃もできて、猛烈ライナー性の長打力は今年の高校トップクラス。

 繰り上げ1位・森下翔太(外野手・中央大)3位・井坪陽生(外野手・関東第一高)が5年後のライト、センターを守っている時、三塁を守って6番を打ち、「4人目のクリーンアップ」として往年の八木裕のような存在になっているのが戸井零士。そんな妄想が立ちのぼる。

 2位指名・門別啓人(投手・東海大札幌高)。広島1位・斉藤優汰(投手・苫小牧中央高)、ロッテ繰り上げ1位・菊地吏玖(投手・札幌大谷高→専修大)……上位2位までに、3人の「道産子剛腕」が指名されたのも、初めてのことだ。

「スライダーはともかく、クロスファイアーなら、間違いなく木村(大成、北海高→昨年ソフトバンク3位指名)さんよりスゴいです」

 公式戦でさんざん痛い目に遭ってきた、ある札幌高校球児の証言である。しなやかで猛烈な腕のスイングからは、リリースの瞬間に「バチッ」という音が聞こえる。指先がボールの縫い目を弾く音なのか、腕の振りが空気を切り裂く音なのか……どちらにしても、その「音」こそ、何よりの将来性に違いない。

ソフトバンク2位に驚いた「勝てるピッチャーの“緊急指名”」

【ソフトバンク ドラフト指名選手(※支配下)】

1位 イヒネ・イツア 18歳 内野手 誉高 184cm82kg 右投左打
2位 大津亮介 23歳 投手 日本製鉄鹿島 177cm70kg 右投左打
3位 甲斐生海 22歳 外野手 東北福祉大 184cm95kg 右投左打
4位 大野稼頭央 18歳 投手 大島高 175cm65kg 左投左打
5位 松本晴 21歳 投手 亜細亜大 181cm84kg 左投左打
6位 吉田賢吾 21歳 捕手 桐蔭横浜大 180cm88kg 右投右打

【ソフトバンク 総評】

 1位・イヒネ・イツア(内野手・誉高)の「1位公表」は読めていた。当「ひとりドラフト」でも、ソフトバンク1位は彼が適役!と抜擢していたほどだ。

 毎年、どん欲に戦力補強を重ねるソフトバンク。現有戦力に個性的で器の大きな選手たちがひしめく中で、ちょっとやそっとの選手をキャンプに連れていったところで、現場がビックリしないだろう。

 長い手足で腰の位置の高いユニフォーム姿、まっすぐな軌道でどこまでも伸びていくずば抜けたスローイング能力に、外野を襲う弾丸ライナー。今は粗けずりでも「夢」を語るなら、イヒネ・イツアしかいない。

 で、2位では、どんな大器の名前を挙げてくるのか、イヒネ・イツアと名古屋の軟式野球クラブで一緒にプレーしていた内藤鵬(内野手・日本航空石川高・オリックス2位指名)か…と身構えていたら、大津亮介(投手・日本製鉄鹿島)ときたから驚いた。

 同じ社会人チームからプロに進んで今季4年目、11勝をあげた大貫晋一投手(横浜DeNA)と、まさにウリ二つ。速球、スライダー、スプリットで両サイドを突いて、シュート、ツーシームでホームベース三塁側を支配する。

 オリックスに2年連続ペナントを奪われて、将来も大事だが、やはり来季もなんとかしないと……。試合を作れて「勝てる投手」の緊急指名となった。

3位・甲斐生海(外野手・東北福祉大)は、今夏のオープン戦あたりから劇的にバッティングが変わった。長距離砲の素質開花、見るからに屈強そうな体躯と豪快なアッパー気味スイングから本塁打連発。次世代・ギータ(柳田悠岐)を想定した指名に違いない。

 実は、ソフトバンクにいちばん指名してほしい選手だった4位・大野稼頭央(投手・大島高)。当「ひとりドラフト」でも話したが、明豊高当時の今宮健太のバイタリティーとエネルギーを、そのまま感じている。その細い体で、どうしてこんなプレーが……日に焼けた精悍なマスクで、新しい人気者になれる。

 2位・大津亮介投手と同じぐらい驚いたのが、5位・松本晴(投手・亜細亜大)だ。昨年、左ヒジのトミー・ジョン手術を受けて、この秋も5イニングとちょっとしか投げていない。但し、鹿児島・樟南高の時が素晴らしかった。文句のつけようのないボディバランス抜群のフォームからアベレージ140キロ前半の速球にスライダー。てっきりドラフト上位指名でプロ入りかと思ったら、進学と聞いて、その時も驚いた。回復すれば……を見越した指名。お手並み拝見だ。

 右打ちの打てる捕手……プロは欲しがり、今年のドラフトでもほんの数人しかいなかったこのタイプなのに、ここまで、指名なしだったのか。これも、小さな驚きだった。

 6位・吉田賢吾(捕手・桐蔭横浜大)は、バットで勝負できる捕手だ。リーグ戦三冠王や1試合3本塁打も貴いが、それ以上に、たくさん振っても、下半身の崩れやスイング軌道のブレを生じない「確かさ」がバットマンの資格であろう。

<DeNA・オリックス・ヤクルト編へ続く>

文=安倍昌彦

photograph by JIJI PRESS