雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」や写真を紹介します。今回はカタールW杯日本代表メンバーにまつわる4つの言葉です(2回シリーズの2回目/過去の当落編も)。

<名言1>
トミヤスに対する印象は非常に良い。
(フレドリック・ユングベリ/NumberWeb 2022年4月30日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/853082

◇解説◇
 カタールW杯に臨む日本代表26人が発表された。そのうち20人が欧州でプレーする選手で、1998年フランスW杯時の「22人オール国内組」と比べると隔世の感がある。その中でも特に世界のトップオブトップで活躍している選手と言えば、冨安健洋だ。

 冨安はシント・トロイデンからセリエAのボローニャを経て、2021年夏にプレミアリーグのアーセナルへと加入した。アビスパ福岡在籍時の10代の頃からディフェンダーとしての総合力を買われていたが、守備の国イタリアでコンスタントな活躍を見せたことにより、市場価値が日本円にして10億円台にアップ。欧州のトップクラブも目をつける存在となり、ロンドンの名門へといざなわれた。

 アーセナルにはかつて稲本潤一や宮市亮ら日本人選手が在籍したものの、レギュラーをつかめなかった。各ポジションに各国代表クラスが居並ぶチーム内競争は当然激しいが、冨安は若き才能を積極起用するミケル・アルテタ監督率いるチームにあって、1年目から重要なピースとなった。

 21-22シーズン序盤戦、アーセナルは開幕3連敗を喫するなど最悪のスタートを切ったものの、加入した冨安を即スタメン起用したノリッジ戦で勝利を挙げると、チームは一気に上り調子に。冨安も右サイドバックの定位置を手に入れ、ソン・フンミンやクリスティアーノ・ロナウドといった歴戦のアタッカーと丁々発止のマッチアップを繰り広げた。

「トミヤスはアーセナルにとって素晴らしい補強」

「トミヤスが最初にボールに絡んだシーンを見たか? スピードに乗った攻撃参加に、C・ロナウドはファウルで止めざるをえず、警告を受けた。出番は短かったが、復帰直後とは思えないほど動きが鋭かった」

 このように語ったユングベリは、アーセナルの“無敵時代”を知る1人だ。Jリーグ清水エスパルスにも所属した経験を持つスウェーデン人MFは、豊富な運動量とガッツでベルカンプ、アンリらが並ぶ豪華攻撃陣を支える名脇役だった。さらに、アーセナルの下部組織の指導者を務めた時期もある。そんなユングベリは昨季終了後、こんな風に冨安を称えていた。

「アーセナルにとって素晴らしい補強になったと思う。(中略)高さがあって、フィジカルプレーにも強い。チームのボール保持時には確かなテクニックで力になっている。加入直後の試合では、冨安は右サイドバックながら(試合中に)中央にポジションを移し、(本来の)4バックから3バックの形になる難しい役割をこなしていた。ミケル(アルテタ監督)の戦術にもフィットしている」

 昨季後半戦はケガの影響もあって出場機会が限られた冨安。今季も激しいチーム内競争によって、アーセナルでの主戦場である右サイドバックではなく左サイドバックで起用されるケースもある。それでも不慣れなポジションもこなしてみせる万能性は、これまでの日本人DF像を塗り替えるほどのスケールを有している。

ブッフバルトが「レジェンド」認定した遠藤航

<名言2>
ロスタイムのあのシーンで、航は真のレジェンドになった。
(ギド・ブッフバルト/NumberWeb 2022年8月4日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/854146

◇解説◇
 森保一監督率いる日本代表において、4年間にわたって常に招集され、レギュラーを務めてきたメンバーは意外と少ない。特に主力として中盤を束ね続け、主戦場とするドイツでも評価を上げてきたのが遠藤航である。

 遠藤はロシアW杯ではメンバー入りしたものの、出場なしに終わった。しかし大舞台をベンチで見続ける悔しさをバネに、森保体制発足後には〈4-2-3-1〉ではダブルボランチの一角、〈4-3-3〉ならアンカーとしてのファーストチョイスを確立した。

 その遠藤がドイツで脚光を浴びたのは、20-21シーズンのこと。前シーズンで所属するシュツットガルトのブンデスリーガ1部昇格に貢献した遠藤は、このシーズンに1対1でのボール奪取成功を示す「デュエル回数」でトップに立ったのだ。そしてキャプテンを任された翌21-22シーズンにも、最多デュエルをマークした。

 フィジカル的にも屈強な各国選手が並ぶ中、178cmながら巧みな体の使い方と強さを兼備したことにより、遠藤は「デュエルマスター」としての評価を確立した。そんな彼に対して称賛の声を送ったのは、1990年W杯優勝メンバーで、現役時代に所属したシュツットガルトでレジェンドとなっているブッフバルトだった。

「航はキャプテンであり、リーダーとして1シーズンを通してずっと、6番(守備的MF)、時には8番(攻撃的MF)として非常に良いプレーを続けてきていた。守備はもちろん、時に前へ出て行ってね」

 ブッフバルトは90年代中盤に選手として、さらに00年代には指揮官として浦和レッズに関わった時期があり、日本サッカーに対する知見も深い。「昨シーズンはいったい何試合したんだろう……ほとんどマシーンみたいに(笑)、常に良いパフォーマンスを見せた」と冗談めかしながら遠藤のメンタルの強さを認めたのは、21-22シーズン最終戦でのプレーだ。

 シュツットガルトは昨季、残留争いに巻き込まれていた。その最終節の後半アディショナルタイム、CKから伊藤洋輝が頭でずらしたボールを遠藤がゴールにねじ込み、降格危機から救ったことによって「聖人」認定されるほどまでになった。

「このクラブには偉大な歴史があり、私の現役時代は常にトップ5、6に入るチームだった。それが近年、降格や残留競争の繰り返しで。この状況から抜け出さなければならない。それをやってのける上で、航はリーダーとして、大きな役割を果たしてくれるはずだ」

 新シーズンのシュツットガルトは12試合終了時点で15位と今季も苦戦を強いられている。その中でも遠藤はリーグ全試合にスタメン出場し、2得点と気を吐いている。安定感あるプレースタイルは、日本代表において確実に必要な存在だ。

コスタリカ守護神は“想像以上の日本サッカー通”

<名言3>
あとはやはりヒロキ・サカイ(酒井宏樹)だね。
(ケイロル・ナバス/NumberWeb 2022年9月24日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/854693

◇解説◇
 日本代表がカタールW杯で組み込まれたグループEは「2強2弱」とも言われる。W杯優勝国である欧州列強のドイツとスペインに対して、アジアの日本、中米のコスタリカというネームバリューもあるからだが、コスタリカも2014年W杯で同国史上初となるベスト8進出を果たした存在だ。

 そのコスタリカの象徴として、長年にわたって守護神を務めてきたのがナバスである。レアル・マドリーやパリ・サンジェルマン(PSG)というメガクラブで、カシージャスやクルトワ、ドンナルンマらワールドクラスの守護神とのレギュラー争いに巻き込まれながら、気付けばナバスがゴールマウスを守っていた。控えGKでも腐らず準備を進める不屈のメンタリティは、世界的に見てアウトサイダーであるコスタリカを“侮れない存在”に引き上げている。

 そんなナバスだが、かねてより欧州各国で活躍する日本人選手に注目していたようだ。興味深いのは今夏行われたPSGジャパンツアー後、インタビューで浦和の選手のプレースタイルなどをスラスラと語るなど、記憶の良さを感じさせたが、特に日本代表不動の右サイドバックで、フランスの名門マルセイユで長年レギュラーを確保した酒井についてこう評している。

「ダイナミックなプレーでチームにエネルギーを与えていた。マルセイユ時代に対戦したときにも、彼はチームを安定させていた。規律があり、計算できる選手だ」

 ちなみにナバスは、同じGKという立場で、川島永嗣についてもこう評している。

「近年、日本のGKのレベルは非常に高まっていると思う。ストラスブールでプレーするエイジ・カワシマはその代表格だ。彼はライン上の守備で強さを発揮する」

 コスタリカの名手は想像以上に“日本通”であることを念頭に置いておく必要はあるだろう。

アイマール「クボはその特別な潜在能力を開花できれば」

<名言4>
(久保は)ヨーロッパのトップレベルでも活躍できる可能性を秘めた選手ですね。
(パブロ・アイマール/NumberWeb 2021年12月22日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/851202

◇解説◇
 22-23シーズンのラ・リーガで、久保建英は新天地で目覚ましい活躍を見せている。

 昨季までの久保はレアル・マドリーからの期限付き移籍という形でマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェといったクラブに所属してきた。自身にとってリーガ1年目のマジョルカこそリーグ戦35試合4得点4アシストという実績を残したものの、直近の2年間はサブに回るケース、そして所属クラブの戦術判断で本来の良さを生かせず、数字的にも停滞していた。

 しかし今季、マドリーから買い戻しオプション付きの完全移籍で移った「ラ・レアル」ことレアル・ソシエダで奮起。2トップの一角でリーガ開幕戦で鮮やかな右足ボレー弾を決めて勢いに乗ると、同ポジションのスペイン代表FWオジャルサバルの負傷もあってレギュラーに定着した。

 ダビド・シルバ、ブライス・メンデス、ミケル・メリノらとの好連係、さらに前線からの激しいプレスなど守備面でも進化も見せ、今季公式戦(リーガ・EL)16試合2得点4アシストをマーク。移籍情報サイト「transfermarkt」によると今季のゴール関与率は25%をマーク(10月31日時点)しており、攻撃面で欠かせないアクセントとなっている。

「マジョルカや五輪代表などの試合で何度も(見ています)。正確な技術を持ち、知的に素早い判断を下せる選手ですね」

 昨年末、久保の活躍を予見するかのような発言をしていたのは、アルゼンチンの名手として知られるアイマールだ。現役時代は170cmと小柄ながら俊敏なターンや巧みなパス、そして創造力あふれるプレービジョンで相手DF陣を幻惑し、バレンシアの一時代を築いた。あのリオネル・メッシが憧れたとも言われる名手は現在U-17アルゼンチン代表監督とA代表のコーチを兼任しているが、自身とプレースタイルがかぶるのか――久保について高く評価していた。さらにアイマールは“私に予想できることではありませんが”と前置きして、このように話している。

「その特別な潜在能力を完全に開花できれば、彼は間違いなくどんなクラブでもプレーできるはずです」

 11月1日、森保一監督率いるカタールW杯日本代表に、冨安・遠藤・酒井・久保の名前が呼ばれた。かつての名選手からも高く評価される選手たちが、下馬評を覆す戦いに挑む。

<「過去のW杯日本代表・当落」編につづく>

文=NumberWeb編集部

photograph by Kiichi Matsumoto