納得感があり、驚きもあった。

 カタールW杯に臨む日本代表のメンバーが、11月1日に発表された。記者会見に臨んだ森保一監督は最初にGKを発表し、そのあとにフィールドプレーヤーを読み上げていった。長友佑都、吉田麻也、酒井宏樹、谷口彰悟と続いたので、DFラインから発表をしているかと思われたのだが、5人目は柴崎岳で、6人目は遠藤航、7人目は伊東純也だった。

 このあたりで、記者会見場に「んん……?」という空気が立ち込めた。DFからではなく、年齢順に発表されている? だとすれば、酒井と同学年の大迫勇也と、谷口と同学年の原口元気は、選ばれていないことになる。東京五輪世代の名前が出てくると、大迫と原口の落選が記者会見場のなかで静かに共有されていった。

なぜ大迫勇也ではなく上田綺世が選ばれたのか

 14年と18年のW杯に出場している大迫は、2月のサウジアラビア戦を最後に代表から遠ざかっていた。その一方で、所属するヴィッセル神戸では復調の兆しを見せ、10月に行なわれたリーグ戦4試合すべてに先発。そのうち3試合にフル出場した。10月29日の川崎フロンターレ戦は、森保監督も視察していた。指揮官の目前ではっきりとした存在感を示したが、復帰はならなかった。

 森保監督のなかでは、大迫か、上田綺世か、という二者択一だったはずだ。そこでポイントになったのは、所属チームのスタイルである。

 グループステージで対戦するドイツ、スペインとの力関係を考えると、押し込むよりも押し込まれる時間が長くなることが想定される。最前線にポイントを作って攻撃を構築していくよりも、相手の背後を効果的に突くカウンターが有効だ。

 大迫が所属する神戸は、カウンターを主武器とするチームではない。W杯のメンバーに選ばれると、異なる役割を担うことになる。

 上田はどうか。彼が所属するセルクル・ブルージュは、ベルギー1部リーグの中位に位置している。対戦相手を問わず、主導権を握るサッカーではない。ディフェンスでもハードワークをしながら、少ない好機を逃さないタスクを、上田は担っている。ドイツ戦とスペイン戦で、FW陣が求められるタスクに近い。

 9月のエクアドル戦でも、後半からの出場で好印象を残した。前線で激しくバトルし、起点になろうとした。リーグ戦では先発出場を続け、10月の4試合で3得点を記録している。大迫ではなく上田を選ぶ理由はあったのだ。

 大迫と上田を、同時に選ぶことはできなかったか。

 追いかける展開でのパワープレーなどを想定すると、彼らを前線に並べる2トップも用意しておきたい。ただ、FWの枠を「3」とした今回の選考では、ポストプレーもできるストライカータイプをひとりにしている。

古橋亨梧はセルティックの“強者のサッカー”が仇に?

 カウンターで威力を発揮するタイプとして、森保監督は浅野拓磨と前田大然を選んだ。弾き出されたのは、古橋亨梧である。

 古橋が所属するセルティックは、リーグ戦で首位を走っている。彼自身はチームトップにして得点ランク2位の8ゴールを記録している。30日のリーグ戦でもゴールを決めた。状態はいい。

 ここでポイントになるのは、所属チームのリーグ内での立ち位置だ。スコットランドリーグにおけるセルティックは、強者のサッカーをする。ストライカーもディフェンスはするが、ゴールを狙うことに集中できる時間が長い。

 しかし、カタールW杯の日本代表は違う。格下との対戦がない戦いでは、古橋は選びにくい。

 前田大然もセルティック所属である。彼も強者のサッカーを日常としているが、9月のアメリカ戦で見せた前線からの守備は好印象だ。相手のビルドアップに工夫が足りなかったとはいえ、前田の追い込みは有効だった。持ち味とする運動量とスピードを、前線からの守備とカウンターで生かしてもらう、という森保監督の狙いが浮かび上がってくる。

 浅野ではなく古橋を選ぶべきでは、との意見はありそうだ。

 森保監督は「トレーナーとドクターをヨーロッパに派遣している。安心した情報をもらってメンバー発表につなげることができた」と説明するが、浅野は9月から戦列を離れている。W杯にはもちろん間に合うのだろうが、ゲーム体力やゲーム感覚をどこまで取り戻せるのか。コンディションを優先するなら古橋というチョイスはあるはずだが、高速アタッカーの前田と浅野を招集することで、カウンターに変化を生み出すのだろう。

原口元気、旗手怜央の選外にはシステムの影響も

 原口の選外には、システムと小さなサプライズが関連している。

 発表された26人を、9月のアメリカ戦とエクアドル戦と同じ4-2-3-1に当てはめてみる。ダブルボランチは遠藤航、守田英正、柴崎岳、田中碧の4人が担う。板倉滉をCBではなくボランチで起用することもできる。原口をボランチとして選ばなくてもいい。

 4-2-3-1の2列目も、選手は揃っている。加えて、9月のエクアドル戦で相馬勇紀が存在感を示した。先発の三笘薫に代わって相馬が途中出場するという起用法が、有効なオプションに成り得るとの期待を抱かせた。

 エクアドル戦の終盤にシステムを3バックに変更すると、相馬は左ウイングバックに無理なく収まった。それもまた、原口ではなく相馬が選ばれた理由と考えられる。

 カタールW杯アジア最終予選の主戦術だった4-3-3でも、原口ははっきりとしたアピールができなかった。交代選手としての起用も、難しい状況だった。こちらのシステムでも、優先順位は高くないと考えるのが妥当だ。

 旗手怜央の落選も、システムとの兼ね合いで説明できる。

 4-3-3を主戦術とするなら、遠藤、守田、田中に次ぐ4人目のMFの最適任者だったはずだ。これが4-2-3-1になると、柴崎が浮上してくる。

 サイドバックやウイングにも適応する旗手のユーティリティ性は、戦術的な幅を広げる意味でも貴重だ。しかし、23人から26人に登録メンバーが増えた今回は、人材不足を感じるポジションがないのも事実だ。

 柴崎にあって旗手にないものもある。経験だ。GKと最終ラインにはW杯経験者が並ぶものの、中盤から前線にかけては大迫と原口が落選となった。遠藤はロシアW杯のメンバーだが、試合には出ていない。ロシアW杯で主力のひとりだった柴崎は、W杯を知る経験も評価されての選出だろう。

 森保監督が「難しい選考だった。メンバーに入ってもおかしくない選手はまだまだいる」と話す。意見の分かれる選考もあるが、誰を選ぶのかは指揮官の専権事項だ。そして、カタールで「新しい景色」を見ることができたときに、今回のメンバー選考は評価されることになる。

文=戸塚啓

photograph by JIJI PRESS